こんな馬鹿でダメな男、好きなはずないから

知見夜空

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第二話・悪夢再び

下僕の白石クン

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 そんなキングオブいじめっ子と、僕はこのたび再会してしまった。聖さんとなら恋ができるかと思ったが、姫野の妹だと判明した時点で、その線も消えた。彼女自身がいくら良い子でも、悪魔の義弟にはなれない。

 それより明日から学校はどうしよう。僕は以前のような屈従の日々に戻るのだろうか? いやでも待てよ。

 当時は同じ学年の皆が、僕が姫野に骨抜きにされていることを知っていた。だから姫野が

「コイツ、俺に勃起しちゃってさ~」

 と言ったら

「白石のヤツ、そこまでか」

 とスムーズに受け入れられてしまう土壌があった。けれど今の学校には、当時の僕と姫野の関係を知る者はいない。しかも姫野がとんでもなく可愛く見えていたのは、どうやら僕だけで、世間的にはアイツは十人並みの容姿らしい。

 恋愛市場において僕と姫野は、ダイヤとビー玉。最高級ステーキと牛丼くらいの差がある。アイツがいくら吹聴したところで、男の僕が男の姫野を好きだったなんて誰も信じないだろう。

 よし、臆することは何も無いな。昨日はうっかり怯んでしまったが、明日からは何を言われても強気の態度で無視しよう。


 けれど翌日。僕は早速、姫野改め千堂せんどうに人気の無いところへ呼び出された。ちょうどいいから

「もう昔のように僕を脅せると思うな」

 バシッと拒否してやろうと、大人しくついて行った。しかし屋上で僕が見せられたのは

「これ、なーんだ?」

 ヤツに見せられたのは、ある文書のコピーだった。それは僕が昔ヤツに書いたラブレターで、当時の僕の姫野への想いが詳細かつ熱烈に綴られた黒歴史の象徴だった。

 僕はグシャグシャとその紙を握りつぶすと

「こんな危ないものを学校に持って来るな! と言うか、お前はまだこんなものを持っていたのか!?」
「人生初のラブレターだもん。取っといて当然じゃん?」

 千堂はチンピラめいた笑みを浮かべながら、僕の肩に腕を回すと

「せっかく名門校に通っていたのに、わざわざこんな庶民校まで落ちて来てくれるなんて嬉しいな~。またたくさん仲よくできるね? 白石クン」
「うぐぅぅ、男のくせに昔みたいなネコナデ声でくっつくな。吐き気がする……」
「俺が可愛く見える病はすっかり治ったようで良かったな。でも悪趣味が治ったからって、うちの妹には手を出すなよ? もし聖に言い寄ったら、この渾身のラブレターを教室の黒板に晒してやるからな」

 低い声で脅された僕は

「やめろ、絶対にやめろ! そんなことしたらお前を殺して僕も死ぬからな!?」

 僕の焦りようにアイツはご満悦に笑って

「まー、そんなに思い詰めるなよ。昔だってけっきょく、誰にも言わないでやっただろ? お前が大人しく従えばいいだけ」

 ナチュラルに卑劣なことを言うと、ポンポンと僕の肩を叩いて

「これからよろしくな? 下僕の白石クン」

 あ、悪夢だぁぁと僕は絶望した。


 それから僕は以前のように

「俺の分の課題もよろしく~」

 と頼まれたり、雑用を押し付けられたり

「それ美味そ~。一口ちょーだい」

 と弁当のオカズを横取りされたり散々な目にあった。

 それは当然、クラスメイトたちの目にもイジメと映ったようで

「ちょっと千堂! 白石君に絡むの、やめなさいよ! 困っているじゃない!」

 女子たちのつるし上げにも、千堂はケロッとした顔で

「えっ? 困ってなんかないよな、白石? 俺たちは幼馴染で昔からの大親友だもんな~?」

 僕の肩にのしかかりながら言った。どうでもいいけど、コイツはいちいち距離が近い。

「千堂はこう言っているけど、本当なの?」

 心配そうに問うてくる女子たち。大親友のはずはないが、否定して「じゃあ、どういう関係なの?」と追及されても困るので

「あ、ああ。コイツとは昔から、こんな感じだから大丈夫だ。全然困ってない……」
「そ、そう? それならいいんだけど……」

 彼女たちは、その場はいちおう納得してくれた。しかし僕の顔にはありありと苦渋が滲んでいたようで

「優等生と遊び人で仲がいいなんて不思議ね~」
「本当は千堂のヤツに、何か弱みでも握られているんじゃないかしら?」

 と軽く噂になっていたらしい。
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