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1章
絶望の中で sideキア
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全部入れたら長過ぎたので分けました。次もすぐ投稿します。
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ナギ達から見えなくなるところまで来たら、『転移』を使い、一気に宿屋の自室まで跳んだ。
ドアに『ロック』と普通の鍵を二重に掛け、部屋の中に結界を張る。
ベッドに倒れるように横たわって、必死に自分の中の闇が溢れそうになるのを抑えた。
苦しくて胸の辺りを掴むと、ペンダントがチャリ、と音を立てて、ますます僕は苦しくなった。
抑えようもない、暗黒の闇のオーラが立ち昇り、結界を越えてしまう。
それに呼応して空が曇り始め、激しい雨が降って来た。
どうしてどうしてどうしてどうして。
なんで、僕を裏切ったんだ。僕を好きなんじゃなかったのか。あれは僕の勘違いだったの?そんなわけない、そんなわけある筈ないのに、じゃあなんであんな事してたんだ、リオン!
胸を引き裂くような悲しみと怒りと絶望で今にも我を失ってしまいそうなのを、必死で繋ぎ止めていると、ダダダダ!と激しく宿の階段を走る音がして、リオンが僕の部屋のドアをガンガンと叩いて来た。
「おい!キア!いるんだろ!?開けろよ!」
焦りと、怒りの滲んだ口調。なんでリオンが怒るんだ。黙っていると、焦れたリオンがドアを壊そうと魔力を高め、宿の主人がそれを止めようとしてごちゃごちゃやっているのが聞こえた。
なんで来たんだ、リオン。今さら僕に何の用があるっていうんだ。悔しい。会いたくない。
なのに、会いに来てくれた事がどうしようもなく嬉しいと思っている僕がいる。
なんて僕は馬鹿なんだ。どうしてこんなにリオンの事が好きなんだ。苦しい、苦しいよ・・・
「おい!キア!俺は自分の部屋で待ってるから、あとで絶対来いよ!話あんだからな!」
リオンがそう叫んで、隣の部屋に入る音が聞こえた。
話って何だよ。いや、そんなもの、聞かなくても分かってる。ロザリアの事が好きだ、なんて話は絶対に聞きたくない。それを聞いてしまったら、完全に終わる。
僕はまた暴走してしまう。そしてまた『前』のように人の敵として勇者に討たれるしかなくなるんだ。
リオンは勇者としてはまだ覚醒してないけど、そんなの時間の問題だ。
結局、僕はリオンと一緒に居られなくなってしまうのか。ああ、嫌だ。なんで僕はこんな風に生まれてしまったんだ。あの時なんで完全に消滅してしまわなかったんだ。
生まれ変わってもまたこんな苦しみを味わう事になるなんて、至高神ディアレスなんて大嫌いだ。
隣の部屋からシャワーを使う音が響いて来る。
リオン・・・もう会えないなら、最後に、僕は君と結ばれたい。
リオンの体に僕の印を刻み付けたい。そしたら、僕は君に討たれてもいい。一緒に居られないなら、生きていたくない。君とロザリアが幸せな姿なんて絶対に見たくないから。
シャワーの音が止んで、僕は体を起こすと昏い決意を胸にベッドを降り、ドアを開けてリオンの部屋に向かった。ドアをノックするとすぐに「開いてるから入れよ」とリオンが叫んだ。
言う通りにドアを開けて部屋に入ると、リオンはベッドの上に座ってこっちを見ていた。
僕から溢れ出ている尋常じゃない闇のオーラに気圧されて少し顔を顰めたけど、覚醒していないのにさすが勇者というべきか。気合で持ち直した。
「キア!お前ちゃんと俺の話を聞けよ!あのな、」
言いかけるのを、『サイレンス』で黙らせる。一言も聞きたくない。
リオンは焦っていたけど、今の僕のサイレンスを破る事は出来ないだろう。
「何の話か分かってるよ。けどそんな話なんて聞きたくない!なんで・・・?僕のこと、好きなんじゃなかったの?全部、僕の勘違い?酷いよ、リオン、僕の気持ちを知ってるのにロザリアとあんな事して・・・」
リオンの顔を見たら思わず感情が暴走して、気が付いたらそう叫んでいた。胸が痛い。
痛くて堪らない。
「ん、んんぐぅう!」
急にリオンが声を上げて驚いた。今の僕のサイレンスを破っただって!?想像以上に精神抵抗力が強い。
「だからな!お前のそれが勘違いなんだよ!俺はおま、」
嫌だ!聞きたくない!
僕は今までずっとリオンには使って来なかった『精神操作』を発動した。
身体を快楽に堕として、何も考えられなくしてあげる。
油断していた、いや、僕に対して警戒するなんて頭がはなからないリオンは、見事に『精神操作』に掛かった。もう1時間は解けることはない。
体の力が抜けて、ゆっくりベッドに倒れるのを僕は悲しいのか嬉しいのか分からない気持ちで見守った。
「もう、何も言わないでよ、もう何も聞きたくない・・・リオンの傍にいられなくなるんなら、僕はもう遠慮しない・・・ねえリオン。痛くしないから僕に思い出をちょうだいよ。最後に、リオンに僕の印を刻み付けてやりたいんだ」
僕はそう言って、ベッドに乗り、リオンの着ていた服を脱がせた。ああ、もうこれが最後なんだ。リオンの綺麗な引き締まった身体を僕はじっと見つめた後、唇に深く口付けした。
涙が零れそうだ。
でも、リオンの全部をしっかりと味わいたいから、何とか耐えた。
リオンは普通の倍以上の快感に、耐え切れず声を漏らしていた。ああ、こんな時でも可愛いよ・・・可愛くて、愛おしくてしょうがない。
本当は精神操作するなら、別に快感なんて与えなくても問題ないんだ。『黙れ』とか『忘れろ』って簡単な命令で事が済む。
けど、僕はどうしてもリオンにそんな事はしたくなかった。
これから無理やりリオンの初めてを奪おうとしているのに、それでもリオンに痛い思いをして欲しくなかったんだ。だから、『抵抗せず普通より快感を感じるように』と指示した。
全身に媚薬の入ったオイルを塗って撫で擦ると、リオンの股間のものがびくっと震えて、それだけで達しそうなのが分かった。それなのに、
「あっ、だ、だめ・・・」
そんな事を言って抵抗するリオンに、僕は悲しみと怒りを感じる。
「この期に及んでも、まだそんなこと言うんだ。ほんとに憎たらしいけど・・・どうしてもどうしても本当には嫌いになんかなれないよ・・・悔しい・・・僕はこんなにリオンのこと愛してて好きで好きで仕方ないのに・・・なんで、僕のことだけを好きでいてくれないの?酷いよ・・・」
ああ、駄目だ。堪えきれずに涙が零れてしまった。最後なのに、こんな僕を見せたくなかったのに。
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ナギ達から見えなくなるところまで来たら、『転移』を使い、一気に宿屋の自室まで跳んだ。
ドアに『ロック』と普通の鍵を二重に掛け、部屋の中に結界を張る。
ベッドに倒れるように横たわって、必死に自分の中の闇が溢れそうになるのを抑えた。
苦しくて胸の辺りを掴むと、ペンダントがチャリ、と音を立てて、ますます僕は苦しくなった。
抑えようもない、暗黒の闇のオーラが立ち昇り、結界を越えてしまう。
それに呼応して空が曇り始め、激しい雨が降って来た。
どうしてどうしてどうしてどうして。
なんで、僕を裏切ったんだ。僕を好きなんじゃなかったのか。あれは僕の勘違いだったの?そんなわけない、そんなわけある筈ないのに、じゃあなんであんな事してたんだ、リオン!
胸を引き裂くような悲しみと怒りと絶望で今にも我を失ってしまいそうなのを、必死で繋ぎ止めていると、ダダダダ!と激しく宿の階段を走る音がして、リオンが僕の部屋のドアをガンガンと叩いて来た。
「おい!キア!いるんだろ!?開けろよ!」
焦りと、怒りの滲んだ口調。なんでリオンが怒るんだ。黙っていると、焦れたリオンがドアを壊そうと魔力を高め、宿の主人がそれを止めようとしてごちゃごちゃやっているのが聞こえた。
なんで来たんだ、リオン。今さら僕に何の用があるっていうんだ。悔しい。会いたくない。
なのに、会いに来てくれた事がどうしようもなく嬉しいと思っている僕がいる。
なんて僕は馬鹿なんだ。どうしてこんなにリオンの事が好きなんだ。苦しい、苦しいよ・・・
「おい!キア!俺は自分の部屋で待ってるから、あとで絶対来いよ!話あんだからな!」
リオンがそう叫んで、隣の部屋に入る音が聞こえた。
話って何だよ。いや、そんなもの、聞かなくても分かってる。ロザリアの事が好きだ、なんて話は絶対に聞きたくない。それを聞いてしまったら、完全に終わる。
僕はまた暴走してしまう。そしてまた『前』のように人の敵として勇者に討たれるしかなくなるんだ。
リオンは勇者としてはまだ覚醒してないけど、そんなの時間の問題だ。
結局、僕はリオンと一緒に居られなくなってしまうのか。ああ、嫌だ。なんで僕はこんな風に生まれてしまったんだ。あの時なんで完全に消滅してしまわなかったんだ。
生まれ変わってもまたこんな苦しみを味わう事になるなんて、至高神ディアレスなんて大嫌いだ。
隣の部屋からシャワーを使う音が響いて来る。
リオン・・・もう会えないなら、最後に、僕は君と結ばれたい。
リオンの体に僕の印を刻み付けたい。そしたら、僕は君に討たれてもいい。一緒に居られないなら、生きていたくない。君とロザリアが幸せな姿なんて絶対に見たくないから。
シャワーの音が止んで、僕は体を起こすと昏い決意を胸にベッドを降り、ドアを開けてリオンの部屋に向かった。ドアをノックするとすぐに「開いてるから入れよ」とリオンが叫んだ。
言う通りにドアを開けて部屋に入ると、リオンはベッドの上に座ってこっちを見ていた。
僕から溢れ出ている尋常じゃない闇のオーラに気圧されて少し顔を顰めたけど、覚醒していないのにさすが勇者というべきか。気合で持ち直した。
「キア!お前ちゃんと俺の話を聞けよ!あのな、」
言いかけるのを、『サイレンス』で黙らせる。一言も聞きたくない。
リオンは焦っていたけど、今の僕のサイレンスを破る事は出来ないだろう。
「何の話か分かってるよ。けどそんな話なんて聞きたくない!なんで・・・?僕のこと、好きなんじゃなかったの?全部、僕の勘違い?酷いよ、リオン、僕の気持ちを知ってるのにロザリアとあんな事して・・・」
リオンの顔を見たら思わず感情が暴走して、気が付いたらそう叫んでいた。胸が痛い。
痛くて堪らない。
「ん、んんぐぅう!」
急にリオンが声を上げて驚いた。今の僕のサイレンスを破っただって!?想像以上に精神抵抗力が強い。
「だからな!お前のそれが勘違いなんだよ!俺はおま、」
嫌だ!聞きたくない!
僕は今までずっとリオンには使って来なかった『精神操作』を発動した。
身体を快楽に堕として、何も考えられなくしてあげる。
油断していた、いや、僕に対して警戒するなんて頭がはなからないリオンは、見事に『精神操作』に掛かった。もう1時間は解けることはない。
体の力が抜けて、ゆっくりベッドに倒れるのを僕は悲しいのか嬉しいのか分からない気持ちで見守った。
「もう、何も言わないでよ、もう何も聞きたくない・・・リオンの傍にいられなくなるんなら、僕はもう遠慮しない・・・ねえリオン。痛くしないから僕に思い出をちょうだいよ。最後に、リオンに僕の印を刻み付けてやりたいんだ」
僕はそう言って、ベッドに乗り、リオンの着ていた服を脱がせた。ああ、もうこれが最後なんだ。リオンの綺麗な引き締まった身体を僕はじっと見つめた後、唇に深く口付けした。
涙が零れそうだ。
でも、リオンの全部をしっかりと味わいたいから、何とか耐えた。
リオンは普通の倍以上の快感に、耐え切れず声を漏らしていた。ああ、こんな時でも可愛いよ・・・可愛くて、愛おしくてしょうがない。
本当は精神操作するなら、別に快感なんて与えなくても問題ないんだ。『黙れ』とか『忘れろ』って簡単な命令で事が済む。
けど、僕はどうしてもリオンにそんな事はしたくなかった。
これから無理やりリオンの初めてを奪おうとしているのに、それでもリオンに痛い思いをして欲しくなかったんだ。だから、『抵抗せず普通より快感を感じるように』と指示した。
全身に媚薬の入ったオイルを塗って撫で擦ると、リオンの股間のものがびくっと震えて、それだけで達しそうなのが分かった。それなのに、
「あっ、だ、だめ・・・」
そんな事を言って抵抗するリオンに、僕は悲しみと怒りを感じる。
「この期に及んでも、まだそんなこと言うんだ。ほんとに憎たらしいけど・・・どうしてもどうしても本当には嫌いになんかなれないよ・・・悔しい・・・僕はこんなにリオンのこと愛してて好きで好きで仕方ないのに・・・なんで、僕のことだけを好きでいてくれないの?酷いよ・・・」
ああ、駄目だ。堪えきれずに涙が零れてしまった。最後なのに、こんな僕を見せたくなかったのに。
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