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65.国王様と真実
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その頃レオナルドはフルート村にたどり着いていた。レオナルドは兵士に命じて食材を配り、村人にご飯を振る舞った。フルート村の村長は一軒の家を貸してくれたが、レオナルドは体を休めることができなかった。
つい数日前まで、銀髪に緑の瞳を持った女性が、この村で暮らしていたというのだ。その女性は自らを正妃アリスだと名乗った。そしてこの村からほど近いソラト村で、反乱軍を率いているらしい。
ーーーーー本当にアリスが生きているのか……?
部屋の中でじっとしていることができず、レオナルドはぼんやりと川を見つめていた。騎士アルバートが先にソラト村へ行き、アリスが本当に生きているか確かめに行っている。
強い風が吹き、川は荒い波が立っている。
「レオナルド様!」
背後から騎士アルバートの声がした。心臓が急速に早まる。アルバートがソラト村から帰ってきたのだ。アリスがいるというソラト村から……。
「アリスは……?」
「アリス様は生きていらっしゃいます!」
アルバートは満面の笑みを浮かべて、レオナルドに伝えた。
「そう……か……。」
レオナルドの唇から安堵のため息が零れる。
「そうか……アリスは生きているのか……。」
「はい。相変わらず美しく、強いアリス様にお会いできました。」
泣きそうな顔で、アルバートはレオナルドに言った。その目は真っ赤に染まっている。もうすでに泣いてきたのだろう。この男は本当にアリスに会ってきたのだ。
-----アリス。
レオナルドは心の中で、正妃の名前を呼ぶ。もうすでにアリスは死んでしまったのだと、レオナルドはどこかで諦めていた。大好きで仕方なくて、だからこそどこかに行ってしまったことが憎くて。
「アリスと……。」
僕は会っていいのだろうか?そう言いかけて、言葉が詰まる。どうしてももう一度アリスに会いたい。彼女に謝罪し、昔のような優しい笑顔で許してもらいたい。だが、そんなことが許されるのだろうか。アリスを信じようとせず、城から追い出したのは、レオナルド自身なのだ。
「アリス様は、レオナルド様とお会いしたいとおっしゃっていました。」
「え……。」
レオナルドの疑問を見透かしたように、アルバートが言う。
「明日、ソラト村に行きましょう。アリス様が待っています。」
アルバートはそう言うと、一礼してその場を立ち去ろうとする。
「ま、待ってくれ!アリスはなんと言っていた?!僕を憎んでいるのか?!」
思わず、レオナルドはアルバートに尋ねた。
-----憎んでいるに決まっているだろう……?
そう、わかっているからこそ、レオナルドは聞かずにはいられなかった。
アルバートは足を止め、ゆっくりと振り返る。
「俺には、アリス様の心の内はわかりません。ですが……、アリス様が陛下を恨んでいても……それはしょうがないと思いませんか?」
アルバートの言葉に、レオナルドは言葉を失う。
「レオナルド様。俺は陛下が変わったと信じています。」
アルバートはレオナルドを見つめて、言葉を続ける。
「あの日、陛下がアリス様を追い出したことを皆忘れていません。それでも……アリス様は誰よりも……陛下を信じていました。多分……きっと今も。だから、アリス様は陛下に会われるのだと思います。」
-----信じているわけないだろう?
レオナルドは長い間、アリスを傷つけていた。自分を裏切ったアリスが憎くて、彼女を傷つけることでしか自分を保っていられなかった。
『さようなら、貴方を愛していたわ。』
最後に会った時、アリスはレオナルドにそう言った。憎しみではなく、悲しみを多く含んだ瞳。あの時のアリスの表情が、レオナルドには忘れられない。
-----どんな顔でアリスに会えばいい?
レオナルドにはわからなかった。アルバートがその場を立ち去った後、レオナルドは俯いて、ぎゅっと拳を握り締める。
「レオナルド!」
明るい声がして、顔をあげる。リュカだ。いつも通りに笑うリュカを見ていると、不思議と心が安らぐのがわかった。
つい数日前まで、銀髪に緑の瞳を持った女性が、この村で暮らしていたというのだ。その女性は自らを正妃アリスだと名乗った。そしてこの村からほど近いソラト村で、反乱軍を率いているらしい。
ーーーーー本当にアリスが生きているのか……?
部屋の中でじっとしていることができず、レオナルドはぼんやりと川を見つめていた。騎士アルバートが先にソラト村へ行き、アリスが本当に生きているか確かめに行っている。
強い風が吹き、川は荒い波が立っている。
「レオナルド様!」
背後から騎士アルバートの声がした。心臓が急速に早まる。アルバートがソラト村から帰ってきたのだ。アリスがいるというソラト村から……。
「アリスは……?」
「アリス様は生きていらっしゃいます!」
アルバートは満面の笑みを浮かべて、レオナルドに伝えた。
「そう……か……。」
レオナルドの唇から安堵のため息が零れる。
「そうか……アリスは生きているのか……。」
「はい。相変わらず美しく、強いアリス様にお会いできました。」
泣きそうな顔で、アルバートはレオナルドに言った。その目は真っ赤に染まっている。もうすでに泣いてきたのだろう。この男は本当にアリスに会ってきたのだ。
-----アリス。
レオナルドは心の中で、正妃の名前を呼ぶ。もうすでにアリスは死んでしまったのだと、レオナルドはどこかで諦めていた。大好きで仕方なくて、だからこそどこかに行ってしまったことが憎くて。
「アリスと……。」
僕は会っていいのだろうか?そう言いかけて、言葉が詰まる。どうしてももう一度アリスに会いたい。彼女に謝罪し、昔のような優しい笑顔で許してもらいたい。だが、そんなことが許されるのだろうか。アリスを信じようとせず、城から追い出したのは、レオナルド自身なのだ。
「アリス様は、レオナルド様とお会いしたいとおっしゃっていました。」
「え……。」
レオナルドの疑問を見透かしたように、アルバートが言う。
「明日、ソラト村に行きましょう。アリス様が待っています。」
アルバートはそう言うと、一礼してその場を立ち去ろうとする。
「ま、待ってくれ!アリスはなんと言っていた?!僕を憎んでいるのか?!」
思わず、レオナルドはアルバートに尋ねた。
-----憎んでいるに決まっているだろう……?
そう、わかっているからこそ、レオナルドは聞かずにはいられなかった。
アルバートは足を止め、ゆっくりと振り返る。
「俺には、アリス様の心の内はわかりません。ですが……、アリス様が陛下を恨んでいても……それはしょうがないと思いませんか?」
アルバートの言葉に、レオナルドは言葉を失う。
「レオナルド様。俺は陛下が変わったと信じています。」
アルバートはレオナルドを見つめて、言葉を続ける。
「あの日、陛下がアリス様を追い出したことを皆忘れていません。それでも……アリス様は誰よりも……陛下を信じていました。多分……きっと今も。だから、アリス様は陛下に会われるのだと思います。」
-----信じているわけないだろう?
レオナルドは長い間、アリスを傷つけていた。自分を裏切ったアリスが憎くて、彼女を傷つけることでしか自分を保っていられなかった。
『さようなら、貴方を愛していたわ。』
最後に会った時、アリスはレオナルドにそう言った。憎しみではなく、悲しみを多く含んだ瞳。あの時のアリスの表情が、レオナルドには忘れられない。
-----どんな顔でアリスに会えばいい?
レオナルドにはわからなかった。アルバートがその場を立ち去った後、レオナルドは俯いて、ぎゅっと拳を握り締める。
「レオナルド!」
明るい声がして、顔をあげる。リュカだ。いつも通りに笑うリュカを見ていると、不思議と心が安らぐのがわかった。
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