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回想~3人の勇者 sideカイン
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可愛くねえ女。
それが、俺がノアに抱いた感想だったのに。
俺に手を引かれて、神妙な顔をしながら大人しく付いて来るノアを盗み見ながら、俺はこれまでの事を思い返していた。
★★★
「勇者の皆さ~ん、お久しぶりです~。急に呼んでしまってごめんなさいね~」
久しぶりに見た女神が、微塵もそんな事など思ってなさそうな笑顔でそう言うと、赤毛で青い目の男がやれやれと肩をすくめた。
「ま、女神サマに協力するって約束だからしょうがねえけどな。せっかくいい感じで商談が纏まりそうだったのによ」
初めて見る男だ。年は分からないが俺よりは年上だろう。
「おっ、黒髪のあんた、あんたも勇者か」
俺の視線に気付いた赤毛の男は、ぱっと笑顔になった。
「俺はレグラスってんだ。よろしくな。しがねえ商人なんかやってるからな、入用の物があったら知り合った記念に、格安で用意してやるぜ」
気さくに手を差し出されて、初めて会うタイプに少し面食らったが握り返す。
「俺はカインだ。よろしく頼む」
レグラスは笑顔のまま頷くと、エルフィード王子の方を振り向いた。
俺も何となくそれを目で追う。
王子には勇者になってから一度、女神に引き合わされたが、大した話はしていない。
今日会ったのも久しぶりだし、ほぼ初対面と言っていい位だ。
そもそも王族となんか、何を話していいのか見当も付かない。
が、レグラスは臆した様子もなく、丁重だが普通に話しかけていた。
「エルフィード王太子殿下には、お初にお目に掛かります。ご尊顔は国民の一人として、何度か拝見しておりましたよ。奇遇にも俺も勇者として選ばれましたし、これからは打倒魔王の志を同じくする仲間として、力を合わせ、協力して行ければ幸いです」
恭しく頭を下げるレグラスに、エルフィード王子は上品に微笑んで言った。
「そんなに畏まらないで下さい。同じ勇者です。戦闘の際の連携に支障を来たしてもいけませんし、私達の間では普通に砕けた態度で接して頂ければと思います。カインも、よろしくお願いしますね」
「ああ、分かった」
頷きながら、少しホッとする。目上の存在に対する口の利き方なんか、知らないからな。
俺が内心胸をなでおろしていたら、
「話の分かる王子サマだなあ~。それじゃ、これからよろしく頼むぜ!」
レグラスがさっきとは別人のように、エルフィードの肩を気安く抱いていて、さすがにギョッとした。
豹変し過ぎだろう。
エルフィードは自分がああ言った手前か、それでも表情も変えず微笑んだままだったが。
「そういえば3人の勇者が一堂に会するのも初めてですね~。皆さん、挨拶も済んだようですしぃ、そろそろ本題に入りますね~」
俺達のやり取りを見ていた女神がそう言うと、パンッと両手を打ち合わせた。
「はい~。では~、皆さんには今から魔の島へ向かって貰います~。そしてちゃっちゃと魔王を退治して頂きますね~」
「「「は!?」」」
思わず知らず、息ぴったりに3人の声が重なった。
「いやいや、待てよ。いくら何でも今すぐかあ?しかも魔の島って所は岩礁が多くて、どんな腕利きの船乗りでも絶対近寄らねえような島だぜ?準備も何も無しに、どうやって辿り着けってんだよ?しかも魔王の本拠地だぜ?そんな所に俺ら3人だけで乗り込んで、生きて帰れるって保障はあんのかよ?」
口火を切ったのはレグラスだ。
俺達の言いたい事を全て代弁してくれた。
「女神セレスティア・・・親愛なる我らの女神に万に一つの間違いなどない、とは分かっていますが、私も一国の王太子という立場であり、確証が欲しいのです。本当に私達3人だけで乗り込めと、それでも勝算があると仰るのですか?」
エルフィードも、躊躇いがちに言葉を選びながらも、追随した。
「大丈夫です~!魔の島への船は、私の力で操舵しますから~。その位の干渉なら許されてますしぃ。それに心配なんか要りません~。私の力を与えて勇者にしたあなた達が~、あんな害虫に負ける筈なんかありませんから~!だから安心して行って来て下さいね~?」
「うえっ!!」
「う!?」
「ぐっ!?」
レグラス、エルフィード、俺は同時に声を上げた。
自信満々な女神が腕を振った瞬間、まるで体が巨人に持ち上げられて、凄い勢いで振り回されたような衝撃に襲われたからだ。
そして、一瞬ののちに、俺達は見た事もない海岸に立っていた。
「う、嘘だろ・・・」
「一瞬で・・・」
「どこだ、ここは・・・」
呆然と呟く俺達の傍に、いつの間にか立っていた女神が上機嫌で告げた。
「はーい、お疲れ様でしたぁ、着きましたよ~。魔の島へ一番近い海岸です~。船も用意してありますから、さあ、魔王退治へしゅっぱーつ~」
*******
このside○○っていうのが、好きで好きでたまりません。けどあんまり早くside○○やると、ネタバレになるんでなかなか始めの方には持っていきにくいんですよねえ。短めだったんで明日もまた投稿します!
ここまで読んで下さった方、ブクマなどして下さった方々ありがとうございます!めっちゃ励みになってます!
それが、俺がノアに抱いた感想だったのに。
俺に手を引かれて、神妙な顔をしながら大人しく付いて来るノアを盗み見ながら、俺はこれまでの事を思い返していた。
★★★
「勇者の皆さ~ん、お久しぶりです~。急に呼んでしまってごめんなさいね~」
久しぶりに見た女神が、微塵もそんな事など思ってなさそうな笑顔でそう言うと、赤毛で青い目の男がやれやれと肩をすくめた。
「ま、女神サマに協力するって約束だからしょうがねえけどな。せっかくいい感じで商談が纏まりそうだったのによ」
初めて見る男だ。年は分からないが俺よりは年上だろう。
「おっ、黒髪のあんた、あんたも勇者か」
俺の視線に気付いた赤毛の男は、ぱっと笑顔になった。
「俺はレグラスってんだ。よろしくな。しがねえ商人なんかやってるからな、入用の物があったら知り合った記念に、格安で用意してやるぜ」
気さくに手を差し出されて、初めて会うタイプに少し面食らったが握り返す。
「俺はカインだ。よろしく頼む」
レグラスは笑顔のまま頷くと、エルフィード王子の方を振り向いた。
俺も何となくそれを目で追う。
王子には勇者になってから一度、女神に引き合わされたが、大した話はしていない。
今日会ったのも久しぶりだし、ほぼ初対面と言っていい位だ。
そもそも王族となんか、何を話していいのか見当も付かない。
が、レグラスは臆した様子もなく、丁重だが普通に話しかけていた。
「エルフィード王太子殿下には、お初にお目に掛かります。ご尊顔は国民の一人として、何度か拝見しておりましたよ。奇遇にも俺も勇者として選ばれましたし、これからは打倒魔王の志を同じくする仲間として、力を合わせ、協力して行ければ幸いです」
恭しく頭を下げるレグラスに、エルフィード王子は上品に微笑んで言った。
「そんなに畏まらないで下さい。同じ勇者です。戦闘の際の連携に支障を来たしてもいけませんし、私達の間では普通に砕けた態度で接して頂ければと思います。カインも、よろしくお願いしますね」
「ああ、分かった」
頷きながら、少しホッとする。目上の存在に対する口の利き方なんか、知らないからな。
俺が内心胸をなでおろしていたら、
「話の分かる王子サマだなあ~。それじゃ、これからよろしく頼むぜ!」
レグラスがさっきとは別人のように、エルフィードの肩を気安く抱いていて、さすがにギョッとした。
豹変し過ぎだろう。
エルフィードは自分がああ言った手前か、それでも表情も変えず微笑んだままだったが。
「そういえば3人の勇者が一堂に会するのも初めてですね~。皆さん、挨拶も済んだようですしぃ、そろそろ本題に入りますね~」
俺達のやり取りを見ていた女神がそう言うと、パンッと両手を打ち合わせた。
「はい~。では~、皆さんには今から魔の島へ向かって貰います~。そしてちゃっちゃと魔王を退治して頂きますね~」
「「「は!?」」」
思わず知らず、息ぴったりに3人の声が重なった。
「いやいや、待てよ。いくら何でも今すぐかあ?しかも魔の島って所は岩礁が多くて、どんな腕利きの船乗りでも絶対近寄らねえような島だぜ?準備も何も無しに、どうやって辿り着けってんだよ?しかも魔王の本拠地だぜ?そんな所に俺ら3人だけで乗り込んで、生きて帰れるって保障はあんのかよ?」
口火を切ったのはレグラスだ。
俺達の言いたい事を全て代弁してくれた。
「女神セレスティア・・・親愛なる我らの女神に万に一つの間違いなどない、とは分かっていますが、私も一国の王太子という立場であり、確証が欲しいのです。本当に私達3人だけで乗り込めと、それでも勝算があると仰るのですか?」
エルフィードも、躊躇いがちに言葉を選びながらも、追随した。
「大丈夫です~!魔の島への船は、私の力で操舵しますから~。その位の干渉なら許されてますしぃ。それに心配なんか要りません~。私の力を与えて勇者にしたあなた達が~、あんな害虫に負ける筈なんかありませんから~!だから安心して行って来て下さいね~?」
「うえっ!!」
「う!?」
「ぐっ!?」
レグラス、エルフィード、俺は同時に声を上げた。
自信満々な女神が腕を振った瞬間、まるで体が巨人に持ち上げられて、凄い勢いで振り回されたような衝撃に襲われたからだ。
そして、一瞬ののちに、俺達は見た事もない海岸に立っていた。
「う、嘘だろ・・・」
「一瞬で・・・」
「どこだ、ここは・・・」
呆然と呟く俺達の傍に、いつの間にか立っていた女神が上機嫌で告げた。
「はーい、お疲れ様でしたぁ、着きましたよ~。魔の島へ一番近い海岸です~。船も用意してありますから、さあ、魔王退治へしゅっぱーつ~」
*******
このside○○っていうのが、好きで好きでたまりません。けどあんまり早くside○○やると、ネタバレになるんでなかなか始めの方には持っていきにくいんですよねえ。短めだったんで明日もまた投稿します!
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