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はっきりしろ!忠平
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一瞬戸惑った感じに見えたおようは、営業向けの笑顔で言う。
「初めてです。芸子として呼ばれることは、この上ない栄誉みたいなものです」
「そうかい。良かったな」
落ち着きのある声で山丸はおように言った。
「今日は帰ります。失礼します」
おようは着物を整えて、何事も無かったかのように颯爽と部屋から出て戸を閉めて出て行った。
部屋に残った三人は、『およう』という女が現れてから水揚げの話しを聞いてしまった吉兵衛は、兄忠平に本当なのか問いただす。
「兄貴、どういうことか説明してもらおうか。あの、おようを貰うくらい俺らには金がねえだろう」
山丸は、忠平から真実を聞きたくて威嚇する。
「水揚げする金があれば、家賃だけじゃなく他の人達から借りた分も返せるってもんよ……」
二人の迫力ある顔に忠平は怯えていた。
「二人とも怖い顔をするなよ。何も言えなくなるじゃないか。二人とも座って話そう」
ひきつった顔で忠平は二人にやんわりという。
山丸と吉兵衛は忠平に言われたまま渋々座りこんだ。
忠平は気まずい思いをしながら二人の顔を窺った。
二人の顔は怖いが、この場所から逃げたらいけない気がする。
何で羽根様の屋敷にいたおようさんの事も覚えていないんだろう? どうして、おようさんを長屋に泊めたのだろう。
忠平は本当に情けなく感じた。
兄の両肩を掴む吉兵衛は苛立ちを隠せなかった。
「兄貴。思い出せる所まで思い出せ!」
忠平は覚悟を決めて弟に言う。
「思い出せるところだけでいいかキチ?」
「かまわない」
「………」
沈黙が流れた後 忠平が言いだした。
「俺が思いだせるのは、キチと二人で羽根様の屋敷に行き、若旦那呼から酒、ご馳走を頂いた事と羽根様が呼んだ芸者もいた。おようさんだったかもしれない。おようさんは、若旦那の所で話をしていたが、俺は気分悪くなって部屋に出ようとしたんだ。その時に、芸者の人と話をした」
曖昧で、うろ覚えの記憶を頼りに忠平なりに二人に伝えようとしていた。
忠平に話しかける山丸は持っていた煙管をたばこ盆に置いた。
「忠平……その、芸者と何を話したか覚えてるか?」
「山丸さん。俺気分悪かったから、月並みな会話は話さなくて……芸者さんが俺の心配をしてくれた話程度ですよ」
話中に立ち上がった吉兵衛は、四畳半の部屋を出て台所から、みそと酒を取り山丸にお猪口を渡して酒を注ぐ。
山丸は酒を飲んでから忠平に向かって言う。
「まぁ、思い出せるのはそのくらいってことかな」
「すいません」
思い出せる所しか伝えられない忠平は謝ることしかなかった。
「過ぎた事は気にするな……とは言わない。おようさんは忠平をターゲットにしてるからな。又、此処に来るだろう」
「何でおようは兄貴を狙うんだ? 理由が分からん」
「儂も同感だ。おようさんのような女性はお前達よりも、身なりの良い人と一緒のほうがいいだろうに」
「「……」」
山丸の話に無言する二人。
山丸の話に何も言えない忠平は昨日の話を吉兵衛に言う。
「キチは、俺と屋敷を出た後、何処に行っていた?」
「俺は兄貴と一緒に羽様の屋敷を出てから、友人の長屋で一晩泊まり、朝早くに山丸さんが外にいた。俺、家には入ってない」
「忠平は何処にいた?」
山丸は忠平に聞いてみた。
「キチより先に屋敷に出て、それから……」
思い出しながら言う忠平は頭が冴えてきたせいか、次第に顔色変わった。
「どうした? 忠平」
「山丸さん。キチ。おようさんを長屋に泊めたのは俺だ」
「「!」」
二人は忠平の話に目を丸くする。
「何でおようさんを長屋にいれたんだ?」
山丸の問いに忠平は答えた。
「初めてです。芸子として呼ばれることは、この上ない栄誉みたいなものです」
「そうかい。良かったな」
落ち着きのある声で山丸はおように言った。
「今日は帰ります。失礼します」
おようは着物を整えて、何事も無かったかのように颯爽と部屋から出て戸を閉めて出て行った。
部屋に残った三人は、『およう』という女が現れてから水揚げの話しを聞いてしまった吉兵衛は、兄忠平に本当なのか問いただす。
「兄貴、どういうことか説明してもらおうか。あの、おようを貰うくらい俺らには金がねえだろう」
山丸は、忠平から真実を聞きたくて威嚇する。
「水揚げする金があれば、家賃だけじゃなく他の人達から借りた分も返せるってもんよ……」
二人の迫力ある顔に忠平は怯えていた。
「二人とも怖い顔をするなよ。何も言えなくなるじゃないか。二人とも座って話そう」
ひきつった顔で忠平は二人にやんわりという。
山丸と吉兵衛は忠平に言われたまま渋々座りこんだ。
忠平は気まずい思いをしながら二人の顔を窺った。
二人の顔は怖いが、この場所から逃げたらいけない気がする。
何で羽根様の屋敷にいたおようさんの事も覚えていないんだろう? どうして、おようさんを長屋に泊めたのだろう。
忠平は本当に情けなく感じた。
兄の両肩を掴む吉兵衛は苛立ちを隠せなかった。
「兄貴。思い出せる所まで思い出せ!」
忠平は覚悟を決めて弟に言う。
「思い出せるところだけでいいかキチ?」
「かまわない」
「………」
沈黙が流れた後 忠平が言いだした。
「俺が思いだせるのは、キチと二人で羽根様の屋敷に行き、若旦那呼から酒、ご馳走を頂いた事と羽根様が呼んだ芸者もいた。おようさんだったかもしれない。おようさんは、若旦那の所で話をしていたが、俺は気分悪くなって部屋に出ようとしたんだ。その時に、芸者の人と話をした」
曖昧で、うろ覚えの記憶を頼りに忠平なりに二人に伝えようとしていた。
忠平に話しかける山丸は持っていた煙管をたばこ盆に置いた。
「忠平……その、芸者と何を話したか覚えてるか?」
「山丸さん。俺気分悪かったから、月並みな会話は話さなくて……芸者さんが俺の心配をしてくれた話程度ですよ」
話中に立ち上がった吉兵衛は、四畳半の部屋を出て台所から、みそと酒を取り山丸にお猪口を渡して酒を注ぐ。
山丸は酒を飲んでから忠平に向かって言う。
「まぁ、思い出せるのはそのくらいってことかな」
「すいません」
思い出せる所しか伝えられない忠平は謝ることしかなかった。
「過ぎた事は気にするな……とは言わない。おようさんは忠平をターゲットにしてるからな。又、此処に来るだろう」
「何でおようは兄貴を狙うんだ? 理由が分からん」
「儂も同感だ。おようさんのような女性はお前達よりも、身なりの良い人と一緒のほうがいいだろうに」
「「……」」
山丸の話に無言する二人。
山丸の話に何も言えない忠平は昨日の話を吉兵衛に言う。
「キチは、俺と屋敷を出た後、何処に行っていた?」
「俺は兄貴と一緒に羽様の屋敷を出てから、友人の長屋で一晩泊まり、朝早くに山丸さんが外にいた。俺、家には入ってない」
「忠平は何処にいた?」
山丸は忠平に聞いてみた。
「キチより先に屋敷に出て、それから……」
思い出しながら言う忠平は頭が冴えてきたせいか、次第に顔色変わった。
「どうした? 忠平」
「山丸さん。キチ。おようさんを長屋に泊めたのは俺だ」
「「!」」
二人は忠平の話に目を丸くする。
「何でおようさんを長屋にいれたんだ?」
山丸の問いに忠平は答えた。
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