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第77話 戦争をしたい者、終わらせたい者2
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「それではこれで正式に、次にどちらかが再び戦争再開の宣言をするまで、お互いに休戦という事になります」
同じ内容の書かれた二枚の羊皮紙には、それぞれ魔界の副官シオンと、人間族の将軍バルイーグルのサインと血判が押された。
「私たちとしては、先ほども言ったように、このまま終戦協定を結ぶことを望んでいる。貴国の最高責任者、国王なのか大司祭なのか知らぬが、そちらに私の言った条件を飲んでもらえるようしっかりと伝えてくれ」
「魔界の一部の占拠権を認める事と、魔石の大型鉱山を差し出すという話ですね。私は飽くまで戦術の最高責任者ですので私の口から確約を回答することはできませんが、上へと伝える事だけは約束しましょう。それにしても今まで一歩も譲らなかった貴方たち魔族の方から、休戦を申し出てくるとはどうしました?やけに弱気になりましたね?」
兜は取ったものの、この会議室でも全身鎧を脱いでいない将軍バルイーグルは、シオンの顔色を伺いながらそんな言葉を投げかける。腹の探り合いだ。
そんな嫌味に聞こえるバルイーグルの問に、シオンは顔色を変えることなく答える。
「戦争をすることは最初から我々の本意ではない。戦闘がどこにも行われていない今こそ、戦争を終わらせるチャンスと見ただけだ」
「ほう。私はてっきり噂が本当なのかと思いましてね。人間界の勇者によって、魔王が殺されたという……」
ニヤニヤしながらシオンを見つめるバルイーグル。
シオンは顔色一つ変えることはないが、その横で立っているルビィにはこの男に対する怒りが顔に出ている。
反対に立つマグマは、本来シオンを護るためにここに立っているが、場合によってはルビィを押さえる必要もあると周囲全体の挙動を気にしている。
シオンは、そんな横に立っている二人に構う事なく、毅然とした態度で答える。
「魔王様は健在です。そちらの勇者による襲撃で怪我を負った事は事実。ですが大事を取って魔王城に籠ってもらっているだけです。それよりもあなた達の方こそ、あの日の勇者の襲撃以降、我々への攻撃がなくなりましたね?そちらの勇者の方こそ魔王様から受けたダメージが大きかったのではないですか?恐らく勇者が現状戦闘できない状態のため、軍隊も前に出ることができなくなったのでしょう?だとしたら勇者は再起不能、もしくは死んだのではないかと我々は思っていますがね」
シオンの言葉にバルイーグルは顔を歪める。
実際、勇者は単独での魔王への奇襲の後、転移で城へと帰還したものの深手を負っていて、回復魔法による治療も効かず死亡。その肉体は光に包まれて消えたと、バルイーグルは聞いている。
人間界の最高戦力である勇者がいたからこそ、快進撃が続いていた。勇者亡き今、魔界の総戦力が攻めて来られては、現在ヴァレンシュタイン王国軍が占拠している砦は、どれも持たないだろう。
勇者が生きているかもしれない。そう思わせておくことが、人間界側にとって優位なのだ。
しかしそれは魔界側も同じであった。
魔王ヴォルテージは死んだ。
転生の秘術で生まれ変わって再び帰って来ると約束はしてくれたが、転生が成功したのか失敗したのかすら分からない。
魔王が死んだと人間側に知られては、このまま終戦するより、さらに略奪した方がよいと思われかねないのだ。
お互いに悟らせないよう駆け引きをしつつ、つつがなく休戦協定は結ばれた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
大司祭ザズーは、シンソ魔法学園校舎へと来ていた。
普段はどの教室でも魔術の講義が行われているらしいが、ゴモラの襲来以降、授業よりも街の復興を手伝うことを優先しているらしく、生徒の数もまばらだった。
国外からの来客という事で、園長自ら園内を案内してくれている。
「素晴らしい施設ですね」
見学をしながら、ザズーはそうお世辞を言う。
実際には彼はそんなことは思ってはいない。
若いうちから英才教育をするという発想は良いかもしれないが、いかんせん小国の施設。レベルが低いと感じている。これならば、実戦を通じて修行を積んでいる冒険者の足元にも及ばないと。
「我が国自慢の魔法学園なのですよ。ホホホ……」
自慢げで話す園長心の中でバカにしながら、ザズーは本当に聞きたい話に入った。
「ところで先日この街を襲った古代巨獣ゴモラは、この魔法学園の敷地内で死んだと聞きましたが、それを見ていた生徒、もしくは教員はいなかったのですか?」
「そうですね。あの時は先にここら一帯に避難警報が出ていましたので、皆南部へと逃げ出していたんですよ。園内には誰も残っていなかったはずです」
そこまで聞き、ザズーはハズレだったかと舌打ちをする。
「そういえば……、よく分からないのですが、なぜかウチの生徒が国王から表彰されましてね。避難に協力したのか何なのか……。その生徒は、その前までやる気をなくしていたのですが、それ以降急にやる気を取り戻して学業に励むようになったんですよ。何があったんだろう……」
その話を聞き、ザズーは眉をひそめる。
国王から表彰されたのに、園長が理由を知らない?そしてその生徒の態度も変わった?
これは何か、この園長も知らない裏がある。
「園長殿、その生徒と少しお話しさせていただく事はできませんか?」
「ええ。大丈夫ですよ」
そしてザズーはヨンタと出会う。
同じ内容の書かれた二枚の羊皮紙には、それぞれ魔界の副官シオンと、人間族の将軍バルイーグルのサインと血判が押された。
「私たちとしては、先ほども言ったように、このまま終戦協定を結ぶことを望んでいる。貴国の最高責任者、国王なのか大司祭なのか知らぬが、そちらに私の言った条件を飲んでもらえるようしっかりと伝えてくれ」
「魔界の一部の占拠権を認める事と、魔石の大型鉱山を差し出すという話ですね。私は飽くまで戦術の最高責任者ですので私の口から確約を回答することはできませんが、上へと伝える事だけは約束しましょう。それにしても今まで一歩も譲らなかった貴方たち魔族の方から、休戦を申し出てくるとはどうしました?やけに弱気になりましたね?」
兜は取ったものの、この会議室でも全身鎧を脱いでいない将軍バルイーグルは、シオンの顔色を伺いながらそんな言葉を投げかける。腹の探り合いだ。
そんな嫌味に聞こえるバルイーグルの問に、シオンは顔色を変えることなく答える。
「戦争をすることは最初から我々の本意ではない。戦闘がどこにも行われていない今こそ、戦争を終わらせるチャンスと見ただけだ」
「ほう。私はてっきり噂が本当なのかと思いましてね。人間界の勇者によって、魔王が殺されたという……」
ニヤニヤしながらシオンを見つめるバルイーグル。
シオンは顔色一つ変えることはないが、その横で立っているルビィにはこの男に対する怒りが顔に出ている。
反対に立つマグマは、本来シオンを護るためにここに立っているが、場合によってはルビィを押さえる必要もあると周囲全体の挙動を気にしている。
シオンは、そんな横に立っている二人に構う事なく、毅然とした態度で答える。
「魔王様は健在です。そちらの勇者による襲撃で怪我を負った事は事実。ですが大事を取って魔王城に籠ってもらっているだけです。それよりもあなた達の方こそ、あの日の勇者の襲撃以降、我々への攻撃がなくなりましたね?そちらの勇者の方こそ魔王様から受けたダメージが大きかったのではないですか?恐らく勇者が現状戦闘できない状態のため、軍隊も前に出ることができなくなったのでしょう?だとしたら勇者は再起不能、もしくは死んだのではないかと我々は思っていますがね」
シオンの言葉にバルイーグルは顔を歪める。
実際、勇者は単独での魔王への奇襲の後、転移で城へと帰還したものの深手を負っていて、回復魔法による治療も効かず死亡。その肉体は光に包まれて消えたと、バルイーグルは聞いている。
人間界の最高戦力である勇者がいたからこそ、快進撃が続いていた。勇者亡き今、魔界の総戦力が攻めて来られては、現在ヴァレンシュタイン王国軍が占拠している砦は、どれも持たないだろう。
勇者が生きているかもしれない。そう思わせておくことが、人間界側にとって優位なのだ。
しかしそれは魔界側も同じであった。
魔王ヴォルテージは死んだ。
転生の秘術で生まれ変わって再び帰って来ると約束はしてくれたが、転生が成功したのか失敗したのかすら分からない。
魔王が死んだと人間側に知られては、このまま終戦するより、さらに略奪した方がよいと思われかねないのだ。
お互いに悟らせないよう駆け引きをしつつ、つつがなく休戦協定は結ばれた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
大司祭ザズーは、シンソ魔法学園校舎へと来ていた。
普段はどの教室でも魔術の講義が行われているらしいが、ゴモラの襲来以降、授業よりも街の復興を手伝うことを優先しているらしく、生徒の数もまばらだった。
国外からの来客という事で、園長自ら園内を案内してくれている。
「素晴らしい施設ですね」
見学をしながら、ザズーはそうお世辞を言う。
実際には彼はそんなことは思ってはいない。
若いうちから英才教育をするという発想は良いかもしれないが、いかんせん小国の施設。レベルが低いと感じている。これならば、実戦を通じて修行を積んでいる冒険者の足元にも及ばないと。
「我が国自慢の魔法学園なのですよ。ホホホ……」
自慢げで話す園長心の中でバカにしながら、ザズーは本当に聞きたい話に入った。
「ところで先日この街を襲った古代巨獣ゴモラは、この魔法学園の敷地内で死んだと聞きましたが、それを見ていた生徒、もしくは教員はいなかったのですか?」
「そうですね。あの時は先にここら一帯に避難警報が出ていましたので、皆南部へと逃げ出していたんですよ。園内には誰も残っていなかったはずです」
そこまで聞き、ザズーはハズレだったかと舌打ちをする。
「そういえば……、よく分からないのですが、なぜかウチの生徒が国王から表彰されましてね。避難に協力したのか何なのか……。その生徒は、その前までやる気をなくしていたのですが、それ以降急にやる気を取り戻して学業に励むようになったんですよ。何があったんだろう……」
その話を聞き、ザズーは眉をひそめる。
国王から表彰されたのに、園長が理由を知らない?そしてその生徒の態度も変わった?
これは何か、この園長も知らない裏がある。
「園長殿、その生徒と少しお話しさせていただく事はできませんか?」
「ええ。大丈夫ですよ」
そしてザズーはヨンタと出会う。
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