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kawasaki
しおりを挟む風が轟々と巻き込む列車のデッキ、
ドアが開いたままの車両に乗る事など
都会の電車ではない事で
深夜の、誰もいないデッキで
流れていく景色を、怖いような
爽快なような気持ちで眺めていたリサの
記憶に、夏休み、は
そういうものだと強く印象を残した
夜行列車は、今はもちろん
ドアが閉じて走るけれど
その頃は、それが当然で
走り出した列車に飛び乗る事や
飛び降りる事なども出来た。
それで平気な頃だった。
そんな時、車掌のおじさんは
いつも、にこやかに車掌室にいて
扉を開けば、狭いシート、青いモケットに
座って、仮眠をしていたりするのだろうけれど
なんとなく、起こしてはいけないと
思って、呼びはせずに
夜に佇んでいたりして。
別に、誰でもそうだけど
リサは、お姉さんの役を演じるのに
疲れちゃうこともあったから
そんな時、旅行すると
解放されたりするので、夏休みは好きだった。
その、旅の思い出があるので
夜行列車も好きだし、国鉄も好き。
意外に、好き、ってそんな気持ち。
めぐがルーフィが好き、って思ったのも
たまたま、だったかもしれない。
ミシェルが、めぐを好きなのは
なんとなく、少し違うかもしれない。
ミシェル自身、お姉さんの足手まといになるのは
ちょっと、遠慮したかった。
思いやりのあるお姉さんだったから
余計にそう感じる。
でも、ミシェルだって
好きで弟に生まれた訳でもなくって
お姉さんの思いやりを、時々
疎ましく思う事もあったりもする。
それはまあ、生き物だから
思い通りに行動したい事もあるので
そういう経験もあって、ミシェルは
ひとりが割と、好きだった。
誰でもそうかもしれない。
そんなふうに、若い心は
どこかに飛び出したいと思う。
その気持ちが、たまたま魔法使いの
系譜だっためぐたちの心を
空飛ぶ力へ誘ったりする。
リサは、ふつうの女の子だから
そういう事はできないけれど
できないのが、ふつう(笑)。
ミシェルはリサの弟なんだけど
おちゃめな神様のせいで、魔法使いの
力を持ってしまったから
おとなしい少年ミシェルは、またまた
お姉ちゃんに秘密ができてしまった事になったり。
その、おちゃめな神様は
遠い遠い日本、寝台電車サンライズエクスプレスに乗って
旅を楽しんでいた。
「豪華ではないが、安直でいいのぉ」などと
宣いながら(笑)。
Aクラスルームで、寝転がって
外されたテレビモニターの跡を撫でて(笑)
神様の楽しみ
神様は、人間に変装している。
なぜか、おじいちゃんの姿をしているのは
そういうイメージが、一番似合っているだろうと言う
神様のおちゃめなところであったりもする。
人間が、何かに束縛されないと
生きていけないし
生きる目的を見いだせないのは
もともと、生き物が分子生物であるからで
即ち、素粒子で出来ているから
根源は、宇宙の興りに
素粒子が捕捉されて、原子が出来た。
つまり、拘束された素粒子にとっては
そのストレスがパワーとして、原子を営む。
いつか飛び出してやろうとする、例えば電子は
そのエネルギーが電気になったりする。
いつまでも自由な光子は、飛び回るより他
何もできないのであるが。
拘束から放たれると言うのは、即ち
そういう事で
スピードを得る他、なにもない世界に
生きると言う事だ。
比喩的に、魔法使いとなって
人間から逸脱するのは
おそらく、そういう事だろう。
神様は、それに似ているけれども
人の世界を営むと言う拘束があったりする。
山陽
神様は、その拘束のおかげで
楽しみを見出だせる。
自分ではない、何かの為に
働く事は、手間が掛かるし
自分の意思が届かないから、それだけに
達成感もある。
そういうものが、あると
幸せに思える、けれども
魔法使いルーフィのご主人のように
なんでも魔法で簡単に出来てしまうと
先行きがわかってしまうから
面白い事もなくなる。
それで眠ってしまうのも、道理で
なので、神様は
人間のように、夜行列車で旅行を
楽しんだりする。
旅を楽しむのは、人間的な
無駄っぽい事だけど
過ぎてゆく時間を、記憶に留めて
いろいろ感じるのは、また
楽しいものである。
コンピュータには、できない事である。
神様の乗った寝台電車は、地上を飛ぶように
滑らかにレールの上を過ぎてゆく。
ふわふわと、空気バネで浮いているから
雲の上に乗っているかのようだ、と
天使さんなら、思うかもしれない。
もうひとりのお嬢さん、れーみぃは
アジアンな風貌だけれども、どことなく
ブリティッシュな階級別の名残が
雰囲気に残る感じ。
異質なそういう感じは、北ヨーロッパの
このあたりではあまり気にならない。
大陸続きなので、いろんな人がいるから。
お母さんはイギリスの古い高級車を大切にしているあたりからすると
もともと、アジアを支配していた頃からの
イギリスの貴族が祖先だったのかもしれない。
それで、お母さんがアジアンと言うと
そのあたりが、イギリス本土では
あまり馴染めずに、こちらに来た移民、
なのかもしれない。
もしかすると、お父さんは本土か
アジアに在留しているのかもしれないけれど
満ち足りた彼女の雰囲気からは、寂寥感は
伺えない。
なんとなく、めぐと仲良しなのは
そういうあたりのふんわりムード、だったりもして。
幸せの限界
偶然だけど、4人は
どこかしら過去生に、似たような
地域の匂いがするようで
そのあたりが、仲良しでいられる
理由だったりもして。
まあ、同じ国に住んでいるから
当たり前かもしれないけれども(笑)。
高校を卒業するまでは、とりあえずは
一緒でいられる。
束の間でも、それは
とても楽しい思い出になるはず。
特に、魔法使いルーフィとMegが異なる世界から
入って来てしまったから(笑)
とても複雑な高校生活になっちゃった(笑)めぐ、とか。
でもまあ、ルーフィが来なかったら
本当に天使になっていたかもしれない
めぐだったけど。
それが、幸せだったのかどうかは
後で振り返って解る。
人間って、言葉や理屈で
幸せって、定義できるものでもなくて
例えば、旅するひとときに
それを幸せだと思ったり。
誰かを想う時が幸福だったり。
いろいろだ。
魔法使いルーフィのご主人みたいに
幸福ってものが、見いだせなくなって
眠っちゃう、なんて気持ちは
人間の、若いみんなにはなかったりする。
だって、定義なんてできないんだから。
ひとの喜びは、つまるところ
生きる喜び。
限られた命なので、次の世代へ
命をつないだり、生きていく糧を
残していく事が
喜ばしい、と感じるように
生き物は出来ているから
例えば、恋は素敵な事、と
生き物は想うようにプログラムされている。
なので、永遠に生きていければ
恋も切実なものではなくなってしまう。
あらゆるものが、必然ではなくなるから
人間のほうが幸せだと
魔法使いルーフィが、なんとなく思って
しまったように(笑)。
永遠などと言うものは、空想の中だから
美しいものなのかもしれない。
人間が生きている、宇宙ですら
永遠ではないのである。
その始まりに、様々な素粒子が
自由を失った結果、物質が発生し
いつか、自由に戻っていく。
生命も同じで、無から生じ無に戻る。
その過程が限られているからこそ、
かけがえのないものに感じられる。
夜行列車が、いつか朝を迎え
素敵な時間が消えてしまった後
その素敵な夜を、また感じたくて
旅にまた出るように。
列車に揺られながら眠るリサは
列車の夢を見た。
割と、聴覚は起きてるみたいで
音とか、体の揺れとかが
寝ている気持ちに、伝わって来て
夢になったりする事も、よくある。
リサは、8歳くらいの時
おじいちゃんの蒸気機関車に乗せてもらって
赤い鉄橋を渡る、そんな夏休みの
想い出があったけれど
その時の記憶そのままの夢で
おじいちゃんは、機関車の上でも
優しい表情だった。
でも、記憶と違っている事は
なぜか、そこに
中学生くらいの少年ミシェルによく似た男の子が
スコップを持って、石炭を
機関車に焼べていたことだった。
その機関助手が、ミシェルだったかどうかは
もちろん、8歳だったリサの
想像を越えているはずで
弟のはずのミシェルが、年上の少年として
機関車にのっている、なんて事は
魔法使いでもないリサに取って
理解の限界を越えているから
そういう想像はしなかったのだろう。
おじいちゃんは、機関車を楽しそうに運転して
「ほら、あれがロックマウンテン、フラットリバー」と
かわいい孫娘をエスコートするのに
一生懸命だったりする。
ただ、機関助手の青年とも
ふつうに話していたようにリサは
記憶していたから
この夢は、ひょっとすると
リサの夢じゃなくて
天国のおじいちゃんの記憶に、ミシェルが
魔法でお邪魔して
リサお姉ちゃんを一緒に
連れていったのかもしれなかった。
それは、リサには
例によってわからない。
時々、不思議な夢を見た、なんて
ひとがいるけれど
天国に行ったはずのひとが
夢に出てきたとか、そんな
夢は
ひょっとして、本当に
天国に行ったひとの夢に、お邪魔して
しまった(笑)お邪魔魔法使いさん
かもしれないし
見えない異なる世界が、たくさんあるのが
この宇宙だから
その見えないひとつが、天国だったりするのかもしれない。
それにしても、ライブで見て感じる
蒸気機関車は、幼い女の子には
ちょっと怖いくらいだと思う。
でも、リサは怖がらずに
機関車に乗ってたから
その事も、おじいちゃんを喜ばせた。
「これが、レギュレータだ、引いてみるか?」とても子供の力に引ける代物ではない(旧式なので、パワーアシストはないから)事を
知りながら、それでも
ハンドルに触れさせたい、などと言う
気持ちは、どこから来るのだ?と
おじいちゃんは思っていたりした。
本当は、リサのお父さんも
国鉄に入れたかった、おじいちゃん。
でも「これからは自動車の時代だ」と
鉄道の時代が過ぎてしまう事を、おじいちゃんは
感じて
国鉄バスを作っている自動車会社に
エンジニアとして、リサのお父さんを
就職させた。
させた、と言うか
適性が、エンジニア向きだと
おじいちゃんは思ったりしたから。
国鉄のような仕事、特に
機関車の運転などは、黙々と
安全確保をするような仕事で
エンジニアのように、自分で考えて
オリジナリティを主張したりする感覚は
不要だ。
運転管理が、それではしにくくなる。
管理局がわかりやすい、運転作業。
手順が全部、誰が見てもわかりやすい方法で
運転するのが必要なので
それを見て、誰もが安心する事が大切。
エンジニアのように、独創的な事をするひとは
あまり、向かない。
それは優劣ではなく、適性である。
エンジニアが頭がいい、とか言っても
その頭を生かすには、運転手ではないほうが
いいのだし
運転職場には要らない才能である(笑)。
それは、国鉄だけではなくて
本当は、たいていの事には
向き不向きがある。
合った事をするのが、人間には
一番なのだし
たまたま、ある分野で優れていても
他の分野ではそうでないかもしれない。
おじいちゃんには、他にも子供がいて
いま、列車に乗っている
リサのおじさんの下に、もうひとり
男の子がいたけれど
その子も、やっぱりリサのお父さんと
同じ、自動車会社に勤めた。
たまたま、その時代は
自動車が流行していた頃だった。
荒れ地を開拓する頃は、道路より
鉄道の方がいい。
沢山のものを運べるし、道を拓くより
鉄道を敷く方が簡単だ。
それで、どこの国でも
最初は鉄道が産業の中心だけど
一通り開拓されると、列車の時間に合わせて
行動するのは、面倒になるから
都会のように、頻繁に電車を走らせたりするし
自動車を誰もが買って、自由に移動する事が
流行する。
それなので、おじいちゃんは
4人兄弟だった男の子のうち
ひとりだけを国鉄に入れた。
その反動だろうか(笑)
孫は国鉄に入れたくなった。
自動車会社があまり、先行きが
安全でなくなったのもあったりする(笑)。
その時は、リサのひとり旅だっただろう。
ミシェルが一緒なら、寝台も一緒で
解放された気持ちにも、あまりなれずに
母親のような気持ちのまま旅をしていただろうから。
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