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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱
第48話 ギルド長からの呼び出し
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この日、迷宮探索を終えたロキに、迷宮探索ギルドのギルド長から面会したいという話があった。ロキは渋々仲間たちと分かれ、一人応接室へと向かった。
ロキたちのレギオンにおいてあるものとは全く違う高級な革のソファに座ると、自分たちの払っている税金はこういうことに使われているのかと思い、いささか心外に感じる。
それにしても今日は一体何の用で呼び出されたのだろう?特に問題のある行動を取った覚えはない。だが、だいたいがこういう呼び出しはレギオンへの警告など、ろくでもないものだ。考えるほど胃がキリキリしてくる。
しばらく部屋に一人で待っていると、その男はやってきた。
黒い髪を短く切りそろえ、タイトな黒いスーツを身にまとった中年紳士。それがギルド長の印象だ。
「待たせてすまなかったな」
ギルド長はそう言ってから、ロキの向かいの席へと座った。
「今日は一体何の用ですか?」
「要件がなくては会ってもらえないかね?若い探索者が立ち上げたレギオンがとても活躍していると聞いてね。どんな若者なのかと思い、一度会ってみたいと思っていたんだ」
「要件ないの?」
「用も無いのに呼び出すわけがないだろう?」
「どっちなんだよ?!」
ロキはこうしてギルド長と話すのは初めてだが、初対面からこの掴みどころの無さに困惑した。
「まあまあ落ち着きたまえ。こうして君と一度話してみたかったのも本当だ。意外と普通の男なんだな」
「意外って……」
「いろいろ聞いているぞ……」
そう言ってギルド長は抱えていた書類を読みだす。
「迷宮探索者ロキ。五年前15歳の時に迷宮探索者となり、大手レギオン『大いなる剣槍』に入社、同レギオンを今年突然退社し、新たにレギオンを設立する。『大いなる剣槍』在籍時には特に目を見張る活躍はなく、D級探索者止まりであった」
「うるせえよ!」
ロキの突っ込みを無視し、ギルド長は資料を読み続ける。
「だが新たに設立したレギオン『新体制』……これはどういう意味かね?」
「それは新しい仕組み、これまでのブラックな労働環境をぶち壊してホワイトな環境を作るって意味だ」
「ふむ……新たな秩序か。まあいい。新たに設立したレギオンでは、これまでどこのレギオンにも見られなかった収益率をあげている。なるほど。君もご存じの通りその胸から下げたギルド証は特殊なマジックアイテムでね。探索した階層、探索箇所のオートマッピング、討伐した魔物の情報が自動で記載されている。君たちのパーティーの人数に対し、収益率が非常に高いというのは事実だろう。これは何か理由があるのかな?」
「企業秘密だ」
「まあそう簡単には教えてもらえないか。ふむ、この資料によると前のレギオンを辞めるきっかけとなったのは、最後の探索でモンスタートレイン事故に巻き込まれたとあるな。しかしなぜそれが自らレギオンを立ち上げるきっかけに?」
「……」
「ふむ、女探索者パーティーからモンスタートレインをなすりつけられたという話もあるらしいな。君たちのパーティーが苦情を申し立てたが、結局被害がなかったため取り下げられたと。最後に遭難しかけた若い女性探索者を助けたのが君だと」
「……」
「その助けられた女探索者、回復術士アルマも君と同時にレギオンを退社。そして君と、君の友人A級探索者のレオン、そしてギルドで偶然出会ったレギオンで問題を起こしていたハーフリングのココロと、一度探索者を引退した魔法使いマルコ氏との五人でレギオンを設立した。まあ後の三人はレギオン設立のために無理やり集めたという感じみたいだね」
「……」
「つまり君と回復術士アルマが、モンスタートレイン事故の最中に巡り合い恋愛関係となり、お互いにレギオンを辞めて一緒にレギオンを設立したと……」
「俺とアルマが?それはないよ!」
「違うのかね?」
「違う違う!」
荒唐無稽な話にロキが笑っていると、ギルド長はため息をついて話を続ける。
「そんなにおかしいかね?命の危険を共にすると恋愛感情が発生することもあると思うが……。この資料もあてにならないねえ」
「そもそも何で俺のことをそんなに調べ上げてどうするつもりなんだよ?」
「うむ。君は迷宮探索だけでなくレギオンの税理士もしているそうだね。君が税理士試験で不正したのではないかという告発が来ているんだ」
「ゲイズの野郎か?」
「そうだ。だが君のレギオンから提出されている報告には全く問題がないようだし、その告発は勘違いのようだな」
「勘違いじゃなくて逆恨みだ」
「まあ君たちのレギオンのように順風満帆だと、逆恨みの一つもあるだろう。ゲイズ氏には調査したが誤解のようだと伝えておこう。まあ今回君を呼び出した理由はこれだけじゃないんだが……」
「まだあるのか?」
「うむ。先ほども言ったが、君たちのパーティーはアイテム回収率が非常に高いらしいな」
「そうらしいな」
「実は今度、大規模な素材収集の依頼が来ている。納期も急いでいるらしくてな。ご存じの通りこの街にある迷宮はここだけではない。私としても他の迷宮のギルドには負けたくなくてな。大手レギオンには依頼しているのだが、君のレギオンでも受けてもらいたい」
「どうせ貴族のバカ息子に迷宮探索を経験させるための素材収集依頼とかなんだろう?なんでそんなのやらなきゃいけないんだよ?」
「だとしたら貴族とのコネができるかもしれないぞ?」
「必要ないね」
「そういえば君はまだD級探索者のままだったな。依頼を受けてくれたら君の探索者階級を上げてやろう」
「上げてもらう必要はないね」
「受けてはもらえないのかね?貴族の依頼なら受けて損はないはずだぞ?」
「貴族もクソも関係ない。むしろ俺たちが血と汗を流して稼いだ金を税金として取り上げる貴族が気に食わないんだ。この依頼は断らせてもらう」
ロキはそう言って席を立つ。
「そうか、報酬額は普段の倍だったんだが、残念だ……」
ドアノブに手をかけたロキは、その姿勢のまま固まっていた。
部屋を出て行きそうで出て行かないロキに、ギルド長が注目しているとロキは振り返って言った。
「その依頼、ぜひやらせてもらおう」
ロキたちのレギオンにおいてあるものとは全く違う高級な革のソファに座ると、自分たちの払っている税金はこういうことに使われているのかと思い、いささか心外に感じる。
それにしても今日は一体何の用で呼び出されたのだろう?特に問題のある行動を取った覚えはない。だが、だいたいがこういう呼び出しはレギオンへの警告など、ろくでもないものだ。考えるほど胃がキリキリしてくる。
しばらく部屋に一人で待っていると、その男はやってきた。
黒い髪を短く切りそろえ、タイトな黒いスーツを身にまとった中年紳士。それがギルド長の印象だ。
「待たせてすまなかったな」
ギルド長はそう言ってから、ロキの向かいの席へと座った。
「今日は一体何の用ですか?」
「要件がなくては会ってもらえないかね?若い探索者が立ち上げたレギオンがとても活躍していると聞いてね。どんな若者なのかと思い、一度会ってみたいと思っていたんだ」
「要件ないの?」
「用も無いのに呼び出すわけがないだろう?」
「どっちなんだよ?!」
ロキはこうしてギルド長と話すのは初めてだが、初対面からこの掴みどころの無さに困惑した。
「まあまあ落ち着きたまえ。こうして君と一度話してみたかったのも本当だ。意外と普通の男なんだな」
「意外って……」
「いろいろ聞いているぞ……」
そう言ってギルド長は抱えていた書類を読みだす。
「迷宮探索者ロキ。五年前15歳の時に迷宮探索者となり、大手レギオン『大いなる剣槍』に入社、同レギオンを今年突然退社し、新たにレギオンを設立する。『大いなる剣槍』在籍時には特に目を見張る活躍はなく、D級探索者止まりであった」
「うるせえよ!」
ロキの突っ込みを無視し、ギルド長は資料を読み続ける。
「だが新たに設立したレギオン『新体制』……これはどういう意味かね?」
「それは新しい仕組み、これまでのブラックな労働環境をぶち壊してホワイトな環境を作るって意味だ」
「ふむ……新たな秩序か。まあいい。新たに設立したレギオンでは、これまでどこのレギオンにも見られなかった収益率をあげている。なるほど。君もご存じの通りその胸から下げたギルド証は特殊なマジックアイテムでね。探索した階層、探索箇所のオートマッピング、討伐した魔物の情報が自動で記載されている。君たちのパーティーの人数に対し、収益率が非常に高いというのは事実だろう。これは何か理由があるのかな?」
「企業秘密だ」
「まあそう簡単には教えてもらえないか。ふむ、この資料によると前のレギオンを辞めるきっかけとなったのは、最後の探索でモンスタートレイン事故に巻き込まれたとあるな。しかしなぜそれが自らレギオンを立ち上げるきっかけに?」
「……」
「ふむ、女探索者パーティーからモンスタートレインをなすりつけられたという話もあるらしいな。君たちのパーティーが苦情を申し立てたが、結局被害がなかったため取り下げられたと。最後に遭難しかけた若い女性探索者を助けたのが君だと」
「……」
「その助けられた女探索者、回復術士アルマも君と同時にレギオンを退社。そして君と、君の友人A級探索者のレオン、そしてギルドで偶然出会ったレギオンで問題を起こしていたハーフリングのココロと、一度探索者を引退した魔法使いマルコ氏との五人でレギオンを設立した。まあ後の三人はレギオン設立のために無理やり集めたという感じみたいだね」
「……」
「つまり君と回復術士アルマが、モンスタートレイン事故の最中に巡り合い恋愛関係となり、お互いにレギオンを辞めて一緒にレギオンを設立したと……」
「俺とアルマが?それはないよ!」
「違うのかね?」
「違う違う!」
荒唐無稽な話にロキが笑っていると、ギルド長はため息をついて話を続ける。
「そんなにおかしいかね?命の危険を共にすると恋愛感情が発生することもあると思うが……。この資料もあてにならないねえ」
「そもそも何で俺のことをそんなに調べ上げてどうするつもりなんだよ?」
「うむ。君は迷宮探索だけでなくレギオンの税理士もしているそうだね。君が税理士試験で不正したのではないかという告発が来ているんだ」
「ゲイズの野郎か?」
「そうだ。だが君のレギオンから提出されている報告には全く問題がないようだし、その告発は勘違いのようだな」
「勘違いじゃなくて逆恨みだ」
「まあ君たちのレギオンのように順風満帆だと、逆恨みの一つもあるだろう。ゲイズ氏には調査したが誤解のようだと伝えておこう。まあ今回君を呼び出した理由はこれだけじゃないんだが……」
「まだあるのか?」
「うむ。先ほども言ったが、君たちのパーティーはアイテム回収率が非常に高いらしいな」
「そうらしいな」
「実は今度、大規模な素材収集の依頼が来ている。納期も急いでいるらしくてな。ご存じの通りこの街にある迷宮はここだけではない。私としても他の迷宮のギルドには負けたくなくてな。大手レギオンには依頼しているのだが、君のレギオンでも受けてもらいたい」
「どうせ貴族のバカ息子に迷宮探索を経験させるための素材収集依頼とかなんだろう?なんでそんなのやらなきゃいけないんだよ?」
「だとしたら貴族とのコネができるかもしれないぞ?」
「必要ないね」
「そういえば君はまだD級探索者のままだったな。依頼を受けてくれたら君の探索者階級を上げてやろう」
「上げてもらう必要はないね」
「受けてはもらえないのかね?貴族の依頼なら受けて損はないはずだぞ?」
「貴族もクソも関係ない。むしろ俺たちが血と汗を流して稼いだ金を税金として取り上げる貴族が気に食わないんだ。この依頼は断らせてもらう」
ロキはそう言って席を立つ。
「そうか、報酬額は普段の倍だったんだが、残念だ……」
ドアノブに手をかけたロキは、その姿勢のまま固まっていた。
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