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クレインに手紙を書いて数日せずに、返事が返ってきた。郵便を使わずに直接アルベール家の人が持ってきたから、多分僕の手紙を読んでそのまま返事を書いて持たせたんじゃないかってメリアが驚きながら言っていた。ふ~ん?まあ悪くない気分かな。そんなに急いで彼はなにを伝えたかったのだろうと思って、すぐに手紙の封をメリアに開けてもらう。堅苦しい挨拶は読み飛ばして、手紙の本題を目で追う。
『返事をありがとう。とても嬉しい。もし良ければ今度俺の家に遊びに来て貰えないだろうか。使いを送るから、良い日程を教えてくれ。』
簡潔に硬い文字でそう書かれていた。なるほど、わざわざ使いを送ったのは、そのまま日程を調整しろということだったのか。別に急がなくたって手紙でやり取りしたっていいのに、どうしてそんな面倒なことをしたんだろう?僕に早く会いたかったとか?……まあそんなことは置いておいて、僕もずっとフルーベル家の敷地内での生活に飽き飽きしていたからちょうどいい。
「メリア、僕クレインのお家に行ってもいいかな?」
隣で控えていたメリアに聞いてみる。すると、
「まあ、クレイン様からお誘いがあったのですね!良かったですねおぼっちゃま。」
とメリアの方が嬉しそうにして言った。いや、そもそも嬉しいのは僕じゃなくて美しい僕に会えるクレインの方だけど。
「恐らくはご当主様もお許し下さると思いますが、お聞きになるのが良いかと思います。」
そうメリアが続けた。まあ、そうだろう。僕ってば一度も領地とタウンハウスを一人で出たことの無い超箱入りだし。とは言っても、お父様に聞くの何だか恥ずかしい。そういう経験って前世では一度もなかったから。前世ではクレインと会うのは親が決めた日か、貴族の集まるパーティだけだった。クレインと会っても、彼の鋭い目に責められている気がついして全然楽しくなかったし、パーティはよく見られようと必死で楽しいとかそういう問題じゃなかった。それに僕には他に遊ぶ友達とかいなかった。だから、学園では最終的に裏切るような友人とも呼べないような奴らを、周りに置いてしまったんだと思う。前世の僕ってば、本当に見る目なかったなぁ。
ああ、また思考が脱線しちゃった。恥ずかしいとは言っても、聞かないとクレインには会ってあげられないから、お父様とお話しなくちゃ。手紙の内容を見る限り、使者の人はまだ待っているはずだし、あんまり待たせてしまったら良い子じゃないって噂がアルベール家で流れちゃうかもしれない。それだけは避けなきゃ。
「メリア、お父様のお時間が今あるか聞いてきて?」
「かしこまりました。」
メリアは僕の部屋の扉を開けて、外にいる侍女に何やら言伝をした。最近気がついたけれど、メリアはあんまり僕の傍を離れないようにしているみたいだ。最初は過保護なのかなと思っていたけれどある時、
「おぼっちゃま、このメリアの前だけでは楽にされてよろしいのですよ。」
とメリアに言われたことがあった。その時、メリアは僕が良い子のふりをしているのだということを知っているらしいと気がついた。何で知っているのかと聞くと、
「ずっと私はおぼっちゃまのお傍でお世話をさせて頂いてきたのですよ?おぼっちゃまのことは何でもわかるのです。」
と胸を張って言われた。血の繋がった家族でも、僕のぶりっ子にきっと気がついていないのに、メリアだけは気がついていた。それはきっと恐ろしいことのはずなのに、何故だか僕はそれが嬉しかったのだ。それに、四六時中良い子のふりをするのは骨が折れるし、メリア以外の使用人はまだ完全には信用出来ていなかった。だから、それ以来できるだけ僕のお世話を自分でこなそうとするメリアを、僕はそのままにしているのだった。その可愛らしい献身は僕の胸の当たりを温かくしてくれたから。
そんなことを考えていれば、先程の侍女が僕の部屋をノックして、お父様がお呼びだと伝えに来た。急いで身だしなみを整えて、お父様の書斎へと向かう。お父様の書斎は僕の部屋より上の階にあって、少し遠いから早歩きだ。ちょっと息を切らしながら書斎の扉を叩くと、中から低い声で、
「入れ。」
と聞こえたので、メリアにその重厚な扉を開けてもらう。中に入ると、書き物机に座ってこちらを見つめるお父様がいた。その目はやはり厳しくて、少し緊張してしまう。けれど、僕はもうその目が僕を責めるものではないと知っている。ぐっと足の指に力を込めて、言葉を紡ぐ。
「お父様、お願いがあります。」
「なんだ。」
「クレインのお家にお呼ばれしたのですが、遊びに行っても良いですか?」
おずおずとお父様を見つめながらそう言うと、数刻お父様は黙ったまま僕を見つめた。何か間違えてしまったのだろうか、そう思って謝ろうとすると、
「……まだ、早いのではないか。」
とお父様が呟いた。まだ早い?クレインの家に行くのが?自分で言うのもなんだけど、本当は社交デビューを果たしているはずの年齢だし、他の貴族の家に行くくらいはしても大丈夫だと思うんだけど、何が早いんだろう。そう不思議に思って、どう返していいかわからずお父様を見つめてしまう。また数秒、見つめ合う時間が流れた。お父様お願いだから何か言って、そう思った時、
「アルベールの息子とは、仲良くやれているのか。」
と、お父様が聞いた。仲良くってなんだろう。僕にそんなのわかるはずないじゃないかと思って、後ろのメリアを見上げれば、にこりと微笑んでくれた。メリアから見て仲良しなら、そう言っていいかな。ダメだったらメリアのせいにしよう。
「はい。」
「……はぁ。」
お父様は深いため息を吐いた。それに少しびっくりして肩を揺らすと、
「ああ、違うんだ。良い、行ってきなさい。」
お父様は少しだけその厳しい雰囲気を軟化させてそう言った。よくわからないけど、言質は取ったから、
「ありがとうございます、お父様!」
とめいいっぱいの笑顔を見せつけて、書斎を失礼した。
「はぁ、ルイスが大人になって行ってしまう。」
とお父様が使用人に零したのは、外出を思って浮き足立つ僕の耳には入らなかった。
その後、すぐに使者とメリアが時間を擦り合わせた。早い方がいいと思ったのか、僕やクレインの学習の兼ね合いもあって、明後日の午後にアルベール家を訪ねることになった。まあまあ待たされていた使者の人は疲れきった顔で帰って行ったけど、僕のせいじゃないこと、ちゃんとわかっておいてほしい。普通に、急に使わせたクレインが悪いと思う。
ともかく、お父様の許しも出たし明後日にはお出かけだ。この一ヶ月ほど、タウンハウスの中か庭かしか行く場所がなかったから、庭師とはそれなりに顔見知りになってしまったし、僕が読んでいてもおかしくない本は粗方読み終えてしまった。そろそろ暇で死んじゃうなあって思っていたところだったから、渡りに船ってやつだよね。
同年代の子の家にお呼ばれって人生二度目にして初めてだし、何だかワクワクしちゃうな、なんて思いながら授業を受けたり、お散歩をしたりしていたらすぐに約束の日は来てしまうのだ。
『返事をありがとう。とても嬉しい。もし良ければ今度俺の家に遊びに来て貰えないだろうか。使いを送るから、良い日程を教えてくれ。』
簡潔に硬い文字でそう書かれていた。なるほど、わざわざ使いを送ったのは、そのまま日程を調整しろということだったのか。別に急がなくたって手紙でやり取りしたっていいのに、どうしてそんな面倒なことをしたんだろう?僕に早く会いたかったとか?……まあそんなことは置いておいて、僕もずっとフルーベル家の敷地内での生活に飽き飽きしていたからちょうどいい。
「メリア、僕クレインのお家に行ってもいいかな?」
隣で控えていたメリアに聞いてみる。すると、
「まあ、クレイン様からお誘いがあったのですね!良かったですねおぼっちゃま。」
とメリアの方が嬉しそうにして言った。いや、そもそも嬉しいのは僕じゃなくて美しい僕に会えるクレインの方だけど。
「恐らくはご当主様もお許し下さると思いますが、お聞きになるのが良いかと思います。」
そうメリアが続けた。まあ、そうだろう。僕ってば一度も領地とタウンハウスを一人で出たことの無い超箱入りだし。とは言っても、お父様に聞くの何だか恥ずかしい。そういう経験って前世では一度もなかったから。前世ではクレインと会うのは親が決めた日か、貴族の集まるパーティだけだった。クレインと会っても、彼の鋭い目に責められている気がついして全然楽しくなかったし、パーティはよく見られようと必死で楽しいとかそういう問題じゃなかった。それに僕には他に遊ぶ友達とかいなかった。だから、学園では最終的に裏切るような友人とも呼べないような奴らを、周りに置いてしまったんだと思う。前世の僕ってば、本当に見る目なかったなぁ。
ああ、また思考が脱線しちゃった。恥ずかしいとは言っても、聞かないとクレインには会ってあげられないから、お父様とお話しなくちゃ。手紙の内容を見る限り、使者の人はまだ待っているはずだし、あんまり待たせてしまったら良い子じゃないって噂がアルベール家で流れちゃうかもしれない。それだけは避けなきゃ。
「メリア、お父様のお時間が今あるか聞いてきて?」
「かしこまりました。」
メリアは僕の部屋の扉を開けて、外にいる侍女に何やら言伝をした。最近気がついたけれど、メリアはあんまり僕の傍を離れないようにしているみたいだ。最初は過保護なのかなと思っていたけれどある時、
「おぼっちゃま、このメリアの前だけでは楽にされてよろしいのですよ。」
とメリアに言われたことがあった。その時、メリアは僕が良い子のふりをしているのだということを知っているらしいと気がついた。何で知っているのかと聞くと、
「ずっと私はおぼっちゃまのお傍でお世話をさせて頂いてきたのですよ?おぼっちゃまのことは何でもわかるのです。」
と胸を張って言われた。血の繋がった家族でも、僕のぶりっ子にきっと気がついていないのに、メリアだけは気がついていた。それはきっと恐ろしいことのはずなのに、何故だか僕はそれが嬉しかったのだ。それに、四六時中良い子のふりをするのは骨が折れるし、メリア以外の使用人はまだ完全には信用出来ていなかった。だから、それ以来できるだけ僕のお世話を自分でこなそうとするメリアを、僕はそのままにしているのだった。その可愛らしい献身は僕の胸の当たりを温かくしてくれたから。
そんなことを考えていれば、先程の侍女が僕の部屋をノックして、お父様がお呼びだと伝えに来た。急いで身だしなみを整えて、お父様の書斎へと向かう。お父様の書斎は僕の部屋より上の階にあって、少し遠いから早歩きだ。ちょっと息を切らしながら書斎の扉を叩くと、中から低い声で、
「入れ。」
と聞こえたので、メリアにその重厚な扉を開けてもらう。中に入ると、書き物机に座ってこちらを見つめるお父様がいた。その目はやはり厳しくて、少し緊張してしまう。けれど、僕はもうその目が僕を責めるものではないと知っている。ぐっと足の指に力を込めて、言葉を紡ぐ。
「お父様、お願いがあります。」
「なんだ。」
「クレインのお家にお呼ばれしたのですが、遊びに行っても良いですか?」
おずおずとお父様を見つめながらそう言うと、数刻お父様は黙ったまま僕を見つめた。何か間違えてしまったのだろうか、そう思って謝ろうとすると、
「……まだ、早いのではないか。」
とお父様が呟いた。まだ早い?クレインの家に行くのが?自分で言うのもなんだけど、本当は社交デビューを果たしているはずの年齢だし、他の貴族の家に行くくらいはしても大丈夫だと思うんだけど、何が早いんだろう。そう不思議に思って、どう返していいかわからずお父様を見つめてしまう。また数秒、見つめ合う時間が流れた。お父様お願いだから何か言って、そう思った時、
「アルベールの息子とは、仲良くやれているのか。」
と、お父様が聞いた。仲良くってなんだろう。僕にそんなのわかるはずないじゃないかと思って、後ろのメリアを見上げれば、にこりと微笑んでくれた。メリアから見て仲良しなら、そう言っていいかな。ダメだったらメリアのせいにしよう。
「はい。」
「……はぁ。」
お父様は深いため息を吐いた。それに少しびっくりして肩を揺らすと、
「ああ、違うんだ。良い、行ってきなさい。」
お父様は少しだけその厳しい雰囲気を軟化させてそう言った。よくわからないけど、言質は取ったから、
「ありがとうございます、お父様!」
とめいいっぱいの笑顔を見せつけて、書斎を失礼した。
「はぁ、ルイスが大人になって行ってしまう。」
とお父様が使用人に零したのは、外出を思って浮き足立つ僕の耳には入らなかった。
その後、すぐに使者とメリアが時間を擦り合わせた。早い方がいいと思ったのか、僕やクレインの学習の兼ね合いもあって、明後日の午後にアルベール家を訪ねることになった。まあまあ待たされていた使者の人は疲れきった顔で帰って行ったけど、僕のせいじゃないこと、ちゃんとわかっておいてほしい。普通に、急に使わせたクレインが悪いと思う。
ともかく、お父様の許しも出たし明後日にはお出かけだ。この一ヶ月ほど、タウンハウスの中か庭かしか行く場所がなかったから、庭師とはそれなりに顔見知りになってしまったし、僕が読んでいてもおかしくない本は粗方読み終えてしまった。そろそろ暇で死んじゃうなあって思っていたところだったから、渡りに船ってやつだよね。
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