21歳のわたし ー真夏の蜃気楼ー

深町珠

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真夜中のドア

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音楽が好きなのは、音楽好きなお父さんのおかげで
いっぱい音楽を聴いて育ってきた、そんな理由もあるのかもしれないな、って
めぐは思う。


ふつうにメロディを聞いていると、ハーモニーが連想されたりするのは
音楽ってリアルタイムメディアなので、リニアな時間間隔に沿って
タイミング良く思い出すものだったりするから、だったりして。


ただ、記憶の中には時間関係ない、って感じで

快いフィーリングだけが残っていたりする。



そういうめぐだから、音楽を好きでない人の気持が
どうなっているか、まったく分からない(w)


そういうものだけど。



本が好きなひとの気持は、なーんとなく分かるけど


音楽好きよりは、少しノンリニアタイムかしら、なんて(w)。





おもしろいことに、向こうの世界の魔法使いMegも
お父さんは音楽好きだったらしいから


そういうとこは、並列世界っぽい。


Megには弟が居て、でも魔法は使えない。
めぐには弟がいなくて、魔法使いのミシェルが
弟のように親しい(笑)。

もしかすると、めぐの分身かもしれない。



そういうミシェルは親近感と、恋をすこーし混同しているような
そんな感じもする。


恋しい、ってもうすこし
ときめくものなんだろうけれど。




Nortstarは、東に向かって走っている。
もう、旅の終わりが近づくと
どこか、愁いを感じる旅人たち。


時を旅することができる、魔法使いたちでも
ふつうの旅は、自然で楽しかったりする。

思いがけず、素敵な事に出会えて
記憶して、だんだんと生きていく。


インターネットみたいに、時間の概念がないところでは


さっき、Eastbluemorrisで
めぐたちがしていたセッションが

動画サイトで話題になっていたりした。



あの心地好い音楽は、誰の作曲か、とか



演奏しているのは誰、とか。



いろいろな、感想が寄せられる。




どちらかと言うと、ジャズ、みたいな演奏なのに

楽器でなくて、スマートホンで

4人の女の子が演奏している、と言うのは
スタイルとして新しかった。






本人たちは、眠ったまま(^^)







ミシェルは、さっき感じた

未来を見てみたい、と言う気持ちが

眠っているので、抑制できずに
彼自身が、時間旅行をしていた。


model 0_d.michelle;



modelica.constant c ;
real E;
import modelica.SIunits m;
real a;
equation

E=mc^2;
E=ma;

end ;



空間に漂う光る魔法陣に、そのモデルを書き込むのは無意識だ。




flash!






ミシェルは、10年たった自分になっていた。でも、不思議で

今と何も変わらないよう。



少し成長したかな、と

思ってはいる。




図書館のそばの、エルムの木の側で
涼んでいるところを見ると
季節は初夏だろうか。



街行く素敵な女の子たちを
眺めるでもなく、ミシェルはぼんやりしていると


めぐお姉ちゃんに似た、雰囲気の違う人に

ミシェルは、ときめき気持ちを覚える。



それは、天使クリスタさんだった。


めぐと一緒に、図書館で
働いているらしい。


ミシェルは、たぶん24歳くらいになっているから
べつに、クリスタさんにときめいてもふつうの事。

でも、ミシェルは半分女の子の魂を持っているから....。

それをちょっと、背反する気持で見つめたりする(w)



....僕は、不純なんだろうか?


めぐお姉さんが好きなはずなのに。


めぐによく似た(というか、双子みたいな)クリスタさんに興味を持ったりして。








ーーーーそう思うのは、14歳のミシェルがタイムスリップして
24歳のミシェルになっているから、で


当人、24歳のミシェルなら、何の気負いもなく
クリスタさんに声を掛けていることだろう。


そういう事が平気になるのが、慣れ、だったりする。




「こんにちは」と、爽やかに微笑むクリスタさんに


ミシェルは「あ、ああ、こんにちは」と、すこし、どぎまぎ(w)



めぐお姉さんと違って、天使さんだから
どことなく、なんというか雰囲気が......。

それが新鮮で、5月の風のようで。



ミシェルは、訳も無くときめいた。



もちろん、14才の魂が24歳の自分に乗り移っているので...。


ふつう、そんな事はないけれど。


14歳の目で見ている、27歳になっているはずのクリスタさんは
もちろん、天使さんだから、とってもステキに見えて。



女の子の心で見ても、異質なステキさをクリスタさんは持っている。

でも、女の子でも男の子でもない(w)。


美、はもともと生命を大切にするためのプログラムだから
それを大切にするように出来ている。

なので、優美な曲線とか、柔和なもの、つまり
赤ちゃんに近いディテールのものを美しく感じるように、生き物は出来ていたりする。


ミシェルの、男の子としての制御プログラムは

つまり、たくさんの種子を残すような
植物から受け継いだ性質で動いているけれど


女の子としての魂は、一度に育む命はひとりだけなので


誠実に、育ててくれるようなパートナーを
選ぶ、そんな、動物的な感覚で



背反するそんな感覚が、ミシェルの心を
悩ませる(笑)。



「24歳の僕は、どう思っているのだろう」と

」聞きたくても、呼び出す方法は
ミシェルにはわからない。



男の子だって、ひとりを愛したいと

誠実に思っているけれども



ただ、生物的な基本と思いは違うと言う事だ。




「ミシェルーぅ?」と、甘えた声で、混乱している彼に話かけたのは


美しい成長したセシルだった。


14歳のミシェルが見ると、23歳のセシルは

なんというか、余分に肉が付いた天使と言うか(笑)



14歳のセシルのほうが素敵、と見えたけれど

それは、24歳のミシェルが見たら

そうは見えないのだろう、とも思う。






そういう予感があったので、[今度は、24歳の自分に会って、話をしてみたい]


などとも思ったミシェルであるけれど





23歳のセシルに、そんな事はわかるはずもなくた(笑)




「早くぅ、行こう?」と、言うところを
見ると


24歳のミシェルは、ここでセシルと
待ち合わせをしていたようだ?


不審に思い「どこ行くの?」と尋ねる。。



見た目は24歳だけど、記憶は14歳のままだから

本当に何も知らない(笑)。



セシルは、にこにこと「約束ってゆーかぁ、ほら、だいぶ前に言ったでしょ?」と。




そういう感じらしい(笑)。



つまり、24歳のミシェルはセシルと
なんとなく友達でいるらしい。





それはそれで、いい事だけれども


こういうのは恋とは言わないんだろな、と
14歳のミシェルは、生真面目にそう思う。


少年なればこその潔癖、と言うか。




でも、23歳のセシルは、相変わらずに
屈託ないし

そういう彼女を悲しませる事もないだろう、と
なんとなく付き合っているのだろう。




と、14歳のミシェルは思ったけれど


10年たつと、僕はいい加減になるのかな、と

そんなふうにも思う。





セシルに引きずられるように、どこかに連れて行かれそうになっているミシェル。



もしかすると、15歳からずーっと
こうやって引きずられているのだろうか、僕は(笑)と



14歳のミシェルは思う。






その、見た目24歳のミシェルは、図書館の前で


出逢った。


体の気持ち
ミシェルが出会ってしまったのは、
他ならぬ魔法使いのライバル(笑)いや、
恋のライバルルーフィだった。


どういう訳だか、10年後のこの
図書館に現れていた。



会ったら宣言しようと、14歳のミシェルは
思っていた。



「あなたには負けない。僕は。誰よりも
あの人を愛してる」



と、いいたいと思っていたけれど



24歳のミシェルの身体が、その言葉を
発しようとはしなかった。




なぜか、満ち足りた気持ちで

ルーフィに言葉を掛けずに見送ってしまった。






少年ミシェルの気持ちの根底にあるのは
14歳の身体、エネルギーが余っている。



その、エネルギーが活動を意図する。




でも、今は24歳の身体なので
それほどのエネルギーの余剰はないのだろうか?





理由はわからないけれど、ミシェルは
穏やかに戦いを避けた。



とりあえず、24歳のミシェルは
幸せだ、と言う事なのだろう。




瞬間、立ち止まったミシェルを

セシルは、引きずるように(笑)



「いこーよ、ね?何してるの?」と

楽しそうだ。



そういう幸せもあるのかな、と
ミシェルは思った。




まだ、めぐお姉さんの10年後には
会っていないけれど


なんとなく、未来は見えてきた(笑)。



ミシェルの、14歳の記憶だと
セシルは、やっぱりまんまるで
よく笑う子だった。


となりにいても、別に気にならない。
ちょっと、かまってあげたくなるような
クラスメートで



「太ったねぇ」と、背中の
余ったお肉をつまんでやると



「いや!ミシェルのエッチぃ」なんて
笑ってはたいてくるような、愛らしい子。



その時、14歳のミシェルは
なんとも思わなかったのだけれども



いま、24歳のミシェルの体は

セシルのお肉をつまんであげたくなって
近くにいくと


なーんとなく、エッチな気持ちになってしまって(笑)



それが、14歳のミシェルの心に伝わってしまって。


なんか、ぎこちない(笑)。



当のセシルは、あっけらかんと
にこにこしてるだけ、なんだけど。





そこで、14歳のミシェルは気がつく。




「めぐお姉さんは、27歳になってるはずだから」



もう、結婚してるのだろう、たぶん。




その相手は、24歳の僕ではないようだ、と
となりにいるセシルの様子からそう推理する、ミシェル。



セシルがあっけらかんと不倫なんてする訳はない(笑)。






そんなふうに、ある人の事が気になる、ってのが
好きって事なのだろうと、後になって思うのだけど
その最中は、ぜんぜんそうは思わない。

それでふつうなんだけど。

ミシェルにとってちょっと不幸だったのは、タイムスリップなんて事が
魔法で出来てしまって。

ややこしい経験をする、ってあたり(笑)。





ほんとうの14才のミシェルは、寝台特急のベッドで
眠ったまま、夢の途中に

タイムスリップしたのだから


それが、夢なんだか魔法なんだか、本人もわかっていない(w)ってあたり。







いきなり、ぽん!って
14歳のミシェルは、24才の自分から抜け出して

もともとの時間軸に戻ってしまったものだから




24歳のミシェルは「あ、あれ?僕は何してたのかな?」って


セシルに笑われている(^^)


もしかして、おとぼけお婆ちゃんとか、天然のおじいちゃんとかは
時々、タイムスリップしているのかもしれなかったり、なんて


14才のミシェルは思ったり。




また、戻ってきた夢の中で

ゆっくりと、夜の旅を楽しむミシェルだった。






夜行列車の楽しいところは、そんなふうに
眠っているのに

高速で列車が走りつづける、と言う
変わった状況にあったりする。


リサが、なんとなく国鉄が好きなのは

幼い頃の夏休みに、そうして
夜行列車で往来した記憶にあったりもして



独立したいと思う子供心に
親の目の届かないところで、自立したような
気持ちになれる、そんな記憶として

夜行列車でひとりで眠ると言う記憶があったりして




そういう経験が、好き、と
言う記憶に重なったりする。



別に怖い事もなく、旅を
終えると


達成感が、嬉しい気持ちになって



過ごした空間や、手触り、音、匂い、などが
すべて好ましい記憶として残るから



鉄道を好き、と言う気持ちになったりする。



それは、その人の記憶だから
他の人にはわからなくていいもの、だ。




でも、夏が来ると
なんとなく、その記憶を連想したりする。


その、遠い遠い夏の日
リサは10歳くらいだった。

その夏休みは、7月に入るとすぐに
避暑に出かける、とリサは思いついた。


なぜか、って聞かれても困るけれど
前の年の夏休み、おじいちゃんの家に避暑に行って

とっても楽しい気持になれたから。


もちろん、夜行列車で行く途中も

古い客車で、眠りについて


深夜、ふと目が覚めて


廊下を歩いて、デッキのところへ行くと

妙に風が巻き込んでいて、外の音が良く聞こえたから


扉を見ると、折りたたまれて解放されたままだった。



暗黒の闇に、二本のレールが光り

高速で移動しているように見えて、とても怖かった。


自動ドアでない車両、そんなこともある国鉄だった。


そういう経験は、都会ではない事だし


鮮烈な記憶。



それも、リサの夏の思い出である。



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