天才魔法使いの未来まで巻き込んだ隠し子騒動

藤田 晶

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第一章

第3節 上級生

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ゴウン、と6学年の校舎から授業の終わりを告げる鐘が鳴った。それと同時にゾロゾロと大講堂に生徒が集まってきた。
今日は臨時の全校集会が行われる。全部の学年が一同に集まり、重要な話をしたり聞いたりする集まりである。こうした集まりでも、風紀委員が司会進行を行う。
この学園には、学年首席会と風紀委員会が存在する。学年首席会は、その学年の各学科の首席が所属する会である。学年をまとめ上げ自治する組織で、その学年によって厳しかったり自由だったりする。主に、メタスター科の首席の意向が反映されるので第2学年はかなり自由な学年だ。
風紀委員会は、学園全体を自治管理する組織だ。これは学年、学科、身分全く関係なく風紀委員長が認めた生徒だけが選ばれるシステムになっている。委員長、副委員長、書記、会計、企画、進行などに別れているが大体が書記までが戦闘要員である。主に5属性以上を扱える生徒とメタスター学科の生徒が中心のようだ。ちなみに、キルヒは学年首席会会長であり、風紀委員会書記である。

ここで、この世界の魔法について、説明しよう。この国では魔法を大きく7つの属性にわけて考えている。
ノーマル、フェアリスト、防衛魔術、グリモワール、ドラゴニスタ、メタスター、そしてオールである。
ノーマルは体内の魔力を魔法に変えることを意味する。フェアリストは精霊の力を引き出して魔法にする。防衛魔術は、結界や防御魔法を扱える。グリモワールは、魔術書から魔法を引き出して魔法にする。ドラゴニスタはドラゴンを扱うことで、メタスターは転移、空間魔術を扱える者を意味している。
これら6つの属性全てを扱える者オールを”超級魔法使い”と呼んでいる。現在、超級魔法使いはこの国では未だ5人しか公表されていない。それほど稀有な存在だ。それ以外にも、5属性を扱える者を特級魔法使いといい、優遇される。また、メタスターを扱えるものは圧倒的に少なく、メタスターの素養があるだけで将来は約束されている。
そんな超級魔法使いに一番近いと言われる男こそ、この学園風紀委員会会長、メタスター学科総首席、ジュリアス・ローランドである。

「諸君、静粛に。今日の連絡事項について、ジュリアス委員長から話があります」

全校集会では、数千人の学園生が集まっていた。
司会進行をする風紀委員の生徒が皆に静寂を呼びかける。ステージには風紀委員の数十人が並んでおり、その中にキルヒの姿もあった。ざわついていた室内は、やがて静かになった。そのあと、ジュリアスの名前が呼ばれ、ジュリアスが壇上の中心に一瞬にして転移してきた。
ローランド家に代々現れる紫の髪と、さらに深い紫の瞳が生徒たちを見つめる。風紀委員会会長を表す、紫に白と金の刺繍を美しくあしらったローブが照明に照らされて光り輝いているように見えた。
その瞬間、何人かの女性がジュリアスの美しさに失神した。

「やぁ皆!ジュリアス・ローランドです!僕、昨日もドラゴン召喚やったんだけど、やっぱりドラゴン出てこなくて困っちゃったんだよねぇー。あー早くドラゴン触りたいなぁ」
「…委員長!!」
「ヒェッ、ご、ごめーん」

口を開いた風紀委員長は顔に似合わず、おとぼけていた。ジュリアスがドラゴンについて話すのには理由がある。ジュリアス・ローランドは事実、超級魔法使いであるが、今現在使い魔の召喚ができない為超級魔法使いになれないでいた。何故なら何を隠そう、ジュリアスは変態だ。それも、ドラゴンや使い魔に対する異常性愛である。かつてジュリアスにもドラゴンが居たが、なんと人間でありながらドラゴンを襲い生殖行為を強要したのである。ど変態だ。そんなわけで、使い魔から一方的に避けられているが召喚自体は出来るので、超級魔法使いではあるが、認めることができない状態だという。
そんなジュリアスを叱り飛ばしたのが、フェアリスト科総首席、副風紀委員長のリリィ・リリスである。ジュリアスが女性に人気があるとすれば、男性の人気は大体リリィである。ピンクの長い髪をゆるく三つ編みにしてハーフアップにしている。白い肌に赤い瞳がアルビノのウサギを連想させる。頭のおかしいジュリアスを支える使命を仕方なく果たしている。

「えーと、来週レオナルド第3王子がいらっしゃいます。それに伴って、警備体制を強化したいと思います。風紀委員の会長、副会長、書記の5名は王子の身辺警護を。それ以外の学園内の警備はそれ以外の風紀委員が行います。うーんと、あっうちの学園長も第2王子ロジナルド様なのは知ってるよね?そっちもまとめて僕らが警備しまーす!」
「委員長」
「あっ…えーと!はい!第2学年の首席会の皆さんと王子がお茶会をする事になりました。あと、王子がいらっしゃる日は防御魔術科とドラゴニスタ科は、結界の作製と空からの敵襲に備えて休講とします。それ以外の生徒は、普段通り授業を受けてください。多分、以上!」
「委員長、まだです」
「えっ?!あー…あ!次は学園長からのありがたいお話です!」
「学園長がお話になります。一同、起立!」

ジュリアスの真面目なんだか不真面目なんだかわからない話であった。一見ただの馬鹿のように見えるかもしれないが、こう見えても頭はかなり冴えているし、優秀である。ただ、言動と中身が伴わないだけで。
そんな様子を苦笑しながら見ていたのが、学園長のロジナルドである。第2王子だが、学園を思い更に発展させようとしてくれる良い王子として人気があった。

「生徒諸君。この度は私の愚弟が視察に来ることになった。警備のことなど、皆の協力に感謝する」

さらりと話を終わらせた学園長は、リリィに目配せをした。リリィは頷いてステージの真ん中に立った。

「これにて、全校集会を終わりにします。詳細は後日当事者に告知します。それでは各自帰宅してください」

メタスター科の生徒は一瞬にして消え、風紀委員の面々も消えた。残った生徒は、のんびりと帰路につくだけとなった。とはいえ、大講堂の入口の近くにある城下町と寮への転移魔術陣を使えば一瞬なので生徒はそれを利用して次々に消えていった。そんな中、食堂に向かうのが、グリモワール科のロイスであった。
フードで顔は見えないものの、ふぁあとあくびしたのはわかった。余程全校集会が退屈だったのであろう。のんびりゆったり向かっても、食堂には数分とかからなかった。
食堂には、約束どおりキルヒと、約束してないがフェリもいた。

「ロイス!」
「キルヒ、お疲れ。風紀委員は大変だね」
「ロッ、ロイス君!今日、私も一緒に行っていいかな?私もお、お菓子食べたい!」
「なんでわざわざ聞くの?僕らもう友達なんだから、許可なんて要らないよ。みんなで行けばいいでしょ?」

フェリの顔がぱあっと明るくなった。キルヒもなんだか嬉しげに頷いていた。ロイスだけが変なの、と首を傾げていた。
じゃあ行こう、とキルヒが言った次の瞬間には彼らは話していたお菓子屋さんとやらについていた。キルヒのメタスター能力のおかげだ。便利~!とロイスとフェリは喜んでいるので、キルヒはちょっと嬉しくなった。
キルヒが連れてきたのは、最近出来た新しいお菓子”チーズケーキ”なる料理を出す店だ。行列が出来ており、3人は列に並んだ。

「へぇ、こんなお店が出来たんだ。魔牛のミルクから作ってるなんてどうなってんだろ」
「チーズケーキ食べてみたかったの!あ~!どんな味なんだろう!」
「僕も最近聞いたばかりで、食べたことがなかったんだ。珍しいから話題になっているよね」

並んでいる間、3人の話は尽きることがなかった。お菓子の話から、学園の話、ドラゴンの話、学年首席会の話など話すことばかりだった。ただ、ロイスは余り自分の話をせずに話を聞いていることが多かった。しかし、キルヒもフェリもそんなこと全く気にならなかった。お菓子が食べたくてお腹が空いているはずなのに、とても楽しかったのだ。
30分ほど並んだだろうか。いよいよ、店の中に案内された。定番のお菓子から、チーズケーキ以外の珍しいお菓子までたくさんあってどうするか迷ってしまう。
結局、さっさとキルヒとロイスは看板メニューの焼いたチーズケーキに決め、散々悩んだフェリはふわふわだというスフレチーズケーキというメニューにした。あとは来るのを待つのみだ。

「ロイス、君はドラゴニスタとしての才能があるのに、どうしてグリモワール科に居るんだい?」
「ああ。僕は自分のグリモワールを持っていないんだ。だからね、この学科にはいれば自分のグリモワールが見つかるんじゃないかと思って。今は汎用型上級魔術書が相棒なんだ」
「そうか…僕はグリモワールの才能が壊滅的でね…扱えるだけ羨ましいよ…ははは」
「私はメタスターの才能のが欲しいわ!でも正直グリモワールは私もよくわからないの。いつか魔術書が手に入るかなぁ」

グリモワールこと魔術書は、使用者を選ぶ。面白いことに、汎用型の魔術書が一切使えないのに自分の魔術書は使えたり自分の魔術書が見つからないが汎用型魔術書は扱えて超級魔法使いになった者もいるくらいだ。魔術書が人を選ぶため、ある日突然拾ったり、いつの間にか本棚に入っていたなんてこともある。不思議な本なのだ。グリモワールは、召喚魔術に近い。魔術書に書かれた内容を召喚して魔法にするからだ。つまり、ドラゴニスタはグリモワールの才能がある場合が多いのだ。
しかし、キルヒとフェリはそうではないらしい。

「みんな意外と苦労してるんだね」
「当たり前だ。特に風紀委員会…面倒でならないよ。どうして僕が書記なんだ…あ、ロイス、さすがに王子が来る日は学園に来るだろう?」
「どうかな。超面倒くさそうじゃない?」
「ロイス君てばまたサボる気ね?王子を間近で見れるチャンスじゃない!ちゃんと来なきゃダメよ」
「…間近で、ねぇ…そんなにいいもんじゃないと思うけど…」

ロイスの言葉は小さくて聞き取れなかった。フェリが聞き返すと、何でもないよとロイスは微笑んだ。
数分経って、料理が運ばれてきた。いい香りが店内を包んでいる。
ロイスとキルヒが頼んだ焼いたチーズケーキはしっとりとしていて濃厚だった。甘過ぎず、ほのかな酸味が食べやすくロイスは非常に気に入った。
次に運ばれてきたのは、スフレタイプのチーズケーキだ。フェリは目を輝かせふわふわのケーキをスプーンですくう。パクリ、口にはこべば顔が幸せに満ち溢れた。ふわふわしゅわしゅわで、でも濃厚で美味しい。フェリはぱあっと瞳を輝かせた。今にもほっぺがとろけ出しそうであった。
ふと、目の前に座っていたロイスがフェリの口元に手を伸ばす。

「…あははは、ふはは、フェリってば可愛いね」
「?!な、ロイス君ッ、からかって…」
「口元にクリームついてたよ。あはは、幸せそうでとっても可愛い。また来ようね」
「………か、可愛い…もう…ロイスってば……」

急に二人の世界になってしまって、キルヒは真顔で空気になることしかできなくなった。
こうして、3人のはじめての放課後は更けていくのであった。
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