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栽培
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ユルデ村の裏手、小高い丘の一角にある空き地。
そこに、今ひとつの建物が建設されつつあった。
――素材温室《ルーミス室》。
「木枠はいい感じに組めたな。あとはこの《樹脂膜》を張って……」
トーヤは慎重に透明な膜を引っ張りながら、釘で枠に固定していく。
素材は村の大工の協力で調達し、設計も自分で引いた。内部には、土を盛った植床と湿度調整用の《水晶吸石》を配置。
その中心に、あの旅商人グレイグからもらった《ノボシ草》の芽をそっと植える。
「火にも水にも強いこの草が、うまく育てば……素材の幅が一気に広がる」
「わぁ……小さいけど、ほんとに綺麗な葉ですね」
後ろから声をかけてきたのはユーリ。水やり用の小壺を抱えてやってきた。
「この子も、立派な素材になるかな?」
「ああ。時間はかかるかもしれないけど――育てて観察して、その環境ごと理解する。採取と同じくらい、大事なことだよ」
⸻
素材の世界には“自然採取”と“人工育成”という二つの手段がある。
前者は自然の中で偶然を拾い集めるもの。
後者はその偶然を、人の手で“意図的な再現”へと変える行為だ。
それは知識と経験がなければできない。だが、それこそが“素材屋”の真髄でもある。
⸻
数日後。
ルーミス室の中で、ノボシ草の芽がわずかに伸びていた。
「……おっ。光の当て方と水量、ちょっと変えたのが効いたかもな」
トーヤは嬉しそうにノートへ記録を取る。
【第5日目】
・日光:朝5~10時で遮光率50%
・水:地下水+養分液(黄鉄鉱粉末入り)
・成長:双葉が4ミリ→6.5ミリに成長
→葉縁にわずかな燃焼跡、火属性反応が強化?
「うんうん、いいぞ……これが“育てる観察”ってやつだな」
まるで子どもの成長を見守るように、トーヤは毎日変化を記録していた。
⸻
ラミナ堂の主人・ラミナも、その情熱に舌を巻いていた。
「トーヤ、あんた本気で“素材屋”になってきたねぇ……育てるなんて、昔の錬金師でもやらなかったわよ」
「育てるってことは、素材を“持続的に”使えるってことだから。村の暮らしにも、きっと役立つと思う」
実際、ラミナ堂ではすでにルーミス室の一部を薬草の仮育成に使い始めている。
ユルデ村にとって、素材の“安定供給”はこれまでなかった発想だった。
「トーヤさんが村に来てから、すごく変わってきましたね……」
ユーリがぽつりとつぶやいた。
トーヤは少し驚いて、ユーリを見る。
「そうか?」
「はい。私もそうですけど、村の人たちも、素材ってただ“拾う”ものじゃなくて、ちゃんと知ればもっと役立つって……気づき始めてるんです」
小さな変化。それはきっと、いつか大きなうねりになる。
⸻
数週間後。
ノボシ草は無事に“成葉”へと成長し、その一部は試験的にラミナ堂の薬師たちに提供された。
燃やしても灰を出さないという性質を活かし、“熱を持たない蒸気包帯”の素材として応用され始めていた。
「これは火傷の治療用に向いてるかもしれないな……」
老薬師のグラン爺がそう呟いたのを聞いて、トーヤは内心ガッツポーズ。
(よし……第一号、成功だ!)
⸻
夜。ルーミス室にランプを灯しながら、トーヤはふと空を見上げた。
「育てるって、いいな……。今度は、何を育てようか」
その言葉に応えるように、風が葉を揺らした。
そこに、今ひとつの建物が建設されつつあった。
――素材温室《ルーミス室》。
「木枠はいい感じに組めたな。あとはこの《樹脂膜》を張って……」
トーヤは慎重に透明な膜を引っ張りながら、釘で枠に固定していく。
素材は村の大工の協力で調達し、設計も自分で引いた。内部には、土を盛った植床と湿度調整用の《水晶吸石》を配置。
その中心に、あの旅商人グレイグからもらった《ノボシ草》の芽をそっと植える。
「火にも水にも強いこの草が、うまく育てば……素材の幅が一気に広がる」
「わぁ……小さいけど、ほんとに綺麗な葉ですね」
後ろから声をかけてきたのはユーリ。水やり用の小壺を抱えてやってきた。
「この子も、立派な素材になるかな?」
「ああ。時間はかかるかもしれないけど――育てて観察して、その環境ごと理解する。採取と同じくらい、大事なことだよ」
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素材の世界には“自然採取”と“人工育成”という二つの手段がある。
前者は自然の中で偶然を拾い集めるもの。
後者はその偶然を、人の手で“意図的な再現”へと変える行為だ。
それは知識と経験がなければできない。だが、それこそが“素材屋”の真髄でもある。
⸻
数日後。
ルーミス室の中で、ノボシ草の芽がわずかに伸びていた。
「……おっ。光の当て方と水量、ちょっと変えたのが効いたかもな」
トーヤは嬉しそうにノートへ記録を取る。
【第5日目】
・日光:朝5~10時で遮光率50%
・水:地下水+養分液(黄鉄鉱粉末入り)
・成長:双葉が4ミリ→6.5ミリに成長
→葉縁にわずかな燃焼跡、火属性反応が強化?
「うんうん、いいぞ……これが“育てる観察”ってやつだな」
まるで子どもの成長を見守るように、トーヤは毎日変化を記録していた。
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ラミナ堂の主人・ラミナも、その情熱に舌を巻いていた。
「トーヤ、あんた本気で“素材屋”になってきたねぇ……育てるなんて、昔の錬金師でもやらなかったわよ」
「育てるってことは、素材を“持続的に”使えるってことだから。村の暮らしにも、きっと役立つと思う」
実際、ラミナ堂ではすでにルーミス室の一部を薬草の仮育成に使い始めている。
ユルデ村にとって、素材の“安定供給”はこれまでなかった発想だった。
「トーヤさんが村に来てから、すごく変わってきましたね……」
ユーリがぽつりとつぶやいた。
トーヤは少し驚いて、ユーリを見る。
「そうか?」
「はい。私もそうですけど、村の人たちも、素材ってただ“拾う”ものじゃなくて、ちゃんと知ればもっと役立つって……気づき始めてるんです」
小さな変化。それはきっと、いつか大きなうねりになる。
⸻
数週間後。
ノボシ草は無事に“成葉”へと成長し、その一部は試験的にラミナ堂の薬師たちに提供された。
燃やしても灰を出さないという性質を活かし、“熱を持たない蒸気包帯”の素材として応用され始めていた。
「これは火傷の治療用に向いてるかもしれないな……」
老薬師のグラン爺がそう呟いたのを聞いて、トーヤは内心ガッツポーズ。
(よし……第一号、成功だ!)
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夜。ルーミス室にランプを灯しながら、トーヤはふと空を見上げた。
「育てるって、いいな……。今度は、何を育てようか」
その言葉に応えるように、風が葉を揺らした。
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