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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱
第14話 ケイブスパイダー
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ロキはこちらへと向かってくるラットマンの群れをいなしながら、迷宮の奥へと走っていた。
ラットマンの足は遅い。狭い通路なら別だが、広い場所であれば走って逃げれば捕まることはないだろう。
あの女探索者たちの仲間が一人逃げ遅れているらしい。
もしかしたら間に合わないかもしれない。だが、まだ生きている可能性があるのならば、助けに行かなくてはいけない。
迷宮探索者たちは命知らずの者が多い。確かにそういう者ほどより深層へと進んでゆくことができ、より多くの財宝を手に入れることができるという一面もある。
だが命は一つしかない。死んでしまえばそこで終わりだ。
だからロキは常に慎重に迷宮探索を続けてきた。そして今回のように窮地に陥っている同業者を見たらなるべく助けるようにしてきた。
命は大切にしなければいけない。一度きりの人生なのだから。
走るロキの頭上から、水色の粘体が落下してくる。
ロキはすぐに反応し、カタナでその中心にある物体を突く。
スライムだ。
核を破壊されたスライムはすぐに消滅した。
ラットマン以外の魔物にも気を付けなければいけない。
そう思った時、目の前にいる魔物の種類が変わった。
ラットマンに紛れて数体の歩く死体が現れ始めた。
ゾンビもラットマンと同じく、歩く速度の遅い魔物だ。気を付ければ危険性はそれほど高くはない。
「それにしてもこの魔物たちの行列は、どこまで続いているんだ?あのバカ女たち、とんでもないことをしやがったな」
ここまで見ただけでも10体20体どころではない。これだけの規模のモンスタートレインの発生は滅多に聞いたことがない。
と、次の瞬間、ロキの視線の先に光る何かが見えた。
おそらく魔法の光だ。
逃げ遅れた探索者が魔法を放ったのだろう。
ロキはその光の元を目指して駆けてゆく。
「誰かいるか?!」
ロキの呼びかけに、反応があった。
「はい!た、助けてください!」
それは女の声だった。
探していたさっきの女探索者たちの仲間だろう。まだ生きていたのだ。
ロキは声の元へ駆けてゆく。
これまでは魔物から逃げていたが、ロキはここで反撃に移る。
救出するときに魔物に集まられてはまずいからだ。
近寄るラットマンやゾンビに対し、確実に一撃で急所を捉えて倒しながら、逃げ遅れた女探索者の周りの魔物の数を減らしてゆく。
白いローブ姿が視界に入り、再び声を掛ける。
「怪我はないか?」
「はい!」
見ると先ほどの中年の女探索者たちと比べ、ずいぶん若い娘だった。
昨日ロキが指導した若者たちと同じように、研修でもしていたのだろうか?
だとしたら新人を置いて熟練者が逃げるなどという行為は、許せないことだ。
「少し隠れてろ!」
「はい!」
白いローブの女探索者が岩陰に隠れると、ロキはその前にいる魔物たちを次々と蹴散らしてゆく。
ラットマンの首を斬り、ゾンビの首を落とす。
ナマクラとはいえ切れ味の鋭いカタナならではの素早い動きに、次々と魔物たちは魔石へとその姿を変えてゆく。
まだじりじりと近寄ってくる魔物は絶えないが、とりあえず近くの魔物を倒し終えたロキは女探索者に声を掛ける。
「走れるか?走れるなら逃げるぞ」
「はい、大丈夫です。あ……」
白ローブの女探索者の視線の先には、ゾンビたちに交じってこちらへ向かってくる一体の巨大なクモの姿があった。
「洞窟クモか。心配ない、この階層に出るやつは強い毒は持ってない」
そうは言っても、1mを超す大きさのクモの異様に、女探索者は怯えを見せる。
「吐く糸さえ気を付ければ怖がることはない。先に倒してこよう」
女探索者なら見た目が苦手な魔物もいるだろう。特にクモの姿は男性でも嫌悪する者も多い。
できるだけ恐怖心を取り除けこうと思ったロキは、ケイブスパイダ―を倒してから逃げようと考え、ケイブスパイダーに向かって歩き出す。
ケイブスパイダーは、中距離から束縛するための糸を吐き出す習性がある。
ロキは刀を構え警戒をしながら近寄ってゆくと、突然頭上から再びスライムが跳びかかってきた。
ロキはすぐに反応し、その核を一突きした。
その瞬間にロキの視界に写ったのは、通常の水色のスライムではなく、黄色いスライムの姿だった。
「腐食性スライム?!」
慌ててカタナをアシッドスライムから引き抜く。
アシッドスライムはその体内に取り込んだ金属を溶かしてしまう性質がある。
すぐに拭き取れば大丈夫なはずだ、と思ったが、元々良い状態ではないカタナであった。
見ると無残にも刃がボロボロと欠け始めていた。
一瞬の判断が命取りになる瞬間。毎日休みなく疲労の蓄積された状態のロキは、その判断力が鈍っていた。
「しまった!」
アシッドスライムに気を取られていた時、ケイブスパイダーは糸を吐き出す。
先ほどまでは糸で攻撃された際にはカタナで切るつもりであったが、今の状態では切れる自信もない。
ロキは糸から逃げるよう、横へ飛び出した。
「あっ?!」
不運は重なる。飛び出したその足元は他と比べて濃い色をしていた。普段であれば見落とすはずがないはずの落とし穴!
姿勢を崩してしまったロキは落とし穴へと落下する。深さ1mの穴に激しく体を打ち付ける。足を挫いてしまったかもしれない。他に強く打った部位はないか?自分の怪我の状態を確認しようとしている時、穴の上を見上げるロキの視界に、ケイブスパイダーの頭の八つの目と目が合う。。
「しまった!」
逃げ場を失ったロキにケイブスパイダーの糸が絡みつく。
両手両足の自由を奪われると、ケイブスパイダーはその口を大きく開けた。
言葉にならない恐怖。
次の瞬間、腹部をケイブスパイダーの牙で引き裂かれると、激痛と共にロキは意識を失った。
ラットマンの足は遅い。狭い通路なら別だが、広い場所であれば走って逃げれば捕まることはないだろう。
あの女探索者たちの仲間が一人逃げ遅れているらしい。
もしかしたら間に合わないかもしれない。だが、まだ生きている可能性があるのならば、助けに行かなくてはいけない。
迷宮探索者たちは命知らずの者が多い。確かにそういう者ほどより深層へと進んでゆくことができ、より多くの財宝を手に入れることができるという一面もある。
だが命は一つしかない。死んでしまえばそこで終わりだ。
だからロキは常に慎重に迷宮探索を続けてきた。そして今回のように窮地に陥っている同業者を見たらなるべく助けるようにしてきた。
命は大切にしなければいけない。一度きりの人生なのだから。
走るロキの頭上から、水色の粘体が落下してくる。
ロキはすぐに反応し、カタナでその中心にある物体を突く。
スライムだ。
核を破壊されたスライムはすぐに消滅した。
ラットマン以外の魔物にも気を付けなければいけない。
そう思った時、目の前にいる魔物の種類が変わった。
ラットマンに紛れて数体の歩く死体が現れ始めた。
ゾンビもラットマンと同じく、歩く速度の遅い魔物だ。気を付ければ危険性はそれほど高くはない。
「それにしてもこの魔物たちの行列は、どこまで続いているんだ?あのバカ女たち、とんでもないことをしやがったな」
ここまで見ただけでも10体20体どころではない。これだけの規模のモンスタートレインの発生は滅多に聞いたことがない。
と、次の瞬間、ロキの視線の先に光る何かが見えた。
おそらく魔法の光だ。
逃げ遅れた探索者が魔法を放ったのだろう。
ロキはその光の元を目指して駆けてゆく。
「誰かいるか?!」
ロキの呼びかけに、反応があった。
「はい!た、助けてください!」
それは女の声だった。
探していたさっきの女探索者たちの仲間だろう。まだ生きていたのだ。
ロキは声の元へ駆けてゆく。
これまでは魔物から逃げていたが、ロキはここで反撃に移る。
救出するときに魔物に集まられてはまずいからだ。
近寄るラットマンやゾンビに対し、確実に一撃で急所を捉えて倒しながら、逃げ遅れた女探索者の周りの魔物の数を減らしてゆく。
白いローブ姿が視界に入り、再び声を掛ける。
「怪我はないか?」
「はい!」
見ると先ほどの中年の女探索者たちと比べ、ずいぶん若い娘だった。
昨日ロキが指導した若者たちと同じように、研修でもしていたのだろうか?
だとしたら新人を置いて熟練者が逃げるなどという行為は、許せないことだ。
「少し隠れてろ!」
「はい!」
白いローブの女探索者が岩陰に隠れると、ロキはその前にいる魔物たちを次々と蹴散らしてゆく。
ラットマンの首を斬り、ゾンビの首を落とす。
ナマクラとはいえ切れ味の鋭いカタナならではの素早い動きに、次々と魔物たちは魔石へとその姿を変えてゆく。
まだじりじりと近寄ってくる魔物は絶えないが、とりあえず近くの魔物を倒し終えたロキは女探索者に声を掛ける。
「走れるか?走れるなら逃げるぞ」
「はい、大丈夫です。あ……」
白ローブの女探索者の視線の先には、ゾンビたちに交じってこちらへ向かってくる一体の巨大なクモの姿があった。
「洞窟クモか。心配ない、この階層に出るやつは強い毒は持ってない」
そうは言っても、1mを超す大きさのクモの異様に、女探索者は怯えを見せる。
「吐く糸さえ気を付ければ怖がることはない。先に倒してこよう」
女探索者なら見た目が苦手な魔物もいるだろう。特にクモの姿は男性でも嫌悪する者も多い。
できるだけ恐怖心を取り除けこうと思ったロキは、ケイブスパイダ―を倒してから逃げようと考え、ケイブスパイダーに向かって歩き出す。
ケイブスパイダーは、中距離から束縛するための糸を吐き出す習性がある。
ロキは刀を構え警戒をしながら近寄ってゆくと、突然頭上から再びスライムが跳びかかってきた。
ロキはすぐに反応し、その核を一突きした。
その瞬間にロキの視界に写ったのは、通常の水色のスライムではなく、黄色いスライムの姿だった。
「腐食性スライム?!」
慌ててカタナをアシッドスライムから引き抜く。
アシッドスライムはその体内に取り込んだ金属を溶かしてしまう性質がある。
すぐに拭き取れば大丈夫なはずだ、と思ったが、元々良い状態ではないカタナであった。
見ると無残にも刃がボロボロと欠け始めていた。
一瞬の判断が命取りになる瞬間。毎日休みなく疲労の蓄積された状態のロキは、その判断力が鈍っていた。
「しまった!」
アシッドスライムに気を取られていた時、ケイブスパイダーは糸を吐き出す。
先ほどまでは糸で攻撃された際にはカタナで切るつもりであったが、今の状態では切れる自信もない。
ロキは糸から逃げるよう、横へ飛び出した。
「あっ?!」
不運は重なる。飛び出したその足元は他と比べて濃い色をしていた。普段であれば見落とすはずがないはずの落とし穴!
姿勢を崩してしまったロキは落とし穴へと落下する。深さ1mの穴に激しく体を打ち付ける。足を挫いてしまったかもしれない。他に強く打った部位はないか?自分の怪我の状態を確認しようとしている時、穴の上を見上げるロキの視界に、ケイブスパイダーの頭の八つの目と目が合う。。
「しまった!」
逃げ場を失ったロキにケイブスパイダーの糸が絡みつく。
両手両足の自由を奪われると、ケイブスパイダーはその口を大きく開けた。
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