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Phase 2 なぜか世界の命運を担うことになった迷宮探索者の憂鬱
第86話 攻略、迷路階層
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結局キャリーしてもらうことのできた次点の探索者パーティーの探索している階層は、45階層だった。
この迷宮の41階層から50階層は迷路階層となっていて、潜るたびに地図が変わるらしい。そのためギルドにも階層の地図は無く、また特に広いため1日では突破できない。一週間分くらいの荷物を持って迷宮内でキャンプをしながら探索をするのが普通らしい。
ロキたちはとりあえず様子見として一日で帰る程度の荷物しか持たずに45階層へと連れていってもらう。
案内をしてくれた男からは簡単なアドバイスと、キャリーの代金は確実にくれよと言い残してギルドへと帰って行った。
そしてロキたち、迷路階層の中盤である45階層の探索を始めた。
「さて、ギルドでは俺たちの戦力は秘密にしてたが、今回も最短で迷宮踏破をするために全力で行くぞ。勇者パーティーとは5階層も遅れを取ってるんだ。それにあっちは二回目でこの迷宮の情報にも詳しい。アルマ、ココロ、頼んだぞ」
「はい!」
「うん!」
ロキに言われ、すぐにアルマがメンバーを囲う大きさで結界を発動する。
これによってあらゆる魔物と魔法攻撃が結界内へ入ってくることができなくなった。
そしてココロがパーティーの先頭に立ち、仲間を先導する。
ココロの第六感によって、この迷路階層での正しい道を判断し、取りこぼすことのできない重要なアイテムを発見してくれる。
残る男性三人は、戦闘でしか役目は無い。三人はアルマを守るような配置で後に続く。
分岐路を右へ左へ迷わずに進むココロの先導の元しばらく歩いていると、猫背で頭を前に突き出した姿勢の人型の魔物が現れた。
鎧を着て槍を持っているが、その頭部は人間のそれではない。
突き出していて大きな口、左右に飛び出た眼球、何より全身を覆う鱗を見ればそれはリザードマン系の亜種だということが分かる。
そんなトカゲ人間はこちらに気づくと槍を構えた。
念のためレオンがココロを守るような位置に立ち、一行は前進する。
レオンに襲い掛かろうとしてアルマの結界に阻まれたトカゲ人間は、姿勢を崩し後ろへ後退する。
何が起きたか分からず、とりあえず槍を構えたままのトカゲ人間を横目に、ロキたちはその場を通り過ぎた。
そんなやりとりには前のダンジョンで慣れたロキたちパーティーは、誰一人何を言うこともなくそのまま歩き続ける。
しばらく歩いていると、突然通路の壁がゴゴゴと音を立て壁を形成している岩石が波を立て始めた。
初めて見る現象にロキたちは足を止め様子を観察する。すると壁には岩でできた顔のようなものが現れた。
「これが奇岩壁か……」
ギルドで得た情報とその実物を照らし合わせる。
曰く、ところどころで壁に顔が現れ、岩石を吐き出すという。その顔は岩でできているためとても硬く、特に弱点属性もないため、魔法でも物理でもとにかく攻撃を繰り返して倒すか走って逃げるかが一般的な対処法なのだそうだ。
奇岩壁は頬を膨らませ口をすぼめると、こぶし大の岩石を吐き出した。
一応レオンが盾になろうと両手を広げて受け止めようとするが、吐き出された岩石はアルマの結界に触れると消滅してしまった。
つまり奇岩壁の吐き出す岩は物理ではなく、魔法か魔物の肉体の一部なのであろう。
物理的な岩であったら奇岩壁の前は吐き出された岩石が山のように積み重なっているだろうが、そういう場所が発見されたとも聞かなかったし、アルマの結界に触れずともしばらくすると迷宮に吸収されて消えるようなしろものだろう。
そんな検証が終わると、レオンが念のためどれだけ強いか確認したいと言った。
「まあいいんじゃないの?」
急いでいるためスルーしても良かったが、レオンであればそれほど時間もかからないだろうと思ったロキはそう答えた。
アルマの結界から出たレオンのところに、再び吐き出された岩石が襲う。
だがレオンはそれを片手で払いのけると、奇岩壁へと猛スピードで駆け出す。
大きく振りかぶった右腕の拳を振り下ろす。
激しく岩が砕ける音が鳴り響くと、砕けた奇岩壁は崩れ落ち、そして煙となって消えた。
後には元通りの壁と、足元に転がる魔石だけが残った。
★★★★★★★★
その後も同じ魔物が出没したが、一行は結界に守られながら戦闘を行わずに迷宮を進んだ。
休憩もなく誰もが歩き疲れたと言う弱音を吐かないまま辿り着いたそこで、ココロは前方を指さした。
「あの向こう」
ココロが指さしたのは一回り大きな奇岩壁の扉、いや奇岩扉と呼ぶべきだろうか。
その扉の両脇には今にも動き出しそうな岩でできた人型の像が立っている。
「中ボスかな。あの扉を進まなきゃいけなんだな」
「うん」
ココロに肯定されたため、ロキたちは久しぶりに強制戦闘へと突入する。
「それじゃ行くかレオン。それじゃアポロ、いつものように援護と二人の護衛を頼むぞ」
二人は黙ってうなずいた。
レオンとロキがそろって結界から踏み出すと、奇岩扉の目は見開かれ、左右の石像も動き出し始めた。
「≪火炎槍≫!」
ロキが放った炎の槍が右の石像にさく裂する。胸に大きな穴を開けると、石像はよろめいた。
左側の石像が走るレオンに殴り掛かろうとした時、アポロの放った矢が石像の頭部に着弾する。
ただの矢ではダメージは受けそうにないのだが、その矢は魔力の宿った特殊な矢で、当たった瞬間に爆発し石像の頭部を破壊した。
二人のフォローを受け奇岩扉の正面にたどり着いたレオンが攻撃をしようとした時、先に奇岩扉が岩を吐き出した。
奇岩壁の吐き出す一個の岩と違い、奇岩扉は大量の小さな石を広範囲に広がるように吐き出した。
レオンは両手で顔を覆うが、すべての攻撃の回避ができず、直撃を食らう。
「痛ててててて!」
だがそれは致命傷に至ることはなく、レオンにしたらただ痛いだけの攻撃だった。
「≪ヒール≫!」
それでも心配したアルマのヒールが飛び、レオンの感じた痛みはすぐに霧散する。
ちなみにロキは正面に≪石壁≫の魔法を展開し、自分だけ無傷だった。
奇岩扉の目の前までやってきたレオンは、その扉に対して殴る蹴るの連続攻撃を浴びせた。
奇岩扉の顔がまるで痛みを感じているかのように変形してゆき、そして最後の一撃を浴びた瞬間扉全体が崩れ落ちていった。
「ま、こんなもんか」
中ボスの奇岩扉を撃破した感想を漏らすレオンに、アルマが心配そうに声をかける。
「レオンさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫すぎて物足りないくらいだ」
レオンは笑顔でそう答えた。
この迷宮の41階層から50階層は迷路階層となっていて、潜るたびに地図が変わるらしい。そのためギルドにも階層の地図は無く、また特に広いため1日では突破できない。一週間分くらいの荷物を持って迷宮内でキャンプをしながら探索をするのが普通らしい。
ロキたちはとりあえず様子見として一日で帰る程度の荷物しか持たずに45階層へと連れていってもらう。
案内をしてくれた男からは簡単なアドバイスと、キャリーの代金は確実にくれよと言い残してギルドへと帰って行った。
そしてロキたち、迷路階層の中盤である45階層の探索を始めた。
「さて、ギルドでは俺たちの戦力は秘密にしてたが、今回も最短で迷宮踏破をするために全力で行くぞ。勇者パーティーとは5階層も遅れを取ってるんだ。それにあっちは二回目でこの迷宮の情報にも詳しい。アルマ、ココロ、頼んだぞ」
「はい!」
「うん!」
ロキに言われ、すぐにアルマがメンバーを囲う大きさで結界を発動する。
これによってあらゆる魔物と魔法攻撃が結界内へ入ってくることができなくなった。
そしてココロがパーティーの先頭に立ち、仲間を先導する。
ココロの第六感によって、この迷路階層での正しい道を判断し、取りこぼすことのできない重要なアイテムを発見してくれる。
残る男性三人は、戦闘でしか役目は無い。三人はアルマを守るような配置で後に続く。
分岐路を右へ左へ迷わずに進むココロの先導の元しばらく歩いていると、猫背で頭を前に突き出した姿勢の人型の魔物が現れた。
鎧を着て槍を持っているが、その頭部は人間のそれではない。
突き出していて大きな口、左右に飛び出た眼球、何より全身を覆う鱗を見ればそれはリザードマン系の亜種だということが分かる。
そんなトカゲ人間はこちらに気づくと槍を構えた。
念のためレオンがココロを守るような位置に立ち、一行は前進する。
レオンに襲い掛かろうとしてアルマの結界に阻まれたトカゲ人間は、姿勢を崩し後ろへ後退する。
何が起きたか分からず、とりあえず槍を構えたままのトカゲ人間を横目に、ロキたちはその場を通り過ぎた。
そんなやりとりには前のダンジョンで慣れたロキたちパーティーは、誰一人何を言うこともなくそのまま歩き続ける。
しばらく歩いていると、突然通路の壁がゴゴゴと音を立て壁を形成している岩石が波を立て始めた。
初めて見る現象にロキたちは足を止め様子を観察する。すると壁には岩でできた顔のようなものが現れた。
「これが奇岩壁か……」
ギルドで得た情報とその実物を照らし合わせる。
曰く、ところどころで壁に顔が現れ、岩石を吐き出すという。その顔は岩でできているためとても硬く、特に弱点属性もないため、魔法でも物理でもとにかく攻撃を繰り返して倒すか走って逃げるかが一般的な対処法なのだそうだ。
奇岩壁は頬を膨らませ口をすぼめると、こぶし大の岩石を吐き出した。
一応レオンが盾になろうと両手を広げて受け止めようとするが、吐き出された岩石はアルマの結界に触れると消滅してしまった。
つまり奇岩壁の吐き出す岩は物理ではなく、魔法か魔物の肉体の一部なのであろう。
物理的な岩であったら奇岩壁の前は吐き出された岩石が山のように積み重なっているだろうが、そういう場所が発見されたとも聞かなかったし、アルマの結界に触れずともしばらくすると迷宮に吸収されて消えるようなしろものだろう。
そんな検証が終わると、レオンが念のためどれだけ強いか確認したいと言った。
「まあいいんじゃないの?」
急いでいるためスルーしても良かったが、レオンであればそれほど時間もかからないだろうと思ったロキはそう答えた。
アルマの結界から出たレオンのところに、再び吐き出された岩石が襲う。
だがレオンはそれを片手で払いのけると、奇岩壁へと猛スピードで駆け出す。
大きく振りかぶった右腕の拳を振り下ろす。
激しく岩が砕ける音が鳴り響くと、砕けた奇岩壁は崩れ落ち、そして煙となって消えた。
後には元通りの壁と、足元に転がる魔石だけが残った。
★★★★★★★★
その後も同じ魔物が出没したが、一行は結界に守られながら戦闘を行わずに迷宮を進んだ。
休憩もなく誰もが歩き疲れたと言う弱音を吐かないまま辿り着いたそこで、ココロは前方を指さした。
「あの向こう」
ココロが指さしたのは一回り大きな奇岩壁の扉、いや奇岩扉と呼ぶべきだろうか。
その扉の両脇には今にも動き出しそうな岩でできた人型の像が立っている。
「中ボスかな。あの扉を進まなきゃいけなんだな」
「うん」
ココロに肯定されたため、ロキたちは久しぶりに強制戦闘へと突入する。
「それじゃ行くかレオン。それじゃアポロ、いつものように援護と二人の護衛を頼むぞ」
二人は黙ってうなずいた。
レオンとロキがそろって結界から踏み出すと、奇岩扉の目は見開かれ、左右の石像も動き出し始めた。
「≪火炎槍≫!」
ロキが放った炎の槍が右の石像にさく裂する。胸に大きな穴を開けると、石像はよろめいた。
左側の石像が走るレオンに殴り掛かろうとした時、アポロの放った矢が石像の頭部に着弾する。
ただの矢ではダメージは受けそうにないのだが、その矢は魔力の宿った特殊な矢で、当たった瞬間に爆発し石像の頭部を破壊した。
二人のフォローを受け奇岩扉の正面にたどり着いたレオンが攻撃をしようとした時、先に奇岩扉が岩を吐き出した。
奇岩壁の吐き出す一個の岩と違い、奇岩扉は大量の小さな石を広範囲に広がるように吐き出した。
レオンは両手で顔を覆うが、すべての攻撃の回避ができず、直撃を食らう。
「痛ててててて!」
だがそれは致命傷に至ることはなく、レオンにしたらただ痛いだけの攻撃だった。
「≪ヒール≫!」
それでも心配したアルマのヒールが飛び、レオンの感じた痛みはすぐに霧散する。
ちなみにロキは正面に≪石壁≫の魔法を展開し、自分だけ無傷だった。
奇岩扉の目の前までやってきたレオンは、その扉に対して殴る蹴るの連続攻撃を浴びせた。
奇岩扉の顔がまるで痛みを感じているかのように変形してゆき、そして最後の一撃を浴びた瞬間扉全体が崩れ落ちていった。
「ま、こんなもんか」
中ボスの奇岩扉を撃破した感想を漏らすレオンに、アルマが心配そうに声をかける。
「レオンさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫すぎて物足りないくらいだ」
レオンは笑顔でそう答えた。
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