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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱
第52話 トラバサミの設置は犯罪です
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アルマの不調が精神的ストレスであったことの判明と、誤解からきていたその悩みは解決した。そしてロキのかつての同僚であるアドンの解毒ができ状況が落ち着くと、久しぶりに再会したことで近況について話が盛り上がった。
「アドンの旦那の毒を解毒してくれて助かったよロキ。ありがとう」
「礼だったら俺じゃなくてアルマに言ってくれ」
「お嬢ちゃん、ありがとう。君は若いのに大した魔法使いなんだな」
「い……いえ、そんなことは」
パーシィから礼を言われると、アルマは照れ臭そうにした。
「ウチのレギオンを辞めたロキがどうなったか心配してたんだが、君のように優秀な仲間と一緒なら大丈夫そうだな。女と子供と一緒にやってるって噂は聞いてたんで、大丈夫かあいつって心配してたんだけど」
「ココロは子供じゃない!」
「失礼だな貴様!」
パーシィの失言に、ココロとアポロが苦情を言う。
そんな二人に対し、パーシィは笑いながら謝罪する。
「悪い悪い!俺が言ってるんじゃなくてそういう噂を耳にしたんだ。二人とも子供じゃなくてハーフリングの成人なんだってな」
「分かってるなら許す」
「全く、そんな噂を流してるのはどこのどいつだ!」
アポロはまだ怒っているようだ。
ロキがフォローするように二人を紹介する。
「そうだ。子どもなんかじゃなく、二人も優秀な探索者だよ」
そう言われココロは誇らしげに胸を張り、アポロは照れているのか拗ねているのか横を向いた。
「それにしてもパーシィ、辞めた俺の事を気にしててくれてたんだな」
「まあな。俺よりもこっちのオルテガの方が気にしてたみたいだけどな!何度もお前の話を聞かせてくれってうるさいんだ」
そう言われて紹介された年若い戦士、オルテガの顔を見てロキは思い出す。
「ああ!お前はミノタウロスん時の新人か!」
「はい!お久しぶりっス、ロキさん!」
「何かキャラが変わってないか?」
「その節はすいませんでした!」
そう言ってオルテガはロキに頭を下げる。
パーシィがそんなオルテガの頭をポンと叩き、説明をする。
「ロキに研修を受けてた時、オルテガが指示に従わずに勝手に進んで危うく全滅っていうピンチになったんだってな。その時にロキに助けられて、考えが変わったんだってよ」
「はい。すんません!俺はあん時はチョーシに乗ってました。人間、死んだら終わりっス。ロキさんの言うように、迷宮探索は慎重にやらなきゃダメって分かりました」
「そ、そうか……」
憧れの人と話しているかのように目をキラキラさせて話すオルテガに対し、一緒に迷宮探索をした時とのあまりの変わりっぷりにロキは若干引いていた。
「つうかアドンの旦那!礼を言わなきゃいけないのはあんただろう?」
パーシィにそう言われて、アドンが渋々感謝の言葉を口にする。
「ふん、まあ助かったとだけ言っておこう」
アドンとアルマはモンスタートレインの時に少しだけ面識があった。そのせいでアドンはアルマに対して警戒をしているのかもしれない。
「ちゃんとありがとうって言えよな!ごめんな嬢ちゃん、こいつ頭おかしいんだ」
「いえ、大丈夫です」
パーシィに言われて恐縮するアルマ。
気まずいのか、アドンが話題を変えてくる。
「こんなくだらない話なんかしてても意味はない。探索を再開するぞ!防毒フィルムが高く売れる今、いつもケチなウチのレギオンにしちゃあ珍しくたくさん取れたらボーナスが出るっていうんだから!特別に教えてやるぜロキ。この階層でドロップする防毒フィルムが、今高く売れるらしいぜ!」
「知ってるわ!」
ロキはギルド長から直接依頼されたが、他のレギオンにも収集の依頼を出しているようだ。
「そうは言ってもそのブーツじゃ無理だろう?」
ロキが指さしたアドンのブーツには、トラバサミに挟まれた穴が開いていた。ポーションによって治癒していたアドンの汚い足が、ブーツの穴から見えている。ブーツには防毒処理がなされていたが、この穴ではせっかくの防毒処理も意味がない。再び毒の沼に入ってしまえば、すぐに毒に侵されるだろう。そして毒消しポーションはもうない。
「俺が陸地から支持を出すから、お前たちがスライムを倒すんだ」
「何だよ指示って?ここらの階層はいつも探索してるから俺に任せとけって言ったのはお前だろう?俺は火魔法しか使えないからスライムは燃やし尽くしてドロップしにくいぞ!フーゴの矢は当たらないし、役に立つのはオルテガくらいしかいねえじゃねえか!」
言い争いを始めたアドンとパーシィを、冷たい目で見るロキ。
相変わらずアドンがパーティに入ると無駄だらけのようだ。
オルテガが「自分ががんばります!」と一人張り切っている。
「悪いのは俺じゃない、この罠だ!そもそも何で迷宮にこんな罠があったんだ?」
「確かに……」
アドンの主張に妙に胸騒ぎがした。
アドンがかかった罠。毒の沼の中に仕掛けられていたトラバサミは、明らかに人為的なものだ。迷宮探索者ギルドで禁止されている他の探索者が怪我をする可能性のある罠を設置した誰かがいる。
そして少しの沈黙の後、ロキたちに声をかける者が現れた。
「さっきの光はお前らか?」
ロキたち四人とパーシィ達四人は、声の主を見る。
姿を現したのは、また別のパーティだ。彼らは異様な雰囲気をしていた。
特に声をかけてきた男は、禍々しい形の真っ黒な全身鎧を身にまとっていた。
「おい!黙ってちゃ分からねえだろうが!」
そう言って黒い鎧を着た男はつかつかと歩み寄ってくる。
ロキたちにあと数メートルというところまで近づいてきた時、その足元にあるものに気づく。
「あ?!てめえら、それ俺が仕掛けたトラバサミじゃねえか!何勝手に沼から上げてんだよ!」
その言葉を聞いて、アドンは激怒した。
「お前がトラバサミを仕掛けたのか!危うく死ぬところだったんだぞ!」
アドンが黒い鎧の男に突っかかっていこうとした次の瞬間、男の裏拳がアドンにさく裂する。
勢いよく吹き飛ぶアドン。倒れて埋めぎ声を上げるアドンの顔面は、硬い手甲によって殴られたせいで大量の血が流れていた。
「アドンの旦那の毒を解毒してくれて助かったよロキ。ありがとう」
「礼だったら俺じゃなくてアルマに言ってくれ」
「お嬢ちゃん、ありがとう。君は若いのに大した魔法使いなんだな」
「い……いえ、そんなことは」
パーシィから礼を言われると、アルマは照れ臭そうにした。
「ウチのレギオンを辞めたロキがどうなったか心配してたんだが、君のように優秀な仲間と一緒なら大丈夫そうだな。女と子供と一緒にやってるって噂は聞いてたんで、大丈夫かあいつって心配してたんだけど」
「ココロは子供じゃない!」
「失礼だな貴様!」
パーシィの失言に、ココロとアポロが苦情を言う。
そんな二人に対し、パーシィは笑いながら謝罪する。
「悪い悪い!俺が言ってるんじゃなくてそういう噂を耳にしたんだ。二人とも子供じゃなくてハーフリングの成人なんだってな」
「分かってるなら許す」
「全く、そんな噂を流してるのはどこのどいつだ!」
アポロはまだ怒っているようだ。
ロキがフォローするように二人を紹介する。
「そうだ。子どもなんかじゃなく、二人も優秀な探索者だよ」
そう言われココロは誇らしげに胸を張り、アポロは照れているのか拗ねているのか横を向いた。
「それにしてもパーシィ、辞めた俺の事を気にしててくれてたんだな」
「まあな。俺よりもこっちのオルテガの方が気にしてたみたいだけどな!何度もお前の話を聞かせてくれってうるさいんだ」
そう言われて紹介された年若い戦士、オルテガの顔を見てロキは思い出す。
「ああ!お前はミノタウロスん時の新人か!」
「はい!お久しぶりっス、ロキさん!」
「何かキャラが変わってないか?」
「その節はすいませんでした!」
そう言ってオルテガはロキに頭を下げる。
パーシィがそんなオルテガの頭をポンと叩き、説明をする。
「ロキに研修を受けてた時、オルテガが指示に従わずに勝手に進んで危うく全滅っていうピンチになったんだってな。その時にロキに助けられて、考えが変わったんだってよ」
「はい。すんません!俺はあん時はチョーシに乗ってました。人間、死んだら終わりっス。ロキさんの言うように、迷宮探索は慎重にやらなきゃダメって分かりました」
「そ、そうか……」
憧れの人と話しているかのように目をキラキラさせて話すオルテガに対し、一緒に迷宮探索をした時とのあまりの変わりっぷりにロキは若干引いていた。
「つうかアドンの旦那!礼を言わなきゃいけないのはあんただろう?」
パーシィにそう言われて、アドンが渋々感謝の言葉を口にする。
「ふん、まあ助かったとだけ言っておこう」
アドンとアルマはモンスタートレインの時に少しだけ面識があった。そのせいでアドンはアルマに対して警戒をしているのかもしれない。
「ちゃんとありがとうって言えよな!ごめんな嬢ちゃん、こいつ頭おかしいんだ」
「いえ、大丈夫です」
パーシィに言われて恐縮するアルマ。
気まずいのか、アドンが話題を変えてくる。
「こんなくだらない話なんかしてても意味はない。探索を再開するぞ!防毒フィルムが高く売れる今、いつもケチなウチのレギオンにしちゃあ珍しくたくさん取れたらボーナスが出るっていうんだから!特別に教えてやるぜロキ。この階層でドロップする防毒フィルムが、今高く売れるらしいぜ!」
「知ってるわ!」
ロキはギルド長から直接依頼されたが、他のレギオンにも収集の依頼を出しているようだ。
「そうは言ってもそのブーツじゃ無理だろう?」
ロキが指さしたアドンのブーツには、トラバサミに挟まれた穴が開いていた。ポーションによって治癒していたアドンの汚い足が、ブーツの穴から見えている。ブーツには防毒処理がなされていたが、この穴ではせっかくの防毒処理も意味がない。再び毒の沼に入ってしまえば、すぐに毒に侵されるだろう。そして毒消しポーションはもうない。
「俺が陸地から支持を出すから、お前たちがスライムを倒すんだ」
「何だよ指示って?ここらの階層はいつも探索してるから俺に任せとけって言ったのはお前だろう?俺は火魔法しか使えないからスライムは燃やし尽くしてドロップしにくいぞ!フーゴの矢は当たらないし、役に立つのはオルテガくらいしかいねえじゃねえか!」
言い争いを始めたアドンとパーシィを、冷たい目で見るロキ。
相変わらずアドンがパーティに入ると無駄だらけのようだ。
オルテガが「自分ががんばります!」と一人張り切っている。
「悪いのは俺じゃない、この罠だ!そもそも何で迷宮にこんな罠があったんだ?」
「確かに……」
アドンの主張に妙に胸騒ぎがした。
アドンがかかった罠。毒の沼の中に仕掛けられていたトラバサミは、明らかに人為的なものだ。迷宮探索者ギルドで禁止されている他の探索者が怪我をする可能性のある罠を設置した誰かがいる。
そして少しの沈黙の後、ロキたちに声をかける者が現れた。
「さっきの光はお前らか?」
ロキたち四人とパーシィ達四人は、声の主を見る。
姿を現したのは、また別のパーティだ。彼らは異様な雰囲気をしていた。
特に声をかけてきた男は、禍々しい形の真っ黒な全身鎧を身にまとっていた。
「おい!黙ってちゃ分からねえだろうが!」
そう言って黒い鎧を着た男はつかつかと歩み寄ってくる。
ロキたちにあと数メートルというところまで近づいてきた時、その足元にあるものに気づく。
「あ?!てめえら、それ俺が仕掛けたトラバサミじゃねえか!何勝手に沼から上げてんだよ!」
その言葉を聞いて、アドンは激怒した。
「お前がトラバサミを仕掛けたのか!危うく死ぬところだったんだぞ!」
アドンが黒い鎧の男に突っかかっていこうとした次の瞬間、男の裏拳がアドンにさく裂する。
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