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第3話 ダメだよ、皆殺しって・・・・・・
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馬の筋肉を何倍にも太らせたような体躯に、頭部から大きな角を生やした4足歩行の魔獣が引っ張る台車には、その中央に玉座が据えられている。
そこに魔王セシルド―――、山田哲郎が鎮座というには程遠く、落ち着きのない様子でちょこんと大人しく座っていた。
玉座の横にはズエデラが控え、後ろには魔王の背後を守るように、やたらと肌の露出が多い鎧姿の女魔族が並んで立っていた。魔獣に引かれる台車は、ゆっくりとした速度で移動中。歩いた方が早いと、哲郎は内心で思う。
台車上の魔王以外の3人―――、3魔族と数えた方が正解なのかもしれないが、明らかに様子の異なる魔王を前に戸惑いを隠せないでいた。
「あのー」
「―――あのー!?」「―――あのーって!?」「―――あのーって言った!?」
魔王の発した言葉で、台車上に驚きをもって3つの声が交錯する。
「いや―――、その・・・・・・、ズエデラさん」
「―――ズエデラさん!?」「―――さんって!?」「―――さんって聞こえた!?」
夢の中だというのに、まったく思うように行動ができない。哲郎はズエデラに促されるまま台車に乗せられている。移動中にズエデラに話し掛け、置かれている状況を理解するため情報収集を試みているのだが、ちょっとした言葉尻を捕らえられて大苦戦していた。
現状で分かっていることは、ズエデラの話す事や周りの状況から、魔族が率いる魔王軍が人間との戦争に勝利し今まさに世界を征服したらしい、ということ・・・・・・。
哲郎を運ぶ台車が向かう先は、転生直後に目にした崩れ落ちた城。本当の魔王が、そこで勝利宣言をする、と言っていたらしい。夢の中なので、自由に振る舞いたい哲郎だったが、魔王軍を率いる魔王という立場ではそうもいかない、ということなのか。
「ああー、夢の中なのに設定で躓くのかよ。言葉遣いがわからねえ。魔王設定だから超高圧的でいってみるか」
「ま、魔王様。やはり何か気になることがあるのでございましょうか? はっ!? もしやこのズエデラに粗相が―――」
「―――だ、大丈夫だ。粗相などない」
すこし高圧的に喋ってみたのが正解だったようだ、哲郎の言葉にズエデラの表情が緩んだ。
明らかに自分より年上という部下に、次は呼び捨てを試みる。
「ズ、ズエデラ」
「―――はっ」
反応がいい。正解だったようだ。
「えー、それで俺は―――」
「―――俺!?」
間違った。ハズレを引いた。ズエデラの困惑の表情に哲郎は顔をしかめる。台車上の雰囲気が気まずい方向へ流れはじめたその時、玉座の後ろから囁くような硬い声が聞こえた。
「我―――」
背後の女魔族の発した、哲郎にしか聞こえなかった声。すぐに助け舟だったことを理解する。後ろを振り返り、声のした右側、髪の短い女魔族の貌を確認して哲郎はウインクした。
魔王にウインクされた女魔族は、はじめ驚いた表情をしたが、震えるように息を吐くと表情を緩めて小さく笑い返した。
「ワ、レ。コホンッ――― 我はこの後の事を聞きたいのだが」
「―――はっ! 申し訳ございません。気が利かないズエデラは万死に値します。魔王様に質問をさせるとは、この身はドルイ山の火口に晒されて火喰鳥の餌になろうと―――」
「いや、大丈夫、怒ってない、我は全然怒ってないから、普通に話をしよう。なっ、ズエデラ」
「ああ、寛大なる魔王様。なんと慈悲深きお言葉か。改めて誓いますぞ。不肖ズエデラ、この老体が朽ちるその時まで魔王様に全身全霊でお仕えすると」
本当の魔王は一体全体どういう奴だったんだ。こんなに恐れられて、さぞかし嫌なやつだったんだろうな、と眉間を揉みながら哲郎は思う。
「この後の段取りでございますが、城の正面に大きな広場がございます。そこで勝利の宣言を、と考えておりますがどうでしょうか」
「わかった。そこで宣言すればいいんだな」
「仰せのままに」
一礼するズエデラを見ていて、哲郎はふと思い、
「人間を見ないけど」と疑問を口にした。
魔王たちを乗せた台車は城下の大きな石造りの街中に差し掛かっていた。目指す城は街の中央に位置しているようで、幅員のある石畳の上をゆっくり移動中だ。
ズエデラから王都と聞いてはいたが、実際に見ると大きな街の規模に哲郎は驚く。そして、大きな違和感を持った。人の姿を見かけないのだ。
味方のゴブリン兵や屈強そうなオーク兵をいたる所で目にするが、通りの先や路地に目を配っても捕虜の1人も見つけることができない。
「人間は何処にいる?」
「仰せの通り、この街と城の人間は皆殺しに―――」
「―――!?」
「と、攻め入りましたところ、街に人間の姿はなく既にもぬけの殻でございました。勿論、捜索隊を編成しておりますれば」
「皆殺しって・・・・・・」
「な、何か問題が!?」
「終わったんだろ。もう勝ったんだから、その必要は、な、いよな・・・・・・」
唖然とした感じで哲郎が言うと、ズエデラが思案顔を作る。
「あっ、なるほど。魔王様のお考え、このズエデラにもわかりましたぞ」
夢にしても目覚めの悪い状況だった。ズエデラが顔色一つ変えず、皆殺し、と当然のように言ってのけるところに哲郎は寒気を覚える。勿論、本当の魔王が命じた事なので、魔王の中の哲郎は笑えない。
ズエデラが顔を輝かせて話を続ける。
「さすがは魔王様。常に先を見ておられますこと、この不肖ズエデラ、敬服と尊敬の念に堪えません。魔王様のお考えは、こうでありましょう。生きた人間は武功を挙げたものどもへ報奨として与え、魔王様の支配を盤石なものとする。勿論、この世の支配者である魔王様に逆らおうというものはおらぬでしょうが、魔王様から報奨を賜ればみな涙を流して喜びましょう」
「お、その通り。その通りだ。ズエデラはやっぱりよく分かってる。だからもう殺さないでいいよ」
「仰せのままに。ただ、王を失った城中に、いまだ立て籠もる敗残兵がいると報告がありまして、そ奴らは魔王様が到着前に皆殺しに―――」
「―――ちょ、ちょっと待った!」
「はっ!?」
「あの、皆殺し、皆殺しって、人格疑われるよ。城に残っている人間も殺してはダメだ」
「な、なんと・・・・・・」
転生した夢の中であっても、心は人間、本当の職業は警察官。正義感の強い哲郎には、夢の中でも設定に乗っかって傍若無人に振る舞うようなことはできない。
哲郎の言葉を聞き、台車上の魔王以外の3人の魔族が息を呑んだ。
「俺まずいこと言ったのか」
台車上の雰囲気が変わり、哲郎は戸惑う。ちらりと玉座の後ろを窺うと、右側の髪の短い女魔族は驚きに目を丸くしていた。よく見れば、肌の色が青いだけで、超絶に可愛い貌をしている。
対して左側の女魔族は髪が長く整った貌立ちの美人だった。哲郎の発言を受けてか、嫌悪の表情を隠しきれていない。突き刺さるような尖った気配を纏い一点を見つめていた。
台車上の微妙な雰囲気を打ち破ったのは、勘違い野郎―――、ズエデラの発言だった。
「いやはや、不肖ズエデラ、またしても一本取られました。魔王様の深き考えを―――、ズバリ言います。敗残兵は人質ですな。姫をおびき寄せるための餌」
ズエデラの言葉に、左後ろの女魔族の殺気が強まった。
「控えろアーリ!! 魔王様の御前で不敬であろう。寛大な魔王様の慈悲が無ければ、今この瞬間はないぞ!」
一喝するズエデラの声に、哲郎がビクッと体を震わせて驚く。魔王としては、部下に見られてはいけない小心者の反応だった。周りを窺い、誰も見ていなかったことに安堵する。
「申し訳ございません」
アーリと呼ばれた女魔族の謝罪は、おそらく尖った気配のことだろ。哲郎には殺気という認識はなかったが、そうゆうことだ。
「よ、よい。全然大丈夫、で、す」
「失礼いたしました。次があればこの老体が許しはしませぬ。話の腰が折れましたが、人質の件、早速に伝達いたします。これミリー」
ズエデラが言い終わると、台車が停止した。玉座の右後方のミリーと呼ばれた女魔族が、右腕を大きく空に向かって突き上げる。手をひろげ呟くように詠唱する。
「おおお―――!」
思わず感嘆の声が哲郎の口から洩れた。ミリーの広げた手のひらを中心に黒点が浮かび上がり、徐々に大きくなってゆく。
「―――いでよ、ミニオン」
詠唱が終わると、黒点はミリーの体程の真っ黒い球体となっていた。しかし、よく見るとその表面は滑らかではない。何か小さなものが寄り集まっているのだと分かる。
球体の中から小さな何かが、一つだけはぐれたように飛び出した。それは小指の先ほどの存在で、コウモリに似た生き物だった。小さいながらも、二本の手と二本の足が付いていて背面から羽が生えている。
「使い魔ミニオン。城の兵士へ伝達して。立て籠もっている人間の敗残兵を人質とします。誰も殺してはダメ」
ブンブンという使い魔の羽音が、虫嫌いの哲郎の顔を自然としかめっ面にさせる。
使い魔に語りかけるミリーと、興味深々で見守っていた哲郎の目が合う。哲郎の真意を知ってか知らずか、ミリーは小さく頷くと、高く伸ばした腕の先を握って拳を作り、球体を払うような動作をした。黒い塊が壊れ、四方八方へ使い魔ミニオンが飛び去ってゆく。
「さて、参りましょう」
枯れた声でズエデラが合図し、ゆっくりと台車が移動を開始した。
それにしても、餌って何。姫って誰だろう・・・・・・、使い魔ミニオンに気を取られていた哲郎は質問するタイミングを逃したのだった。
そこに魔王セシルド―――、山田哲郎が鎮座というには程遠く、落ち着きのない様子でちょこんと大人しく座っていた。
玉座の横にはズエデラが控え、後ろには魔王の背後を守るように、やたらと肌の露出が多い鎧姿の女魔族が並んで立っていた。魔獣に引かれる台車は、ゆっくりとした速度で移動中。歩いた方が早いと、哲郎は内心で思う。
台車上の魔王以外の3人―――、3魔族と数えた方が正解なのかもしれないが、明らかに様子の異なる魔王を前に戸惑いを隠せないでいた。
「あのー」
「―――あのー!?」「―――あのーって!?」「―――あのーって言った!?」
魔王の発した言葉で、台車上に驚きをもって3つの声が交錯する。
「いや―――、その・・・・・・、ズエデラさん」
「―――ズエデラさん!?」「―――さんって!?」「―――さんって聞こえた!?」
夢の中だというのに、まったく思うように行動ができない。哲郎はズエデラに促されるまま台車に乗せられている。移動中にズエデラに話し掛け、置かれている状況を理解するため情報収集を試みているのだが、ちょっとした言葉尻を捕らえられて大苦戦していた。
現状で分かっていることは、ズエデラの話す事や周りの状況から、魔族が率いる魔王軍が人間との戦争に勝利し今まさに世界を征服したらしい、ということ・・・・・・。
哲郎を運ぶ台車が向かう先は、転生直後に目にした崩れ落ちた城。本当の魔王が、そこで勝利宣言をする、と言っていたらしい。夢の中なので、自由に振る舞いたい哲郎だったが、魔王軍を率いる魔王という立場ではそうもいかない、ということなのか。
「ああー、夢の中なのに設定で躓くのかよ。言葉遣いがわからねえ。魔王設定だから超高圧的でいってみるか」
「ま、魔王様。やはり何か気になることがあるのでございましょうか? はっ!? もしやこのズエデラに粗相が―――」
「―――だ、大丈夫だ。粗相などない」
すこし高圧的に喋ってみたのが正解だったようだ、哲郎の言葉にズエデラの表情が緩んだ。
明らかに自分より年上という部下に、次は呼び捨てを試みる。
「ズ、ズエデラ」
「―――はっ」
反応がいい。正解だったようだ。
「えー、それで俺は―――」
「―――俺!?」
間違った。ハズレを引いた。ズエデラの困惑の表情に哲郎は顔をしかめる。台車上の雰囲気が気まずい方向へ流れはじめたその時、玉座の後ろから囁くような硬い声が聞こえた。
「我―――」
背後の女魔族の発した、哲郎にしか聞こえなかった声。すぐに助け舟だったことを理解する。後ろを振り返り、声のした右側、髪の短い女魔族の貌を確認して哲郎はウインクした。
魔王にウインクされた女魔族は、はじめ驚いた表情をしたが、震えるように息を吐くと表情を緩めて小さく笑い返した。
「ワ、レ。コホンッ――― 我はこの後の事を聞きたいのだが」
「―――はっ! 申し訳ございません。気が利かないズエデラは万死に値します。魔王様に質問をさせるとは、この身はドルイ山の火口に晒されて火喰鳥の餌になろうと―――」
「いや、大丈夫、怒ってない、我は全然怒ってないから、普通に話をしよう。なっ、ズエデラ」
「ああ、寛大なる魔王様。なんと慈悲深きお言葉か。改めて誓いますぞ。不肖ズエデラ、この老体が朽ちるその時まで魔王様に全身全霊でお仕えすると」
本当の魔王は一体全体どういう奴だったんだ。こんなに恐れられて、さぞかし嫌なやつだったんだろうな、と眉間を揉みながら哲郎は思う。
「この後の段取りでございますが、城の正面に大きな広場がございます。そこで勝利の宣言を、と考えておりますがどうでしょうか」
「わかった。そこで宣言すればいいんだな」
「仰せのままに」
一礼するズエデラを見ていて、哲郎はふと思い、
「人間を見ないけど」と疑問を口にした。
魔王たちを乗せた台車は城下の大きな石造りの街中に差し掛かっていた。目指す城は街の中央に位置しているようで、幅員のある石畳の上をゆっくり移動中だ。
ズエデラから王都と聞いてはいたが、実際に見ると大きな街の規模に哲郎は驚く。そして、大きな違和感を持った。人の姿を見かけないのだ。
味方のゴブリン兵や屈強そうなオーク兵をいたる所で目にするが、通りの先や路地に目を配っても捕虜の1人も見つけることができない。
「人間は何処にいる?」
「仰せの通り、この街と城の人間は皆殺しに―――」
「―――!?」
「と、攻め入りましたところ、街に人間の姿はなく既にもぬけの殻でございました。勿論、捜索隊を編成しておりますれば」
「皆殺しって・・・・・・」
「な、何か問題が!?」
「終わったんだろ。もう勝ったんだから、その必要は、な、いよな・・・・・・」
唖然とした感じで哲郎が言うと、ズエデラが思案顔を作る。
「あっ、なるほど。魔王様のお考え、このズエデラにもわかりましたぞ」
夢にしても目覚めの悪い状況だった。ズエデラが顔色一つ変えず、皆殺し、と当然のように言ってのけるところに哲郎は寒気を覚える。勿論、本当の魔王が命じた事なので、魔王の中の哲郎は笑えない。
ズエデラが顔を輝かせて話を続ける。
「さすがは魔王様。常に先を見ておられますこと、この不肖ズエデラ、敬服と尊敬の念に堪えません。魔王様のお考えは、こうでありましょう。生きた人間は武功を挙げたものどもへ報奨として与え、魔王様の支配を盤石なものとする。勿論、この世の支配者である魔王様に逆らおうというものはおらぬでしょうが、魔王様から報奨を賜ればみな涙を流して喜びましょう」
「お、その通り。その通りだ。ズエデラはやっぱりよく分かってる。だからもう殺さないでいいよ」
「仰せのままに。ただ、王を失った城中に、いまだ立て籠もる敗残兵がいると報告がありまして、そ奴らは魔王様が到着前に皆殺しに―――」
「―――ちょ、ちょっと待った!」
「はっ!?」
「あの、皆殺し、皆殺しって、人格疑われるよ。城に残っている人間も殺してはダメだ」
「な、なんと・・・・・・」
転生した夢の中であっても、心は人間、本当の職業は警察官。正義感の強い哲郎には、夢の中でも設定に乗っかって傍若無人に振る舞うようなことはできない。
哲郎の言葉を聞き、台車上の魔王以外の3人の魔族が息を呑んだ。
「俺まずいこと言ったのか」
台車上の雰囲気が変わり、哲郎は戸惑う。ちらりと玉座の後ろを窺うと、右側の髪の短い女魔族は驚きに目を丸くしていた。よく見れば、肌の色が青いだけで、超絶に可愛い貌をしている。
対して左側の女魔族は髪が長く整った貌立ちの美人だった。哲郎の発言を受けてか、嫌悪の表情を隠しきれていない。突き刺さるような尖った気配を纏い一点を見つめていた。
台車上の微妙な雰囲気を打ち破ったのは、勘違い野郎―――、ズエデラの発言だった。
「いやはや、不肖ズエデラ、またしても一本取られました。魔王様の深き考えを―――、ズバリ言います。敗残兵は人質ですな。姫をおびき寄せるための餌」
ズエデラの言葉に、左後ろの女魔族の殺気が強まった。
「控えろアーリ!! 魔王様の御前で不敬であろう。寛大な魔王様の慈悲が無ければ、今この瞬間はないぞ!」
一喝するズエデラの声に、哲郎がビクッと体を震わせて驚く。魔王としては、部下に見られてはいけない小心者の反応だった。周りを窺い、誰も見ていなかったことに安堵する。
「申し訳ございません」
アーリと呼ばれた女魔族の謝罪は、おそらく尖った気配のことだろ。哲郎には殺気という認識はなかったが、そうゆうことだ。
「よ、よい。全然大丈夫、で、す」
「失礼いたしました。次があればこの老体が許しはしませぬ。話の腰が折れましたが、人質の件、早速に伝達いたします。これミリー」
ズエデラが言い終わると、台車が停止した。玉座の右後方のミリーと呼ばれた女魔族が、右腕を大きく空に向かって突き上げる。手をひろげ呟くように詠唱する。
「おおお―――!」
思わず感嘆の声が哲郎の口から洩れた。ミリーの広げた手のひらを中心に黒点が浮かび上がり、徐々に大きくなってゆく。
「―――いでよ、ミニオン」
詠唱が終わると、黒点はミリーの体程の真っ黒い球体となっていた。しかし、よく見るとその表面は滑らかではない。何か小さなものが寄り集まっているのだと分かる。
球体の中から小さな何かが、一つだけはぐれたように飛び出した。それは小指の先ほどの存在で、コウモリに似た生き物だった。小さいながらも、二本の手と二本の足が付いていて背面から羽が生えている。
「使い魔ミニオン。城の兵士へ伝達して。立て籠もっている人間の敗残兵を人質とします。誰も殺してはダメ」
ブンブンという使い魔の羽音が、虫嫌いの哲郎の顔を自然としかめっ面にさせる。
使い魔に語りかけるミリーと、興味深々で見守っていた哲郎の目が合う。哲郎の真意を知ってか知らずか、ミリーは小さく頷くと、高く伸ばした腕の先を握って拳を作り、球体を払うような動作をした。黒い塊が壊れ、四方八方へ使い魔ミニオンが飛び去ってゆく。
「さて、参りましょう」
枯れた声でズエデラが合図し、ゆっくりと台車が移動を開始した。
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