迷宮探索者の憂鬱

焔咲 仄火

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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱

第21話 ムカつく親子のせいでやる気がでてきた

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「マルコさん、改めて紹介するけどこの子が回復術士のアルマ。アルマ、魔法使いのマルコさんだ。マルコさんは俺の師匠で、なんと火・水・風の三重魔法使いトリプルマジシャンなんだ」

「すごーい!」

「お前に言われると嫌味じゃな」

 驚くアルマをしり目に、マルコは顔をしかめてロキに言った。
 慌ててロキは取り繕う。

「そんなつもりはないですよ」

「なんで嫌味なんですか?三重魔法使いなんて聞いたことないです!すごいじゃないですか!」

「そう言ってもらえるのは嬉しいがな、こいつ、ロキは全属性に適性のある四重魔法使いクアドラマジシャンなんじゃ」

「えっ?ロキさんって、そんなにすごい魔法使いなんですか?」

「いやいや、適性があるっていうだけで、実際には初級魔法を数回しか使えない、なんちゃって魔法使いだ」

「え?それってすごいんですか?すごくないんですか?」

 アルマはきょとんとした顔でロキを見つめる。
 ロキが困った顔でいると、マルコが説明をする。

「要するに才能があるのに、自分は剣士だって言って魔法の修行を全然しとらんのだこいつは!せっかくワシが魔法を教えてやったのに」

「だからこれからは魔法も修行するって約束したじゃないですか!」

「どういう事ですか?」

「いや、マルコさんは探索者を引退してたんだけど、俺がまじめに魔法を修行をするっていう約束で、その指導のために復帰してくれることになったんだ」

「それと、ワシが探索に出るのは週3日だけだぞ」

「はいはい!それで大丈夫です!とにかく登録するために5人揃いさえすれば大丈夫です!」

「元A級探索者のワシを、ただの人数合わせにしおって!」

「それじゃ今は迷宮探索中のレオンと、さっき退職届を提出させに行ったココロを合わせて、このメンバーでこれからよろしくな!」

 ロキはマルコのぼやきを聞き流し、適当にその場をまとめると、新規レギオンの登録のためにギルドの受付へ向かった。

★★★★★★★★

 結果から言うと、ロキたちは今日はレギオンの登録ができなかった。
 レギオン登録のための人数は問題なかったが、それ以外にも税理士の登録とレギオンの所在地となるオフィスの登録が必要だったためである。
 準備不足をマルコに非難されるが、そのままマルコがオフィスとなる物件を探しに行ってくれることになった。
 税理士については外部の者を雇うというやり方もあるらしかったが、ロキは自分で資格を取り探索者と兼任するつもりであったため、試験について受付に詳しい話を聞くことにした。すると、毎月行われている試験がちょうど今日あるというので、試験の傾向と対策を練るためにロキは飛び入りで受験をすることになった。

 税理士試験は、回答式の問題と、収益報告書の作成の実技があるという。実務でも様々な資料を見ながら行うため、試験でも資料を見て良いということであったため、資料一式を借り、そして受験費用である5万セルを支払う。
 受験代を聞いた時、さすがのロキも表情を硬くした。決して安い金額ではないからだ。
 冷やかしで受験するようなものではない。どうせならこのまま試験を合格してしまおうと考え、ロキは試験開始時間まで借りた資料を読み、本気で勉強を始めた。

 まもなく試験の時間となったころ、ロキは会場となる部屋へ向かう。
 何名かの受験者がすでに集まっていたが、その中に見たくはない知った顔がいた。

「ゲイズ……」

 それは、ロキの元上司ゲイズだった。
 向こうもロキに気づくと、嫌な顔をしながら声を掛けてきた。

「ロキ?きさまこんなとこで何をしている?」

「何をって、ここは税理士資格受験会場なんだから、税理士試験を受けに来たに決まってるだろう!おまえこそなんでこんなとこにいるんだよ?」

「わ、私は息子の付き添いだ。そんなことより貴様が税理士?ハハハ!レギオンを辞めて何をするかと思えば、笑わせてくれる!独立して必死なのは分かるが、貴様どこで数学を学んだんだ?学校なんか出ていないお前が試験に受かるわけがないだろう!私の息子は先月王都の高等学校を優秀な成績で卒業したのだ。それくらいでないとこの試験は合格できないのだぞ?この世間知らずめ!」

「息子の付き添い?いい年した息子の試験に親が付き添うなんて子離れができてないな」

「う、うるさい!ずっと王都にいた息子には慣れないギルド施設を、慣れている私が案内してやったのだ。そんなことよりも貴様の方こそ何のつもりだ?夢を見るのもいい加減にしろ!貴様ごときが受かるわけがないだろうが!」

 その時、それまで黙っていたゲイズの息子が口をはさんできた。

「まあまあ父さん、夢を見るのは自由じゃないか。ただし後で現実を知って落ち込むことになるだろうけどね。時々いるらしいよ、学校を出てもいないのに試験を受けようとする人が。だけど誰一人受かったことがないみたいだけどね。ただでさえ合格率が低い難問なんだ」

「おおボイド。そうだな。明日こいつの不合格を見て笑ってやろうじゃないか」

「ウゼー親子だな、合否なんて受けてみなきゃわかんねえじゃねえか。それに内容ならさっき勉強してきたよ」

「は?」

「さっきこの資料を熟読してきたっつーの!この程度の内容に学校で何年もかかって勉強してんじゃねえよ」

 そう言ってロキはギルドで借りた税務の資料を見せる。
 ロキの話を聞いたゲイズとボイドの親子は目を合わせると、大声で笑い出した。

「資料を読んだだけで合格できるわけがないだろう!何度も何度も収益報告書を作成して、それで覚えていくんだ。読んだだけで合格できたら高等学校などいらんわ!バカか!」

「ムカつくなあ……」

「世間知らずな人間っているんだなあ。今度同窓会があったらこのエピソードは絶対に話すし、絶対にみんな爆笑するだろうな」

「うるせえクソガキ!」

「なんだと!僕とそんなに年も変わらないくせに!」

「やめとけボイド。迷宮探索者など頭の足りないやつばかりなのだ、暴力を奮われてもたまらん」

「てめー、迷宮探索者の稼ぎで食ってるくせに」

「何を言ってる。私たちのようなオフィスワーカーが頭脳労働をしてるからこそ、おまえらみたいな力仕事しかできないやつらに給料が出るのだ」

「何が頭脳労働だ、この程度の内容なんて子供でもできるわ!くっそ、様子見に受験するつもりだったけど、俄然やる気が出てきた。絶対に受かってやるからな!」

「ワハハ!貴様本気で合格するつもりなのか!」

「おまえらに構ってるのは時間の無駄だ。じゃあな!やる気出させてくれてありがとよ!」
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