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dragon49

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 その日、T大で物理学を専攻するノーベル賞候補のN氏は朝からウキウキしていた。五十路間近にしてやっと結婚する目算が立ったのだ。

 成婚率99.9%と評判のパーフェクトマッチング社の面接が順番待ちでやっと巡って来たのだ。N氏は、スーツに身を固めネクタイをキュッと閉めると都内の面接会場に向かった。

 受け付けてくれたのは、【map guide ワカサギ】という名札をつけたまだ若い女性であった。
「あっ、T大のN先生ですね。お待ちしておりました」、採用で選抜されただろうこの女性は、笑顔がことさらに爽やかだった。

 「実は、私は若い頃から研究に明け暮れていまして正直なところ女性と付き合った事すらないのです。ですので、どう女性を扱っていいものやら••••」、N氏はバツの悪い顔をした。

 「全く心配ありません。全ての生物はaverage50即ち平均に向かうという原理をベースにしています。知能の高い男性は、一般的に低い女性とマッチングします。当社のアプリをスマホにダウンロードしていただき、マップ上に表示されたターゲットに向かっていただけたらいいのです」

 「そんなに簡単に生涯の伴侶が見つかるものでしょうか」

 「弊社の幹部は、官庁や大手企業のOBです。この日本列島に居住する全ての人のデータが弊社スパコンにインプットされています。それを先生の個人データと照らし合わせて、マッチングする人を衛星でガイダンスするサービスです」、女性は少しムッとして応えた。

 「しかし、個人情報を扱うとなれば少々問題があるのでは?」

 「少子化対策として政府の許諾を特別に受けておりますが、個人情報の関係でアプリは、ターゲットをロックするか、ダウンロードしてから24時間以内に消滅します。ですので早めにターゲットをロックしてください」、女性はN氏からプロフィールの用紙を受け取るとPCで何やらカチャカチャと作業を始め、表情を若干曇らせた。

 「先生のIQは185以上ありますが、弊社のIQのマックスは180が最高値として設定してあります。ですので0.1%の確率でシステムに誤作動が生じるかもしれません。その場合は当社にクレームをお願いします」
 
 N氏は、ワラにも縋る思いで所定の高額料金をスマホで済ませると早速にパーフェクトマッチングアプリをダウンロードして立ち上げた。

 すると、おおっ!N氏のターゲットは、なんと隣町にいた。N氏は、早速にメトロに乗ると隣町に着いた。ああ、やっと将来の伴侶に会える、N氏は喜びを通り越して、感動すら覚えた。

 N氏のスマホは、ターゲットが10m以内に居るスヌーズ音を発し始めた。Zzzzzzzz!
N氏がその方向を見やると、ペットショップの中で清純そうな娘さんが甲斐甲斐しく働いている。ポニーテールの髪型までN氏の恋心をくすぐる。

 N氏は、はやる恋心を抑え、つとめて冷静を装いながら店内に入った。

 「いらっしゃーい」、娘が屈託ない笑顔を見せた。Ppppppp🎵   N氏のスマホからターゲットをロックオンしたサインメロディーが流れて、小さなウィンドウにその姿が表示された。

 それは、入り口付近の檻に入れられたチンパンジーのマリーちゃん♀4歳であった。N氏が、恥ずかしさの余り、ターゲット確認のボタンをクリックするとアプリは跡形もなく雲散霧消した。

「どんなペットをお求めですか?」、あどけない娘の明るい声が、店内に虚しく響いた。
  
 

 



 


 

 
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