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第10話・波乱

封印の騎士の選定

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 封印の儀式まで残り1か月。私たちはいよいよ正式な導き手と封印の騎士を決めることになった。

 導き手には全く揉めることなく私が選ばれた。もともとエバーシュタインさんも星月さんも送還されて、残るライバル(?)は由羽ちゃんだけだった。しかし彼女は終始一貫して私の味方だった。

 育成や戦闘指揮ともに、私のほうが優れていると由羽ちゃんから譲ってくれた。アルゼリオはともかく由羽ちゃんにすっかり懐いている風丸は、不満なんじゃないかと危惧したが

「力量的にアンタのほうが主として優れているのは事実だろ。だいたい怖がりで鈍臭いマスターちゃんを、わざわざ修羅場に連れて行きたくねぇから妥当な人選だよ」

 と、あっさり納得してくれた。余談だけど「怖がりで鈍臭いマスターちゃんを、わざわざ修羅場に連れて行きたくない」のくだりに、ゲームの風丸には無かった愛情を感じた。

 しかも風丸はゲームだと「導き手じゃなくなったアンタに用は無い」とヒロインを冷たく切り捨てたのに

「アンタの指示には従うけど、俺の主人はマスターちゃんだから」

 由羽ちゃんを捨てて私の忍になるわけじゃないと、自分の立場を明言した。

 由羽ちゃんはユエ律の成立を喜んでくれたけど、私もこれは風由フラグが立ったんじゃないかとワクワクが止まらない。29回も探し求めた幻のトゥルーエンドを、由羽ちゃん自身が生身の風丸と迎えられたら、とても運命的だ。

 平和な世界から来た由羽ちゃんが、忍者の風丸とともにこの世界に残ることが幸せかは分からない。だけど、せっかく繋がった2人の縁が切れてしまわないで欲しいと密かに願っていた。


 話はズレたが、正式な導き手には私が選ばれた。後は3人の封印の騎士の選定だけど、私はユエルと風丸とアルゼリオを選んだ。

 ユエルはすでに95レベルで、期日までにゲームではカンストの100レベルに達する見込みだった。また倫理観と羞恥心を犠牲にして特殊部屋に挑み続けた甲斐もあって、最強装備も作成できた。

 これだけ鍛え上げれば、ステータス的にはユエルだけで魔王を倒せる。ただそれはゲーム内の話で、これは現実だ。これまでの経験上、完全にゲームどおりでは無かったので、油断せず最強の布陣で挑みたかった。

 だからもともとアタッカーとして二強かつ、由羽ちゃんのおかげでレベル的にも十分に育成された風丸とアルゼリオを選んだ。

 しかし選ばれなかったカイゼルとクレイグは

「自分の好きな男と、友人のお気に入りでパーティーを組むなんて私情もいいところだ」

 と不満を漏らした。

 それは私への非難だったが、同席していたユエルのほうが気分を害して

「この人選のどこに私情が含まれていると言うんですか? あれからお2人が、真面目に鍛錬していたのは知っています。ですが、それでも一度開いた差を埋めるには至らなかった。能力的に見て、これは妥当な人選です」
「だが、お前とその女はデキているんだろう? 婚約までしている相手に、全く贔屓されていないと言い切れるのか?」

 カイゼルは選ばれなかった悔しさで、八つ当たりしているだけだ。もはや議論ですら無いのだから、好きに言わせておくしかないと頭では分かっていたが

「あれから真面目にがんばったのに選ばれなくて悔しいのは分かるけど、ユエルはそもそもパーティーには不可欠の支援魔法の使い手だ。全体回復に各種ステータスアップ、全状態異常解除までできる上に、戦士としての能力値も君たちを上回っているユエルを、あえて外す理由がどこにあるの?」

 支援魔法の使い手をあえて外すのはマイナスでしかないと、本当はカイゼルとクレイグも分かっているのだろう。彼らはユエルに関しては妥当であることを認めたが

「だが、アルゼリオと風丸は……」
「彼らだって君たちよりも15レベルは上だよ。オマケに由羽ちゃんががんばってくれたおかげで装備も揃っている」

 カイゼルとクレイグも魔王戦に出してもいいほどの強さになった。しかしそれでも風丸とアルゼリオとは、レベルと装備の両面で覆せない戦力差がある。彼らには気の毒だけど、魔王の再封印が失敗した時のリスクを考えれば、決して妥協していいことではないと

「それでも納得できないなら、今ここで彼らと戦って。封印の騎士に相応しい力があると、言葉ではなく実力で証明して」

 それができないなら黙れと、厳しい態度で言い放った。
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