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5.騙されないでくださいね?(ウォリア視点)
しおりを挟む「"リリー"じゃない・・・?どういうことだい?」
男狂いの伯爵。弟から指輪を奪ったリリー・トンプソン。事前に調査し、顔を確認していたはずなのだが・・・。
「言葉のとおりよ。私はウォリアが一目惚れした"リリー"じゃないの。ウォリアにハンカチを拾ってあげたのは、私じゃなくて双子の妹のフローラなの。」
「・・・。」
「ごめんね。本当はもっと早く言わなくちゃいけなかったんだけど・・・ウォリアと一緒にいるのが楽しくて言い出せなかったの。」
えーと・・・つまり・・・
俺が探している人は誰だ?
俺はじっとリリーを見つめた。
貴方は弟を騙した人じゃないのか?
そうであってほしいと思う自分がどこかにいる・・・。
ーーーそれなら、俺はリリーを好きになれる。
だが、コロックの言葉が頭をよぎる。
"騙されないでくださいねー?"
ああ、分からない。リリーの言葉が本当なのか嘘なのか。俺が女性経験が無いからか・・・?
「・・・だから、ウォリアとはもう会わないつもりよ。」
「ちょっと待ってくれ!」
「・・・え?」
ここでリリーとの繋がりが切れるわけにはいかない。弟の指輪を取り戻さなくちゃならないんだから。
どんな理由があったにせよ、リリーは一度嘘をついていた。ならば、今回の言葉が本当だとは限らない。
俺がレイカ国の王子だと気がついて、逃げようとしている可能性だってある。
「リリー・・・と呼んでいいのか?」
「ええ。」
俺は大きく息を吸った。さっさと終わらせる仕事のはずが面倒なことになってしまった。
「リリー。俺は・・・正直、君の言葉を信じたくないんだ・・・。二人でいるのが楽しくて、君に惹かれていたところだったから。」
「・・・ウォリア。」
なぜだ。とにかくリリーを引き止めるために言っているはずなのに、妙に恥ずかしくなってきた。
「だから、すぐにもう会えない、というのはやめてくれ・・・。俺はまだリリーに会いたい。」
「・・・!」
「リリーは会いたくないのか?」
リリーは首をふった。
よかった。もう俺と関わることを辞めると決めたわけでは無いようだ。
「・・・会いたいわ。けれど、いいの?」
「分からない・・・。」
「そうよね。無理しなくて良いのよ?」
リリーは俺の顔を覗き込んでにっこりと笑った。
ーーやばい。かわいい。騙される。
「リリーは・・・」
悪いやつじゃないよな?そう言いかけて、言葉を止める。だから、まだリリーを信じるわけにはいかないんだ。
「なぜ、嘘をついたんだ?」
リリーは俯く。
「・・・妹にはずっと、酷い目に合わされてきたから・・・一回くらい利用してやろうと思ったんだけど・・・」
顔をあげたリリーは優しく微笑んでいた。
「だめね。嘘をついていると楽しいはずが、苦しくなっちゃうから。私には向いてないーー。」
ーーーやっぱりリリーは、素敵な人なんじゃないか?
「正直に言ってくれて嬉しいよ。リリー。一つ・・・お願いがあるんだが・・・。」
「なあに?」
「君の妹の、フローラさんに会わせてほしい。」
指輪を奪ったのがリリーじゃないならば、フローラだ。リリーへの微かな恋心で弟を忘れるわけにはいけない。
俺の言葉にリリーは一瞬固まった。
それから空を見上げて
「いいわよ。」
と、呟いた。
◇◇◇
「いや・・・そんなの嘘に決まっているじゃないですか!しっかりしてください!ウォリア様。」
宿に帰って事情を説明すると、コロックに怒られた。
「・・・だが、どうしてもリリーが嘘をついているとは思えないんだ。」
「詐欺師っていうのは、嘘が上手いからできるんです!」
そうなのだろうか。
とにかく明日、リリーの妹のフローラに会いに行く。どちらか一人は嘘をついているのだから、それを見破ればいいだけだーー。
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