44 / 53
第二章 お出掛けついでにトラブル編
第08話 女神、思わず女神の誓いをさせられる(▲)
しおりを挟む
ミリアの説明で誤解が解けたのか、ミレーネはウキウキ顔だった。いや、ミレーネは、ローラの冗談をアップルパイを催促しての発言だと勘違いしたようだ。
「はーい、お待ちかねのアップルパイですよ」
「なんか済みません」
とラルフが我が子のわがままを謝罪するように頭を下げ、率先してミレーネと一緒にアップルパイの取り分けを手伝いはじめた。ラルフもやることがなくて暇なのだろう。
あれから色々話し合ってみたが、結局フライングカートは魔力操作の訓練にしか使い道がないとなった。
「……にしても、贅沢」
ディビーがぽつりと呟き、彼女の正面に座っているユリアが小首を傾げた。
「ん、それはどういうことだ?」
「今日、うちの店で引き取る予定――」
「ちょっと待ったぁー!」
ローラは、抱き着く勢いでディビーの口を慌てて塞いだのだった。ディビーが何をいおうとしているのか理解したのだ。
「おいおい、どうしたんだよ、ローラ」
「そうよ、苦しそうよ」
ローラの行動に驚いたユリアとは対照的に、ミリアが冷静に指摘してくる。左手で後頭部を抑えて右手で口を塞いだものだから、ディビーは息苦しそうにもがいていたのだった。
「え、あ……ごめん」
「ふう」
ローラがディビーを解放すると、ディビーが深呼吸してから、「大丈夫、私はわかっているわよ」とでもいいたそうな目をローラに向け、大きく一つ頷くのみだった。
「あら、ありがとー。あはははは……」
意味ありげな視線にローラは、必死で頭を働かせた。ディビーは、道具屋テッドの娘である。
一悶着あった朝食時にダリルが、
『ああ、あれなら売ることにしたんだ。もうそろそろテッドの奴が引き取りに来るはずだ』
といっていたような気がする。
テッドの奴が引き取りに来る……つまり、フライングカートを売ることが決まっており、価格交渉も終わっていたのかもしれない。
(時間的にわたしたち騎士団の訓練時間と同時刻の予定だったようにも思えるし。一緒にわたしの家に来る予定だったとしたら、テッドさんから要件を聞かされている可能性もある。あちゃー、金額を知っているかもしれないわね)
ローラは、心も読めたらいいのにと、神眼に無い機能のことを残念に思う。
(うーん、これは不味いわね。うん、不味いことになったわ)
みんなの視線が集まるが、ローラはそれどころではない。話し掛けてくるミリアたちのことを無視し、引き続き必死に頭を回転させる。
(あくまで予想でしかないけど、金策目的でフライングカートを売却することをディビーが知っていたら、解体して訓練しているわたしの姿を見て何を思うかしら?)
途端、ローラは都合の良い解釈をする。
(ふ、ふつうに考えたら、わたしがダリルからもらったってことになる、わよね……)
だがしかし、べつの可能性にも気付いてしまう。
フライングカートは、高級品。フォックスマン家があまり裕福でないことは、村の全員が知っている事実。いくらローラを溺愛しているダリルであっても、金貨数枚にもなる高級品を子供たちの訓練のために投じるなど信じられないだろう。つまり、何かと引き換えに手に入れたと考える人も出てくるかもしれないのだ。
(でも、ディビーが気付いていたらこんな落ち着いているかしら? いや、しかし、うーん……)
ローラはしきりに唸り考えたが、一向に答えを出せないでいた。
そんな中、ディビーの言葉から、フライングカートがどういうものか思い出したようにミリアが、不思議そうな表情を浮かべていた。
「贅沢といえば、確かフライングカートって貴族様の家にしかない魔道具じゃない。よかったの?」
「え、えっと、何かしら?」
「だから、そんな凄い物を好き勝手して訓練に使っていいのかな? って」
「大丈夫よ。うん、大丈夫」
ミリアの指摘が的確すぎて、ローラはまともな返しができなかった。
「そうですね。あれはローラ様のものですからな。でも、もうあまり無理はしないでくださいよ」
ローラの困り顔を見かねたのか、ラルフはフォローのつもりでいったのだろう。が、それが不味かった。
ユリアがすかさずラルフに尋ねた。
「ん、どういうことです?」
「今朝、ローラ様が魔獣の素材と引き換えに交換なされたと伺ってますが――」
「「えええー!」」
ユリアの質問に、あの場にいなかったはずのラルフが事情を暴露し、ユリアとミリアの絶叫がカールパニートの店内に鳴り響く。他にお客がいたら迷惑この上ないが、幸いというか生憎客と呼べる存在は、ローラたちだけだ。そもそも、客と数えていいのかは何ともいえない。
それはさておき、事情を聞いてもディビーだけが声を上げなかった。
(やはり知っていたのね。黙ってくれていたのにごめん)
ふと、ローラが隣のディビーを見ると、目を見開いて固まっているディビーの姿があった。
まるでその様子は、驚きすぎて声が出ないといったように――
結局、ディビーも事情を理解しておらず、ローラが魔獣の素材と引き換えにフライングカートを手に入れたことを知って怒ったのであった。
「さっきの頷きは一体何だったのよぉ……」
ディビーとは理解し合えていたと思っていたローラは、一人うなだれるのであった。
それから、ローラはこれでもかというほど謝り通し、それぞれのお願いを何でも一つずつ叶えて上げることで許してもらった。
その内容はまだ決まっていない。
いずれときが来たらということで決着がついたのだった。
「はーい、お待ちかねのアップルパイですよ」
「なんか済みません」
とラルフが我が子のわがままを謝罪するように頭を下げ、率先してミレーネと一緒にアップルパイの取り分けを手伝いはじめた。ラルフもやることがなくて暇なのだろう。
あれから色々話し合ってみたが、結局フライングカートは魔力操作の訓練にしか使い道がないとなった。
「……にしても、贅沢」
ディビーがぽつりと呟き、彼女の正面に座っているユリアが小首を傾げた。
「ん、それはどういうことだ?」
「今日、うちの店で引き取る予定――」
「ちょっと待ったぁー!」
ローラは、抱き着く勢いでディビーの口を慌てて塞いだのだった。ディビーが何をいおうとしているのか理解したのだ。
「おいおい、どうしたんだよ、ローラ」
「そうよ、苦しそうよ」
ローラの行動に驚いたユリアとは対照的に、ミリアが冷静に指摘してくる。左手で後頭部を抑えて右手で口を塞いだものだから、ディビーは息苦しそうにもがいていたのだった。
「え、あ……ごめん」
「ふう」
ローラがディビーを解放すると、ディビーが深呼吸してから、「大丈夫、私はわかっているわよ」とでもいいたそうな目をローラに向け、大きく一つ頷くのみだった。
「あら、ありがとー。あはははは……」
意味ありげな視線にローラは、必死で頭を働かせた。ディビーは、道具屋テッドの娘である。
一悶着あった朝食時にダリルが、
『ああ、あれなら売ることにしたんだ。もうそろそろテッドの奴が引き取りに来るはずだ』
といっていたような気がする。
テッドの奴が引き取りに来る……つまり、フライングカートを売ることが決まっており、価格交渉も終わっていたのかもしれない。
(時間的にわたしたち騎士団の訓練時間と同時刻の予定だったようにも思えるし。一緒にわたしの家に来る予定だったとしたら、テッドさんから要件を聞かされている可能性もある。あちゃー、金額を知っているかもしれないわね)
ローラは、心も読めたらいいのにと、神眼に無い機能のことを残念に思う。
(うーん、これは不味いわね。うん、不味いことになったわ)
みんなの視線が集まるが、ローラはそれどころではない。話し掛けてくるミリアたちのことを無視し、引き続き必死に頭を回転させる。
(あくまで予想でしかないけど、金策目的でフライングカートを売却することをディビーが知っていたら、解体して訓練しているわたしの姿を見て何を思うかしら?)
途端、ローラは都合の良い解釈をする。
(ふ、ふつうに考えたら、わたしがダリルからもらったってことになる、わよね……)
だがしかし、べつの可能性にも気付いてしまう。
フライングカートは、高級品。フォックスマン家があまり裕福でないことは、村の全員が知っている事実。いくらローラを溺愛しているダリルであっても、金貨数枚にもなる高級品を子供たちの訓練のために投じるなど信じられないだろう。つまり、何かと引き換えに手に入れたと考える人も出てくるかもしれないのだ。
(でも、ディビーが気付いていたらこんな落ち着いているかしら? いや、しかし、うーん……)
ローラはしきりに唸り考えたが、一向に答えを出せないでいた。
そんな中、ディビーの言葉から、フライングカートがどういうものか思い出したようにミリアが、不思議そうな表情を浮かべていた。
「贅沢といえば、確かフライングカートって貴族様の家にしかない魔道具じゃない。よかったの?」
「え、えっと、何かしら?」
「だから、そんな凄い物を好き勝手して訓練に使っていいのかな? って」
「大丈夫よ。うん、大丈夫」
ミリアの指摘が的確すぎて、ローラはまともな返しができなかった。
「そうですね。あれはローラ様のものですからな。でも、もうあまり無理はしないでくださいよ」
ローラの困り顔を見かねたのか、ラルフはフォローのつもりでいったのだろう。が、それが不味かった。
ユリアがすかさずラルフに尋ねた。
「ん、どういうことです?」
「今朝、ローラ様が魔獣の素材と引き換えに交換なされたと伺ってますが――」
「「えええー!」」
ユリアの質問に、あの場にいなかったはずのラルフが事情を暴露し、ユリアとミリアの絶叫がカールパニートの店内に鳴り響く。他にお客がいたら迷惑この上ないが、幸いというか生憎客と呼べる存在は、ローラたちだけだ。そもそも、客と数えていいのかは何ともいえない。
それはさておき、事情を聞いてもディビーだけが声を上げなかった。
(やはり知っていたのね。黙ってくれていたのにごめん)
ふと、ローラが隣のディビーを見ると、目を見開いて固まっているディビーの姿があった。
まるでその様子は、驚きすぎて声が出ないといったように――
結局、ディビーも事情を理解しておらず、ローラが魔獣の素材と引き換えにフライングカートを手に入れたことを知って怒ったのであった。
「さっきの頷きは一体何だったのよぉ……」
ディビーとは理解し合えていたと思っていたローラは、一人うなだれるのであった。
それから、ローラはこれでもかというほど謝り通し、それぞれのお願いを何でも一つずつ叶えて上げることで許してもらった。
その内容はまだ決まっていない。
いずれときが来たらということで決着がついたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる