魔王転生→失敗?(勇者に殺された魔王が転生したら人間になった)

焔咲 仄火

文字の大きさ
102 / 102

最終話 魔王転生

しおりを挟む
 神人を倒したユウが再び日本に帰って来て、一年が経った。

 行方不明になった同級生サトルの事で警察が尋ねに来た事もあったが(※知らぬ存ぜぬで押し通した)、それ以降は特に変わったことが起きる事はなく、ユウは再び平穏な日常へと帰って来ることができた。

 そして一年以上延期していたユウとユイの結婚式も、この日無事に迎える事が出来た。

「それでは新郎新婦の入場です」

 司会者の合図と共に、結婚披露宴会場の扉が開かれると、似合わないタキシード姿のユウと、美しいウエディングドレス姿のユイの二人が現れる。
 二人は顔を合わせほほ笑むと、ゆっくりと会場内へと歩き出す。

「ユウちゃーん!」

 ひときわ大きく響くユウの職場の店長カオル(50歳男性※オネエ)の声に場内に、笑いが漏れる。
 たくさんのカメラのシャッター音と拍手の音に囲まれながら、照れくさそうな笑顔で二人は歩いてゆく。

 ユウの友人たちの席からは冷やかしの歓声が、ユイの友人たちの席からはかわいいという声が飛ぶ。

 多くの人に祝福されながら、二人の結婚披露宴は進行されていった。
 いつもは荒々しいユウも、この日ばかりは借りてきた猫のようにおとなしく席に座っていた。
 そんなユウの様子を、横に座るユイは面白そうに見つめる。

 ウエディングケーキへの入刀が終わり歓談の時間となると、ユウのところへは友人たちがこぞってビールを注ぎにやってくる。断っても許されず、何杯も飲むはめになるユウ。それをユイが少し心配そうにするが、ユウは大丈夫と笑って答える。
 そんな悪友たちの挨拶がひと段落付いたころだった。

 ガタン!ガタン!

 新郎新婦の居る舞台の上から、大きな音が鳴り響く。
 何事かとみんなが注目した瞬間、ドスン!という大きな音を立てて、何か大きなものが天井から落ちてきた。
 新郎新婦の前のテーブルを破壊したそれは、「あいたたた」という声を発する。
 そう、落ちて来たのは人間だったのだ。

 そしてその事態に、場内がざわつき始める。
 新郎新婦の前に落ちて来た者に、会場中の注目が集まる。

「怪我はないかユイ?」

 とっさに新婦を庇ったユウは、何より先にユイの身を案じるが、特に怪我もなく大丈夫と分かり安堵する。

「こ、ここはどこだ?」

 落ちて来た男は、壊れたテーブルの上に置いてあった花束の中から身を起こすと、そう呟いた。
 男の姿が確認できると、場内はさらにざわつきが大きくなる。

「何だ?」「誰だ?」「変質者?!」

 そんな声が続く。
 変質者と呼ばれたのには理由がある。なんと、その男は服を着ていなかったのだ。

「おまえ……」

 ユイの無事を確認した後、落下して来た男を見たユウは、言葉を失う。
 男は上から下まで、完全に服を纏っていない、いわゆる全裸姿だったのだ。

「おお!ユウじゃないか!」

「ユウじゃないかじゃねえよ!!!」

 落下してきた男から名前を呼ばれると、ユウは怒声を上げた。

「何してんだよテメエ!!!」

「ねえ、知ってる人なの?」

 名前を呼ばれたことにより、新郎の知り合いだと分かり、ユイはユウへと問いかける。
 そんな声に、男はユイの事に気付き、声をかける。

「おお、そなたがユウの婚約者殿か。はじめまして!」

「キャッ!」

 前を隠すことなくユイに挨拶をしたため、思わずユイは視線を逸らした。
 そんなユイを庇うようにユウは二人の間に入り、再び大声を上げる。

「てめー!とりあえず前を隠せ!!!」

「なぜだ?オレの体が隠さなければならない程、恥ずかしいわけがないだろう」

「ふざけんなー!」

 舞台上のそんなやり取りを、会場にいる皆が興味深そうに眺めていた。
 どうやら演出ではなく、アクシデントのようだということは一同にも伝わっていた。
 全裸男の登場に、ユウの友人たちは爆笑と歓声を送る。
 ユウの上司カオルは一言、「大きい……」と呟いて眺めていた。

「おい、ユウ、せっかく婚約者殿と会えたのだから紹介ぐらいしてくれ」

「紹介してほしかったら服着てきやがれ!」

「あの、本当に誰なの?ユウ」

 ユイも不安そうにユウに尋ねる。

「ならいい。自分で名乗らせてもらうぞ。はじめまして。オレは魔王ヴォルテージ。ヴォルトと呼んでくれ。ユウとはお互いに殺し合った仲だ」

「てめえ、俺の結婚式で殺し合ったとか、ぶっそうな事言ってんじゃねえよ!!!」

「事実だろうが。初めて会った時に、お前がオレを殺して、オレがおまえを殺しただろう?」

「そうだけれども!」

「あっ?!ヴォルトさん?お話はユウから常々。その節はユウがお世話になりました。ユイと申します」

「ユイおまえも普通に挨拶してんじゃねえよ!だからヴォルトてめえ前を隠せ!」

 そんなユウを無視して、ヴォルトは振り返って今いる状況を確認する。
 大勢の人間がテーブルを囲んだパーティーのようだ。
 なんだか小さな薄くて四角い物をこちらに向けて、パシャパシャという音を鳴らしている者がたくさんいた。
 みんなきれいに着飾っており、なによりユイが来ている立派なドレスを見て、ヴォルトは悟る。

「そうか!結婚式を挙げているのだな?二人とも結婚おめでとう!なかなか盛り上がっているじゃないか」

「盛り上がってるのは、俺のツレだけだ!新婦の友人や親族がドン引きしてるじゃねえかよ!!!」

「やあどうも!オレに構わず楽しんでください」

「勝手に親族に話しかけんな!」

 自由なヴォルトにユウが大声で怒鳴り続けるも、制御できない。
 その内ユウの友人たちが誰だ誰だと集まって来た。

「おう、きさまらはユウの友人か。ユウ、オレの事を紹介してやってくれ」

「その前に服を着ろっつってんだよ!」

「仕方ない、それならまた自分で名乗ろう。オレの名はヴォルト、ユウとは殺し合いをした仲だ」

「だからそれ言うんじゃねえよ!!!」

 だんだんヴォルトに慣れてきたのか、横のユイは笑っていた。
 ユウの友人たちも目の前に現れた謎の男に、とても楽しそうに質問攻めをしている。

「オレのツレと仲良くなってんじゃねえよ!てかヴォルトてめえ、何でここにいんだよ?どうやって来たんだよ!」

「おお、そうだった。実はな、お前が帰ってから、魔界が平和になったところでオレは旅に出たのだ。オーテウスの神人たちを全て倒すためにな。そして約一年旅を続けて、遂にオーテウス山の頂上の上にある、天界というところまでたどり着いて、奴らと戦ったのだが、うっかり殺されてしまったんだ。ついさっき」

「はあ?まさか……?」

「ああ、二回目の死を迎えたオレは、転生の秘術で再びここに転生をしたようだ」

「なんでこんなとこに……あっ!そういや……」

 ユウの脳裏に心当たりのある思い出が浮かぶ。
 それは、ヴァレンシュタイン王国に入って、ヴォルトと転生の秘術について話し合っていた時の事だった。

「おまえ前に、オレの胸の呪文を適当に書き換えただろう?転生先のところを。オレもまさか転生先がこんな場所になるとは思わなかったが……」

「うそだろ?」

「まあそういうわけだ。ところでまた手伝ってくれんか?やつらの本拠地は突き止めた。戦力が足らんのだ。お前の力を貸してくれ、勇者ユウよ」

 そんなヴォルトの言葉に、ユウの友人たちが食いつく。

「勇者って何だよユウ?」

「うわ!恥ずかしいから黙ってたのに、何サラッと口にしてんだよ!」

「ユウ、勇者なの?ギャハハハハ!勇者ユウだって!」

「やめろー!!!」

「何だ?別に良いじゃないか?頼むユウ。オレに力を貸してくれ!」

「分かったけど早く服を来てくれー!!!」

 こうしてユウとユイの結婚式は大混乱となってしまった。
 その後式場で服を借りたヴォルトは、ちゃっかり席を用意してもらい結婚式を見届けたという。

 そして二人の冒険が、再び始まる……?


――魔王転生 完
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

月乃都 兎
2017.10.01 月乃都 兎

初めまして。毎日楽しく読ませて頂いてます♪これから佳境に入るとの事ですが、水戸黄門的な道中も読みたいなーと思ってます。番外編とか、終了後にでもあったら嬉しいです♪あ、ですが無理はせずに御自愛くださいね。では!

2017.10.01 焔咲 仄火

感想ありがとうございます!
そして毎日読んで下さっているとの事、とても励みになります。ありがとうございます!

道中の物語も読んでみたいとのご意見ありがとうございます!本筋と関係ない事件だと間延びしてしまうのかなとも思っていたのですが、読んでみたいと言っていただけたのでぜひ検討してみます。

これからも応援よろしくお願いします!

解除
おやじ
2017.10.01 おやじ

面白くて一気読みしてしまいました。
フラグが立ったと思ったら、バンバン折っていく魔王様。
そこに痺れる憧れる(笑)
続きを楽しみにしております。

2017.10.01 焔咲 仄火

感想ありがとうございます!とても嬉しいです!

主人公が破天荒すぎて、作者の僕が考えたプロットから勝手に逸れて行く事が多く(※計画的に書けないだけ)どうしようと思うことが多いのですが、なんだかんだ強いので強引に解決してくれるのでそれでよしとして物語を進めさせてもらっています。

そろそろ物語が佳境に入ってくれるはずなので、今後も応援お願いします。

解除
LPS48なおたん

面白いです。勇者ユウと魔王ヴォルトのタッグ(^ ^)
これからの展開、期待してます。

2017.08.05 焔咲 仄火

ああっ!初めての感想ありがとうございますっ!

なろうの方ではオワコン化していた作品だったため、面白くないんじゃないかって思っていたので、面白いという言葉を聞けて本当に嬉しいです。

勇者のくせに荒くれもののユウと、魔王だけど単純で紳士的なヴォルトという違和感を持ったキャラで彼らには頑張ってもらいたいと思います。
毎日連載はここで終了なのですが、続きは気長にお待ちいただけるとありがたいです。
これからもよろしくお願いします。

解除

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。