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4.嘘つきは誰でしょうか?(ウォリア視点)
しおりを挟むそのころのウォリアはーー。
リリーの家にまた一人男が入っていくところを、俺、ウォリアは部下と共にこっそり見ていた。
「・・・ちっ、新しい男か。さては昨日も嘘泣きだったんだな・・・。」
「リリー・トンプソンはとんでもない女ですね。ウォリア様も騙されそうになるくらいですしね。」
ウォリアの部下、コロックが肩をすくめる。
「騙されてなんかいない!」
あの女の迫真の演技に驚いてしまっただけだ。男狂いのリリー。あの女に騙される人間が多発する理由がよくわかった。
「どうだか。本当はリリーは悪い女じゃ無いかもしれんって帰った後言っていたじゃないですか?」
「・・・そうだったか・・・?」
「もう、ウォリア様。今回、この国に来た目的をちゃんと覚えていますか?」
呆れ顔でコロックは俺に尋ねる。
馬鹿にするなよ。
「リリー・トンプソンから指輪を取り戻し、あの女の窃盗罪で捕まえることだ。」
「ちゃんとわかってるじゃないですか。」
「俺が役目を果たせなかったことがあるか?」
「・・・ないですけど、ウォリア様はめっぽう女性に弱いですからね。騙されないでくださいよ?」
「当然だ!」
俺の本当の名前はウォリア・レイカ。祖父がレイカ国の国王をしている。俺には3人の兄がいて、レイカ国における王位継承権は高くない。
そのため普段は騎士として働き、何かあったときは王族の便利屋として働いている。
コロックは、幼馴染であり優秀な俺の助手である。
「それにしても・・・今回の任務は面倒だな。えっと、まずは・・・?」
「リリー・トンプソンの信頼を得ることですよ。できるならば、あの女にウォリア様を好きになってもらいましょう。」
「・・・女と関わるのは苦手だ・・・。もっと良い方法はないのか?」
惚れさせる・・・なんてできる気がしない。
リリー・トンプソンは俺の末の弟をたぶらかし、王家に伝わる大切な指輪を奪った。リリーに騙された弟は国王の怒りをかい、未だ謹慎状態にある。
「弟君を救いたいんですよね?」
「勿論だ。」
「ならばこれが一晩手っ取り早い方法ですよ。だいじょうぶです。ウォリア様の顔面は無駄に整っているのですから、きっとあの女もウォリア様のことを好きになりますって。」
コロックが無責任なことを言う。
俺は昔から人見知りで、独り本を読むのが好きだった。
女性と関わった経験が少なく、気まずい沈黙になってしまうことが多い。
ーだがリリーと話すのは楽しかったな。
リリーは感情豊かな人だった。
たいしてまとまっていない俺の話を楽しそうに聞いてくれた。
あの笑顔の裏では人を騙しているのか・・・。
やっぱり俺は見る目がないんだろう。コロックの言う通り、悪い女とわかっていながらリリーに惹かれそうになっていた。
俺はコロックにバレないよう、小さくため息をつく。
「さっさと指輪をとりかえす。まずはそれが優先だ。」
「がんばってくださいね。僕も影からサポートしますから。」
弟を騙した女を陥れるためのデートほど、億劫なものはない。特に相手は男を落とすことに長けている。絶対に騙されないようにしながら、リリーに俺を信頼させなければならない。
「コロック。褒美をやるから、リリーとデートする役目を俺と交換しないか?」
「絶対に嫌です。」
結局、面倒事を押し付けられているだけなのだ。さっさと任務を終わらせて、国に帰ることにしよう。
◇◇◇
その三日後、俺はリリーを誘うことに成功し、二人で馬車に乗っていた。
先日は夜だったので、今回は昼間からデート。太陽に照らされて、リリーの姿はより華やかに見えた。
金髪に、ピンク色の瞳。
白いワンピースを着たリリー。
「どうしました?」
「あ、いや・・・可愛いなと思って。」
本心だ。どれだけ性格が悪かろうと、それだけは認めざるおえない。そもそも俺はリリーに好きになってもらう必要があるんだから、これくらい言うべきだ。
「・・・そんなことないわ。私なんてもうおばさんで・・・」
リリーが両手で、顔を押さえて嬉しそうに笑う。ああ、ずるい。それも演技なのか?
「リリーをおばさんなはずないだろう。こんなに可愛いんだから。」
「もう私31歳なのよ?」
「・・・え。」
絶句してしまった。
俺より7歳年上・・・?
流石に、若作りすぎるだろ・・・。
「ご、ごめんびっくりしたわよね。ところでウォリアはいくつ?」
「・・・24です。」
「やだー。敬語はやめてよ。さびしいわ。でも、そうね。ウォリアより、少し多くいきてるから、相談があればなんでも乗るわよ。」
それから、俺たちはのんびりと本屋を見て回った。リリーは本当に博識で、どこに行っても興味深い情報を教えてくれる。
「リリーと一緒にいると、すぐに時間が経つよ。」
俺はリリーにおすすめされて買った本を大量に抱えている。帰ったら片っ端から読もう・・・!
「ウォリアは・・・純粋で良い子ね。」
俺を見てリリーはぽつりと呟いた。
子供扱いされてるな。
「実はね、ウォリアに言わなくちゃいけないことがあるの。」
「なんだい?」
リリーは俺をまっすぐに見つめた。
「実は私、貴方が探していた"リリー"じゃないの。騙して、ごめんね。」
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