聖女召喚した聖女がやる気がないので、俺が聖女になるしかない

しののめ あき

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前の記憶を思い出した俺。

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最初に前世の記憶を取り戻したのは、八歳の時。

兄上と一緒に剣術の稽古を受けていた時だった。

「いくぞ!カイル!」

「受けて立ちます!兄上!」

二歳年上の兄上との模擬試合で、突進して来た兄上の勢いに負け尻もちをついた俺は、勢いが止まらない兄上の木剣を脳天に受けて気を失った。



「いってぇ。俺の頭蓋骨、陥没してんじゃね?」

運ばれて寝かされていたのだろう、自室のベッドで目が覚めた俺はそう呟きながら上半身を起こした。

……は?

自分の口から出たとは思えない口調に違和感を覚えた瞬間、頭が爆発するんじゃないかと思うほどの激痛に襲われた。

小鳥遊 響
日本という国で生きていた時の俺の名前だ。
最後の記憶とかはあんまり思い出せないものの、大学のサークルの飲み会で騒いでる場面が浮かんだのでそれが最後の記憶かもしれない。

そして今、俺が存在しているのは、アルバトロス王国。
そして、俺の名前はカイル・フォン・アルバトロス。
この国の第二王子。

カイルとしての八年間の記憶に、響としての記憶が流れ込んだ為の頭痛なのか、脳天に受けた木剣のせいなのか。
どちらにせよ、耐え難い痛みであるのは間違いない。
暑くもないのに、痛みのせいで汗が止まらない。
早く治ってくれ。
そう思った瞬間、身体が光った。
柔らかい光に包まれて暖かさを感じるとさっきまでの頭痛が嘘みたいに止んで楽になっていた。

「マジか。異世界転生ってガチであんだ。てか、今の魔法?やべぇ、魔法とかアツすぎ!!」

テンション上がって大興奮な俺。

「カイル殿下!!お気付きになられましたかっ?!」

俺の独り言が聞こえたのか、ノックと同時に開けられた扉から入って来たのは、マルス。
長い青髪を後ろで一つに束ねたイケメンで俺の専属従事のマルスは十六歳だっけな。
俺が五歳になった日から、そばに居てくれている。
もう三年の付き合いだ。
三年前って言うと、マルスは十三歳だったはず。
日本なら中学一年生くらい?
中学から王族に付いて働くとか、異世界、過酷すぎん?

「マルス、心配かけた。もう痛みもないし、平気だ。」

「殿下……本当に良かったです。もし、目が覚めないような事があれば、私は隣国に居ると言う癒しの魔法持ちの老婆を探しに旅に出る所でした」

目にうっすら涙を浮かべているマルスを見れば、本当に心配してくれていたんだと、嬉しく思う反面、心配を掛けて申し訳なくも思う。
ん?癒しの魔法持ちの老婆を隣国に?探しに行く?
ちょっと待てよ。
その言い方だと、この国には癒しの魔法持ちは居ないって事にならないか?

「癒しの魔法って、隣国しか居ないのか?」

「殿下はまだ八歳ですから、魔法についてはまだ授業が始まっていないかもしれませんが、我が国と隣国の成り立ちは習いましたでしょう?歴史の授業を思い出してみて下さい」

歴史…歴史ねぇ。
この国は、魔王を倒した勇者が立ち上げた国だったな。
そのせいか、簡単な生活魔法は使えるが武力に長けた国。
隣国は、魔王討伐に参加した聖女と魔導師が立ち上げた国で、魔法が使える者が低確率で産まれるんだったか?
その低確率の中でも更に希少な聖魔法が使える者が癒しの魔法を使える…と。
前世のイメージだと、勇者と聖女が結ばれそうなもんだけど違うのか。
勇者フラれたんかな?

「思い出した。隣国は聖女と魔導師の興した国だったな。癒しの魔法使いが確認されているのか?いや、そんな貴重な人物を老婆呼びとはどうなんだ?」

「隣国でも、聖魔法の継承者はもう確認出来なくなっているそうで、癒しの魔法持ちの老婆って言う御伽話のような物ですので。」

なるほどな。
そんな不確かな者を探しに行くしかないって例えか。
…ちょっと待て。
さっき、なら俺が使ったのは魔法じゃないって事か?

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