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クリスタさんとお迎え
しおりを挟む「あ、ミシェル」リサは気づく。
図書館の1F、入ったところの
貸出コーナー。
少し薄暗い照明は図書館ならではだけれども
昼間は、吹き抜けからの太陽が
射してくるので
明るいのだ。
そのカウンターにいたのは、ミシェル。
カウンターの向こうの天使、クリスタさんを
憧れの視線で見ている。
それはまあ、めぐにそっくりで
天使さんだから、ふんわりしていて
所在なげな感じが
素敵、に見えるのだろう。
でも、天使さんだから
見た目女の子っぽくても
女の子でも男の子でもない。
そんな事は見てもわからないけれど(笑)。
ミシェルは、めぐお姉さんに出逢って
なんとなく気まずそうに俯いて挨拶をした。
少年である。
めぐは、特に気にするでもない。
ミシェルは、でもルーフィーに気づいて
めぐの隣にいる彼、長身で
すっきりした彼に
どことなく、ライバル意識(笑)。
クリスタさんは、めぐの姿を見て
やわらかに微笑む。
めぐも、その笑顔を見ていると
にこやかになれて。
元々、一緒だったから
気持ちが伝わったような気持ちになれて。
「迎えに来たの」言葉まで優しくなれる
めぐだった。
「やあ、ミシェル」ルーフィは
爽やか。
ミシェルも、こんばんは、と
割としおらしいのは
お姉ちゃんがいるせいか(笑)、それとも
めぐに良く似たクリスタさんを見て
恋しいひとがひとり増えたのか(笑)。
リサは、そんなミシェルの表情を見て
「こっちにしよう、なんて思ってるのかな?
浮気ものめ」と、手厳しいが
姉とはそんなものだし、女なので
浮気性は敵性である(笑)
ミシェルは、その姉の言葉を
あまり気にするでもなく
遠いような瞳で、クリスタさんを
見るでもなく、見ている。
少年らしい羞恥。
その気持ちが恋なのかは
ミシェルにも解らないけれど
かわいいひとのそばにいると、それだけで
しあわせなもので
理由が必要な訳でもない。
めぐにしても、特別
ミシェルが気になっている訳でもないから(笑)
それに、クリスタさんはめぐの分身だし
ミシェルが好意を持っても、気にもならない。
「天使さんだもん」と、心でつぶやくめぐ(笑)。
見た目は似てても、天使さんってピュアだし
どこがどう、って言えないけど
どうがんばってもかなわない何かがあるって
めぐは思う。
ミシェルの意識に気づいても
透明に微笑むクリスタさんは
「めぐさん、ありがとうございます
お迎えに来て下さって」と
めぐの代わりにアルバイトしてるのに、なんて
恩着せがましい感情とは無縁だし
ミシェルの気持ちを利用しよう、なんて
そぶりからも無縁だ。
それは、何と言っても天使さんだから
食べなくてもいられるし、恋する必然もない。
それは天使さんだから、なんだけど
めぐは思う。
魔法使いルーフィのご主人と
そんなに違わない境遇なのに
眠りについて、憂鬱な
時を過ごす事もない
クリスタさん。
なぜだろう?と
めぐは思う(笑)。
天使さんだから。
クリスタさんは、人間のような
怒りとか憎しみに無縁だ。
生きていないので当然で
生きるために、自らの領域を
守るためにひとは怒る、侵されれば憎む。
天使さんは自分のために生きている
訳でもなく
皆が、しあわせになるために存在している。
なので、ミシェルが
そんなクリスタさんを素敵に思う事も
当然だし
ミシェルは知らないが、クリスタさんは
かつて、めぐを守護していたし
その頃、めぐに宿っていた魂が
今、ミシェルのなかにいるのだから
姉妹のような親近感がミシェルにあるのかもしれない、と
思っては変だろうか。
不思議な憧れを以って、ミシェルは
感じている。
ミシェルの心
ミシェルにとって幸運なのは
クリスタさんが天使だ、って事で
ふつうの女の子だったら、めぐに
気持ちを寄せていて
めぐに似ているから、クリスタさんを
好きになったら怒る(笑)
それは排他であり、生き物の本質。
でも、天使クリスタさんは
生き物ではないので
排他はしなくていい。
元悪魔のにゃご、に好かれても
ミシェルに好かれても
別に気にするでもない(笑)。
元悪魔のにゃご、が
どう感じるかは別だけれども。
「帰るよ、ミシェル」リサお姉さんは
弟の気持ちに気づいてるけど。
どこかしら、弟が
他の女の子に恋して、自分の掌から
逃げて行く小鳥のような
そんな気持ちも半分。
なので、少し意地悪な(笑)お姉さんは
まあ、フツーだ。
お姉さんも女の子である。
年少の者を庇護する気持ち、と
巣立って行くと、庇護できなくなる淋しさ半分。
可愛いものは、できれば手の内に居てほしい。
弟にとっては、結構その
支配から逃れたくて
他の女の子に興味を持ったりするのだけど。
「お姉ちゃん先行って」と、ひとりで帰ると
言うミシェルは、そういう年少の者の
気持ちをも含めていたり、する。
クリスタさんってステキだな、って
ミシェルは心でつぶやく。
そういう気持ちを、言葉に出して
言えないから、それだけ
思いに詰まってしまったり。
気持ちってそういうもので
そういうミシェルを、いつまでも
子供扱いするお姉ちゃんは
ミシェルにとってうっとうしい時もある(笑)
お姉ちゃんリサは、女の子を好きになる
弟が、ちょっと
男の子を感じて、嫌だったり。
だから「いくよ!」って
引きずるように図書館を後にして。
離せ、離せ、と
ミシェルの声が図書館の表に響く(笑)。
「あらら」と、めぐはにっこり。
「あたしたちも帰ろうね」と、れーみぃ。
黄色い明かりが温かみを感じる図書館の
受付には、もう人気も少ない。
「リサもお姉ちゃんねぇ」と、めぐは微笑む。
ミシェルの力
ミシェルは、本当の力を出せば
お姉ちゃんを跳ね飛ばす事くらい出来るの
だけれども
うっとうしいと思っていても、でも
ミシェル自身への優しさのある姉だから
それが、ミシェルにもわかっていて。
黙って、連れて行かれる(笑)。
愛ってそういう抑止力なのだ。
最初っから信頼も愛もなかったら
家族にも姉弟にもならない。
それが傍目にわかるから、めぐは
微笑ましくそれを眺めていて
「ちょっと弟がほしくなった?」と
ルーフィに問われて
「お兄ちゃんかな、やっぱり」と
めぐは答える。
ルーフィは「僕もお兄ちゃんかな」と
そんな風におどけて言うので
めぐは、ふと、思う。
そういえば、ルーフィさんは
お兄ちゃんくらいの歳(人間なら)なので
自然に、めぐは
甘えられたけど
それって、恋じゃなかったのかな、なんて
それまでの想いを、ふと、振り返る。
「クリスタさんが、ずっと
お姉さんみたいだったし」と、言うけれど
ふと気づくと、クリスタさんは
貸し出しカウンターにいなくて。
なんとなく、めぐは
不安になって
あたりを見回す。
ルーフィは、そんなめぐを気にして
「どうしたの?」
優しいお兄ちゃんは
恋のお相手とは、ちょっと違っているのかな?
めぐは思ったりする。
本物のお兄ちゃんがいないので、理想的な
お兄ちゃんを夢想して、そんなふうに思うの
かもしれない、って
めぐは、そんなふうにも思う。
お父さんが、優しかったから
幼い頃みたいに、甘えたいって思っても
もう、そんな事もできなくて。
なので、甘えられる相手が
ほしい、って
思うのかな。
ルーフィとは、前世で兄妹だった、なんて
もちろんそんな事はなく(笑)
ずっとずっと昔から来た、時の旅人ルーフィだから
折り目正しい紳士の作法が、どこかに残る
彼を、頼れるって思ったのかもしれなかったり。
めぐは、とりとめもなく思う。
めぐは、ルーフィをお兄ちゃんみたい、と
思ったけど
でも、お兄ちゃんと抱き合いたいなんて
そういう趣味はないから(笑)
やっぱり、さっきの気持ちは
恋だったんだ、と
思ったりもする。
よく気持ちのわからないのは、若い証だったりする。
年取ってから、懐かしく思い出すんだろうけど
そういう想い出がいっぱいある毎日を
送っていければ、それはとても幸せなのだ。
おばあちゃんになってから、初恋の感動を、
なんて言っても無理だし
経験をしていないから、新鮮だったりする。
その意味では、ルーフィは
人間になったばかりだから
そういう、恋のせつなさとかは
よくわからないけれど
初めて、女の子を抱きしめたい、なんて
身体で感じる事になったりする。
それは、ちょっと男の子としては
切実なのだ。
「僕だって、お兄ちゃんじゃないよ」と
言うルーフィに
異質な想いを感じる、めぐ。
危険な匂いに、少し身構えるけれど
それに、惹かれてしまったりもする。
めぐ自身が招いた、ルーフィの生だけれども。
安心して寄り掛かれるお兄ちゃんが
ほしかったのか
少し、わからなくなってしまった。
「お待たせしました」
少し困惑していためぐを、爽やかな声で
クリスタさんが助けるかのように。
質量がないから、ふわふわと
生きているホログラムみたいな、天使さん。
ルーフィは、少し
そのふんわり感が好ましく思ったりもする。
人間になって、よかった事って
なんだったのかなぁ、なんて(笑)
我が身の生を、省みたり。
でも、クリスタさんも
本当は、天使さんの世界に
戻りたいのかな、なんて
爽やかな笑顔に、心のうちを
伺ったりもするけれど
それもまた、人間的な感覚で
天使さんに、帰りたいとか
そんな、意思や感情は
ありはしないのだった。
↓
天使さん、クリスタも
元々は人間だったのかもしれない。
長い時間の流れの中で
魂が磨かれて、いつしか天使さんになったのだけれども
自ら望んで、そうなった訳でもない。
自然に、そうなった。
生きていた時も、あまり
ひとの望みとか、喜びとかに
それほど心を寄せる事なく
また、クリスチャンでもなかった(笑)
天国と言うと、信仰深いひとが
イメージをするような感じだけれども
それは、宗教のCMである(笑)。
クリスタさんのいる天国って、
天使さんにとって、普通に世の中なのだ。
「じゃ、僕らも帰ろうね」と
ルーフィが
めぐに言うと
れーみぃは「帰ろうね、なーんて。
新婚さんみたい」と
変な事を
微笑みながら言うので
ルーフィも、めぐも
恥ずかしくなってしまった(笑)
めぐの家にホームステイしてたから
帰ろうね、も
ふつうなのだけど(笑)
改めて考えると恥ずかしいかもしれない、と
めぐも思う。
おまけに、ルーフィには
恋人がいて
めぐの3年あとと
並列時空間の存在、と言うのだから
魔法使いでなければ背徳な罪だったりする(笑)。
過ごした時間は取り戻せないし
それだから美しい思い出になったりする。
もし、時間を飛び越えられるなら
どんなにいいだろう、と
夢見て、魔法使いになれたとしても
並列時空間の、もうひとりの自分を
追い越す事はできなかったりする。
めぐが夢想するのは
3年あとの自分が、並列時空間の
もうひとりのMeg、のように
幸せになっているのだろうか、と
言う事だったりする。
並列だから、ルーフィに相当する
誰かが、こちらの世界にもいる、はずなのだけど。
「さあ、帰りましょうね」クリスタさんは
穏やかに。
怒ったところなど見たことがないが(笑)
それは、天使さんなので。
人間のような怒りはなかったりする。
人間の怒りって、概ね自分と
それ以外、の境界があるから起こる。
天使は生き物ではないので、境界で
困る事もない。
人間が意図的に境界を壊そうとしても
実体がないので出来ないのだ。
「まあ、僕が来た理由は果たした訳だから
帰ろうかな。お邪魔すると悪いし」と、ルーフィは
少しおどけて。
めぐは、ルーフィを見上げて、少し淋しい顔をした。
「うん。おばあちゃんにご挨拶しないといけないね」と、ルーフィは優しい。
めぐは笑顔になる。
クリスタさんも、穏やかに微笑んで
「はい。今夜はご馳走だそうです」と。
そうそう、ルーフィは人間になったから
食べる喜び、もあるのだった。
代わりに、厄介な人間のルールにも
関わる事になるのだけれども。(笑)
それも、めぐの願いのひとつ?
0
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