額縁の乙女は恋人に会いに行く

りゅうな

文字の大きさ
1 / 3

魔法使いミランダの遊び

しおりを挟む
 街から外れた奥深い森に、古ぼけた廃墟状態の屋敷が一軒あり、屋敷の門は壊れた箇所が多くても、カラスが門番として集っていた。
 
 屋敷の三階部屋にいた白髪でシワシワの老人ミランダは、自分の所有物である数百枚の絵に魔法にかけて、その絵に話かけていた。
「お前達が、美術館に飾られたら、人間のパワーを奪うのだ。そのパワーはミランダの生命となるのだ!」
 響き渡る老婆の声は、屋敷中響き渡った。
 小柄であるミランダの格好はラメ入りの赤と黒の混ざったドレスに黒いマントを羽織っていた。

「ミランダの声はいつも大きいのう……レンもそう思わないか?」
 ミランダの自室である扉近くには、床に置かれている2枚の人物絵は、細々と小声で話をしていた。

「チップ、ミランダの悪口は言わない方がいいぞ。昔ミランダがフラント領国のルーディ城にいた頃、城の騎士であるビューを闇の世界に葬ったと聞いたよ。ミランダに怖いものは無い。彼女は闇の魔女なのさ」
「闇の魔女!」
 青ざめた顔で怖がるチップは、それ以上何も話せずにいた。
 そんな中『春の乙女』という絵の中から、泣き出す女の声をミランダは苛立ちながら彼女を見ていた。
「またお前か。シモーヌ……泣くな! ビューは、遠い所に絵として飾られている。泣いたって戻ってこないさ。」
「あの人は、元々私の絵の中にいる人よ。なんで別々にさせたの……ひどいわ」
 彼女は、ミランダに訴えていた。

「アイツは私の仲間さ! なのに、ビューはお前に会ってから魔法使いをやめて、王付きの騎士として働いた。お前のせいで腑抜けになったのさ。私が別の絵に入れてやったが、その絵は今何処に有るのか分からなくなってしまった。そこでだシモーヌ。お前が、ビューの絵を持ってくることが出来たなら、シモーヌの絵の中に戻してやってもいいぞ」

「私は絵の中でしか過ごせないのよ。どうやって、彼を探すの? ミランダ!」
 泣きながら訴えるシモーヌは、ミランダに言った。

「簡単さ。幽霊を知っているだろう。人に取りつく亡霊。シモーヌ、お前は他の人間に憑依すればいいのさ」
 せせら笑いをするミランダは、シモーヌにそう答えたのだ。

「私が、人に憑依!そんなこと、私ができるわけないでしょ」
 困惑しているシモーヌは、何で人間に憑依しなければいけないのか理解出来ていなかった。

「そう。八百年も私の魔法にかかった影響で絵の人物だけが、幽霊の姿で人に憑依することが出来るのさ。人に憑依すれば、ビューの絵を取り出せるだろう。お前が人に憑依できる時間を与えてあげよう。ただし、2か月間だ。それ以上見つからなければ……」
「見つからなければ何なの?」
「お前がいた絵は、私の魔法で自然燃焼するようにしておく。そうなれば、お前は闇の世界に旅立つ。ギャーハハハ面白くて、可笑しいわ」
 狂うように大笑いするミランダの顔が歪み化け物みたいな悪人の顔をしていた。
 その様子を見ていた床に置かれている2枚の絵の人物であるレンとチップは、シモーヌに同情していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

奪った代償は大きい

みりぐらむ
恋愛
サーシャは、生まれつき魔力を吸収する能力が低かった。 そんなサーシャに王宮魔法使いの婚約者ができて……? 小説家になろうに投稿していたものです

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

予言姫は最後に微笑む

あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。 二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。

完結 彼女の正体を知った時

音爽(ネソウ)
恋愛
久しぶりに会った友人同士、だが互いの恰好を見て彼女は……

処理中です...