こんな馬鹿でダメな男、好きなはずないから

知見夜空

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最終話・夏休みの宿題と

バスローブ姿でくつろがないで

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 夜の6時半に母を交えて夕食を取った。最初は僕の部屋で済ませるはずだったが、母が千堂に会いたがったのでダイニングで夕食を取ることになった。

「誠太郎ちゃんがお友だちを連れて来るなんてはじめてだから、来てくれて嬉しいわ。たくさん召し上がってね」

 千堂の前で友だちが来るのははじめてとか言わないで欲しい。また「ぼっちか」と馬鹿にされるかと思ったが、流石の千堂も親の前では軽口を控えて

「お母さん、めちゃくちゃ綺麗ですね。女優さんかと思った」
「まぁ、千堂さんったらお上手ね」
「いや、本気で。母親がこれだけ美人だと、お前の女を見る目も厳しくなるわけだな」
「僕は別に外見で人を選んでいるわけじゃないぞ……」

 千堂が色恋の話をしたせいで、母の興味もそちらに向かい

「誠太郎ちゃんは学校でどうかしら? 仲のいい女の子は居るの?」
「仲のいい子は居ないけど、女子には人気だし男子にも一目を置かれていますよ。白石はなんでもできるし、いいヤツだから」
「い、いいヤツ?」

 予期せぬ評価にギョッとして聞き返す。仮に褒められるとしても金とか顔とか、表面的なことだと思ったのに

「いいヤツじゃん、お前。前に皆で海に行った時も、知らない子どもたちにまで優しくしてくれたし。学校でも皆が面倒がってやらないこと、お前は真面目に取り組むもんな」

 そんな地味なところ……だけど自分では大事にしているところを褒められるとは思わなかった。本当に嬉しいと胸がギュッとなってしまって、うまく言葉が出ない僕の代わりに

「良かったわね、誠太郎ちゃん。こんなに良いお友だちができて。急に転校したいと言うからビックリしたけど、今の学校のほうが楽しそうだし正解だったわね」

 母が感涙しながら言った。母は完全に『いいお友だち』である千堂を気に入ったようで「あれも出してあげて、これも出してあげて」と様々な料理で彼をもてなした。


 食事を終えて僕の部屋に戻る途中。千堂は廊下で

「はじめて会ったけど、メッチャいい人だな、お前の母さん。俺は見るからに育ちが良くないし、「誠太郎さん、お友だちは選びなさいね」とか言われるかと思った」
「母は確かに大らかな人だが、お前の対応も良かったんだろう。お前は口が上手いから」

 普段とは違い親の前だからと、ずいぶん言葉を選んでいた。そうでもなければ、コイツが素直に僕を褒めるはずがない。

 けれど千堂は真っすぐに僕の目を見ながら

「俺は確かに口が上手いけど、お世辞は言わんぞ。お前の母さんが美人なのも、お前がいいヤツなのも全部本当」

 コイツにとっては他意の無い言葉と笑顔。でも僕には妙に響いてしまって、思わずグッと唸る。そんな僕の反応に、千堂は途端に意地悪な顏になって

「なーに? もしかして照れてんの? 誠太郎ちゃん」
「お前までちゃん付けで呼ぶな。あと別に照れてない」
「そんな真っ赤な顔で否定されても説得力が無い。イケメンのくせに褒められ耐性ないのか? 可愛いねぇ」
「ぐぅぅ……」

 廊下を歩きながら頬を突かれた。からかわれるとムカつく反面、構われると嬉しくて、手玉に取られている感じが余計に悔しい。


 それから2人で僕の部屋に戻り腹ごなしに、また少し宿題を消化した後。千堂は先に風呂に行った。しばらくして風呂から戻った千堂は

「な、なんだ!? その格好は!?」
「なんだって、バスローブってヤツじゃないの?」
「いや、そうだけど、なんか丈が短くないか?」

 うちで使っているバスローブは、ふくらはぎの半ばまで届くロング丈だ。しかし今、千堂が着ているバスローブは太ももを半分隠すだけの長さしかない。しかも色が白やブラウンではなくピンクで……コイツ、本当にピンクが似合うな。しかも風呂上りなので髪を下ろしている。女性が女性らしい恰好をしているより、男が女性のような恰好をしているほうが、淫靡に感じてしまうのはなぜだろう。話の途中なのに、千堂が可愛すぎて集中できない。

 千堂のほうはあっけらかんと話を続けて

「お前の母さんが夏用に買ったらしいぞ。ただ可愛いからって買ったものの、後で若作りじゃないかって気になって着られなかったんだって。タンスの肥やしになっていたのを、良かったらって出してくれたんだ。夏場に長いのは鬱陶しいから、短くてちょうどいいや」

 千堂にも褒められていたが、母は美人で実年齢より若く見える。それでもやはり身内なので、母親の露出はあまり見たくない。そんな母親に着せるには躊躇われる、ショート丈のピンクのバスローブがこんなに似合う千堂はやはり恐ろしい男だ。

 千堂は無邪気に笑って

「後はパンツがあれば完璧。つーわけで、お前のパンツ貸して?」
「……は? パンツを貸してって、じゃあ、今何も穿いてないのか?」
「そーだよ。泊まる予定じゃなかったし」

 この下に何も穿いてない……? 思わず千堂の股間を凝視する。思考が宇宙までいってしまい、なかなか戻って来られない僕に

「白石?」
「……はぇっ? あっ、なんだ?」
「だからパンツ貸してって」
「あっ、ああ、うん……」

 僕はフラフラとクローゼットに向かいかけたが、ハッと気づいて

「って何、当然のようにパンツを借りようとしているんだ!? いくら友だちだからってパンツの貸し借りはしないだろう!」
「貸すのが嫌ならくれてもいいぞ。お前の家、金持ちだし、パンツも上等そう」
「隙あらば僕から搾取しようとして……僕から借りなくても穿いて来たパンツがあるだろう! 乾くまで待て!」
「ちぇっ。まー、ここにはお前しかいないし、ノーパンでもいいけどさ」

 売り言葉に買い言葉で、つい千堂にパンツを穿かせ損ねた。千堂のほうは「まっ、いっか」となっているが、僕のほうが全然良くない。

 別にコイツが好きなわけじゃないけど! 可愛いなと思っている相手が、ノーパンで自室に居たら流石に気になる!

 でも自分のパンツをコイツに穿かせるのも、なんか恥ずかしくて無理だった。僕はどうしたらいいんだと内心で頭を抱えた。千堂は僕の懊悩にも気づかず、まるで自室のようにくつろいでいる。具体的には僕のベッドに腹ばいになって

「へへ~っ、極楽極楽」

 ご機嫌そうに足をパタパタさせた。素で可愛いムーブをするのはやめて欲しい。それもそんな短いバスローブで、足をバタつかせるなんて。中が見えたらどうするんだ?

 正直、千堂は見られたところでどうもしないのだろうが、僕はどうにかなる。むしろとっくにどうにかなっていて、中を見ようと無意識に目を凝らしてしまう。

 しかし腹ばいになっていた千堂がクルッと振り返って

「お前は風呂に入らんのか?」
「ああっ!? そうだな!? 入って来るぅ!」
「声デカくね?」

 あまりに挙動不審な僕に、千堂も流石に驚いて

「夜なんだから、あんまり騒ぐなよ」

 呆れ顔で注意されたが、この部屋は防音なので外に音は漏れない。最近は弾かないが、昔バイオリンをやっていたので、自室は防音になっていた。音楽の練習のための設備だが、母やじいやにまで奇声を聞かれなくて良かった。
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