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第四話・海水浴に行こう
助けては助けられて
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しばらくは千堂の弟たちと、バシャバシャと水をかけ合って遊んでいた。しかし千堂は聖さんたちの様子も気にかけていたようで
「ヤバい。聖たちが男に絡まれている」
千堂の視線の先を見ると、確かに聖さんと友人たちが、ガラの悪い男たち3人に絡まれていた。
千堂はなぜかバシッと僕の背中を叩くと、ビシッとビーチを指差して
「よし行け、白石!」
「なんで僕が!?」
「俺が行っても舐められるだけだろ? そのタッパと顔面力でアイツらを圧倒してやれ!」
釈然としないが、コイツを行かせるのは確かに危ない。かと言って女の子たちを放っておけるはずがないので
「すみませんが、彼女たちは僕たちと海に来ているので、誘わないでくれませんか?」
声をかけると男たちは、あからさまに気分を害して
「なんだよ。いきなりしゃしゃり出て来やがって。この子たちの誰か、お前の彼女だって言うのか?」
「いや、僕の恋人ではありませんが」
「お前のものじゃないなら口を出す権利は無いだろ。お前は向こうでお友だちと遊んでいろよ。この子たちは俺たちが楽しませてやるからさ」
男は馴れ馴れしく聖さんの腰に手を回した。好きでもない相手に触れられることに、僕自身が強い嫌悪感を持っているので
「頭が悪いのか性格が悪いのか、どっちだ? この子たちは明らかに嫌がっているんだから、お前たちと行って楽しめるはずがないだろう」
もはや敬語も外れて遠慮なく敵意をぶつけると
「あ、頭が悪いだって? ちょっと顔がいいからって粋がってんじゃねぇぞ!」
それが引き金になったように、男が殴りかかって来た。砂浜の上、ビーチサンダルであることを加味しても鈍い動作。サッと避けたついでに足をかけると
「ぶわっ!?」
男は見事に砂浜に顔面から突っ込んだ。僕は残る2人の動きを警戒しつつ
「粋がっているのはそっちだろう。これ以上は他の人たちにも迷惑だ。恥の上塗りをしたくなければ去れ」
強く警告すると男たちは
「く、クソ……」
「い、行こうぜ……」
不服そうにしながらも立ち去ってくれた。大事にならずに済んで良かったと、胸を撫でおろした瞬間。周囲から黄色い歓声が上がる。
「すごい! カッコいい! 白石さん!」
「相手は3人だったのに勇気があるんですね!」
「いや、別に大したことじゃ」
聖さんと友人2人は、ナンパから助けられたのだから喜んで当然かもしれない。しかし、その様子を遠目に見ていた無関係の女性たちまでが
「あの、どこから来たんですか?」
「お名前はなんて?」
「もし良かったら一緒に遊びませんか?」
とゾロゾロ集まって来た。しかも海なので当たり前だが、全員が水着姿だ。女体に囲まれた僕は、以前ラブホテルに連れ込まれかけたトラウマが蘇り、思わず硬直した。その隙をつくように、女性が僕の腕を取ろうとする。
けれど、その手が触れる前に
「悪いね。コイツは俺の犬なんだ」
千堂はニコッと僕の腕を取ると、女性の輪から連れ出した。タイミング的には申し分なかったが
「犬ってなんだ!? もっと他の言い回しは無かったのか!?」
女性から離れて元気に吠え出す僕に、千堂はいつもどおりケロッと笑って
「普通に友だちって言ったんじゃ、「じゃあ、あなたも」って誘われるだけだろ。だからあえてヤバいヤツを装ってかく乱したの。実際、誰も付いて来なかっただろ?」
確かに同級生を犬扱いする男と、犬扱いされている男と知り合いたい女性は居ないだろう。不本意ながら納得すると、千堂は続けて
「それよりお前はすっかり女嫌いになっちまったみたいだけど、大丈夫か?」
「全然大丈夫じゃない……。あの手の女性は話しかけられるだけでグラグラする……」
「じゃあ、俺の服の裾でも握っとけ」
「どうして?」
「人見知りアピール。単独じゃ動けないんだと思えば、声をかけて来る女も減るだろ」
海に来る前は、僕で女性を釣るとか言っていたのに。千堂の配慮が僕には意外で
「せっかくの海なのに、僕で女性を集めなくていいのか?」
「今日はいかがわしいことは無しの約束だろ。それにいくらなんでも男にけしかけた直後に、女を釣るエサにはしねーよ」
千堂は僕の背中をポンと叩くと
「それと聖たちを助けてくれて、ありがとな。カッコ良かったぜ、ヒーロー」
ヒーローなんて喜ばせであって本気じゃない。それが分かっていても、コイツに笑いかけられると嬉しくて、それこそ犬みたいに尻尾を振りたくなってしまう。その気持ちをどう扱うべきか分からず、僕は黙って千堂に言われたとおり、しばらくヤツの服の裾を握っていた。
「ヤバい。聖たちが男に絡まれている」
千堂の視線の先を見ると、確かに聖さんと友人たちが、ガラの悪い男たち3人に絡まれていた。
千堂はなぜかバシッと僕の背中を叩くと、ビシッとビーチを指差して
「よし行け、白石!」
「なんで僕が!?」
「俺が行っても舐められるだけだろ? そのタッパと顔面力でアイツらを圧倒してやれ!」
釈然としないが、コイツを行かせるのは確かに危ない。かと言って女の子たちを放っておけるはずがないので
「すみませんが、彼女たちは僕たちと海に来ているので、誘わないでくれませんか?」
声をかけると男たちは、あからさまに気分を害して
「なんだよ。いきなりしゃしゃり出て来やがって。この子たちの誰か、お前の彼女だって言うのか?」
「いや、僕の恋人ではありませんが」
「お前のものじゃないなら口を出す権利は無いだろ。お前は向こうでお友だちと遊んでいろよ。この子たちは俺たちが楽しませてやるからさ」
男は馴れ馴れしく聖さんの腰に手を回した。好きでもない相手に触れられることに、僕自身が強い嫌悪感を持っているので
「頭が悪いのか性格が悪いのか、どっちだ? この子たちは明らかに嫌がっているんだから、お前たちと行って楽しめるはずがないだろう」
もはや敬語も外れて遠慮なく敵意をぶつけると
「あ、頭が悪いだって? ちょっと顔がいいからって粋がってんじゃねぇぞ!」
それが引き金になったように、男が殴りかかって来た。砂浜の上、ビーチサンダルであることを加味しても鈍い動作。サッと避けたついでに足をかけると
「ぶわっ!?」
男は見事に砂浜に顔面から突っ込んだ。僕は残る2人の動きを警戒しつつ
「粋がっているのはそっちだろう。これ以上は他の人たちにも迷惑だ。恥の上塗りをしたくなければ去れ」
強く警告すると男たちは
「く、クソ……」
「い、行こうぜ……」
不服そうにしながらも立ち去ってくれた。大事にならずに済んで良かったと、胸を撫でおろした瞬間。周囲から黄色い歓声が上がる。
「すごい! カッコいい! 白石さん!」
「相手は3人だったのに勇気があるんですね!」
「いや、別に大したことじゃ」
聖さんと友人2人は、ナンパから助けられたのだから喜んで当然かもしれない。しかし、その様子を遠目に見ていた無関係の女性たちまでが
「あの、どこから来たんですか?」
「お名前はなんて?」
「もし良かったら一緒に遊びませんか?」
とゾロゾロ集まって来た。しかも海なので当たり前だが、全員が水着姿だ。女体に囲まれた僕は、以前ラブホテルに連れ込まれかけたトラウマが蘇り、思わず硬直した。その隙をつくように、女性が僕の腕を取ろうとする。
けれど、その手が触れる前に
「悪いね。コイツは俺の犬なんだ」
千堂はニコッと僕の腕を取ると、女性の輪から連れ出した。タイミング的には申し分なかったが
「犬ってなんだ!? もっと他の言い回しは無かったのか!?」
女性から離れて元気に吠え出す僕に、千堂はいつもどおりケロッと笑って
「普通に友だちって言ったんじゃ、「じゃあ、あなたも」って誘われるだけだろ。だからあえてヤバいヤツを装ってかく乱したの。実際、誰も付いて来なかっただろ?」
確かに同級生を犬扱いする男と、犬扱いされている男と知り合いたい女性は居ないだろう。不本意ながら納得すると、千堂は続けて
「それよりお前はすっかり女嫌いになっちまったみたいだけど、大丈夫か?」
「全然大丈夫じゃない……。あの手の女性は話しかけられるだけでグラグラする……」
「じゃあ、俺の服の裾でも握っとけ」
「どうして?」
「人見知りアピール。単独じゃ動けないんだと思えば、声をかけて来る女も減るだろ」
海に来る前は、僕で女性を釣るとか言っていたのに。千堂の配慮が僕には意外で
「せっかくの海なのに、僕で女性を集めなくていいのか?」
「今日はいかがわしいことは無しの約束だろ。それにいくらなんでも男にけしかけた直後に、女を釣るエサにはしねーよ」
千堂は僕の背中をポンと叩くと
「それと聖たちを助けてくれて、ありがとな。カッコ良かったぜ、ヒーロー」
ヒーローなんて喜ばせであって本気じゃない。それが分かっていても、コイツに笑いかけられると嬉しくて、それこそ犬みたいに尻尾を振りたくなってしまう。その気持ちをどう扱うべきか分からず、僕は黙って千堂に言われたとおり、しばらくヤツの服の裾を握っていた。
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