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第二章 お出掛けついでにトラブル編
第11話 女神、老剣士、それぞれの認識(▲)
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ガストーネの誕生会に参加せざるを得ないことが判明したローラは、荒れに荒れていた。
丸焦げになったゴブリンたちを異次元収納に放り込みながら、ローラが悪態をつく。
「あー、何なのよもー。いきなり増えすぎよ!」
東の森に入ってから歩いて三〇分ほど進んでも魔獣が一向に現れなかった。それならば、わらわらと魔獣が湧き出る洞窟へ向かったのだが、あと数分の距離まで来たところで、五〇匹ほどのゴブリンの群れに囲われ、いましがた討伐を終えたところである。
「確かにいまのは焦ったな」
「学費のためには好都合、好都合」
汗を拭いながらユリアは、地面に転がっているゴブリンであった真っ黒なモノを眺めている。
一方、ミリアは魔石にしか興味が無いようだ。ニコニコ顔でゴブリンを集めている。
「それにしても、ディビーの魔法も凄いけど、さすがはローラだな」
「うん……私の分、取られた……」
「そ、そんなの当たり前じゃ無いの。それにね、ディビー。この数を相手に誰の分とか無いわよ」
ユリアの賞賛にまんざらでもないローラは、頬が緩むのを堪え、いつも通りポイントがずれたディビーの発言に突っ込みを入れる。
そんないつもの遣り取りの中、ミリアがいつも通りの発言をする。
「私としては、治癒魔法を使う機会が無くてつまらないのよねー」
本来、治癒魔法を使う必要があるのは、誰かが負傷した場合だ。その機会が無い方が好ましい。それでも、ミリアは治癒魔法士を目指している。光魔法の訓練をしたいのだろう。
ラルフは、子供たちの異様な会話を聞きながら唖然としていた。
(身体操作の呑み込みの早さといい、モーラ様への魔法講義といい、ローラ様の才能に驚かされはしたが、まさかここまでとは――)
ラルフは、ローラの実力が予想以上であったことを知って驚いた。
(ミリアちゃんたちの様子から、さも当然といった様子。普段からこのようなローラ様のお姿を見ているということだろう。さっきは、私が盾になってお守りすると覚悟したが……とんでもない! やはり、ローラ様は神に愛されておられる)
ラルフは、改めてローラの凄さを実感し、うっとりとした視線をローラへと向ける。
「ちょっと、ラルフ!」
「は、はいっ。何でしょうか、ローラ様」
ローラに呼ばれ、ハッとしたラルフが思わず姿勢を正す。
「わたしは、そんな大層なもんじゃないわよ」
ローラの発言にラルフはギクリとした。
「ま、まさか声に出していましたかな?」
「そう、やっぱり……違うわよ。全然違う」
ローラは、頭を振って否定した。どういうことだろうか? とラルフが眉を上げる。
「わたしが何かすると、愛と戦の女神様のようだーっていっているから、またそんなくだらないこと考えているんじゃないかしらと、思っただけよ」
かわいい声で口真似をされたラルフは、ローラの様子に微笑みほっとする。ただ、意味合いとしては、ローラがいったことと大差ないことを考えていたのだ。声に出さずとも思考が駄々漏れだったようだ。
「それより、ゴブリンたちを一箇所に集めてくれないかしら」
「はっ、ただいま!」
ラルフは、ファイアストームで焼き尽くされたゴブリンをせっせとローラの下へと運ぶ。
「いやあ、これがイメージとやらの力ですか」
「何の話よ」
「いえ、あれほどの威力の火魔法を使っておきながら、森の木々が全く燃えていないので、感心した次第です」
「ああ、そういうことね」
本来、火魔法を森の中で行使するのは自殺行為に等しい。それなのに――それなのにも拘わらず、ローラの魔力操作の技量のおかげだろう。炎の嵐に蹂躙されたはずの木々には、焦げ跡一つついていないのである。
事情を知っているラルフだからこそ、この程度の反応で済む。が、他の誰かに見られでもしたら、色々と厄介なことになるだろう。
「精霊に罪は無いからね」
「そうですか。よくわかりませんが、心優しいローラ様といったところですかな」
精霊? なぜここで精霊が出てくるのだろうか、と思ったラルフであったが、己の常識が全く通用しないローラに対し、無意識に考えることを放棄していたのだった。
「え、ええ、まあ、そんなところかしらね」
ローラが苦笑いしていることから、やはり、何か隠しているのは確かなのだろう。けれども、もう少し様子を見ることにするラルフであった。
ラルフの返答に苦笑いしているローラを見やり、
『『『まったくこの人は!』』』
とミリアたち三人は、全く同じことを考えて心の中で突っ込みを入れる。
ローラは、この世界で知られていないことを、当然のように話し出すことがある。ローラがあの女神の転生体であることを知っている三人であれば問題にはならない。
だがしかし、他の人に聞かれたら、変な目で見られること間違いなし、である。
「それにしても、全然暴れ足りないわね。マジックポーションで補給を済ませたら、予定通り洞窟へ入るわよ!」
「次こそは……私が……」
「いや、洞窟内だったら、あたしの出番だろっ」
ガストーネのことでローラがむしゃくしゃしているのをミリアは気付いていた。故に、ローラにはスッキリしてほしいと思っている。それなのに、他の二人が余計にやる気を出しているのを見て、ミリアが思わず笑ってしまう。
「まったくあなたたちは――」
「「「何よ!」」」
当然、笑われた理由がわからない三人は、過度な反応をしてしまう。
「いえ、何でもないですよーだ。私は、適度に怪我さえしてくれれば結構よ」
ミリアはミリアで、さらりと酷いことをいい放つのだが、
「「「まったくミリアは!」」」
と他の三人が同時に叫んだのは、当然のことであった。
のほほんとくだらない会話をしているようだが、その内容は、実に九歳の子供たちの会話らしからぬものだった。
護衛兼監視役として同行してきたラルフは、引きつった笑みを浮かべ、自分の出番が全くないことに気付き、やるせない気持ちになるのだった。
丸焦げになったゴブリンたちを異次元収納に放り込みながら、ローラが悪態をつく。
「あー、何なのよもー。いきなり増えすぎよ!」
東の森に入ってから歩いて三〇分ほど進んでも魔獣が一向に現れなかった。それならば、わらわらと魔獣が湧き出る洞窟へ向かったのだが、あと数分の距離まで来たところで、五〇匹ほどのゴブリンの群れに囲われ、いましがた討伐を終えたところである。
「確かにいまのは焦ったな」
「学費のためには好都合、好都合」
汗を拭いながらユリアは、地面に転がっているゴブリンであった真っ黒なモノを眺めている。
一方、ミリアは魔石にしか興味が無いようだ。ニコニコ顔でゴブリンを集めている。
「それにしても、ディビーの魔法も凄いけど、さすがはローラだな」
「うん……私の分、取られた……」
「そ、そんなの当たり前じゃ無いの。それにね、ディビー。この数を相手に誰の分とか無いわよ」
ユリアの賞賛にまんざらでもないローラは、頬が緩むのを堪え、いつも通りポイントがずれたディビーの発言に突っ込みを入れる。
そんないつもの遣り取りの中、ミリアがいつも通りの発言をする。
「私としては、治癒魔法を使う機会が無くてつまらないのよねー」
本来、治癒魔法を使う必要があるのは、誰かが負傷した場合だ。その機会が無い方が好ましい。それでも、ミリアは治癒魔法士を目指している。光魔法の訓練をしたいのだろう。
ラルフは、子供たちの異様な会話を聞きながら唖然としていた。
(身体操作の呑み込みの早さといい、モーラ様への魔法講義といい、ローラ様の才能に驚かされはしたが、まさかここまでとは――)
ラルフは、ローラの実力が予想以上であったことを知って驚いた。
(ミリアちゃんたちの様子から、さも当然といった様子。普段からこのようなローラ様のお姿を見ているということだろう。さっきは、私が盾になってお守りすると覚悟したが……とんでもない! やはり、ローラ様は神に愛されておられる)
ラルフは、改めてローラの凄さを実感し、うっとりとした視線をローラへと向ける。
「ちょっと、ラルフ!」
「は、はいっ。何でしょうか、ローラ様」
ローラに呼ばれ、ハッとしたラルフが思わず姿勢を正す。
「わたしは、そんな大層なもんじゃないわよ」
ローラの発言にラルフはギクリとした。
「ま、まさか声に出していましたかな?」
「そう、やっぱり……違うわよ。全然違う」
ローラは、頭を振って否定した。どういうことだろうか? とラルフが眉を上げる。
「わたしが何かすると、愛と戦の女神様のようだーっていっているから、またそんなくだらないこと考えているんじゃないかしらと、思っただけよ」
かわいい声で口真似をされたラルフは、ローラの様子に微笑みほっとする。ただ、意味合いとしては、ローラがいったことと大差ないことを考えていたのだ。声に出さずとも思考が駄々漏れだったようだ。
「それより、ゴブリンたちを一箇所に集めてくれないかしら」
「はっ、ただいま!」
ラルフは、ファイアストームで焼き尽くされたゴブリンをせっせとローラの下へと運ぶ。
「いやあ、これがイメージとやらの力ですか」
「何の話よ」
「いえ、あれほどの威力の火魔法を使っておきながら、森の木々が全く燃えていないので、感心した次第です」
「ああ、そういうことね」
本来、火魔法を森の中で行使するのは自殺行為に等しい。それなのに――それなのにも拘わらず、ローラの魔力操作の技量のおかげだろう。炎の嵐に蹂躙されたはずの木々には、焦げ跡一つついていないのである。
事情を知っているラルフだからこそ、この程度の反応で済む。が、他の誰かに見られでもしたら、色々と厄介なことになるだろう。
「精霊に罪は無いからね」
「そうですか。よくわかりませんが、心優しいローラ様といったところですかな」
精霊? なぜここで精霊が出てくるのだろうか、と思ったラルフであったが、己の常識が全く通用しないローラに対し、無意識に考えることを放棄していたのだった。
「え、ええ、まあ、そんなところかしらね」
ローラが苦笑いしていることから、やはり、何か隠しているのは確かなのだろう。けれども、もう少し様子を見ることにするラルフであった。
ラルフの返答に苦笑いしているローラを見やり、
『『『まったくこの人は!』』』
とミリアたち三人は、全く同じことを考えて心の中で突っ込みを入れる。
ローラは、この世界で知られていないことを、当然のように話し出すことがある。ローラがあの女神の転生体であることを知っている三人であれば問題にはならない。
だがしかし、他の人に聞かれたら、変な目で見られること間違いなし、である。
「それにしても、全然暴れ足りないわね。マジックポーションで補給を済ませたら、予定通り洞窟へ入るわよ!」
「次こそは……私が……」
「いや、洞窟内だったら、あたしの出番だろっ」
ガストーネのことでローラがむしゃくしゃしているのをミリアは気付いていた。故に、ローラにはスッキリしてほしいと思っている。それなのに、他の二人が余計にやる気を出しているのを見て、ミリアが思わず笑ってしまう。
「まったくあなたたちは――」
「「「何よ!」」」
当然、笑われた理由がわからない三人は、過度な反応をしてしまう。
「いえ、何でもないですよーだ。私は、適度に怪我さえしてくれれば結構よ」
ミリアはミリアで、さらりと酷いことをいい放つのだが、
「「「まったくミリアは!」」」
と他の三人が同時に叫んだのは、当然のことであった。
のほほんとくだらない会話をしているようだが、その内容は、実に九歳の子供たちの会話らしからぬものだった。
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