【短編】妹と間違えられて王子様に懐かれました!!

五月ふう

文字の大きさ
3 / 8

3.慰謝料を請求されました

しおりを挟む

フローラの親切を自分のものにして、ウォリアとデートなんてしたから、バチが当たったんだろう。

次の日、顔を真っ赤にして激怒した男が私の家に乗り込んできた。その男のことを私は全く知らないが・・・同様の出来事は今までに何度もあった。

「リリー!!俺を騙していたんだな!!君の噂は噓だと信じていたが、もう限界だ!!君との付き合いはもうこれっきりやめにする!」

「・・・だれ?私は貴方と付き合ってなんかないんだけど・・・。」

「は?」

目の前に立つ男は、口を開けて固まった。

「・・・振られるのが嫌だからって、記憶喪失のふりか?いい加減にしてくれ!」

「そう言われても、私は貴方と初対面なの。」

そう答えると、男性は私を睨みつけた。

「ふざけるな・・・!こっちは君と結婚するつもりで一年以上付き合っていたんだぞ!!初対面のふりをして誤魔化すなんて許さん!!慰謝料をよこせ!!」

「・・・はぁ。」

結婚するつもりで・・・一年以上?
激高する男性を憐れみの目で見つめる。

ーーーまた、一人、騙されたのね。
何が起こったのかすぐに理解できた。

この男は付き合っていたのはフローラだろう。私の名前を使って、あの子は一体何人の男とつきあっているのか・・・。

「何だその態度は?!行き遅れたお前を助けてあげようと思っていたのに!お前が裏切ったんだ!謝罪しろよ?!」

貴方と結婚なんて、私だってごめんだわ。

ねぇ、フローラ。
そんなにも私が憎い・・・?



  ◇◇◇


「リリー様!元婚約者とかいう男から、慰謝料の請求が来ましたよ?!どういうことですか!?」

「・・・フローラよ。」

プリンは、大きく目を見開くと眉間にしわをよせた。プリンはトンプソン家、唯一の従者である。

トンプソン家の実権はヨーデルが握っており、私は名ばかりの当主。プリン以外の従者は、皆離れてしまった。

「またですか・・・。」

先日、屋敷に乗り込んできた男は怒り狂っていた。

『妹に罪を押し付けるのか?!』
男はそう言って聞かなかった。しかたなく、後日、慰謝料を払うことを約束して大人しく帰ってもらったのだった。。

「もういい加減に、フローラを訴えましょうよ・・・。これではリリー様ばかりが損をするではないですか!」

「・・・私だってできるならそうしたいわよ。」

「ならば、今すぐ動きましょ!もう限界ですよ!」

ありがとう。プリン。貴方が怒ってくれるだけで救われるわ。

「ヨーデルを敵にまわすわけにはいかないの。これまでだって、何度か試そうとしたけれど・・・あいつに全てもみ消されてしまったの」

プリンもわかっているのだろう。これは何度も私達の間で繰り返されてきた会話だから。

「でもでも、戦ってみなくちゃ分からないじゃないですか!!」

「・・・トンプソン家を潰すわけにはいかないでしょ?」

「家のために、リリー様は自分を犠牲にしすぎなのです!」

プリンに説得されて、私はまたヨーデルの家にむかった。



  ◇◇◇ 


だが、いつものとおりヨーデルは私の話を聞こうとはしなかった。部屋を追い出され、大きくため息をく。

「・・・帰ろう。」

「お姉様!待ってよ!」

「・・・フローラ。いたのね。」

「当然じゃない。お姉様が来ると思って待っていたの。私の部屋でお茶でも飲みましょうよ!」

待っていた、なんて酷い皮肉だ。

「・・・分かったわ。」

フローラのせいでデュランを失った。
だけど私は・・・?

ウォリアのことが頭をよぎり、複雑な気持ちになってしまう。

部屋に入ると、強烈な香水の匂いがした。
フローラはピンク色の椅子に腰掛け、"心配そうな"顔で言った。

「ねぇ、お姉様。いい加減に結婚しなさいよ。一人ぼっちで寂しくないの?」

お前のせいで私は結婚できないんだ。怒鳴りつけたい気持ちをぐっと堪える。

「・・・寂しくないわ。そんなことよりフローラ。貴方に騙されたという男が私のところに来たんだけどね・・・。」

そう言うと、両手で顔を覆ったフローラ。

「なんでお姉様は、いつもそんな嘘をつくの・・・?」

「いやフローラこそ、いい加減に自分の態度を改めてよ・・・!」

「酷い・・・!お姉様は自分の失敗を、たった一人の妹のせいにするの・・?!」

フローラが私の名前で男遊びをしている証拠はいくらでも揃っている。だが、フローラは絶対にそれを認めようとしない。

「いい加減に目を覚ましてよ、フローラ。昔は男遊びなんてする子じゃなかったじゃない!」

「今もしてないわ・・・!」

「してる!貴方が男の人と会っているときに、直接注意したよね?」

「あの人は友達だもの!なぁに?ヨーデル様が忙しくて、一人ぼっちで可哀想な私に、友達と遊ぶなというの?!」

「・・・。」

だめだ。何も伝わらない。

「お姉様は意地悪だわ・・・!」

そして、フローラは大粒の涙を流し、部屋からでた。

「奥様!どうなされたのですか?!」

部屋の外で掃除をしていた使用人の女性が、フローラに尋ねる。

「リリーが酷いことを言うの・・・。」 

そうやって私を悪者にするのね?

使用人の女性はフローラを優しく抱きしめて、私に言い放った。

「リリー様。貴方はいつまで妹をいじめているのですか?もうやめてくださいと、何度も言っているはずです!」

「でも、悪いのは私じゃ無くて・・・。」

「言い訳は結構!さぁ、すぐに屋敷を出て言ってください。」

「わかったわ・・・。」

私がその場を離れても、涙を流すフローラ。だがその口元には笑みが浮かんでいた。



   ◇◇◇
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

白い結婚のはずでしたが、いつの間にか選ぶ側になっていました

ふわふわ
恋愛
王太子アレクシオンとの婚約を、 「完璧すぎて可愛げがない」という理不尽な理由で破棄された 侯爵令嬢リオネッタ・ラーヴェンシュタイン。 涙を流しながらも、彼女の内心は静かだった。 ――これで、ようやく“選ばれる人生”から解放される。 新たに提示されたのは、冷徹無比と名高い公爵アレスト・グラーフとの 白い結婚という契約。 干渉せず、縛られず、期待もしない―― それは、リオネッタにとって理想的な条件だった。 しかし、穏やかな日々の中で、 彼女は少しずつ気づいていく。 誰かに価値を決められる人生ではなく、 自分で選び、立ち、並ぶという生き方に。 一方、彼女を切り捨てた王太子と王城は、 静かに、しかし確実に崩れていく。 これは、派手な復讐ではない。 何も奪わず、すべてを手に入れた令嬢の物語。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。

甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」 「はぁぁぁぁ!!??」 親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。 そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね…… って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!! お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!! え?結納金貰っちゃった? それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。 ※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。

「陛下、子種を要求します!」~陛下に離縁され追放される七日の間にかなえたい、わたしのたったひとつの願い事。その五年後……~

ぽんた
恋愛
「七日の後に離縁の上、実質上追放を言い渡す。そのあとは、おまえは王都から連れだされることになる。人質であるおまえを断罪したがる連中がいるのでな。信用のおける者に生活できるだけの金貨を渡し、託している。七日間だ。おまえの国を攻略し、おまえを人質に差し出した父王と母后を処分したわが軍が戻ってくる。そのあと、おまえは命以外のすべてを失うことになる」 その日、わたしは内密に告げられた。小国から人質として嫁いだ親子ほど年齢の離れた国王である夫に。 わたしは決意した。ぜったいに願いをかなえよう。たったひとつの望みを陛下にかなえてもらおう。 そう。わたしには陛下から授かりたいものがある。 陛下から与えてほしいたったひとつのものがある。 この物語は、その五年後のこと。 ※ハッピーエンド確約。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

白い結婚のはずでしたが、理屈で抗った結果すべて自分で詰ませました

鷹 綾
恋愛
「完璧すぎて可愛げがない」 そう言われて王太子から婚約破棄された公爵令嬢ノエリア・ヴァンローゼ。 ――ですが本人は、わざとらしい嘘泣きで 「よ、よ、よ、よ……遊びでしたのね!」 と大騒ぎしつつ、内心は完全に平常運転。 むしろ彼女の目的はただ一つ。 面倒な恋愛も政治的干渉も避け、平穏に生きること。 そのために選んだのは、冷徹で有能な公爵ヴァルデリオとの 「白い結婚」という、完璧に合理的な契約でした。 ――のはずが。 純潔アピール(本人は無自覚)、 排他的な“管理”(本人は合理的判断)、 堂々とした立ち振る舞い(本人は通常運転)。 すべてが「戦略」に見えてしまい、 気づけば周囲は完全包囲。 逃げ道は一つずつ消滅していきます。 本人だけが最後まで言い張ります。 「これは恋ではありませんわ。事故ですの!」 理屈で抗い、理屈で自滅し、 最終的に理屈ごと恋に敗北する―― 無自覚戦略無双ヒロインの、 白い結婚(予定)ラブコメディ。 婚約破棄ざまぁ × コメディ強め × 溺愛必至。 最後に負けるのは、世界ではなく――ヒロイン自身です。 -

処理中です...