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言いたいことがあるんだ。

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「ココちゃん。


 言いたいことがあるんだ。」



言いたいこと、ね。



私、ノイリは

ココを無視して、


婚約者であるアデルを睨みつけた。



ココはアデルに腕を絡ませ

嬉しそうに笑っている。



私、ノイリはこの国の

有力貴族ステフィノ家の

長女である。


ステフィノ家は

莫大な財産があり、

大きな権力を持っている。



アデルはこの国の第二王子であり

私の婚約者だった。



王と私の父の絆の証として、

私とアデルは

婚約することになったのは

一年前のことだった。



「どういうこと?」



まぁ、この状況をみたら、

察しはつくけど。



ココは私の家に仕える

使用人の子供だった。



身分の差はあったけれど、

私達は幼い頃から

親友のように過ごしていた。



いままでは。



「ノイリちゃんには悪いんだけど、



 私、


 アデル様の子供を


 妊娠しちゃったの。」


弾む声で、

ココが言った。


なにが、

悪いんだけど、よ。



最初から、

そのつもりでアデルに

近づいたくせに。




「なら、


 婚約破棄するしか



 ないわね、、」



私の言葉に

アデルに動揺して

ココの腕を

無理やり剥がした。



「ま、待ってくれ!!


 それは困る!



 君の父上だって


 お怒りになられるだろうし、、、!」




「だからなによ?」


私は冷たい目で、

アデルを見た。



あなたはずっと、

私の背後にいる父に

怯えてばかりで


私自身のことを


ちっとも見てくれなかったわね。



「私を裏切って、


 友人との子供を作った貴方と


 どうして結婚できると思うの?」



私は、

ぐっと

拳を握った。




「ココとは、


 別れるから!!


 頼むよ。」


ココはえ?

という顔で、

アデルのことを見た。




残念だったわね、ココ。




その男は権力にしか

興味がないわよ。




「勝手にして。



 ただ私が貴方と


 婚約を継続することは


 絶対にないから。」


私は、

一切表情を変えずに言った。



「君は本当に、


 優しくない女だな!」

アデルは

私に言い放った。




私を冷たい女だと、

貴方が影で言っているのを聞いたわ。




そう、思いたいなら

思えばいい。


 
私だって

貴方のことを好きになろうと

努力したわ。


それに気づいてくれなかったのは、

アデル、貴方よ。


「お前のせいだ。」

アデルは、

ボソリとココに向って呟いた。




「そんな?!


 アデル様!!」

ココは目に涙を浮かべて

アデルにすがりついた。


その手をアデルは

乱暴に払う。



最低ね。


だけどココ、

残念だけど私も

貴方をゆるせないの。




「ねぇ、


 アデル。



 貴方の秘密を


 ちゃんとココに伝えた??」

私は、アデルに尋ねた。




「うるさい!」


伝えていないのね。

それなら私が伝えてあげるわ。





私はココの側に近づいて、

その耳元で囁いた。




「アデルはねーーー。」




馬鹿な女。


私が王子アデルと婚約したときから、


彼を虎視眈々と狙っていたんだと

思うんだけど。




「噓、、そんな、、、!」


ココは膝から崩れ落ちると

顔を覆い

声をあげて泣いた。




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「そうなるかもしれないって


 忠告してあげたのに。」


私は
 
ココが眠るお墓の前に、


一本の花を置いた。




私がアデルと

婚約破棄してから

一年の月日が流れていた。



先月、

ココは子供を産んだものの、


感染病にかかって呆気なく


死んでしまった。



「貴方の子供は、


 元気に育っているわ。」



それだけが、

ココにとっての救いかもしれない。




私と婚約しているときから、

アデルはある病気にかかっていた。



だから、

私は

彼と性交渉を固く拒否していた。




だが、

ココは知らなかった。




ココはアデルから、

病気を移され、

そのまま妊娠した。



流産するかもしれないし、

病気になってしまうかもしれないと、

言ったが、


ココは譲らなかった。



「馬鹿な子だわ。」


ほんとうに、

貴方は馬鹿な子だったのね。




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