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あと1回

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聞いちゃいけないと思ってる。だけど、

カイン、今もシェリルのことを想ってるの?

気になって気になって、仕方なくなった。

「あ、あのさ・・・」

何度かためらったけど、そのことを聞いてみようと思って口を開いた時だった。
いきなり目の前が眩しい光に照らされて、反射的に目を瞑ってしまう。

え、ちょっと、この光って。

そう思ったら、のんびりした声が耳元で聞こえた。

「こんにちはぁ~、乃愛さん。順調に勇者たちの力を引き上げてくれていて、私、嬉しいです~」

セレスティアは、いつも通りにブルーのアニメ色の髪を風もないのに靡かせ、周りにキラキラエフェクトを纏わりつかせて笑っていた。

「で、出た」

思わず呟くと、セレスティアはむーと唇を尖らせる。

「何ですか~?その、嫌そうな顔は~。うふふ、でもエルフィード王子もかなりステータス上がりましたね~。もう、あれほど1回しかしたくない、なんて言っていたのに、結局5・・・もごっ」
「ちょ、余計なことは言わないで下さいっ!」

慌ててセレスティアの口を両手で塞ぐ。

やめてやめて!
せっかくこの話題に触れずにいたのに。

ちらっとカインを見ると、聞こえたのか聞こえてないのか、無表情のままだ。
やだやだ、聞いてないよね。

セレスティアは猫みたいにするっと私の手から逃れると、離れたところでにまにま笑った。

「もう~、いい加減に素直になればいいんですよ~。気持ちいいものは気持ちいい、でいいじゃないですか~。もっと大胆に貪欲に、求めまくっちゃって下さいよ~?」
「なっ、何言ってるんですかっ、もうやめて下さいっ」

セレスティアは焦ってる私をジト目で見て、はぁっと溜息を付く。

「あ~あ、せっかく最高傑作のエロボディを創り上げたのに、乃愛さんがいつまで経ってもはっちゃけてくれないから、これじゃ宝の持ち腐れです~。私の方が欲求不満になっちゃいますぅ」
「そんなこと知りませんっ!とにかく、何か用があるんでしょう?何ですか?」

無理やり話を変えると、セレスティアは「ああ、そうでした」と思い出したみたいにパチンと手を叩いた。

「エルフィード王子も無事にステータスが上がりましたし~、乃愛さんには次の勇者の所に行って貰おうかと思いまして~」
「えっ」

急な話にドキッとする。
セレスティアはニコニコと上機嫌に話を続けた。

「ちょうど3人目の勇者も今、魔の島に一番近い街に逗留していますし~。乃愛さんに彼のステータスを底上げして貰ったら、カインとエルフィード王子を私の力で呼び寄せて、すぐにでも魔王退治に行って貰えますしぃ。もうホント、早く退治しないと『子』が増えちゃいそうで、気が気じゃないんですぅ」

私は慌てた。

「ちょ、ちょっとそんな急過ぎません?それにまだ、カインのステータスも上がり切ってませんし」

そりゃいずれそうしなきゃいけない、ってのは分かってる。
だけど、あまりにも突然で・・・

だって、次の勇者のところに行って、みんなが魔王倒しちゃったら、私の役目は終わり。
晴れて日本に帰して貰える。
でも、そしたらそれでもう、永遠にこの世界とも、・・・カインともさよなら、ってことだよね・・・


「1回」

私の狼狽える姿を面白そうに見ていたセレスティアは、そう言うと人差し指をぴっと立てた。

「え?」
「あと1回でカインのステータスはレベルマックスです~。だから今すぐ、そこの茂みでも部屋でもどこでもいいんで~、ちゃちゃっとエッチして来て下さい~。終わったら私の力で乃愛さんを次の勇者の所に転送しますから~それじゃ、またあとで~」
「え、ええっ、ちょ、まっ・・・!」

追いすがる私の言葉なんてスルーして、あっという間にセレスティアの姿は消えた。

「うそでしょ、こんな急に」

呆然と呟くと、それまで黙ってたカインがぽつりと言った。

「もうそろそろだとは思ってたが、あと1回か」
「カイン、あの、私・・・」

何か言いたいのに、何言っていいのか分かんない。

「・・・ノア、俺の部屋に行くぞ」
「え、う、うん」

何を考えてるのか読めないカインに手を引かれて、私は戸惑いながらも付いて行った。




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クーラーのない34度の部屋で書いてます(´ ω` )あ、でも窓全開だし、水分取ってるし、時々クーラーのある部屋に避難してるんで意外と大丈夫です(*´꒳`*)ここまでお読み頂き、ありがとうございます♡また、ブクマも励みになっております。感謝です!
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