夏フェス行ったら異世界に迷い込んだ

焔咲 仄火

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第2章

第23話 異世界のお城からの帰還と身柄の拘束

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 翌朝、目が覚め昨夜のことを思い出した俺は、とても反省していた。
 酔っぱらった勢いで、王女の部屋に遊びに行ってしまった。
 国王と王太子にからかわれて、昨日の俺は何か勘違いしてしまったのだろうか?
 夜中に王女の部屋を訪れるだなんて、とんでもなく失礼なことをしでかしてしまった気がする。

 幸い、朝一番に馬車でハーノルド村に帰る予定だ。呼び出されて怒られる前に出て行こう。
 少し早めの朝食を食べ終わると、俺はファランさんたちと共に馬車へ乗り込んだ。

 王女が少しずつ元気を取り戻したことに満足し、とても平穏な気持ちでいたその時、村に帰ってから待ち受けていた大変な出来事を俺は想像することもなかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 一方その頃、王宮では大騒ぎが起きていた。
 それは、ミハエルの朝の診察から始まった。

「まあ、カイさんたちはもう帰ってしまわれたのですか?」

 昨日のファラン医師の治療とその弟子カイの持ってきたエリクサーによる王女の回復は、著しいものだった。
 昨日まで毎日、診察の時にはほぼ無言だったエリス王女も、今朝は雑談も交わせるほどになっていた。
 日々衰弱していくばかりの王女を見て来たミハエルも、このような元気な王女の姿を見るのは久しぶりで、喜びでとても胸が熱くなった。

「私も見送りにいきたかったなあ……」

「ホッホッ、見送りはもっと元気になってからですな。姫の代わりに王太子殿下が彼らの見送りに行きましたので、ご安心くだされ」

 わがままを言えるほど元気になったのだ。こんな会話の一つ一つが喜ばしい。
 それにしても王女の顔色が良い。心なしかやつれていた顔もふっくらと程よい丸みを取り戻してきていて、カサカサしていた髪の毛にも潤いが戻ってきているようだ。元気になってきたとは言え、やつれた身体が一日で完全に回復することはありえないが、かつての国一番の美しさと呼ばれた王女の姿がそこに戻ってきたような気がしていた。

「それでは姫様、ステータスプレートに手を」

 いつものように王女がステータスプレートに手をかざした時、そこに表示されたステータスを見たミハエルが驚きの声を上げた。

「な、なんだこれは?!何が起きた?!」

「どうかしましたか?」

 ミハエルの声に驚き、同行していたミハエルの部下たちから声が掛かる。

名前:エリス・グリセリア
年齢:18
性別:女
職業:王女 LV5/30
HP:15/15
MP:4/4
力:2
早:5
賢:20
スキル:なし
状態:健康

 ミハエルの部下たちも、そこに表示されていたステータスを見て絶句する。
 昨夜まで病気と表示されていた、状態の項目が健康となっていたのだ。

「バカな?昨日見た時はまだ完全には治ってなかったはずだ?その後だれか治療を行ったのか?それとも何か薬を飲んだのですか?」

 ミハエルの問いに、メイドが答える。

「治療も薬も何も行っていません」

「だとしたら何が起きたというのだ?」

「……そう言えば、昨夜カイ様がここにいらっしゃられて、小さな光る板のようなものをお持ちになって姫様とお話しをしていたのですが」

「何だと?姫様。昨夜カイ殿と何があったのですか?」

「えっと……、カイ様からは内緒だと言われていたのですが、カイ様のお国の音楽を聞かせてもらっていました」

「音楽?!音楽で病気が治ったのか?まさか……。いや、そうに違いない。おい!急いでアトラス陛下とロデリック殿下に連絡をせよ!姫様のご病気が完全に治ったと!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 王女の回復の知らせと共に、俺を呼び出す命令が城内に知らされている頃、俺たちを乗せた馬車は既に王都を遠く離れていた。
 馬車の中で俺は、ファランさん、クロエと雑談を続けていた。

「エリス王女の病気は治りますかねえ?」

 俺はファランさんに尋ねる。疑っているわけではないが、この国の医療が日本よりも遅れているのは確かだろう。だとしたら、いくら軽くなったとはいえ癌などという重病を治せるのかと心配になる。
 だが、馬車の中でファランさんからいろいろなこの世界の医療の話を聞いていると、魔法のような力が実際に存在していて、不思議な力で病気が治ることがあるというのだ。

「ですから、王女様が病気を治すという強い気持ちを持っていてくれれば、必ず治るはずです」

「そうですね」

 ファランさんに励まされ、俺は少し安心する。

「王女様は、流行りの無気力病には感染されていないみたいですしね」

「無気力病?」

 突然現れた単語に俺は反応する。日本でもよく聞く言葉ではあるが、流行りの、というところが引っかかったからだ。
 するとファランさんは説明をしてくれた。

「この国は平和なのはいいのですけど、この頃無気力な人たちが増えてきているんです。仕事もはかどらないみたいだし、そういう人は病気の治りも悪いのです。正確な病名ではないんですけどね。平和が生んだ副産物なのかも知れません」

「へえ……」

 正式な病名ではないみたいだが、実際に病気の治りが悪くなると聞くとただの気持ちの問題というわけでもなさそうな気がする。

「ところでカイさん。村に帰ったらどうする予定ですか?もしかしてすぐにでも国に帰られます?村でゆっくりしていってくれてもいいんですけど」

「帰れるなら早く帰りたいと思います。何日も帰らないと、行方不明として色々な人に迷惑をかけるので。まずはクロエに会った場所に行って、帰る道を探したいと思います」

「じゃあ私道案内しますね!」

 クロエが龍神山の案内を引き受けてくれた。俺も山道がよく覚えていないので助かる。

「もし国に帰られても、またいつでも遊びにいらしてくださいね」

「ありがとうございます」

 クロエもファランさんも、そして国王家族も、この世界で出会った人たちはとても良い人ばかりだった。こんな世界なら、もしも日本に帰れなくても楽しく暮らしていけそうだなって気もする。もし帰れたとしても、また来たい。自由に行き来できるのが一番都合いいんだけどね。
 まあいずれにしても、龍神山に行って日本に帰る道を探すのが先決だ。

 雑談をしながら馬車に揺られ、村に着いたのは夕方ごろだった。
 馬車は村に入って、ファランさんの診療所まで進む。ふと馬車の窓から覗く村の景色が、なんだか村を出る時と雰囲気が違う気がした。まばらだった人影も今日はやけに多い気がするし、通りすがりの村人は不安そうな顔でこの馬車を見つめている。
 そんな心配が的中した。マトンさんの操縦する馬車が、ファランさんの診療所に辿り着いた時、何名かの屈強な男たちに馬車を囲まれた。

「あんたら、何の用だ?」

 御者席に座るマトンさんの問いかけに、その男たちの代表者らしき男が、一歩前に出ると答えた。

「その馬車には医師ファランたちが乗っているな?カイという男もいるのか?」

「だから何のようだ?」

 マトンさんは俺の事が心配になり隠してくれるが、別に俺にやましい事はない。騒ぎを収めるために俺は馬車を降りて行った。

「俺がカイですけど、貴方たちは?何か用ですか?」

「我々はバ―ガンディ領の領兵だ。貴様がカイか?こちらへ来てもらおう。ステータスプレートに手を置け」

 俺は素直について行き、その男たちの用意したステータスプレートに手をかざす。ステータスプレートなら王都に入る時の検査で何も問題ないと分かっていた。
 だが俺は知らなかった。ステータスプレートにも色々あり、これはより詳細な情報も調べる事が出来る物だった。


名前:イタミ・カイ
年齢:23
性別:男
職業:会社員LV:3/40
HP:18/18
MP:4/4
力:12
早:12
賢:7
スキル:
・鑑定LV1/10(消費MP1)
・デイリーガチャLV1/1
状態:健康
賞罰の履歴:なし
国籍:日本


「国籍、日本?」

「あ……」

 俺は焦る。ファランさんから、ばれたら不法入国で捕まる事もあるので気を付けろとは言われていた。

「やはりこの国の人間ではないな?入国許可証は?」

「ないです……」

「やはり通報の通りか。他国のスパイの可能性もある。捕えよ」

 俺は数人の男に後ろ手に縛られる。

「待ってください。俺は道に迷って……」

「詳しい話は後で聞く。連れて行け」

 ファランさんが慌てて馬車を降り、止めに来る。

「待ってください!彼は怪しい者ではありません!」

 だが迷惑を掛けてはいけないと思った俺が、ファランさんを止める。

「ファランさん、大丈夫です。事情を話して理解してもらいます」

「この者の荷物を寄越せ。危険なものを持っている可能性もある」

 そう言って、俺のリュックも没収される。

 そして俺が領兵たちに連れて行かれた先は、なんと牢屋の中だった。
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