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最終話・夏休みの宿題と
陥落一歩手前
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先日の旅行をきっかけに、僕は千堂が可愛いと認めた。と言っても僕の主観ではなく、客観的な事実としてだ。美醜という点では特別優れているわけじゃない。しかし中性的な体格や小悪魔的な仕草や雰囲気が合わさって、千堂はとても可愛らしい。いちばん酷い目に遭っている僕すら、ついドキッとしてしまうのだからよほどだ。
猫が可愛い人は猫を。アイドルが可愛い人はアイドルを見たがるように、千堂が可愛いと認めた僕は、アイツの姿が見たくてしょうがない。ただアイツは猫でも芸能人でもないので、スマホで検索しても写真は出て来ない。こんなことなら海でたくさん写真を撮れば良かった。
後悔したものの、いざ千堂を前にしたら「写真を撮らせてくれ」なんて言えないだろう。……写真が欲しいなんて好きだと言っているのと同義だ。でも僕はアイツが可愛いと思っているだけで、好きなわけじゃないから誤解されたくない。……また小学生の頃のように、ホモだのなんだの馬鹿にされるのは嫌だ。
仮に盗み撮りするとしても、千堂に会わなければできない。さっさと夏休みが終わって学校がはじまらないかと、じりじりしながら毎日を過ごしていた。
そんな夏休み最後の週。久しぶりに千堂から連絡が来て、夏休みの宿題が終わらないから手伝ってくれと頼まれた。以前なら嫌がっていたが、今はちょうどアイツの姿が見たくて限界だった。だから口では嫌がっているフリをしつつ、連絡を終えた後は
(やった! 千堂に会える! 嬉しい!)
スマホを握りしめて、しばらくベッドで(やったぁぁ!)とジタバタした。まるで恋する乙女のような反応だが、僕が好きなのはあくまでアイツの姿や声や雰囲気であって、中身じゃないからセーフだ。
翌日。僕はじいやに車を出してもらうと、千堂のアパートまで迎えに行った。どう考えても千堂の部屋より僕の家のほうが環境もいいし、いろいろと揃っているので宿題は僕の部屋でやることになった。
「よっ、悪いな。わざわざ迎えに来てもらって」
「別に……お前に迷惑をかけられるのはいつものことだし」
「ガードが甘くなって来たな? ドンドン頼っちゃうけど、いいの?」
ニヤニヤしながら肘でわき腹を突いて来る千堂に、僕はじゃっかん狼狽えつつ
「よ、よくない。今回は仕方ないが、次からはちゃんと自分でやれ」
「うんうん。努力目標ってヤツな。形だけ掲げておくよ」
相変わらずクズなのに、コイツが構ってくれるだけで嬉しくなってしまうの、どうしたらいいんだ。油断すると舞い上がりそうになる心をグッと押さえつけながら、僕は千堂と自宅に戻った。
クーラーの効いた広々とした部屋で分担して宿題を片付ける。しかしほぼ手つかずの状態だったので、1日では終わらず
「流石に1日じゃ片付かないな。仕方ない。課題が終わるまでお前の家に泊まるか。そのほうがお前もやる気が出るだろうし」
「はぁぁっ!? なんでお前が泊まるからって、僕が喜ぶと思うんだ!?」
正直すごく嬉しかったが、まだ千堂が可愛いと 公に認めたわけじゃないので咄嗟に否定した。しかし千堂は自分の頬をぽりぽり掻きながら
「喜ぶって言うか、俺に居座られたら、早く帰らせるためにペースが上がるだろうって意味なんだけど」
「っ」
僕の動揺を察した千堂は、例によってニヤッとして
「なーに、白石クン? 嫌がるフリして本当は嬉しかったの? 友だちが家に遊びに来てくれて」
笑顔で僕の肩に腕を回すと、犬にするように顎の下を掻いて来た。馬鹿にされているのは百も承知なのに、今の僕はこんな戯れさえ嬉しくて、内心尻尾を振りそうになるが
「ち、違うっ。夏休みの宿題まで手伝わされて嬉しいはずがないっ」
心のワンコを追い払うように千堂を押し返すと、アイツは素直に体を離して
「まー、どっちにしても、もう決まったことだから。夏休みの宿題が終わるまで一蓮托生な」
それなら夏休みの宿題を終わらせなければ、コイツはずっとうちに居てくれるんだろうか? 一問ずつ回答をずらして時間稼ぎしようかなと、卑怯な考えが頭をよぎる。それは流石にズルいからダメだし、ずっとコイツが部屋に居る状態は僕の身体にも毒だ。邪念を振り払ってマトモに手伝うと決意した。
猫が可愛い人は猫を。アイドルが可愛い人はアイドルを見たがるように、千堂が可愛いと認めた僕は、アイツの姿が見たくてしょうがない。ただアイツは猫でも芸能人でもないので、スマホで検索しても写真は出て来ない。こんなことなら海でたくさん写真を撮れば良かった。
後悔したものの、いざ千堂を前にしたら「写真を撮らせてくれ」なんて言えないだろう。……写真が欲しいなんて好きだと言っているのと同義だ。でも僕はアイツが可愛いと思っているだけで、好きなわけじゃないから誤解されたくない。……また小学生の頃のように、ホモだのなんだの馬鹿にされるのは嫌だ。
仮に盗み撮りするとしても、千堂に会わなければできない。さっさと夏休みが終わって学校がはじまらないかと、じりじりしながら毎日を過ごしていた。
そんな夏休み最後の週。久しぶりに千堂から連絡が来て、夏休みの宿題が終わらないから手伝ってくれと頼まれた。以前なら嫌がっていたが、今はちょうどアイツの姿が見たくて限界だった。だから口では嫌がっているフリをしつつ、連絡を終えた後は
(やった! 千堂に会える! 嬉しい!)
スマホを握りしめて、しばらくベッドで(やったぁぁ!)とジタバタした。まるで恋する乙女のような反応だが、僕が好きなのはあくまでアイツの姿や声や雰囲気であって、中身じゃないからセーフだ。
翌日。僕はじいやに車を出してもらうと、千堂のアパートまで迎えに行った。どう考えても千堂の部屋より僕の家のほうが環境もいいし、いろいろと揃っているので宿題は僕の部屋でやることになった。
「よっ、悪いな。わざわざ迎えに来てもらって」
「別に……お前に迷惑をかけられるのはいつものことだし」
「ガードが甘くなって来たな? ドンドン頼っちゃうけど、いいの?」
ニヤニヤしながら肘でわき腹を突いて来る千堂に、僕はじゃっかん狼狽えつつ
「よ、よくない。今回は仕方ないが、次からはちゃんと自分でやれ」
「うんうん。努力目標ってヤツな。形だけ掲げておくよ」
相変わらずクズなのに、コイツが構ってくれるだけで嬉しくなってしまうの、どうしたらいいんだ。油断すると舞い上がりそうになる心をグッと押さえつけながら、僕は千堂と自宅に戻った。
クーラーの効いた広々とした部屋で分担して宿題を片付ける。しかしほぼ手つかずの状態だったので、1日では終わらず
「流石に1日じゃ片付かないな。仕方ない。課題が終わるまでお前の家に泊まるか。そのほうがお前もやる気が出るだろうし」
「はぁぁっ!? なんでお前が泊まるからって、僕が喜ぶと思うんだ!?」
正直すごく嬉しかったが、まだ千堂が可愛いと 公に認めたわけじゃないので咄嗟に否定した。しかし千堂は自分の頬をぽりぽり掻きながら
「喜ぶって言うか、俺に居座られたら、早く帰らせるためにペースが上がるだろうって意味なんだけど」
「っ」
僕の動揺を察した千堂は、例によってニヤッとして
「なーに、白石クン? 嫌がるフリして本当は嬉しかったの? 友だちが家に遊びに来てくれて」
笑顔で僕の肩に腕を回すと、犬にするように顎の下を掻いて来た。馬鹿にされているのは百も承知なのに、今の僕はこんな戯れさえ嬉しくて、内心尻尾を振りそうになるが
「ち、違うっ。夏休みの宿題まで手伝わされて嬉しいはずがないっ」
心のワンコを追い払うように千堂を押し返すと、アイツは素直に体を離して
「まー、どっちにしても、もう決まったことだから。夏休みの宿題が終わるまで一蓮托生な」
それなら夏休みの宿題を終わらせなければ、コイツはずっとうちに居てくれるんだろうか? 一問ずつ回答をずらして時間稼ぎしようかなと、卑怯な考えが頭をよぎる。それは流石にズルいからダメだし、ずっとコイツが部屋に居る状態は僕の身体にも毒だ。邪念を振り払ってマトモに手伝うと決意した。
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