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嫉妬の指輪
卑劣な罠【???視点】
【全知の大鏡視点】
リュシオンに割られた後、私は神の宝物庫に戻った。
けれど人を誑かす悪魔の鏡としてエーデルワールに封印されていた時と違い、神の宝物庫には定期的に無知な人間が訪れる。私は何も知らない人間を利用して、まんまとこの世界に舞い戻った。
それから私は全知の力を駆使して、いくつかの道具と嫉妬の指輪を手に入れた。嫉妬の指輪は、触れた相手の体を奪う。
私は悪魔の指環の力を伏せた上で、ここまで手足として使って来た男に
「その指輪を嵌めた手で私に触れてご覧なさい。面白いことが起きますよ」
と自分に触らせた。その瞬間、私と人間の魂が入れ替わった。
神の如き美貌を手に入した凡庸な男は鏡の中から
「お前は俺を騙していたのか!? こうして体を入れ替えることが目的だったのか!?」
「ただ自由に動ける以外、なんのメリットも無いあなたの体と全知の力を交換してあげたのです。感謝されることはあっても、恨まれる筋合いはありません」
「馬鹿言え! 全てを知る力があったって、手も足も出ないんじゃ無意味だろうが!」
「ええ。加えてあなたは今から持ち運びやすいように小型化されて、声も出せないように閉じ込められる。本当にお気の毒です」
嫉妬の指輪の厄介な点として、体は奪えても魂は自分の本体と繋がっている。
うっかり本体が誰かに割られたら、この人間の体に入っていても、私の魂ごと神の宝物庫に戻される。
私はここに至るまでに『リサイズの手袋』という神の宝を回収させていた。リサイズの手袋はその名のとおり、人や物のサイズを自由に変えられる。
その手袋を嵌めた手で「縮め縮め」とものを圧縮すると、本当に小さくなる。
「あまり小さくすると失くすかもしれませんから、このくらいの大きさでいいでしょう」
私は手の平サイズにした全知の大鏡を、音を遮断する遮音布で包み、うっかり割らないように頑丈な小箱に入れた。
私は無力化した本体とともに船で央華国に移動。央華国行きの船は人魚によって進行を阻まれていた。しかしミコトが人魚を懐柔した後なら、じゃっかんの貢物を海に落とすことで通過できた。
後はレイファンを掘りに行ったリュシオンとミコトが離れている間。宿屋で待機中の彼女が1人になるタイミングを見計らい、嫉妬の指輪で触れた。
フィロソフィスの加護を失ったミコトは、突然の攻撃に対応できなかった。ただ体が入れ替われば、私が女のミコトに、向こうが大人の男になる。
大鏡でいる間に予知した情報によれば、ミコトは怠惰の指輪をリュシオンに貸している。強欲の指輪を使えば、金持ちの知り合いが多いミコトは、持ち切れないほど大量の金になり、後始末に苦労する。
だから私は事前に、全身を麻痺させる毒針を自分に刺した。タイミングはバッチリだったようで、私と体を交換したミコトは、こちらを振り返ると同時に膝から崩れ落ちた。
声を上げようにも舌すら麻痺して「あ」「う」と無意味な音を漏らすだけ。これでは、いくら耳のいい獣人の子が一緒でも異常に気づけまい。
私は廊下に倒れた彼女の横にしゃがむと
「安心してください。今あなたの体の自由を奪っているのは、全身を麻痺させる毒で死に至るものではありません」
この女は以前、全知の力を持つ私を大したことがないと侮辱した。本来なら殺したいところだが、男の体が死ねば、全知の大鏡に宿る男の魂も一緒に消える。すると空っぽになった大鏡は私の魂を引き寄せる。
だから私はミコトを殺す代わりに
「縮め、縮め……」
全身が麻痺して動けない彼女を、リサイズの手袋で手の平サイズにした。
こうしてミコトの体を奪った私は、リュシオンが持っていた道具を回収してマラクティカへ飛んだ。
ミコトの匂いに気付いたのか、マラクティカの王は自ら私を出迎えると
「1人で来たのか? サーティカはどうした?」
私は神の宝物庫に戻った後。ずっとミコトとフィロソフィスの動向を監視していた。だからマラクティカの王がすっかり、この愚かな小娘に気を許したことも知っている。
入れ替わりに備えてミコトの口調や素振りも研究したので、彼女らしい無邪気な笑顔を作ると
「久しぶりに獣王さんと寝たくなっちゃって、皆には内緒で会いに来たんです」
「じゃあ、今回は本当に自分の意思で来たのか?」
完全に絆された獣王は満更でもなさそうに、ミコトのふりをした私の頬を撫でた。相手は憎たらしいほどの色男だが、私に男色の気は無いので内心ゾワッとする。
しかし顔には愛らしい笑みを貼りつけて「久しぶりだから、たくさんモフモフしてもいいですか?」と演技を続ける。
この距離ならあっという間に相手の体を奪える。けれど今は嫉妬の指輪を使えなかった。ここは屋外で他の獣人たちの目がある。異変に気付かれたら面倒だ。
またレオンガルドと魂が入れ替われば、彼がミコトの体に入る。悪魔の指輪や神の宝を所持した体にだ。
レオンガルドは無能ではない。魔法の道具がある状態では反撃されるおそれがある。
だからミコトの体に入ったレオンガルドから抵抗手段を完全に奪うために、まずは神の宝や不要な悪魔の指輪を遠ざけなければならない。
レオンガルドと共寝の約束を取り付けた私は
「獣王さんの部屋に行く前に、荷物を置いて来ていいですか?」
と客間に荷物を置きに行った。
嫉妬の指輪以外の全ての道具を客間に置くと、ふと思いついてポケットに入れておいたミコトを取り出す。
体は麻痺しているが意識はあるこの女に、自分の置かれた状況を思い知らせてやろうと
「私がどうして、あなたのフリをして獣人の王に会いに来たと思います? もちろん単なる悪戯ではありません」
獣人たちの耳には届かないほどの囁き声で
「私はこれからあなたの姿で彼の体を奪います。そうして、この地を護る王の手で神樹を切る。神樹を切れば何が起きるか、あなたも忘れてはいないでしょう?」
まだ毒に侵されているミコトがブルブルと体を震わす。このままじゃ大変なことになると、懸命に麻痺に抗おうとしているのだ。
しかし結果は醜く痙攣するだけ。その滑稽さに私は笑いながら
「あなたとフィロソフィスにはいいところで邪魔されましたが、結果としてもっと速やかに世界を滅ぼすルートができました。これもあなたが人を救いたいと願い、歩んで来た尊い旅路のおかげです」
体は麻痺しても涙は出るらしい。瞼を閉じることすらできない目からミコトは悔し涙を流した。
私はますますおかしくなって、笑いをかみ殺すのに苦労しながら
「心配しなくても後で体は返してあげますよ。取り返しのつかない結果とともにね」
その宣言と同時に、客間の入口から
「ミコト。王が早く来いと呼んでいる。待ち切れないから、今日は服そのままでいいって」
シャノンに呼ばれた私は、ミコトのふりをして返事をすると
「では、あなたは絶望しながら待っていてください。次にあなたが外に出るのは全てが終わった時です」
この麻痺状態は3時間は続く。わざわざ拘束する必要も無いだろうと、枕の下にミコトを隠して客間を去った。
ミコトのふりをしてマラクティカの王の部屋を訪れると
「これから寝るのに水浴びや着替えをしなくて良かったんですか?」
野性的なイメージに反して、レオンガルドは割と綺麗好きだ。加えて一種の所有欲か、ミコトに自分の国の装束を着せたいようだった。
そんな男が水浴びも着替えも無しでいいというのを少し怪しむも
「さっきも言っただろう? お前に触れたくて一時も待てない。遠慮しないで早く来い」
レオンガルドはベッドの上から、妖艶な笑みでミコトを誘った。艶めいた雰囲気に、私は顔に笑みを貼りつけたまま「この色ボケ野郎が」と内心で彼を罵った。
けれど対外的には気高い王であるレオンガルドが、女に溺れて神樹を切られるのは、死よりも耐え難い屈辱だろう。この男が調子に乗っているほうが、種明かしする時に面白い。
私はそんな気持ちから、レオンガルドの誘いに乗るついでに
「寝る前にお休みのキスをしたいから、目を閉じてくれませんか?」
と可愛らしくねだって見せた。
本当のミコトが自分から男を誘うことはしないと知っている。だがレオンガルドの執心ぶりを見れば、喜んで乗って来るだろう。
「今日のお前は、やけに積極的だ」
予想どおり彼は嬉しそうに笑いながら「これでいいか?」と目を閉じた。
「恥ずかしいから、そのまま目を閉じていてくださいね」
私は愚かな王の前で堂々と嫉妬の指輪を着けると、ベッドに上がって無防備な彼に手を伸ばした。
リュシオンに割られた後、私は神の宝物庫に戻った。
けれど人を誑かす悪魔の鏡としてエーデルワールに封印されていた時と違い、神の宝物庫には定期的に無知な人間が訪れる。私は何も知らない人間を利用して、まんまとこの世界に舞い戻った。
それから私は全知の力を駆使して、いくつかの道具と嫉妬の指輪を手に入れた。嫉妬の指輪は、触れた相手の体を奪う。
私は悪魔の指環の力を伏せた上で、ここまで手足として使って来た男に
「その指輪を嵌めた手で私に触れてご覧なさい。面白いことが起きますよ」
と自分に触らせた。その瞬間、私と人間の魂が入れ替わった。
神の如き美貌を手に入した凡庸な男は鏡の中から
「お前は俺を騙していたのか!? こうして体を入れ替えることが目的だったのか!?」
「ただ自由に動ける以外、なんのメリットも無いあなたの体と全知の力を交換してあげたのです。感謝されることはあっても、恨まれる筋合いはありません」
「馬鹿言え! 全てを知る力があったって、手も足も出ないんじゃ無意味だろうが!」
「ええ。加えてあなたは今から持ち運びやすいように小型化されて、声も出せないように閉じ込められる。本当にお気の毒です」
嫉妬の指輪の厄介な点として、体は奪えても魂は自分の本体と繋がっている。
うっかり本体が誰かに割られたら、この人間の体に入っていても、私の魂ごと神の宝物庫に戻される。
私はここに至るまでに『リサイズの手袋』という神の宝を回収させていた。リサイズの手袋はその名のとおり、人や物のサイズを自由に変えられる。
その手袋を嵌めた手で「縮め縮め」とものを圧縮すると、本当に小さくなる。
「あまり小さくすると失くすかもしれませんから、このくらいの大きさでいいでしょう」
私は手の平サイズにした全知の大鏡を、音を遮断する遮音布で包み、うっかり割らないように頑丈な小箱に入れた。
私は無力化した本体とともに船で央華国に移動。央華国行きの船は人魚によって進行を阻まれていた。しかしミコトが人魚を懐柔した後なら、じゃっかんの貢物を海に落とすことで通過できた。
後はレイファンを掘りに行ったリュシオンとミコトが離れている間。宿屋で待機中の彼女が1人になるタイミングを見計らい、嫉妬の指輪で触れた。
フィロソフィスの加護を失ったミコトは、突然の攻撃に対応できなかった。ただ体が入れ替われば、私が女のミコトに、向こうが大人の男になる。
大鏡でいる間に予知した情報によれば、ミコトは怠惰の指輪をリュシオンに貸している。強欲の指輪を使えば、金持ちの知り合いが多いミコトは、持ち切れないほど大量の金になり、後始末に苦労する。
だから私は事前に、全身を麻痺させる毒針を自分に刺した。タイミングはバッチリだったようで、私と体を交換したミコトは、こちらを振り返ると同時に膝から崩れ落ちた。
声を上げようにも舌すら麻痺して「あ」「う」と無意味な音を漏らすだけ。これでは、いくら耳のいい獣人の子が一緒でも異常に気づけまい。
私は廊下に倒れた彼女の横にしゃがむと
「安心してください。今あなたの体の自由を奪っているのは、全身を麻痺させる毒で死に至るものではありません」
この女は以前、全知の力を持つ私を大したことがないと侮辱した。本来なら殺したいところだが、男の体が死ねば、全知の大鏡に宿る男の魂も一緒に消える。すると空っぽになった大鏡は私の魂を引き寄せる。
だから私はミコトを殺す代わりに
「縮め、縮め……」
全身が麻痺して動けない彼女を、リサイズの手袋で手の平サイズにした。
こうしてミコトの体を奪った私は、リュシオンが持っていた道具を回収してマラクティカへ飛んだ。
ミコトの匂いに気付いたのか、マラクティカの王は自ら私を出迎えると
「1人で来たのか? サーティカはどうした?」
私は神の宝物庫に戻った後。ずっとミコトとフィロソフィスの動向を監視していた。だからマラクティカの王がすっかり、この愚かな小娘に気を許したことも知っている。
入れ替わりに備えてミコトの口調や素振りも研究したので、彼女らしい無邪気な笑顔を作ると
「久しぶりに獣王さんと寝たくなっちゃって、皆には内緒で会いに来たんです」
「じゃあ、今回は本当に自分の意思で来たのか?」
完全に絆された獣王は満更でもなさそうに、ミコトのふりをした私の頬を撫でた。相手は憎たらしいほどの色男だが、私に男色の気は無いので内心ゾワッとする。
しかし顔には愛らしい笑みを貼りつけて「久しぶりだから、たくさんモフモフしてもいいですか?」と演技を続ける。
この距離ならあっという間に相手の体を奪える。けれど今は嫉妬の指輪を使えなかった。ここは屋外で他の獣人たちの目がある。異変に気付かれたら面倒だ。
またレオンガルドと魂が入れ替われば、彼がミコトの体に入る。悪魔の指輪や神の宝を所持した体にだ。
レオンガルドは無能ではない。魔法の道具がある状態では反撃されるおそれがある。
だからミコトの体に入ったレオンガルドから抵抗手段を完全に奪うために、まずは神の宝や不要な悪魔の指輪を遠ざけなければならない。
レオンガルドと共寝の約束を取り付けた私は
「獣王さんの部屋に行く前に、荷物を置いて来ていいですか?」
と客間に荷物を置きに行った。
嫉妬の指輪以外の全ての道具を客間に置くと、ふと思いついてポケットに入れておいたミコトを取り出す。
体は麻痺しているが意識はあるこの女に、自分の置かれた状況を思い知らせてやろうと
「私がどうして、あなたのフリをして獣人の王に会いに来たと思います? もちろん単なる悪戯ではありません」
獣人たちの耳には届かないほどの囁き声で
「私はこれからあなたの姿で彼の体を奪います。そうして、この地を護る王の手で神樹を切る。神樹を切れば何が起きるか、あなたも忘れてはいないでしょう?」
まだ毒に侵されているミコトがブルブルと体を震わす。このままじゃ大変なことになると、懸命に麻痺に抗おうとしているのだ。
しかし結果は醜く痙攣するだけ。その滑稽さに私は笑いながら
「あなたとフィロソフィスにはいいところで邪魔されましたが、結果としてもっと速やかに世界を滅ぼすルートができました。これもあなたが人を救いたいと願い、歩んで来た尊い旅路のおかげです」
体は麻痺しても涙は出るらしい。瞼を閉じることすらできない目からミコトは悔し涙を流した。
私はますますおかしくなって、笑いをかみ殺すのに苦労しながら
「心配しなくても後で体は返してあげますよ。取り返しのつかない結果とともにね」
その宣言と同時に、客間の入口から
「ミコト。王が早く来いと呼んでいる。待ち切れないから、今日は服そのままでいいって」
シャノンに呼ばれた私は、ミコトのふりをして返事をすると
「では、あなたは絶望しながら待っていてください。次にあなたが外に出るのは全てが終わった時です」
この麻痺状態は3時間は続く。わざわざ拘束する必要も無いだろうと、枕の下にミコトを隠して客間を去った。
ミコトのふりをしてマラクティカの王の部屋を訪れると
「これから寝るのに水浴びや着替えをしなくて良かったんですか?」
野性的なイメージに反して、レオンガルドは割と綺麗好きだ。加えて一種の所有欲か、ミコトに自分の国の装束を着せたいようだった。
そんな男が水浴びも着替えも無しでいいというのを少し怪しむも
「さっきも言っただろう? お前に触れたくて一時も待てない。遠慮しないで早く来い」
レオンガルドはベッドの上から、妖艶な笑みでミコトを誘った。艶めいた雰囲気に、私は顔に笑みを貼りつけたまま「この色ボケ野郎が」と内心で彼を罵った。
けれど対外的には気高い王であるレオンガルドが、女に溺れて神樹を切られるのは、死よりも耐え難い屈辱だろう。この男が調子に乗っているほうが、種明かしする時に面白い。
私はそんな気持ちから、レオンガルドの誘いに乗るついでに
「寝る前にお休みのキスをしたいから、目を閉じてくれませんか?」
と可愛らしくねだって見せた。
本当のミコトが自分から男を誘うことはしないと知っている。だがレオンガルドの執心ぶりを見れば、喜んで乗って来るだろう。
「今日のお前は、やけに積極的だ」
予想どおり彼は嬉しそうに笑いながら「これでいいか?」と目を閉じた。
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めっちゃ感謝を込めて💕
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