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はぁ・・・いよいよか

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「ふーん。割と美味いな」

私の作ったスープもどきを口に入れたカインは、無表情のまま言った。

「まあ、食材が良かったんだと思うけどね」

野菜も肉も、何だかそれそのものの味が濃くて美味しい。
やっぱり、こういう大自然の中で採れたものだからかな。
食べ始めるとお腹が空いていたことに気付いて、私は夢中でスープを口に運んだ。

「ねえ、この世界のこと教えてよ」

黙って食べ続けるのも気まずいから、そう聞いてみた。

「何が聞きたいんだ」

お代わりしながら黙々と食べるカインに、私は魔王のことを尋ねた。カインは無表情でぶっきらぼうだったけど一応答えてくれた。

それによると、セレスティアは魔王のこと、勇者の力をもってすれば簡単に叩き潰せるゴキみたいに言ってたけど、やっぱりこの世界の人にとっては物凄く脅威で、昼間に会った気持ち悪い四つん這いの魔王の配下でも、普通の人間なら抵抗も出来ずに食われてしまうらしい。
なのに、それよりも強い奴が何種類かいるみたいだ。

「まあそういう強い奴は人里に近い場所には来ねぇ。魔王の本拠地の辺りにいるからな」
「魔王ってどこにいるの?どんな姿?」
「魔王はセレスティニアの北にある、魔の島に拠点を作ってる。岩礁が多くて普通の船は近付けねぇところだ。姿は誰も見たことがねぇが、女神に聞いたら、人型はしてないらしい。デカい蛇みたいな姿らしいぜ」
「そうなんだ・・・」

私は昼間見た奴より、もっと気持ち悪い姿の魔王を想像してゾクッと身を震わせた。
カインは言葉を続ける。

「俺らは勇者としての力を女神から授かって、一度3人で魔王に挑もうとしたんだが、本拠地の手前のところで会った配下の一人に完膚なきまでに叩きのめされた。もうダメかと覚悟したら、女神に助けられてな。一度解散してもう一度修行し直しになったんだ。でもどうしても限界を越えられねぇ、ってところで女神からお前を遣わすから、それでステータスを底上げしろって言われたんだ」
「そうかぁ・・・」

セレスティアが「今回の魔王はしぶとい」と苦々しい顔をしていたのを思い出す。

「約束、忘れてねぇよな」

全部食べ終わったカインが木のスプーンを置いて、私を見据えて言う。
居心地悪くて、すっと目を逸らしながら私は頷いた。

「分かってるって」
「じゃ、ヤろうぜ」

カインは言うなり立ち上がって、私の腕を掴もうとした。
ちょ!?またムードない!!

「ま、待ってよ!あんたってホント、やることしか考えてないの!?今食べ終わったばっかりじゃん!私、体も綺麗にしてないし嫌だってば!」

そう言って腕を引くと、カインはめんどくせぇな、って顔をしたけど、今度は一応「分かったよ」と引き下がった。

「体拭く布かなんか、貸して」

そう言うとカインがタンスからサラシみたいな布を出して来たから、それを持って私は外の井戸に向かった。

はぁ・・・これからあいつとやんなきゃいけないのか。
ああ、憂鬱。
あんなデリカシーゼロの、乱暴なエッチしそうな奴とだなんて。何とか我慢しようって思ったけど、30回もだなんて気が遠くなりそうだ。
井戸から水を汲み上げて、ワンピースと下着を脱いで、濡れない所に置く。

「ひぃいいい!」

水をちょっとづつ掛けてみたけど、本当に飛び上がるほど冷たい。
ちょっとづつやるのなんか拷問だ。もう思い切って頭から被ることにした。

ザバァッ!

「ぃいいいいっ!」

冷たいっ!!

でも、一度浴びたら最初よりは慣れたから、禊のつもりで気合を入れて何度もざぶざぶ浴びて体を擦った。
そしてガサガサした布で体を拭きながらふと思う。

そういえばセレスティアが言ってたっけ。私がイけばイくほど、早くステータスが上がるって・・・
この体は感度が良くて何度でもいけるとか・・・
嫌いなやつとやってほんとにいけるのか分かんないけど、30回も嫌々やるんだったら、いっそ、何度もイって早く終わらせたい。

まぁ・・・あいつがそれに協力してくれるかは、言ってみないと分かんないけど、早くステータス上げたいんだったら、協力するしかないよね?

「・・・よし」

私はぐっと拳を握ると、下着とワンピースをまた身につけて、家の中に戻った。

「じゃ、ベッドに行くぞ」

私を見るなりそう言うカインにちょっとムカついたけど、何とか押さえて私は言った。

「待ってよ。あのさ、私がイけばイくほど、ステータスが早く上がるって知ってる?あんた、早くステータスあげたいんだったら、私の言う通りにしてよ」
「・・・何すりゃいいんだ」

胡乱気な目を向けて来るカインに、私は今自分が使った布を差し出して言った。

「今すぐあんたも水浴びて体綺麗にして来て。汗臭いやつとやるのなんか嫌だからね」
「っち、めんどくせぇな・・・」

カインはそう言って舌打ちしたけど、仕方なさそうに布を受け取って外へ出て行った。
はぁ、何とか言う事は聞いてくれそう。やっぱり早くステータス上げたいんだ。
それからすぐカインは濡れた髪を拭きながら戻って来て、私は満足して頷いた。

「じゃ、もういいだろ」

そう言って、カインは私の腕を掴んで奥の部屋に連れて行った。
部屋には割と大き目のベッドが一つあって、薄い毛布が足元にクシャッとなっていた。
うう・・・緊張して来た。

「で?あとはどうするんだ」
「・・・じゃあ横になるから、隣に寝て」

いざ、自分が指示するとなると、なんか妙に気恥ずかしい。
でも昼間みたいな乱暴なやり方じゃ、絶対いけないし、頑張るしかない。
私が先にベッドに横になると、カインは大人しく隣に寝転がって来た。

「それで?」

聞かれて、恥ずかしくなるけど、何とか言葉を絞り出す。

「その・・・優しくしてよ。昼間みたいにいきなり突っ込んで来たりしないで、キスしたりとか、色んなところを優しく触ってくれたら、気持ち良くなれると思う・・・」
「・・・やってみる」

眉をひそめながらも、カインはそう言って私に覆い被さって来た。
うわ、やっぱり体でっかいな。あれもでかかったけど。

カインの顔が近付いて来て、私は目をぎゅっと瞑った。見えなきゃ、何とかなる。頭の中で理想の人を思い浮かべて、その人にやってもらってると思えば。

唇を塞がれて、舌が入って来た。
んっ、熱い・・・
けど・・・なんか、ぎこちないな・・・?
こいつ、モテまくってて女の方が股開いて待ってるとか言ってなかったっけ?その割に下手じゃない?
まさか、いつもそれに便乗して即挿入して、前戯とか自分からしたことないんじゃ?・・・

そんな疑惑が浮上して来て、もどかしい舌使いにもイライラして集中できなくなって来て、
「ねえちょっとあんた、ひょっとして自分から積極的にしたことないんじゃない?」
唇を離して言ってしまった。

カインは珍しく少し動揺したように目を泳がせて黙っている。やっぱ、図星か。

「こう、こうするの!私のやったようにやってみて!」

思わずそう言って自分からキスすると、私はこれまでに培ったテクニックを駆使した。舌同士、抱き締めあうみたいに絡めて、上あごのところを愛撫するようになぞったり、舌を吸ったり。

「んっ、んんっ」

レクチャーしてあげてる気持ちで夢中になってやってたら、最初はぎこちなかったカインの舌使いもだんだん上手くなって来た。
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