【短編】可愛い妹の子が欲しいと婚約破棄されました。失敗品の私はどうなっても構わないのですか?

五月ふう

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2.なぜ誰も婚約してくれないの?!

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「ねぇ、この服はどうかしら??」

ビアナは姉から奪った婚約者であるシトラをちらりと見た。癖毛の髪に眠たそうな目。見た目は凡庸なシトラだが、大国ガイゼル国の王族、という身分は何よりも魅力的だった。

「良いんじゃないか。」

シトラは興味なさそうに椅子に座り、お茶を一口飲んだ。

「もうっ。冷たいんだから。本当に私を愛してるの?!」

シトラと姉のエレリアが婚約すると聞いて、ビアナはすぐシトラに近づいた。歌しか取り柄のない地味な姉が王族の仲間入りをするなんて許せなかったのだ。

「、、、ああ。」

シトラは私を見ようともしない。はじめからシトラはずっとそうだった。だが、3日前に突然態度を変え、姉と婚約破棄して私と婚約すると言い出したのだ。

ビアナは自分は誰よりも美しいと自信を持っているし、愛されて当然だと考えている。だから、何の疑問も持たなかった。

「照れてないで、ちゃんと私を愛してよね。」

シトラは黙って立ち上がると、ビアナの部屋から出た。

「ちょっと!!どこ行くのよ?!」

「俺の部屋に帰るんだ。旅支度をしなくちゃならないんでね。」

そして、シトラが向かった先は彼が本当に愛する人、エレリアのところであった。

  ◇◇◇

「俺があの癇癪娘と結婚するなんて、冗談でも笑えないな。」

ガイゼル国への旅支度を整えて、馬に乗ったエレリアの手を、シトラがそっと包んだ。

「シトラは演技が下手ねぇ。途中笑いそうになってたでしょ?」 

エレリアはあはは、と口を開けて笑った。シトラがエレリアを裏切りビアナと婚約するなんて真っ赤な嘘。

エレリアからシトラを奪い取ろうとするビアナを騙すための演技であった。

「あまりにもエレリアが迫真の演技なもんでな。」

さっきのことを思い出したのか、シトラがまた体を丸めて笑っている。

「もうっ!ばれるところだったでしょう!」

ビアナが一人で喋ってくれたから良いものの、あのままでは不自然になるところだった。

「しょうがないだろ。エレリアの子供を産みたくない、なんて嘘でも言いたくなかったんだ。」

シトラは小さく微笑むと、エレリアの頬に優しくキスをした。

「大好きだよ。エレリア。」

「私も。」

エレリアの顔は真っ赤に染まった。シトラは満足そうに笑うとエレリアと同じ馬に乗り、ガイゼル国へ出発したのだった。

  ◇◇◇

「どういうことよ?!」

次の日、空っぽのシトラの部屋を見たビアナはテーブルを叩きつけて叫んだ。

テーブルの上にはビアナ宛の手紙が置いてある。エレリアがビアナ宛に手紙を残して行ったのだ。

ーシトラはビアナみたいな我儘な女の子供は産みたくないってさ。さようなら。ビアナ。二度と私に関わってこないでね。ー

ビアナはその手紙をビリビリに破いて

「ふざけないでよ!!」

と、叫んだ。

その後、ビアナはエレリアがシトラを奪い取ったと周りの人間に訴え、なんとかエレリアをガイゼル国から連れ戻そうとした。

ありとあらゆる手段を使ったが、ビアナはエレリアに何もできなかった。ガイゼル国の王族であるシトラの妻になったエレリアに対してビアナの力はあまりに微力であったのだ。

結局、ビアナは何も得ることなく、姉の婚約者を奪い取ろうとして失敗した令嬢として社交界に知れ渡ってしまった。

「なぜ誰も私と婚約してくれないの?!」

どんなに父親に怒鳴り散らしても、ビアナと婚約しようとする人間は一人もいなかった。しまいには、父親もビアナを見放し、今ではエレリアに養ってもらおうと必死でガイゼル国に手紙を送っているらしい。

  ◇◇◇

その頃ガイゼル城では結婚したエレリアとシトラが幸せに暮らしていた。

「エレリア。君の歌を聞かせておくれ。エレリアの歌を聞いているだけで幸せな気持ちになれるんだ。」

今日もシトラはエレリアを抱きしめている。

「ええ。私達の子供もきっと聞いてくれるわ。」

エレリアはお腹に手を当てて、楽しそうに歌を歌う。その歌声はシトラだけでなく、ガイゼル城中の人を幸せにしたという。


 
   
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