【完結】妊娠した愛妾の暗殺を疑われたのは、心優しき正妃様でした。〜さよなら陛下。貴方の事を愛していた私はもういないの〜

五月ふう

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68.国王様と危機

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 その日の夜。

 -----レオナルドは眠ったかな。

 隣で寝息を立てるレオナルドを確認して、リュカは小包を開いた。リュカが慎重に包み紙をほどくと、中から美味しそうな甘いお菓子が現れた。

 -----さて、と……。

 その小包は、リュカがフルート村に行った時、ある騎士に渡されたものだった。

『村人からの差し入れだ。レオナルド様に渡してくれ。』

 そう言って、大柄な騎士はリュカにお菓子を手渡した。リュカはにこやかにそのお菓子を騎士から受け取ったが、すぐにそのお菓子をレオナルドに渡さなかった。それは決して、お菓子を独り占めしようとしたからじゃない。

 『他人からの差し入れを安易に口にしてはいけない。食べる前に必ず毒見するのだぞ。』

 商人であった父の言葉がよみがえる。リュカの父は用心深い人で、リュカに毒見の仕方を教えてくれた。

 -----あたしがレオナルドを守らなくちゃ。
 
 レオナルドがリュカの頬にキスしたあの日から、リュカの胸にそんな決意ができていた。レオナルドはきっとこの国を救う人だと、リュカは確信している。

 -----ねえ、レオナルド。あたしが貴方を大好きだと言ったら、どんな顔するかな?

 レオナルドはアリスに会いにこの村に来た。心のどこかで、アリスとレオナルドのつながりに嫉妬してしまうけれど、それでも彼が大切な人に会えるのは嬉しい。ずっと彼が抱えていたであろう苦しみから解放されてほしいと願っていた。

 リュカは心を落ち着かせ、父から学んだ毒見の方法を思い出す。リュカはお菓子の小さなかけらを選び、慎重に舐める。その瞬間、苦みと刺激が口に広がる。

 ----毒だ。

 騎士から手渡されたお菓子には毒が含まれていた。悪い予感が的中してしまった。どうもあの騎士は、人相が悪く、なにかを企んでいる気がしていたのだ。旅の道中も、あの騎士は時々恐ろしい目でレオナルドを睨んでいた。他の騎士とは明らかに何かが違うとリュカは気が付いていた。

 -----どうしたらいいかな……。

 この事実をレオナルドに伝えるべきか、リュカは迷った。明日は、レオナルドがアリスに会う日だ。もしも誰かに命を狙われていると知ったら、レオナルドは激しく動揺するだろう。もしかしたら、アリスに会うこと自体やめてしまうかもしれない。

 -----今日だけは……秘密にしておこう。

 長い間考えて、リュカはレオナルドに毒の入ったお菓子のことを伝えないと決めた。明日、無事にレオナルドがアリスに会えたら、彼に迫っているかもしれない危機について伝えればいい。

 -----誰がレオナルドに毒を与えようとしたの…‥‥?

 まず第一に、リュカにお菓子を渡した騎士が怪しい。その男は注意深く見張っていなくては。

 -----無事に、レオナルドがアリスに会えますように。

 リュカは心の底から、そう願っていた。

 誰よりも弱くてさびしがりや。最低の王だと皆に言われるレオナルド。それでも、変わろうと努力してきたレオナルドを見てきたのだ。


   ◇◇◇

平穏な夜だった。

「くそっ」

 リュカとレオナルドが眠る部屋で、何も起こらない。遠くから二人が眠る家を眺めていたフィリップス公爵の部下は舌打ちをした。

ーーーーー毒は不発だったか……。

 元正妃アリスに似た、銀髪の女を国王レオナルドは気に入っている。あの女から渡されたものならば、素直に食べるかと思っていたのだが、上手くいかなかったらしい。

 国王レオナルドが眠る家は兵たちによって守られており、今は手出しができそうもなかった。

 『アリスとレオナルドが再会をなんとしても食い止めるのだ』

 フィリップス公爵からの手紙には、そう書かれていた。命令を果たせなければ、騎士の命だけでなく、その家族も危機にさらされる。

 -----最後の手段をとるしかない……。

 フィリップス公爵の部下は爪を噛む。

 
 ◇◇◇
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