22 / 105
Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱
第22話 前世ではそろばん3級でした
しおりを挟む
試験の翌日、ギルドに行くと合否発表が張り出されていた。
そこには全ての受験者の名前と点数が書かれており、90点以上が合格という厳しい基準があった。
合否発表の掲示板の前には、ゲイズ親子が来ており朝から大きな声で騒いでいた。
「0点……」
「き、気を落とすなボイド!試験は減点式だから、収益報告書の最初の方で計算を間違うと、それ以降全部数字が違ってきてしまうんだ。0点だから全くダメだったというわけではないんだ。よくあることだ。今回は運が悪かっただけだ。後ろの方のミスならもっと減点は少なかったはずだ!」
「そ、そうだね、父さん。それに僕もまだ試験を受けるのはこれが初めてだし、これで試験の雰囲気も分かったよ。勉強し直して次は必ず受かるよ!」
「そうだ!がんばれよ!」
「ところで、昨日のあの人はどうだったんだろう?」
「ハハッ!ロキか!素人に収益報告書を作成できるわけがないだろう!0点、いやマイナスもありえるな!」
「ロキ……あった!」
「何点だ?」
「……え?」
「……ひ……100点?合格?だと?」
「よう!ゲイズ親子!どうだった?」
ゲイズ親子のところにロキと、付き添いで来ていたレオンが近寄ってきた。
声を掛けたロキは、彼らよりも少し前にここに来ており、先にお互いの合否を確認していた。
「息子さんの名前はボイドだっけ?えーっと、あれ?見間違いかなあ?俺の目が確かなら、0点って見えるけど。おかしいなあ、王都の高等学校を優秀な成績で卒業されたのではありませんでしたっけ?」
そんなロキの口ぶりに、レオンは笑いをこらえるのに必死だ。
馬鹿にされたゲイズ親子は、顔を真っ赤にして怒っている。
「き、きさまぁ!どんな不正をした?!カンニングしたのか!知っているか?不正であれば、永遠に税理士資格は剥奪だ!」
「今回俺以外合格者いないのに、誰の答案をカンニングしたっつーんだよ?」
「くっ……確かに。じゃあ何でだ?何で合格したのだ?どんな不正をしたのだ?!言え!」
「だから何で不正した前提なんだよ!普通に回答しただけだよ!資料見ながら受験できるんだから、全部できて当たり前だろうが!それに今回は絶対におまえらに負けたくなかったから、収益報告書は三回見直ししてやったわ!ガハハ!受験前におまえらと会わなかったら、見直しもせずにミスしてたかもな!」
「嘘をつくな!見直しなんてする余裕があるわけがないだろう!収益報告書を作成するためにどれだけ計算をしなきゃいけないか分かってるのか?普通に受けたら時間ギリギリ、慣れない者なら全て完成させる余裕もないわ!」
「え?なんでそんなに計算に時間がかかるの?昨日借りた資料の中に掛け算の表とかあったし、もしかしてこの世界、掛け算九九すらない?」
「なんの話だ?!」
怒り心頭のゲイズを余所に、ロキはなるほどと納得をする。
「7かける7は?」
「何だ?私だって税理士資格持っているんだぞ!それくらい分かるわ!7、14、21、28、35、42、49、49だ!」
ゲイズは指を折りながら数字を足していくと、そう答えた。
「さすが父さん、高速計算だ!掛け算表を使わずそんなに早く計算できる人は、学校にもいなかったよ!」
その姿に感嘆する息子。
父親は鼻を高くしたながら答える。
「そりゃあそうさ!私は十年以上現場で税金の計算をしているからな!学生ごときには負けていられないだろう」
「そうか、やっぱりこの世界は数学が著しく遅れてるのか。良かった、俺前世でそろばん3級持ってて。前世じゃ級が低すぎて何の役にも立たない資格だったのに」
「さっきから何を分けのわからないことを言っている?お前の方こそ掛け算はできるのか?12かける12はいくつだ?」
「144だろ」
「ハハハ!父さん、二けたの掛け算を言うのはいじわるだよ!……え?」
「で、でまかせを言いやがって、12かける12は、えっと12、24、36……」
「レオン、行こう」
「お、おう!」
指を折りながら計算をしているゲイズを残し、ロキは合格通知をもらいに受付に向かった。
★★★★★★★★
即日発行されたロキの税理士資格証明書を受領すると、ロキ達はマルコが契約してきてくれたレギオンのオフィスにする予定の物件の確認へ向かった。
そこはギルドから徒歩15分ほどの、程よい距離の場所にあった2階建ての一軒家だった。
玄関をくぐると、そこには先に来ていたマルコ、アルマ、ココロがいた。
昨日はレオンが迷宮に潜っていたため、全員が一堂に会するのはこれが初めてだ。
「へえー。マルコさん、ちょうどいい感じの建物を見つけてきたじゃないか」
そう言いながら扉をくぐるロキに、マルコは開口一番
「どうだった試験は?」
と問う。
ロキはにやりと笑い、もらったばかりの税理士資格証明書を懐から出すと、マルコに見せつけるように正面にかざした。
アルマとココロは「おー!」と声を上げ、ロキに拍手を送った。
5人の中で、マルコだけが目を丸くして驚いていた。
「ほ、本当に受かったのか?いつそんな勉強をした?」
「いや、本当にそんなに難しくなかったんだって。今度みんなに教えてやるよ」
「うーむ、そうすると昨日声を掛けておいた知り合いの税理士に、断りの連絡を入れんといかんな……」
「え?そんなことしてくれてたの?」
「そりゃあ、いきなり受かるなんて誰も思わんわい!」
その後、マルコへ簡単にレオンを紹介すると、建物の中の確認に回った。
一階は今話をしていたロビーに、全員が集まることができる大きな部屋が一つ、その横には収納部屋とキッチンもあった。
ロビー正面の階段から二階へ上がると、個人の寝室があった。
ロキとアルマは前のレギオンを辞めてからレギオンの寮を出て割高な宿屋に泊まっていたため、ここに住むことで家賃の削減ができるだろう。もちろん昨日レギオンを辞めてきたココロもだ。
アルマとココロは今年デビューした駆け出しであったため、寮では相部屋だったらしく、自分の部屋を持てることを喜んだ。
部屋の確認をしていて、レオンがココロに向かって、アルマと一緒の部屋の方がいいんじゃないか?一人じゃ寂しくて眠れないだろう?と声を掛けて、ココロは子供じゃない!と怒らせる一幕もあった。
レオンは稼ぎも多いため、ロキは今住んでいる借家のままでも良いと言ったのだが、せっかく初めてレギオンに入ったのだからみんなと一緒に住むと答えた。
マルコだけは自宅から通う。そのためにギルドへの通り道であるこの場所の物件を選んだらしい。
そして色々と話をした後、マルコは帰宅し、他の四人はそれぞれの荷物を取りに行った。
そこには全ての受験者の名前と点数が書かれており、90点以上が合格という厳しい基準があった。
合否発表の掲示板の前には、ゲイズ親子が来ており朝から大きな声で騒いでいた。
「0点……」
「き、気を落とすなボイド!試験は減点式だから、収益報告書の最初の方で計算を間違うと、それ以降全部数字が違ってきてしまうんだ。0点だから全くダメだったというわけではないんだ。よくあることだ。今回は運が悪かっただけだ。後ろの方のミスならもっと減点は少なかったはずだ!」
「そ、そうだね、父さん。それに僕もまだ試験を受けるのはこれが初めてだし、これで試験の雰囲気も分かったよ。勉強し直して次は必ず受かるよ!」
「そうだ!がんばれよ!」
「ところで、昨日のあの人はどうだったんだろう?」
「ハハッ!ロキか!素人に収益報告書を作成できるわけがないだろう!0点、いやマイナスもありえるな!」
「ロキ……あった!」
「何点だ?」
「……え?」
「……ひ……100点?合格?だと?」
「よう!ゲイズ親子!どうだった?」
ゲイズ親子のところにロキと、付き添いで来ていたレオンが近寄ってきた。
声を掛けたロキは、彼らよりも少し前にここに来ており、先にお互いの合否を確認していた。
「息子さんの名前はボイドだっけ?えーっと、あれ?見間違いかなあ?俺の目が確かなら、0点って見えるけど。おかしいなあ、王都の高等学校を優秀な成績で卒業されたのではありませんでしたっけ?」
そんなロキの口ぶりに、レオンは笑いをこらえるのに必死だ。
馬鹿にされたゲイズ親子は、顔を真っ赤にして怒っている。
「き、きさまぁ!どんな不正をした?!カンニングしたのか!知っているか?不正であれば、永遠に税理士資格は剥奪だ!」
「今回俺以外合格者いないのに、誰の答案をカンニングしたっつーんだよ?」
「くっ……確かに。じゃあ何でだ?何で合格したのだ?どんな不正をしたのだ?!言え!」
「だから何で不正した前提なんだよ!普通に回答しただけだよ!資料見ながら受験できるんだから、全部できて当たり前だろうが!それに今回は絶対におまえらに負けたくなかったから、収益報告書は三回見直ししてやったわ!ガハハ!受験前におまえらと会わなかったら、見直しもせずにミスしてたかもな!」
「嘘をつくな!見直しなんてする余裕があるわけがないだろう!収益報告書を作成するためにどれだけ計算をしなきゃいけないか分かってるのか?普通に受けたら時間ギリギリ、慣れない者なら全て完成させる余裕もないわ!」
「え?なんでそんなに計算に時間がかかるの?昨日借りた資料の中に掛け算の表とかあったし、もしかしてこの世界、掛け算九九すらない?」
「なんの話だ?!」
怒り心頭のゲイズを余所に、ロキはなるほどと納得をする。
「7かける7は?」
「何だ?私だって税理士資格持っているんだぞ!それくらい分かるわ!7、14、21、28、35、42、49、49だ!」
ゲイズは指を折りながら数字を足していくと、そう答えた。
「さすが父さん、高速計算だ!掛け算表を使わずそんなに早く計算できる人は、学校にもいなかったよ!」
その姿に感嘆する息子。
父親は鼻を高くしたながら答える。
「そりゃあそうさ!私は十年以上現場で税金の計算をしているからな!学生ごときには負けていられないだろう」
「そうか、やっぱりこの世界は数学が著しく遅れてるのか。良かった、俺前世でそろばん3級持ってて。前世じゃ級が低すぎて何の役にも立たない資格だったのに」
「さっきから何を分けのわからないことを言っている?お前の方こそ掛け算はできるのか?12かける12はいくつだ?」
「144だろ」
「ハハハ!父さん、二けたの掛け算を言うのはいじわるだよ!……え?」
「で、でまかせを言いやがって、12かける12は、えっと12、24、36……」
「レオン、行こう」
「お、おう!」
指を折りながら計算をしているゲイズを残し、ロキは合格通知をもらいに受付に向かった。
★★★★★★★★
即日発行されたロキの税理士資格証明書を受領すると、ロキ達はマルコが契約してきてくれたレギオンのオフィスにする予定の物件の確認へ向かった。
そこはギルドから徒歩15分ほどの、程よい距離の場所にあった2階建ての一軒家だった。
玄関をくぐると、そこには先に来ていたマルコ、アルマ、ココロがいた。
昨日はレオンが迷宮に潜っていたため、全員が一堂に会するのはこれが初めてだ。
「へえー。マルコさん、ちょうどいい感じの建物を見つけてきたじゃないか」
そう言いながら扉をくぐるロキに、マルコは開口一番
「どうだった試験は?」
と問う。
ロキはにやりと笑い、もらったばかりの税理士資格証明書を懐から出すと、マルコに見せつけるように正面にかざした。
アルマとココロは「おー!」と声を上げ、ロキに拍手を送った。
5人の中で、マルコだけが目を丸くして驚いていた。
「ほ、本当に受かったのか?いつそんな勉強をした?」
「いや、本当にそんなに難しくなかったんだって。今度みんなに教えてやるよ」
「うーむ、そうすると昨日声を掛けておいた知り合いの税理士に、断りの連絡を入れんといかんな……」
「え?そんなことしてくれてたの?」
「そりゃあ、いきなり受かるなんて誰も思わんわい!」
その後、マルコへ簡単にレオンを紹介すると、建物の中の確認に回った。
一階は今話をしていたロビーに、全員が集まることができる大きな部屋が一つ、その横には収納部屋とキッチンもあった。
ロビー正面の階段から二階へ上がると、個人の寝室があった。
ロキとアルマは前のレギオンを辞めてからレギオンの寮を出て割高な宿屋に泊まっていたため、ここに住むことで家賃の削減ができるだろう。もちろん昨日レギオンを辞めてきたココロもだ。
アルマとココロは今年デビューした駆け出しであったため、寮では相部屋だったらしく、自分の部屋を持てることを喜んだ。
部屋の確認をしていて、レオンがココロに向かって、アルマと一緒の部屋の方がいいんじゃないか?一人じゃ寂しくて眠れないだろう?と声を掛けて、ココロは子供じゃない!と怒らせる一幕もあった。
レオンは稼ぎも多いため、ロキは今住んでいる借家のままでも良いと言ったのだが、せっかく初めてレギオンに入ったのだからみんなと一緒に住むと答えた。
マルコだけは自宅から通う。そのためにギルドへの通り道であるこの場所の物件を選んだらしい。
そして色々と話をした後、マルコは帰宅し、他の四人はそれぞれの荷物を取りに行った。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
SE転職。~妹よ。兄さん、しばらく、出張先(異世界)から帰れそうにない~
しばたろう
ファンタジー
ブラック企業で倒れたSEが、
目を覚ますと――そこは異世界だった。
賑やかなギルド、個性豊かな仲間たち、
そして「魔法」という名のシステム。
元エンジニアの知識と根性で、男は再び“仕事”を始める。
一方、現実世界では、
兄の意識が戻らぬまま、妹が孤独と絶望の中で抗っていた。
それでも彼女は、心ある人々に支えられながら、
科学と祈りを武器に、兄を救う道を探し続ける。
二つの世界を隔てる“システム”の謎が、やがて兄妹を結びつける。
異世界と現実が交錯するとき、物語は再起動する――。
《「小説家になろう」にも投稿しています》
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる