【完結】東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!

大濠泉

文字の大きさ
272 / 282
第四章 白鳥雛派遣:救世の聖女編

◆92 だ・か・ら、王子が、お姫様に助けられて、どーすんだっていうの!

しおりを挟む
(わからねー。
 マジで、なにが、どーなってんのよ?)

 ワタシ、白鳥雛しらとりひなは、当惑していた。

〈白い聖女様〉として、王宮内において、我が物顔で陰謀を働いてきた、カレン・ホワイトという、白人の可愛らしい金髪美少女がいた。
 その女の子が、じつは、魔族の女マダリアで、王子をはじめとして、多くの貴族に魅了チャーム魔法をかけて、手懐てなずけていたことが判明した。
 ワタシは、その魅了魔法を解除レジストして、彼女が〈白い悪魔〉であることを暴露することに成功した。

 でも、彼女、〈白い悪魔〉マダリアの本体は王宮にあらず、どうやら孤児院の地下洞窟にあった卵型の岩の中にあった。
 しかも現在、その〈卵〉は完全に休眠状態に入ったらしく、本来なら、聖女のワタシでも、手も足も出ないとのことだった。

 だったら、面倒くさいから、どうでもいい、ワタシはサッサと日本東京に帰って、こんなダサい王子が威張っている国からオサラバしたいと思っていた。
 それだけだった。

 それなのに、いきなり〈白い悪魔〉のマダリアは苦しみだし、ワタシに向かって、『本体がある卵に、聖魔法を撃ち込みやがって』といった恨み言を口にして、地面をのたうち始めたのである。

 正直、まるで身に覚えがない。
 そういえば、ワタシ、いきなり緑色の肌になって、光り輝き始めてんだけど、どーして?
 マジで、わかんないことだらけだった。

 ワタシは、試しに、東京への通信回線を開いた。
 状況変化がありすぎて、とりあえずの推測でも構わないから、何か解説が欲しかった。

 疑問に答えたのは、脳内で響き渡った、東堂正宗とうどうまさむねの声だった。

「そうか、わかったぞ!
 あの〈卵〉が、ピッケとロコを飲み込んだからだ!」

 ワタシが解説を要求するまでもなく、マサムネのヤツは推測を語り出した。

 マサムネいわくーーマダリアは『あの卵型生物兵器は、休眠状態に入ると、外部からの攻撃を一切受け付けない』と豪語していた。
 だが、その〈卵〉が、今頃になって、深刻なダメージを受けたと考えられる。
 だからこそ、その〈卵〉に魂=実体があるマダリアは、苦しみ出したのだ。

 では、どうして、〈卵〉は、今頃になって、ダメージを喰らったのか?
 外部からは、いかなる攻撃をも寄せ付けないというというのに。
 考えられるのは、外からではなく、内側から損傷を受けたのでは? という可能性だ。
 そこで、「宇宙一の男」と自称するマサムネはひらめいたという。

 あの〈卵〉が、休眠状態になる前に、ピッケとロコを飲み込んだからではないかーーと。

(どーゆうこと?)

 ワタシには、まるでわけがわからなかった。
 ピッケとロコは、ライリー神父によって、道連れ同然で〈卵〉の生贄いけにえにされてしまった。
 思い出したくもない、取り返しのつかない悲劇だ。
 回想しただけで、涙が出てくる。

 が、いつも通り空気を読まないマサムネは、意気揚々と語り続けた。

「ピッケとロコといった、あの孤児たちは、オマエが作ったクリームをたっぷり身体に塗りたくってた。
 おまけに、滋養強壮のためのサプリも飲んでいた。
 そして、そのクリームや薬には、〈聖女ヒナ様〉の聖魔法が、存分に注ぎ込まれていた。
 だから、孤児たちは知らないうちに、強力な聖魔法をたっぷり胎内に蓄えた存在になってたんだ。
 そうと察することが出来なかったライリー神父が、ピッケとロコを抱え込んだまま〈龍の卵〉に生贄いけにえとして飛び込んじまったから、〈龍の卵〉は内部に聖魔法を取り込んでしまった、というわけだ」

 説明を受け、ワタシも、なるほどと合点が入った。

(ああ、だから、〈魔の霧〉にやられないで、生き残ってた人たちに、見知った顔が多かったんだ……)

 ピッケとロコ以外にも、ワタシが作った化粧品をつけ、薬を飲んだ者も、都内には結構いた。
 パーカー商会で、かなり大勢の人々が、ワタシの作った薬や化粧品を購入していた。
 そのおかげで、ワタシが大金持ちになるぐらいだったのだから。

 マサムネの推測が正しければ、そんな人々も、体内に聖魔法をたっぷり取り込んでいることになる。
 聖魔法が力を発揮して、その人たちを〈魔の霧〉の魔の手から逃れさせてくれたかもしれない。

 うん、なるほど。
 たしかに、マサムネの言ってることは、理屈が通っている気がする。

 だけど、素直に喜べない。
 要は、ワタシの聖魔法を蓄えた人間を餌にしたから、〈卵〉が腹を壊したーーといっているようなものだ。

「なによ、相変わらず嫌なヤツよね、マサムネ。
 あんた、ピッケとロコの生命を、なんだと思ってんのよ!?」

 ワタシが怒った口調で問いただしたからだろう。
 マサムネは慌てた。
 彼にしてみれば、推論を披瀝したら、いきなり罵倒されたのだから当然だ。

「な、なんだよ。もちろん、俺様だって、あの子たちについては可哀想に思ってるさ。
 ただ、推測をしたまでだ。
 あの白い偽聖女が〈外部〉からは無敵だ、とうそぶくからさ、だったら〈内部〉から聖魔法の攻撃を受けたんじゃねえのかなって。
 な、ヒナ。機嫌直せよ。
 これは好機チャンスなんだ。
 今いる王宮からでも構わない。
 精一杯力を込めて、〈真の聖女様〉ならではの聖魔法を展開してみろよ。
 きっと、一気にカタをつけられるぞ。
 そして、そんな陰気臭え異世界とはオサラバして、とっとと東京に帰って来い!」

 あのマサムネから、励ましを受けると思わなかった。
 つい、口許がほころんだ。

「ふん。アンタに言われるまでもねーっての!」


 ワタシは、意識を目前の現場ーーマダリアが地面でのたうち回る〈謁見の間〉に戻した。

 マダリアは胃液らしきものを吐き出していた。

「おええええ~~!」

 カレンと称した偽聖女は、すっかり輝きを失い、もはや〈白い悪魔〉というよりは〈灰色の魔族女〉といった外見に成り果てていた。
 酔っ払いのように、地面に胃液を吐きまくる。

 ワタシは、そんな〈白い聖女様〉のあられもない様子を、傲然ごうぜんと見下ろす。

(ピッケとロコにまで手を出した報いだ。
 ガチの自業自得ってヤツだかんね!)

 ワタシはマサムネの助言に従うことにした。
 トドメとばかりに、両手を広げ、天に振りかざして祈る。
 その途端、のたうち回る〈白い悪魔〉マダリアの下に、巨大な魔法陣が姿を現した。
 そして、青白く輝き始める。
 聖魔法の魔力が、どんどん強化されていく。

「きゃああああ!」

 マダリアは、悲鳴をあげて四肢を痙攣けいれんさせる。

 じつはこのとき、魔法陣が浮かび上がったのは、王宮の〈謁見の間〉のみではなかった。
 まるで複写したかのような聖なる魔法陣が、王城がそびえるさらなる上空にも、青白く輝いて描き出されていたのだ。

 王都のどこにいても見ることができるような、巨大魔法陣であった。

 しかも、この魔法陣から展開される聖魔法の力は、孤児院の地下にある卵型生物兵器にも注ぎ込まれていた。
 結果、〈卵〉の内部で働く聖魔法が、威力を増し続けた。

「ぐっ……な、なんて魔力……このままでは消されて……!」

 マダリアは、なんとかいちじるしく不利になった態勢を挽回しようと、必死だった。
 ワタシをキッと見据える。
 そして、突飛な行動に出た。
 地面を這いずって、ドビエス王子を掴み上げると、ワタシに向かって投げ寄越したのだ。

 ワタシは思わず両手を広げて、王子を受け取ってしまう。
 その刹那、ワタシは反射的に、自分の腕に抱えられている王子を見た。

 艶やかな緑色の肌ーーたしかに、鼻筋が通ったイケメンだ。
 でも、その表情がよろしくない。
 懇願するような、両目に涙をたたえた顔をしていた。
 ワタシは怖気おぞけふるった。

「だ・か・ら、王子が、お姫様に助けられて、どーすんだっていうの!」

 オラオラ系の〈ホスト狂いホス狂〉であるワタシの怒りが、どこらへんにあるのか、マダリアにはわからない。
 マダリアは、ワタシが聖女として戦おうとするのも、王子に執着し、彼を助けるためだと、いまだに勘違いしていた。
 ワタシが明確に王子を非難して、白い子供マオをでていたことを知っていてもーー『〈聖女様〉は〈王子様〉をしたうもの』と信じていたのだ。
 それが、『人間という種族の女性の性質サガだ』と、長年蓄積されてきた〈聖女研究〉の成果が示していた。

「ほら、王子を助けてやったぞ、これで……」

「だ・か・ら、言ってんだろぉが……」

〈聖女ヒナ〉の両腕がまぶしく輝く。

「こんなヤツ、ワタシの〈王子様〉じゃねーってなぁ!!」

 ワタシは王子を宙に放り上げると、バレーボールのアタックのように、思い切りマダリアに叩き込んだ。

 その瞬間、新たに、聖なる大魔法が展開した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...