【短編】可愛い妹の子が欲しいと婚約破棄されました。失敗品の私はどうなっても構わないのですか?

五月ふう

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1.お姉様の子供は嫌だって!

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「お姉様。やっぱりシトラ様は、お姉様ではなく私の子供が産みたいって!」

エレリアの5歳下の妹ビアナ・シューベルはエレリアの婚約者であるシトラ・ガイゼルの腕を組んで、そう言った。

「嘘でしょ、、、。」

エレリアは両手で口を覆って、シトラを睨みつけた。エレリアはシューベル家の長女であり、父親の言うところの失敗作の娘。

「当然でしょ?!だって、私がお姉様に負けていることなんて一つもないんだから!お姉様が私より良い人と結婚するなんて、あり得ないの!!」

勝ち誇った顔で言う妹のビアナの顔は確かに美しい。父は妹のビアナを溺愛し、最高の宝物だといつも言っていた。

そのせいかビアナは姉のエレリアをいつも馬鹿にして、エレリアが彼女より少しでも良いものを手に入れると癇癪を起こす。

「シトラ!!どういうつもり?」

エレリアはシトラの胸ぐらをつかみ上げた。シトラは隣国ガイゼル国の王族である。一週間前の舞台でエレリアの歌声に魅了され求婚した。ほんとうなら、これから二人でガイゼル国に行き、結婚式をあげるはずだったのだ。

「く、、。やめてくれ。ビアナの言うとおりだよ、、、。俺に何も聞かないでくれっ!」

「乱暴はやめてっお姉様!!本当に育ちが悪いわ!!」

ビアナがシトラとエレリアの間に割って入ってくる。

育ちが悪い、とは随分な言い様である。エレリアは幼い頃父が赴任していた田舎で、野山を走り回って自由奔放に育った。一方のビアナは父が都会に来てからの子供であるため、この国の貴族らしく上品に育ったのだ。

「あんたみたいに性格がひん曲がって育たなくてよかったと思うけど?!」

「お姉様のほうが100倍性格が悪いわ!!」

ビアナはエレリアが持つものを次から次へと奪っていく。周りの大人達は外面が良いビアナばかりを可愛がり、エレリアに冷たく当たった。貴族の女性らしく大人しくしていることが、エレリアは酷く苦手だったため、大人は手を焼いたのだ。

シトラはただ俯いて、何も言ってこない。

「ねぇ、私の歌が何よりも好きだって言ってくれたよね?!」

ビアナが絶対にエレリアから奪えないものが一つだけある。それは歌の才能だ。エレリアは昔から歌だけは誰よりも美しく歌えた。今回も、エレリアの歌の才能を見込まれてガイゼル国の使節団の前で歌うことになったのだ。だからこそビアナは、自分にない才能をもつエレリアを深く憎んでいた。

「しょうがないだろう!?とにかく婚約破棄するんだ!」

「残念ね!シトラ様は、お姉様のような不細工な女ではなくて、私のような美しい女性と結婚して、可愛い子供を産みたいのよ!!」

ビアナは大声でそう捲し立てた。金切り声が耳にうるさい。ビアナにはすでにフィリップという別の婚約者がいたのだが、ビアナはフィリップを捨てた。シトラのほうが魅力的に思えたんだろう。 

「一緒に、ガイゼル国に行こうって言ったじゃない!!うううっ。」

エレリアは顔を覆い、地面に崩れ落ちた。ビアナはそんなエレリアの姿を嬉しそうに見下ろしていた。一方のシトラはなぜか咳き込んでいる。

「ゴホッゴホッゴホゴホッ」

エレリアは隠した両手の下でにやりと笑った。

馬鹿ね、ビアナ。騙されてるのはあんたよ。

  ◇◇◇

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