インドの護龍伝説

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1:ヒマラヤ山脈の飛龍

護龍伝説

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  N氏が、三十代前半の1990年代初頭の話である。N氏は、小金を貯めて念願のインド旅行に旅立った。

  この東洋の島国日本に生まれた人間にとって、唐と天竺はなんといっても魅力的に映ったからであった。

 最初の目的地は、ヒマラヤ山中の入り口に当たるシュリーナガル、サンスクリット語で吉祥を意味する、湖の美しい景勝地だ。

 ニューデリーから双発プロペラの頼りない中古機に乗り込む。二、三時間は飛行した頃だろうか、ヒマラヤ山脈が見えてきた。

 すると突然、機体が激しく振動し始めた。体感としては震度4くらいの激しいものでN氏は墜落するのではないかと脇にいやな汗を掻いた。

 このヒマラヤ山脈は、インド宗教の一大聖地で他所者を寄せ付けないよう上空では飛龍が守っていると何かで読んだN氏は、「私は、日本から来ましたNという者です。わたしは、決して当地に害を及ぼすものではございません。ただ三蔵法師が経文を取りに訪れた当地を崇敬し....」とただひたすらに黙念した。

するとどうだろうか、機体はほどなくして水平平静を取り戻した。不思議なものである。

 しかし最寄りの空港に降り立った時、N氏の心中は再び暗雲に包まれた。どこもかしこも自動小銃で武装したインド陸軍の兵士でイッパイなのだ。

  インフォメーションに尋ねると、シュリーナガルの山中には、600以上のゲリラ組織が潜伏しているという。

  当地は、古代仏教をはじめとしてヒンズー教やシーク教、回教などの聖地として知られているのに、皮肉なことに治安は最悪だというのだ。

 N氏はくびを捻った。日本でいえば比叡山に反政府ゲリラが数個団体潜伏しているようなものではないか。

  しかし待てよ、日本だって平安時代末期には比叡山の僧兵が度々朝廷に参っては自分たちの要求を突きつけ、北面の武士もこれの対処に難渋したという、これと同じなのか。

  「日本人は小金を持っているので、陸上のホテルに泊まるより、水上のボートハウスに泊まった方が安全だ」と地元ガイドが言うので、N氏は
その言に従った。郷にいれば郷に従えと。



 
 
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