終わらない仮想世界へようこそ

ソナタ

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第1章 さぁ冒険を始めよう!

第13話 石動彩葉の独白 2

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その後、家に義母が家を訪れてきた。
どうやら今日からこの家に住むそうだ。
妹は私の父の方の実家にいるらしい。その事を義母がいる時に伝えられた。

カレは今まで住んでたマンションでは無く、学校から近いアパートを借りていると言っていた。

理由は云わず共思春期の私達を慮ってのことだと思う。

安心する事の筈なのに私は何故か少し寂しくなった。

私は学校に行った。

別段に張り切ることもなく、いつも通りを装って………
ま、まぁ少しドキドキしていたのは認めてもいいのだけども………

あまり喋ることは無かったが取り敢えず、カレと話をしてみたかった。

けど何を話せばいいのかわからない。

……………一応兄妹なんだけどな…

私達はそれから3ヶ月ほど話すことは無かった。

ある時、私は父と喧嘩をした。

確か、春休みが始まった時の事だったと思う。

内容なんてモノは覚えてなかったけど、酷く悲しかったのを覚えている。
とにかく泣きたくなって家出した。

義母が折角止めてくれたのだが、私が

「しばらく友達の家に泊まる」

と言ったら止めることなくお金を渡して、

「失礼の無いようにしなさい」

と優しく笑ってくれた。

少し泣きそうになって……

奪い取る様にお金を貰い、家を飛び出した。

飛び出したはいいがどこに行くかは決めてなかった。

生憎今日は春休み。

殆どの友達が家族で過ごしている筈だった。

適当な公園でスマホを弄りながら複数の友達に聞いてみるが何処も都合が合わないと言われて、また泣きそうになる。

そのままスマホを制服にしまい、1時間ぐらい何も考えずに座り込んでいた。

少しして……

頬に何かが当たってきた。

雨だ。

最初はポツポツと儚げなかったのに、どんどん強くなってきた。

それと同時に私は泣き出した。

泣くしかなかった。

何かがおかしかった。

何でこうなったんだろう。

どうして私は独りなんだろう。

そして

………私はあるアパートの前に立っていた。

インターホンを鳴らす。

すると、一人の少年が出てきた。

それがカレだ。

星野流名だ。

「…………今日泊めて」

カレは泣いてる私を見て狼狽えることもなくかと言って何かとする訳でもなく、ただ静かに

「…………いいよ」

と言ってくれた。

「……………………………。」

「……………………………。」

堪えきれない無言状態がカレと私の間に続く。

沈黙を破ったのはカレだった。

「………………お風呂、入っていいよ」

「…………………うん」

“どうしたの”とは聞かなかった。
それが何故か少し嬉しかった。

そのままお風呂に入って髪を洗い、身体を洗う。
静かに湯船に浸かる。
この間だけは何も考えずに、静かに休む事にした。

上がりタオルで体を拭く。

そこで重大な事を思い出した。

パジャマだ。

そう寝間着が無い。

震える声で彼を呼ぶ。

「……る、ルナぁ~」

「……ん?上がったの?」

「ぱ、パジャマが無い…………」

「「…………………………。」」

少し頬を赤らめながら彼は綺麗な体操服を持ってきた。

「そ、その………し、下着は、その…ね?」

「ぬ、濡れてるんだけど…………」

「ど、ドライヤーで乾かして……」

こうして私達は少し、打ち解けていった。

かれがお風呂に入った後、静かに家出した件を話した。
そして最低限のお金は持ってるから泊めてほしいとお願いした。

まぁ知ってたのだが、カレが優しい人だということぐらいは…………

そんなカレは断れる筈もなく。

「泊まってていいよ」

と静かに言ってくれた。

突然だがこのアパートの構造はトイレ、風呂場、脱衣所and洗濯所、台所and食卓、寝室、玄関の6つの構成となっている。どの部屋も玄関から行き来することができ、どの部屋もそこまで広くない。

食卓以外にはイスはなく、寝室には布団と少し小さめのテレビ一台がギリギリ入るぐらいのペースしかない。

「……取り敢えず布団で寝てくれる石動さん」

「………………彩葉でいいよ、ルナくん」

「い、彩葉さん……」

少し顔が赤くなる。

少しそれがいじらしくて………

「……………イ•ロ•ハでいいよ、お兄さん……」

「イロハ、お兄さんじゃなくってお兄ちゃんって呼んで欲しいかな~?

「「………………………………。」」

「「何かゴメン」」

顔を赤面させる私達だった。

私達は結局、同じ布団に寝る事にした。

一応兄妹なのだ。
たとえ血が繋がってないとしても…………

…………………………アレ?これって結構アウトかもって思うんですけど…

翌朝、9時ぐらいに目を覚ます。

既にカレはおきているようで、隣の部屋から音がする。

ゆっくりとドアを開けると、どうやら朝ご飯を作ってくれていたようだ。

ご飯に味噌汁、だし巻き卵、肉団子その他諸々が小さなテーブルに置かれている。

「……良かったら食べて」

眠そうな眼を擦りながらカレは私に食事を勧めた。

それが何故だかとっても嬉しくて…………

泣き出しそうになりながら、でも少しだけ目の端に涙を浮かべて、

「………………う、ん」

とやっぱり涙声になりながらゆっくりと頷いた。


その時からだろうか

私とカレはよく喋るようになった。

たまにカレの家にも泊まりに行って…………

私達は“お兄ちゃん”、“イロハ”と呼び合うぐらいの仲になるのはそう時間は掛からなかった。もちろん二人でいる時、例えば帰るときなどしかそう呼ぶことはなかったが…………

話は変わるのだかカレはとてもモテる。ソレはここ最近からの事ではなく最初からだったと思うのだが、他の同級生達が行動に移し始めたのはココ一週間ぐらいの事だったと思う。

そう偶々見てしまったのだ。

カレが告白されているのを………

カレは困ったように頭を掻きながら、優しく断っていたのだと思う。

だからと言う訳かは知らないが断られた少女達は皆嬉し涙を流していた。

何故だが少し胸が痛くなった。本当に何故だろう?

まさかねぇ……………

そんな切ない思いも疑問から確信になることが分かった。

私は元々、男子は好きじゃない。

カレ以外とは特に関わることもなかったのもあるし、あまりいい雰囲気で見られる事はなかった事も関わっている。

でも人並以上に恋愛などには憧れていていたし、よく友達との会話でも恋バナが主題になる事も少なくなかった。…………かと言って好きになる人がいた訳でも無いのだが…………

けど……

ある出来事をキッカケにその思いは大きく変わる事になる。



中学2年生になった時、ある男子に恋文らしきモノを貰った。正確には“下駄箱にラブレターを潜めて置く”という在り来たりなものだった。

内容は“伝えたい事があるので屋上に来てください”という簡素なものだった。

好きな人にこういう事されるならまぁ許せるのだけども…と呑気に断り方を脳内に浮かばせながら屋上へ向かった。

「失礼します……」

そこには先輩と思われる男子中学生が3、4人たむろっていた。

所謂不良という奴だろうか?

見た目でまず無理だ。

と言うか今更ながら一人で来た事を深く後悔した。

「あ、彩葉ちゃんだよね!これからよろしく!」

そう言って手を伸ばしてきた。

少し後ずさりながら慌てて蓋めく。

「す、スイマセン。つ、付き合うとかちょっと考えられないので……」

“今誰とも付き合う気はない”と言う意味を込めてその人たちに言った。がそう受け取らなかったようだ…………

「あ?オレとは付き合う事も考えられないっていうのかよ…………」

「え?いや、そ、そういうわけでは……」

どんどん後ずさる。

最悪だ。

ドアからどんどん遠ざかっていく。

不味いと思いながらも必死で愛想を振り撒く。

「オマエ、少し顔が良いからって調子に乗ってんじゃねぇ…………」

どんどん近づいてくる。ゲラゲラと笑いながら逃げ道を作らず囲むように。

いつしか私は完璧に囲まれていた。

サッと顔から血の気が引いた。

コイツラの下品な会話が聞こえてくる。
すぐ後ろは柵があるが、登れば逃げられるかも知れない。

けど………

けど、その後は?

いっそ死ぬか………

ここで汚されるなら死んだほうがマシだ。

私は囲んで安心しきっている奴等のスキを見て、柵を蹴り登った。

「お、おい!?」

止める声がする。
だけどダメだ。彼等は信じられない。

私はそのまま柵を超えて………


屋上から飛び降りた。







落ちる。

落ちる落ちる。

周りが見えなくなるぐらいに早くなる。
ほんの数秒だった筈なのに、もう2階に…………

ガッ

いきなり側面に衝撃が走り、小さな悲鳴があがる。

目を開けるとそこには…………

「ウソ…………」

血を流しながら片手で木にぶら下がるカレの顔が映っていた。

「な、何で…………」

“ここに居るの?”と聞くことができず、息が途切れる。

カレは苦笑いしながら、

「だって屋上に着いたら落ちようとしてるんだから。壁をけるのだってタイミングよくやらないと窓が割れちゃうんだからね」

あとから聞いたが私を助けるために、落ちながら壁を蹴って加速したらしい。あり得ないぐらいに馬鹿馬鹿しい身体能力だ。まぁ本人は火事場の馬鹿力とか言っているが……

けどその時私はそんな事に興味はなかった。

「どうして…………」

小さく呟きながら、そして

大声で叫んだ。


「どうしてそんな馬鹿なことをするの!?死ぬところだったんだよ?」

カレは驚愕を顔に貼り付けながら、「ふぇ」とちいさく息を漏らしていた。

理不尽だというのは分かっていた。




でも……



でも、もしもカレが死んだら…………



私はどうなってしまうのだろうか?




その後、私達は病院に運ばれた。

彼等は退学となり、それから会うことはなくなった。

そしてカレともあれから会うことはない。


カレが会いに来ても絶対に顔を合わせないようにしている。



コレが傲慢である私の罪だ。

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