妾の妊娠によって婚約破棄となりました。それは、彼女が巧妙に仕掛けた罠だった。

五月ふう

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私が正妃になるに決まってるでしょ?

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「王子デュークの子供を


 妊娠したのは


 私なんだから、


 私が正妃になるに


 決まってるでしょ?」


レオナは、そう言うと

大きな扇で

嬉しそうに顔を仰いだ。



「そんな!!


 デュークが浮気した上に



 妊娠までさせるなんて!!



 なにかの間違いよ!!」


私は、

レオナに向かって叫んだ。


私の名前はアスラ・アースティン。

カイリー国、有力貴族の一人娘である。



この国の王子であるデュークとは、

一年前に婚約をした。



来年7月、

私の17歳の誕生日に

デュークと結婚するはずだった。



「嘘じゃないわ。

 負け惜しみしたってむだよ、


 アスラ。」


レオナは

顔を歪めて笑った。



レオナもまた、

この国の有力貴族の娘である。


私とレオナとデュークは、

幼馴染とも言える関係なのだが、


昔からどうも相性が悪かった。



「私はデュークが貴方と


 浮気したなんて、


 絶対に信じないわ!!


 もしも信じてほしいなら、


 証拠を見せなさいよ!」




レオナは嘘をついたうえに、

私をこの城から追い出そうとしている。



自分が、正妃になるのだと言って

聞かないのだ。



「証拠?


 そんなの、デュークに聞けば


 いいでしょう。」


レオナは

ちらりと


階段の上をみた。



そこには、

私の婚約者であるデュークがいた。




「デューク!!



 一体どういうことなのよ?!」



私は、

祈るような気持ちで

デュークを見つめた。




私達、

本当に仲良しで、

喧嘩だってほとんど

したことがないよね。




昨日のランチだって

あんなに楽しく過ごしたじゃない?



デュークは、

俯いているだけで、


階段から降りようともしない。



私はスカートの裾を持ち上げ、

階段を駆け上った。




「ねぇ、


 デューク。



 本当のことを話して。」



私はデュークの両手をとる。



デュークは

小声で言った。





「レオナに騙されたんだ。


  だが、


 僕には


 妊娠したと言い張る彼女を


 否定することができない。」



「最低!!」



私は思い切り

デュークの頬を叩くと、

城を出た。



後ろからレオナの高笑いが聞こえた。



「待ってよ!!


 アスラ!!」


デュークが追いかけてくるが、

私は振り向きもしなかった。





------------------------------------



「ほんっとにごめん!」


デュークは土下座をして、

床に頭を擦りつけている。


「ばか!!


 私がどれだけ悲しかったと



 思ってるの?!」


私はデュークをポコポコと

叩いた。




ここは、私の実家。



城を追い出されたその足で、

実家に戻っていた。



その道中ずっと、デュークは

私の周りをくるくる回り、



あーちゃんごめん、ごめん、と

情けない顔で言っていた。





デュークは、

レオナに騙された、と言っていたが、

事情を聞くと

あまりにも阿呆らしくて

笑ってしまった。



デュークは王族だが、

時々、城を抜け出して、


城下町の居酒屋で飲むことがある。





そこで、知らない人と

仲良くなって飲むのが

好きらしいんだけど。



まぁ、そこで、

ふとした拍子に急に眠くなったらしい。


おそらく

睡眠薬を

何者かに飲まされたんだろう。



眠っている間に

知らぬ間にホテルに運ばれていて、


目を覚ますと、


隣には裸のレオナがいたんだそうだ。




「ほんとに、

 してないんでしょうね?!」



デュークはこくりこくりと

頷く。



「俺、酒のんで

 
 記憶なくしたことないし。



 間違いなくずっと寝てた。」


なら、

貴方を信じるしか、


ないんでしょう。


このばか!


騙したレオナが

一番悪いのは


分かっている。



私は、

しゃがんでデュークと目を合わせた。



「もう、一人で城下町に行かないって、


 約束できる?」


デュークはコクコクと頷いた。



流石に、そろそろ王子としての自覚を

持つべきだとは

思うから。



まぁ、そもそも

デュークは

王族が肌に合わないから


可哀想だとは思うんだけど。




「どうしよ、、


 レオナのこと、


 どうしよ、、。」


頭を抱えるデュークの肩を、

ポンポンと叩いてやる。




「だいじょうぶよ。


 手はあるわ。」




「アスラッッ。」



私はにやりと笑った。




「目には目を、


 歯には歯を、よ。



 デューク。」



--------------------------------------


「え?!」


城にいたはずのレオナは、

目を覚ますと、

見知らぬ宿にいた。



昨日、

デュークにもらったジュースを

飲んでからの

記憶がない。



レオナは真っ裸で、


隣には知らない男が


裸で眠っている。




「なによこれ!!」


レオナは急いで下着をかき集めた。



その時。



「レオナ!!



 やっと見つけた!!」



王子デュークが、

護衛を引き連れて、


レオナがいる部屋に入ってきた。



真裸のレオナは

必死で布団の中に潜る。




「これは、、、!」




デュークが、

隣に寝そべる男を見て、

大きな声をだした。




「レオナ!!



 僕を裏切ったのか!!」




レオナは布団から顔を出し、

必死で弁明した。




「違うの!!



 これは罠よ!!!」



だが、

王子デュークは

冷たい目で私を見て言った。




「そんなこと、



 信じられるわけないだろう。


 やはり

 レオナとの婚約はできない!」




「そんな、、!」




「僕はアスラを迎えに行くんだ!


 君はもう城に帰ってこないでくれ!」



「待って!!


 デューク!!」



バタンと扉は閉められ、


デュークは出ていった。



レオナは眉間にしわを寄せて

爪を噛んだ。




「上手くいくと、思ったのに!!!」




------------------------------------




結局、


レオナとデュークの婚約は無効になり、


私とデュークの婚約は

もとに戻った。



レオナは

王子を騙した罪に問われ、

現在は収監されている。



レオナの家は

デュークに対してだけでなく、

様々な家を騙して陥れていた。



今回の事件が公になり、

多くの訴えが

城に集められている。



近いうちに

レオナの家は

貴族としての地位を取り上げられ、



都を追われることとなった。

 




------------------------------------




「ざまあみろ、ね。」


私は、

紅茶を口に含んで笑った。



「あーちゃんはやっぱり


 最強だね。」


デュークがそう言って笑う。



「まぁ、アホデュークよりはね。」



「まだ怒ってるのー?」


私は顔を膨らませた。



「信じてはあげるけど、


 後半年は根に持つからね!!」























    
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