【完結】妊娠した愛妾の暗殺を疑われたのは、心優しき正妃様でした。〜さよなら陛下。貴方の事を愛していた私はもういないの〜

五月ふう

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13. 正妃様の危機

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「追えーーー!!」

 盗賊たちは手に斧を持ち、アリスに追いつくために全力で追いかけてくる。
 
「モルト!前だけ見るのよ!」

 言葉が伝わらないと分かっていながらも、アリスは愛馬モルトに向かって叫んだ。

 城下町の外にはさっきまでとまったく異なる世界が広がっている。道はゴミだらけで、寂れた建物がひしめき合って並んでいた。

「ちくしょう!!あの馬、早いぞ!!」

 盗賊達は馬に乗っていない。少しずつ盗賊達との距離が離れていく。

「すごいわ!モルト!」
 
 暗闇に包まれた町を月明かりだけがかすかに照らし出している。

「くそーーー!!」

 後ろを振り返ると、盗賊達が顔を真っ赤にして斧を振り回している。

 ーーーー逃げ切れるわ!!

「残念だったわね!」

 アリスはにっこりと笑って、盗賊達に向かって叫んだ。

 ヒヒーン!!

 モルトは前足をあげ、高らかに鳴き声を上げた。距離が離れても、盗賊たちは執拗に追いかけてくる。

「行きましょう!」

 彼女は愛馬モルトに力強く声をかけながら、必死でバランスを保つ。

「諦めるな!追いかけ続けろ!」

 遠くで盗賊が叫んでいる。
 
 闇夜の中、アリスは愛馬モルトと一体となって全速力で駆け抜けた。アリスの体は冷たい風にさらされ、手はかじかんでいく。

 盗賊達の姿が見えなくなり、アリスは安堵のため息をつく。しかし、彼女はまだ逃げ続けなければならないことを知っていた。盗賊達はどこまでもアリスを追いかけて来るのだろう。

 ーーーーごめんね、モルト。もう少しだけ……私と一緒に逃げましょう。 

 アリスは夜中、愛馬モルトと共に走り続け、小さな農村にたどり着いた。


   ◇◇◇
  
 
 朝日が登る中、農村にたどり着いた時、アリスと愛馬モルトは疲れ果て、限界に達していた。

 農村には、ちらほらと村人の姿が見える。

「お水と……寝床を貸していただけませんか……?」

 アリスは村人の一人に懇願した。だが、村人は冷たい目で彼女を見つめ、

「あんたは貴族だろ」

 と言った。アリスは何も言えず、ただ立ち尽くす。

 ーーーー私は貴族‥‥‥彼らにとって、憎い相手‥‥‥。

 アリスは馬を止め、木陰に座り込んだ。喉がカラカラに乾いている。意識は朦朧とし、体力も限界に近づいていた。

 ーーーーモルトの餌を探しに行かなくちゃ……。

 頭ではそう思っても、力が出ない。村人達は、倒れるアリスに気づいているが、遠巻きに見ているだけだ。

 ーーーー彼らは皆、貴族を恨んでいるのね……。

 アリスが着る質素な服は、平民達にとっては高級な服に見えるだろう。銀色の髪や、アリスの綺麗な髪もまた、彼女が貴族であることを示している。

 村人達は、役人達から日々重い税を取り立てられている。やせ細った彼らは、恨みを込めた目でアリスを睨んでいた。

 ーーーーどこに行っても……恨まれてばかりね。

 アリスの意識が途切れかけた瞬間、小さな女の子が彼女の前に現れた。

「お姉ちゃん、だいじょうぶ?」
 
 女の子は水の入ったコップを差し出しながら、心配そうにアリスに尋ねる。

「あり……がとう……。」

 アリスは差し出されたコップを震える手で受け取る。

「美味しい、美味しいわ……。」

「よかった!!」

女の子は満面の笑みを浮かべた。女の子の服はほころび、やせ細っている。

「本当にありがとう……。」

 アリスは思わず女の子を抱き締める。アリスの目には大粒の涙が浮かんでいた。

 村に立ち並ぶ家はボロボロで今にも風に飛ばされそうだ。

 ーーー最も作物が取れる秋口にこれだけ痩せているなんて……。

 きっと女の子の両親も、貴族を恨んでいるのだろう。そんな中でもアリスを助けてくれた女の子の優しさが、彼女の心を少しだけ癒してくれるのだった。

 
   ◇◇◇
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