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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱
第30話 マンドラゴラかラフレシアか
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翌日はマルコが休みのため、ロキ、アルマ、ココロの三人での探索となった。
三人で一緒にレギオン社屋を出発し、レギオンへと向かう。
「足が遅くてすいません!」
ロキの歩く速度に遅れてしまい、申し訳なさそうに言うアルマの足元に視線を落とすと、ロキはアルマの履いている靴が気になった。
「アルマ、迷宮を探索するなら、もっと歩きやすい靴に変えた方がいいんじゃないか?その靴は街中を歩くならオシャレでいいかもしれないが、もっと靴底が厚くてしっかりと紐で縛るような靴の方が迷宮を歩きやすいんじゃないか?」
アルマが現在履いている靴は、いわゆるスリップオンタイプの履きやすい靴で、リボンの形の付いた女の子が好みそうなデザインのものであった。平坦な街中を歩くのであれば気にならないかもしれないが、迷宮の中を歩くのであればいわゆる登山靴やブーツの方が疲れにくい。
デザインが気に入っていてこだわっているのかと思ったが、アルマの答えはロキの想定外の返答であった。
「これはこの街に来る時に履いてきた靴なんですが、迷宮探索用の靴を買いたくてもお金がなくてなかなか買えないんですよー」
お金がないというのが恥ずかしいのか、照れ笑いを浮かべながら話すアルマ。
ロキはビックリしてすぐに提案した。
「そんなの自分の金で買わなくてもいい。これからは装備品はレギオンの金で買おう。善は急げだ。今すぐ買いに行こう」
「えっ?!買って貰っちゃっていいんですか?!」
「いいも何も大手の上位メンバーはレギオンの金で装備品を揃えてるんだ。俺たちのレギオンは二チームしかないんだから、レギオンの金で装備を揃えて当たり前だ。そもそも自分の金で装備品を買わなきゃいけない事がおかしいんだ!装備品を買った時は領収書をレギオンに提出させられてただろ?実はそれは必要経費として計上できて、税金対策になってるんだ」
「……?すいません、よく分かりません」
「簡単に言うとだな、俺たちは今まで収入に応じて税金を払った後の金額を給料として貰っていた。その金で装備品を買ったら、装備品の金額分税金が安くなるはずだが、俺たちの手元には戻って来なかった」
「え?どこに消えたんですか?」
「レギオンに入ってたんだ。俺たちが自分の金で装備品を買うほどレギオンが得をするなんて、おかしな話だ。俺たちのレギオンではレギオンの金で装備品を買い、それで税金を計算してから差し引き分を給料として払えるようにしていきたいと思う」
「難しいですけど、その方が得ってことですよね?」
「俺も税金の専門家じゃないからうまく説明できなくてすまん」
「いえ、全面的にお任せします!」
その後もう少し説明をして、これまで給料の中でやりくりして迷宮探索に必要なものを揃えなければいけないと聞いていたものが、給料は全て自分の好きなことに使っていいと分かり、アルマとココロは給料で何を買おうかという話題で盛り上がっていた。
そしてギルドの武器防具販売所にて、アルマが疲労軽減の効果が付いたブーツを購入すると、ココロも同じように敏捷性上昇の効果の付いた靴を購入した。
「それじゃ探索の準備はできたな。今日から売却用のアイテムを集めるための探索を行う。今日狙うのは薬草だ。薬草はポーションの原料となる貴重なアイテムだが、あまりたくさん集まりすぎると買取価格が安くなってしまう。そしたら今度はまた違う素材を取りに行こう」
マルコから魔法の練習は怠るなと言われてはいるが、練習しているばかりでは稼ぎが厳しくなる。
そこで魔法の練習はしつつ、収入を確保するためにドロップアイテムを集める探索をすることにした。
「「はーい!」」
ロキの話を聞いた女性二人の能天気な返事が響く。
二人はいまいち迷宮探索という危険な仕事に対しての心構えが足りないような気もするが、まあ浅層探索をしているうちは特に問題はないだろう。
「ロキさん、薬草ってどこで手に入るんですか?」
「ああ、植物系の魔物がよくドロップするんだ。特にトレントという木の魔物は薬草のドロップ率が高い。だがトレントはそもそも遭遇する確率が低い。一般的に薬草採集するならマンドラゴラという魔物を倒しに行くことが多いが、今回は食虫花がターゲットだ」
「何でマンドラゴラじゃないんですか?」
「実はな、ギルドでは全ての探索結果のデータが集計されている。トレントの薬草ドロップ率は80%、マンドラゴラが32%、ラフレシアなら18%とかな。それだけじゃない。各階層の魔物との遭遇回数なんかもデータがあるんだ」
「へえー、でもそれだったらやっぱりマンドラゴラの方が薬草が手に入りやすいんじゃないですか?」
「そこだ!ドロップ率だけならそうだ。だから薬草採集をしたい者はマンドラゴラを倒しに行く。だけどな、遭遇回数を調べてみると、トレントとの遭遇が最も多い27階層での一日での平均遭遇数は0.5体。マンドラゴラの遭遇が多いのが17階層で平均遭遇数は32体。19階層のラフレシアの平均遭遇数は10体、だがそれは平均で19階層にはラフレシアがポップする沼地が数か所あることが判明している」
「えっと、私も実家がお店をしているので簡単な計算ならできるんですけど……」
「結論を言うとな、1日の探索でトレントを倒しに行って薬草を手に入れることができるのは0.4個、つまり5日で2個だな。マンドラゴラを倒しに行った場合は一日およそ10枚。だがラフレシアのポップ箇所へ行って例えば100体倒せば18枚」
「倒せば倒すほど増えるってことですね?」
「そうだ。それプラス倒した数の魔石が手に入る。薬草で稼ぐならラフレシアだ。ギルドにはこういうデータがただで見れるのに、誰も有効活用できていない。俺たちはこのデータを使って稼ぐぞ!」
★★★★★★★★
結局、この日ロキたちが倒したラフレシアの数は180体。手に入れた薬草は32枚だった。
ドロップ率はギルドの資料通りであったが、一つだけ誤算があった。
「ラフレシアって臭いですね……」
「鼻が曲がりそー」
「ううむ……、二人の買ったばかりの靴にも臭いが付いてしまってそうだな。帰りに強い石鹸と臭い消し買って行こう……」
「もうラフレシアとは戦いたくないです……」
「ココロも嫌ー」
「……すまん」
三人で一緒にレギオン社屋を出発し、レギオンへと向かう。
「足が遅くてすいません!」
ロキの歩く速度に遅れてしまい、申し訳なさそうに言うアルマの足元に視線を落とすと、ロキはアルマの履いている靴が気になった。
「アルマ、迷宮を探索するなら、もっと歩きやすい靴に変えた方がいいんじゃないか?その靴は街中を歩くならオシャレでいいかもしれないが、もっと靴底が厚くてしっかりと紐で縛るような靴の方が迷宮を歩きやすいんじゃないか?」
アルマが現在履いている靴は、いわゆるスリップオンタイプの履きやすい靴で、リボンの形の付いた女の子が好みそうなデザインのものであった。平坦な街中を歩くのであれば気にならないかもしれないが、迷宮の中を歩くのであればいわゆる登山靴やブーツの方が疲れにくい。
デザインが気に入っていてこだわっているのかと思ったが、アルマの答えはロキの想定外の返答であった。
「これはこの街に来る時に履いてきた靴なんですが、迷宮探索用の靴を買いたくてもお金がなくてなかなか買えないんですよー」
お金がないというのが恥ずかしいのか、照れ笑いを浮かべながら話すアルマ。
ロキはビックリしてすぐに提案した。
「そんなの自分の金で買わなくてもいい。これからは装備品はレギオンの金で買おう。善は急げだ。今すぐ買いに行こう」
「えっ?!買って貰っちゃっていいんですか?!」
「いいも何も大手の上位メンバーはレギオンの金で装備品を揃えてるんだ。俺たちのレギオンは二チームしかないんだから、レギオンの金で装備を揃えて当たり前だ。そもそも自分の金で装備品を買わなきゃいけない事がおかしいんだ!装備品を買った時は領収書をレギオンに提出させられてただろ?実はそれは必要経費として計上できて、税金対策になってるんだ」
「……?すいません、よく分かりません」
「簡単に言うとだな、俺たちは今まで収入に応じて税金を払った後の金額を給料として貰っていた。その金で装備品を買ったら、装備品の金額分税金が安くなるはずだが、俺たちの手元には戻って来なかった」
「え?どこに消えたんですか?」
「レギオンに入ってたんだ。俺たちが自分の金で装備品を買うほどレギオンが得をするなんて、おかしな話だ。俺たちのレギオンではレギオンの金で装備品を買い、それで税金を計算してから差し引き分を給料として払えるようにしていきたいと思う」
「難しいですけど、その方が得ってことですよね?」
「俺も税金の専門家じゃないからうまく説明できなくてすまん」
「いえ、全面的にお任せします!」
その後もう少し説明をして、これまで給料の中でやりくりして迷宮探索に必要なものを揃えなければいけないと聞いていたものが、給料は全て自分の好きなことに使っていいと分かり、アルマとココロは給料で何を買おうかという話題で盛り上がっていた。
そしてギルドの武器防具販売所にて、アルマが疲労軽減の効果が付いたブーツを購入すると、ココロも同じように敏捷性上昇の効果の付いた靴を購入した。
「それじゃ探索の準備はできたな。今日から売却用のアイテムを集めるための探索を行う。今日狙うのは薬草だ。薬草はポーションの原料となる貴重なアイテムだが、あまりたくさん集まりすぎると買取価格が安くなってしまう。そしたら今度はまた違う素材を取りに行こう」
マルコから魔法の練習は怠るなと言われてはいるが、練習しているばかりでは稼ぎが厳しくなる。
そこで魔法の練習はしつつ、収入を確保するためにドロップアイテムを集める探索をすることにした。
「「はーい!」」
ロキの話を聞いた女性二人の能天気な返事が響く。
二人はいまいち迷宮探索という危険な仕事に対しての心構えが足りないような気もするが、まあ浅層探索をしているうちは特に問題はないだろう。
「ロキさん、薬草ってどこで手に入るんですか?」
「ああ、植物系の魔物がよくドロップするんだ。特にトレントという木の魔物は薬草のドロップ率が高い。だがトレントはそもそも遭遇する確率が低い。一般的に薬草採集するならマンドラゴラという魔物を倒しに行くことが多いが、今回は食虫花がターゲットだ」
「何でマンドラゴラじゃないんですか?」
「実はな、ギルドでは全ての探索結果のデータが集計されている。トレントの薬草ドロップ率は80%、マンドラゴラが32%、ラフレシアなら18%とかな。それだけじゃない。各階層の魔物との遭遇回数なんかもデータがあるんだ」
「へえー、でもそれだったらやっぱりマンドラゴラの方が薬草が手に入りやすいんじゃないですか?」
「そこだ!ドロップ率だけならそうだ。だから薬草採集をしたい者はマンドラゴラを倒しに行く。だけどな、遭遇回数を調べてみると、トレントとの遭遇が最も多い27階層での一日での平均遭遇数は0.5体。マンドラゴラの遭遇が多いのが17階層で平均遭遇数は32体。19階層のラフレシアの平均遭遇数は10体、だがそれは平均で19階層にはラフレシアがポップする沼地が数か所あることが判明している」
「えっと、私も実家がお店をしているので簡単な計算ならできるんですけど……」
「結論を言うとな、1日の探索でトレントを倒しに行って薬草を手に入れることができるのは0.4個、つまり5日で2個だな。マンドラゴラを倒しに行った場合は一日およそ10枚。だがラフレシアのポップ箇所へ行って例えば100体倒せば18枚」
「倒せば倒すほど増えるってことですね?」
「そうだ。それプラス倒した数の魔石が手に入る。薬草で稼ぐならラフレシアだ。ギルドにはこういうデータがただで見れるのに、誰も有効活用できていない。俺たちはこのデータを使って稼ぐぞ!」
★★★★★★★★
結局、この日ロキたちが倒したラフレシアの数は180体。手に入れた薬草は32枚だった。
ドロップ率はギルドの資料通りであったが、一つだけ誤算があった。
「ラフレシアって臭いですね……」
「鼻が曲がりそー」
「ううむ……、二人の買ったばかりの靴にも臭いが付いてしまってそうだな。帰りに強い石鹸と臭い消し買って行こう……」
「もうラフレシアとは戦いたくないです……」
「ココロも嫌ー」
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