花の舞散る季節

色音花絵

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季節四 秋

疑念

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「…ねえ、七。何故? 何故なの? 私達はもう、『友達』じゃないの?」
 問い詰めるような質問が次々と心で生まれ、それを言葉にしては空に消えていく。七は今、此処にいないのだ。だから、言っても仕方のないことだった。それでも春の思考は止まることを知らない。敢えて言うなら、更に速度を上げて、考えてしまっている。
「七、ねえ……。『味方』だって、『友達』だって、そう言ってくれたじゃない…。なのに……何で?」
 七を責めるような言葉達が口から溢れ出す。もしかしたら、七は本気ではなかったのかもしれない。そう思ってみても、やはり考えは止まらなかった。
「友情って、こんなにも脆いものなの…?」
 春以外に誰もいない部屋で、春はただ独り言を言っていた。誰にも聞かれることのない言葉達は、虚空へと吸い込まれ、意味の無いものになっていく。このままこうしていても何も変わらないと、春は引き戸を開けて、そっと庭へ出た。秋になり、気温もだんだん下がってきた。それに、やはり太陽が沈んでからは一層肌寒く感じる。春はぶるっと身を震わせた。
 すると、誰かが歩いてくる足音が聞こえる。誰だろうと少し警戒しながらもそちらに近付くと、其処には蒼が居た。
「あ、お…?」
「ああ、春。丁度良かった。少し話がしたいのだが、構わないか?」
「…はい、勿論」
 来た道を少し引き返し、縁側に二人で座り込む。春は何故だか先程より気温が上がった気がしていた。
「七が、春に会いたいと言っていた」
「七が、ですか?」
「そうだ。何があったのかは知らないが、泣きながら頻りにごめんなさいと謝っていた。私に謝っても仕方がないというのにな」
 そう言って、蒼が苦笑する。事情のわからない蒼には、何について謝っているのかさえわからないだろう。七にそんなことをされて、困惑した蒼の姿が目に浮かんだ。
 自分達のことで、他人まで巻き込んでしまっている。今更ながら、春はそのことに気付いた。蘭にはずっと部屋の戸の前で見張りをさせているし、その所為で誰も春に会うことが出来ないのだ。もしかしたら、七も部屋の前まで来て会うことが出来なかったことが原因で、蒼を頼ったのかもしれなかった。そう思うと、皆に迷惑を掛けてしまったのだと春は漸く理解した。
「出来るなら、今会ってやってほしい」
「……」
「今、七は私の部屋にいる。…共に来てくれないか?」
「…わかりました…」
 その時、秋の少し冷たい風が吹いた。蒼の部屋へと向かう二人を追い掛けるように、一つの桃色の花びらが風に乗って舞い上がる。結局、それは二人に気付かれることも追いつけることも出来ないまま、地面に落ちた。

 それは桃色の秋明菊の花びらが舞散る、太陽の見えない肌寒い秋の日のことだった。
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