迷宮探索者の憂鬱

焔咲 仄火

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Phase 2 なぜか世界の命運を担うことになった迷宮探索者の憂鬱

第89話 ルナの回答

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「ごめんなさいロキさん……。私は、あなたと一緒に行けません……」

 ロキから一緒に逃げないかと提案されたレオーネは、悲しそうな顔でそう返事した。

「それは……」

「ロキさん、一緒に逃げようと言ってくれてとても嬉しかったわ。でも私には聖女としての力がある。助けられる人がたくさんいるのです。そんな人たちを捨てて、自分だけ幸せになろうなんてできないわ」

 レオーネの瞳から一筋の涙がこぼれた。
 それはレオーネの真意だろう。
 ロキと一緒に逃げた先にある生活にも魅力を感じたのだろうが、それ以上に聖女である責任感、彼女にとってはそちらの方が重かった。

「分かりました。だとしたらルナさん。俺たちも逃げない」

「そんなこと言わないでください」

「別に死ぬつもりじゃありません。俺たちは勇者よりも先にこの迷宮を踏破します」

「そんなことできるはずがありません!だって私たちはもう55階層なんですよ」

「俺たちは今日およそ6時間で45階層を突破しました。明日からは一日で三階層ずつ踏破してゆく予定です」

「そんな?迷路階層なんて、一度この迷宮を踏破したことのある私たちだって一日じゃ無理なのに……」

 信じられなかったが、ここでロキがつまらない嘘をつくはずがないことを理解しているレオーネは、ロキたちの実力が自分が思っている以上だと知る。

「それでも一日三階層は無茶ですよ」

「ルナさん、もしよかったらこの先の階層の攻略法を教えてもらえませんか?そうすればより確実に一日三階層踏破できるはず」

「本気なんですね?……分かりました。私の知る限りのことをお伝えします」

「それともう一つお願いが」

「何でしょう?」

「もしかしたら迷宮で勇者パーティーと遭遇し、戦闘になる可能性もあります。その時はルナさんは手を出さないでください。そのことを勇者に責められたら、俺がルナさんを守ります」

「それは……分かりました。でも勇者様の力は本当に規格外です。いくらロキさんたちがすごい探索者だとしても、危険を感じたら逃げてくださいね」

「ありがとうございます。ですが俺は多分負けません。それとあともう一つ、神殿による聖女の扱いについてなんですが、正直言って酷すぎます。神官たちの腐敗ぶりもひどいし、ルナさんを過重労働をさせすぎです。俺が国王の力を借りて神殿の仕組みを変えます。ルナさんを今のブラックな環境から救い出すことを約束します」

「ロキさん……、私の事まで心配してくれて、ありがとう。もし本当に叶ったらとても嬉しいわ」

 その後ロキたちは、勇者と共に一度ここの迷宮を踏破したことのあるレオーネより迷宮の情報を収集した。

★★★★★★★★

 翌日、ロキたちがギルドへ行くと、受付の職員の女性から開口一番謝罪をされた。
 ギルド長からロキたちへの協力をしてはいけないと命令が出されたのだという。
 迷宮探索はしても良いが、それ以外のギルド内でのすべてのサービスを受けられないという話だった。
 ギルド内でのサービスとは、ポーションや武器・道具の売買、怪我の治療、迷宮情報の閲覧などである。
 だがロキたちにはもはやあまり関係が無い。ポーションも怪我の治療もアルマがいれば必要が無いし、迷宮情報についてはレオーネより教えてもらったばかりだ。そもそも最深部の情報をギルドは持っていない。武器道具の売買も特に必要がない。税金を申告するための記録は自分たちで残して、ギルドを介さずに直接役所へと税金を納めればいい。そのためギルド長アポカリプソンの嫌がらせは、ロキたちにとって大した問題ではなかった。
 だがギルドの窓口の女性はロキへと謝罪した。本来迷宮探索者へは平等にサービスを与えなくてはならないのにと。あのギルド長は探索者だろうが職員だろうが気に入らない人へはすぐに嫌がらせをするし、みんなからの評判も悪いらしい。ブラックな職場だ。
 だからロキは謝罪する職員にこう伝えた。

「俺たちがこの迷宮を踏破したら、あの男は失脚する。このギルドはどうなるか分からないけど、あんたらが次の仕事に困らないよう迷宮探索者ギルド本部に頼んどくから」

 職員はそんなロキの言葉は信じられなかったが、でもそういって励ましてくれることが嬉しくて笑顔を見せた。

★★★★★★★★

 46階層。

 45階層でのボス部屋の入口にいた魔物、奇岩扉がこの階層でも出現し、ロキの魔法≪火炎槍ファイヤーランス≫の連射によって容易に破壊された。

「ルナさんの話だと、46階層は奇岩扉を破壊した先の道が近道だそうだ。見つけ次第どんどん倒していくぞ」

 そう言ってココロと一緒に先頭を進むロキは、奇岩扉を見つけるたびに速攻でそれを破壊してゆく。奇岩壁やリザードマンなどの魔物は全て無視し、奇岩扉だけを倒す作業のような戦闘を続け、トータルで10体目の奇岩扉を倒した時、その先には広い空間が広がっていた。

「ボス部屋か。早かったな。体感でだいたい四時間くらいかな?ボスを倒したら昼飯にしよう」

 戦う前から余裕を見せるロキ。部屋の中央には高さ3mはあるドーム状の岩の塊があった。
 アルマがレオーネから聞いていた攻略をメモした紙を読み始める。

「46階層のボスは巨岩亀。あの岩が多分甲羅ですね。岩を吐いたり体当たりして攻撃してくるそうです。甲羅はとても硬くて、頭や手足を出した時しかダメージを与えられなくて、ダメージが堆積してくると甲羅にこもる時間が長くなるので持久戦になるそうです」

 アルマが説明をしている途中で、ロキは呪文を唱えていた。

「≪隕石落としメテオフォール≫!」

 ボス部屋の天井の一部が赤く光り出し、そこから真っ赤な隕石の塊が生えるようにして落ちてくる。
 中央に鎮座していたボスにそれがさく裂すると、巨岩亀は痛みで叫び声を上げると顔と手足を出した。

「≪隕石落としメテオフォール≫!」

 巨岩亀に攻撃させる暇もなく二回目のメテオがさく裂し、一定以上のダメージを受けた巨岩亀は再び手足を引っ込め防御態勢に入った。

「≪隕石落としメテオフォール≫!」

 懲りずに同じ攻撃を繰り返すロキ。魔力切れを防ぐためアルマからヒールを受け、そしてさらに追撃で四回目のメテオを繰り出す。

「≪隕石落としメテオフォール≫!」

「ロキさん、防御態勢の時は攻撃が効かないそうですよ」

 そんなアルマの言葉を無視して、ロキは五回目のメテオを落とした。

「≪隕石落としメテオフォール≫!」

 激しい激突音と共に、巨岩亀の甲羅が割れ、叫び声と共に巨岩亀は血液をまき散らすと、煙となって消滅した。
 あっけなくボスを倒してしまったロキにアルマ、ココロ、アポロがあっけにとられていると、レオンがロキに向かってぼやいた。

「無茶苦茶強引だな。俺の出番がないじゃないか……」

「本気のタイムアタックをするんだ。俺の最大の攻撃力の魔法を遠慮なくぶつけるしかないだろう」

 振り返ってそう答えるロキに、レオンはニヤリと笑うと、ロキの肩をボンと叩いて答えた。

「分かった。大物はお前の魔法に任せる。素早さや小回りが必要な敵は俺に任せてくれ」

 そう言うと五人は47階層へと降りて行った。
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