ある日突然に。 #終末ルートしか見えない絶望の中で俺が無双するまで。

カササギ

文字の大きさ
4 / 5

ここにする

しおりを挟む
俺は状況を一通り説明した。

「実に簡単に領地って貰えるものなのね。所詮貴族は貴族ってことかしら。その地に住まう者の身になってみろと言いたいわ。

おっと、ぼっちゃまの前で言うべき内容ではなかったわね。」
と皮肉めいた事を呟く。

俺は聞かなかった事としてスルーすることにした。

「恥ずかしいのだが、辺境領土について今一つ分からない。そこから教えて欲しい。」
と俺は頼んだ。

「分かったわ。」とため息をついて
メルモニタ先生は話し始めた。

「まず知っておかねばならぬこととしては、
『この辺境伯領で一番偉いのは君のお父上だが、一番兵士を抱えているのはお父上ではない。』ってこと、領土についてもそうよ。」

(そうなのか……)

「実態として辺境領=辺境伯領ではなく、
人が住むエリアは、君の父上の依子(よりこ)となる伯爵、子爵、男爵、騎士などがそれぞれの領地を渡され収めているの。
形式上はヘイダール家からそれぞれの貴族に領地は下肢された形となってはいるものの、貴族はその領地において絶対的自治権を認められているのよ。

その代わり何かあった際の軍事力の供出や租税の一部供出が義務付けられているし
家同士の争い(水利権などに関する争い)の
裁判権は辺境伯が有する。
もっとも伯は裁判の時のみ出ていくだけで、それも形式だけと化しているわ。

簡単に言えば、名誉と金はあるが、力と領地はあまり持っていないのが君の家。」

「ちょっと待ってて」
そう言ってメルモニタ先生は奥にひっこんだ。

しばらくすると辺境伯領土全体の地図を持ってきた。

「辺境伯領の領都であるこのヘイダール(君の家の名前が付けられている)とその周辺の土地、そうだなここら辺までが君の家の直轄地ね。そしてざっくりここら辺までが諸侯の土地と考えれば良い。」

「空白の地帯が多いな。」
地図でヘイダール辺境伯領と書かれている場所は広大な面積を有する。
ただ、先生が指したエリアはその一部でしかない。

それ以外は……と。
地図を俯瞰して見る。

「領土の割に諸侯へ割り振られた土地が少ないと思っているのね?」

「ああ。」

「東には敵対しているグノーシス王国があり、それと接する一帯は緩衝エリアとなっているの。小さな開拓村程度はあるものの殆ど放置されているのが現状。
また同じような理由から同じサヘラ王国に所属している西のメイオマール公爵の依子の男爵領群や南にあるナルタニャ公爵の依子の男爵領群などと接するエリアでも開拓は進んでない感じかしら。
因みにもとこの家に属していた男爵家が、ナルタニャ公爵家へと依り主を鞍替えしたりしているけど、君の父上は公爵家に対し公にクレームを出していないようね。
領地は貴族にとって命の次に大切なもののはずなのに……。愚かと言うかなんと言うか……
あとは……開拓をするのにリスクが大きい山岳地帯や魔獣が多数生息する領域なので領地といっても未開拓なのは当たり前よね。」

地図を見回す。
(ならば貰う領地の候補はここかここ……だな。)

(ん?待てよ?)
この三角印は?

「ああ、そこは魔物の巣となっている。いわゆるダンジョンと言われるものがあるところ。」

(なるほど。)

「因みに山岳地帯に人は?」

「『ヒノカミ』と呼ばれる少数民族が住んでいる。君のお父上によって迫害され、不毛の地までおいやらた一族よ。」

(そうか……)

「ありがとうございます。お陰で頭の中が纏まりました。」

「そうか参考になったなら良かった。ちなみにどこかな?」

俺は自信を持って1点を指さした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

元公務員、辺境ギルドの受付になる 〜『受理』と『却下』スキルで無自覚に無双していたら、伝説の職員と勘違いされて俺の定時退勤が危うい件〜

☆ほしい
ファンタジー
市役所で働く安定志向の公務員、志摩恭平(しまきょうへい)は、ある日突然、勇者召喚に巻き込まれて異世界へ。 しかし、与えられたスキルは『受理』と『却下』という、戦闘には全く役立ちそうにない地味なものだった。 「使えない」と判断された恭平は、国から追放され、流れ着いた辺境の街で冒険者ギルドの受付職員という天職を見つける。 書類仕事と定時退勤。前世と変わらぬ平穏な日々が続くはずだった。 だが、彼のスキルはとんでもない隠れた効果を持っていた。 高難易度依頼の書類に『却下』の判を押せば依頼自体が消滅し、新米冒険者のパーティ登録を『受理』すれば一時的に能力が向上する。 本人は事務処理をしているだけのつもりが、いつしか「彼の受付を通った者は必ず成功する」「彼に睨まれたモンスターは消滅する」という噂が広まっていく。 その結果、静かだった辺境ギルドには腕利きの冒険者が集い始め、恭平の定時退勤は日々脅かされていくのだった。

処理中です...