71 / 80
71.正妃様の幻
しおりを挟む
その日の夜。ソラト村の小さな家の中。
レオナルドはただ黙ってアリスの姿を見つめていた。ベットの上に横たわるアリスは熱にうなされている。意識はいまだに戻っていない。
「アリス……。」
ルーカスという男が、アリスの手をギュッと握っている。金色の髪に黒い瞳。その特徴はレオナルドが長い間探している男の見た目によく似ていた。
同行していた医師が必死にアリスの治療を行っている。だが、半日以上が経っても、アリスは目を覚さない。
「どうか……戻ってきてくれ……アリス。」
ルーカスの言葉は皆の願いだった。
『国王レオナルドは皆の希望よ!』
意識を失う前に、アリスはそう言って倒れた。だがアリスこそが皆の希望なのだ。
-----なぜアリスは僕を……?
レオナルドがこんなところまで来たせいで、アリスは刺されたに違いないのに。
部屋の中には、緊張感が漂っている。医師たちもアリスが意識を取り戻すのか、わからないらしい。アリスは生死の境をさまよっている。
「全部、僕のせいだ。」
レオナルドはそう呟いて、部屋を出た。
◇◇◇
ーーーーなぜ僕が生きているんだ?
小さな家を出ると、兵士たちが家の周りを守っていた。皆、心の底からアリスを慕う者ばかりだ。死んだと思っていた主人が生きているとわかったとたんに彼女が死に面しているのだ。兵士たちは皆,うつろな目をしている。
「アリス様は……目を覚まされましたか?」
「いいや。」
短く答えて、レオナルドはその場を離れた。
「どこにいかれるのですか!レオナルド様!」
「しばらく……1人にしてくれ。」
夜空は雲がかかっていて、星が一つも見えなかった。
川のそばにたち、レオナルドはもう一度呟いた。
「僕のせいだ。」
心の中には、混乱と後悔が渦巻いている。
全ての始まりは、レオナルドからだった。
アリスの言葉を信じて、彼女をお城から追い出さなければ。
もっと早く、アリスの言葉に耳を傾けていれば。
敵の存在にもっと早く気がついていれば。
レオナルドは胸を押さえてうずくまった。
何度も頭の中に、アリスの優しい笑顔が浮かぶ。心が痛くて仕方がなかった。なぜアリスはレオナルドを恨んでいなかったのだろう。
ーーーーー僕がこんなところに来なければ、アリスが刺されることはなかった。
「アリス……」
あまりの無力さに唇を噛んだ。村はしんとしずまりかえっている。雲の隙間から、月が少しだけ顔をだす。
“レオナルド“
どこからかアリスの声が聞こえた。その場に霧がかかっていて、前がよく見えない。
-----何が起こっている?
レオナルドが目を擦るとそこにアリスが立っていた。彼女はお城の舞踏会で着ていたような、真っ白いドレスを身に纏っている。
「アリス…‥目を覚ましたのか!」
大股でアリスに近づこうとしたが、いくら前に歩いてもアリスは近づかない。アリスは優しい笑顔を浮かべた。
“大丈夫。貴方ならできるわ“
アリスの声はレオナルドの耳元で響く。
「僕にはできないっ!!僕は何もできないっ!!!」
レオナルドはわめいたが、アリスは微笑みを浮かべるだけだった。
“頼んだわよ“
そういうと、アリスの姿が次第に薄れていく。
「待って!待ってくれ!!」
レオナルドは声を張り上げたが、もはやアリスの姿は見えなくなっていた。残されたのは、真っ暗闇と、心に残るアリスの微笑みだけだった。
ーーーーー前に進まなくては・・・・僕はこの国の王だ。
今見たのは、アリスの幻だったのだろうか。そうだったとしても、その幻は確かにレオナルドに勇気を残していった。
ーーーーー僕は愚かな王だ。だが、アリスの思いを引き継ぐことはできる。
レオナルドは手を強く握った。それから、彼は村に戻り、兵士や人々に命じた。
「明日、橋を渡りゴアル国に行く!!アリスの夢を俺が叶える!」
誰もがお腹いっぱいご飯を食べられる国。それがアリスが望んだもの。ゴアル国に行った後、何をしなくてはいけないか、レオナルドにはすでにわかっている。
◇◇◇
レオナルドはただ黙ってアリスの姿を見つめていた。ベットの上に横たわるアリスは熱にうなされている。意識はいまだに戻っていない。
「アリス……。」
ルーカスという男が、アリスの手をギュッと握っている。金色の髪に黒い瞳。その特徴はレオナルドが長い間探している男の見た目によく似ていた。
同行していた医師が必死にアリスの治療を行っている。だが、半日以上が経っても、アリスは目を覚さない。
「どうか……戻ってきてくれ……アリス。」
ルーカスの言葉は皆の願いだった。
『国王レオナルドは皆の希望よ!』
意識を失う前に、アリスはそう言って倒れた。だがアリスこそが皆の希望なのだ。
-----なぜアリスは僕を……?
レオナルドがこんなところまで来たせいで、アリスは刺されたに違いないのに。
部屋の中には、緊張感が漂っている。医師たちもアリスが意識を取り戻すのか、わからないらしい。アリスは生死の境をさまよっている。
「全部、僕のせいだ。」
レオナルドはそう呟いて、部屋を出た。
◇◇◇
ーーーーなぜ僕が生きているんだ?
小さな家を出ると、兵士たちが家の周りを守っていた。皆、心の底からアリスを慕う者ばかりだ。死んだと思っていた主人が生きているとわかったとたんに彼女が死に面しているのだ。兵士たちは皆,うつろな目をしている。
「アリス様は……目を覚まされましたか?」
「いいや。」
短く答えて、レオナルドはその場を離れた。
「どこにいかれるのですか!レオナルド様!」
「しばらく……1人にしてくれ。」
夜空は雲がかかっていて、星が一つも見えなかった。
川のそばにたち、レオナルドはもう一度呟いた。
「僕のせいだ。」
心の中には、混乱と後悔が渦巻いている。
全ての始まりは、レオナルドからだった。
アリスの言葉を信じて、彼女をお城から追い出さなければ。
もっと早く、アリスの言葉に耳を傾けていれば。
敵の存在にもっと早く気がついていれば。
レオナルドは胸を押さえてうずくまった。
何度も頭の中に、アリスの優しい笑顔が浮かぶ。心が痛くて仕方がなかった。なぜアリスはレオナルドを恨んでいなかったのだろう。
ーーーーー僕がこんなところに来なければ、アリスが刺されることはなかった。
「アリス……」
あまりの無力さに唇を噛んだ。村はしんとしずまりかえっている。雲の隙間から、月が少しだけ顔をだす。
“レオナルド“
どこからかアリスの声が聞こえた。その場に霧がかかっていて、前がよく見えない。
-----何が起こっている?
レオナルドが目を擦るとそこにアリスが立っていた。彼女はお城の舞踏会で着ていたような、真っ白いドレスを身に纏っている。
「アリス…‥目を覚ましたのか!」
大股でアリスに近づこうとしたが、いくら前に歩いてもアリスは近づかない。アリスは優しい笑顔を浮かべた。
“大丈夫。貴方ならできるわ“
アリスの声はレオナルドの耳元で響く。
「僕にはできないっ!!僕は何もできないっ!!!」
レオナルドはわめいたが、アリスは微笑みを浮かべるだけだった。
“頼んだわよ“
そういうと、アリスの姿が次第に薄れていく。
「待って!待ってくれ!!」
レオナルドは声を張り上げたが、もはやアリスの姿は見えなくなっていた。残されたのは、真っ暗闇と、心に残るアリスの微笑みだけだった。
ーーーーー前に進まなくては・・・・僕はこの国の王だ。
今見たのは、アリスの幻だったのだろうか。そうだったとしても、その幻は確かにレオナルドに勇気を残していった。
ーーーーー僕は愚かな王だ。だが、アリスの思いを引き継ぐことはできる。
レオナルドは手を強く握った。それから、彼は村に戻り、兵士や人々に命じた。
「明日、橋を渡りゴアル国に行く!!アリスの夢を俺が叶える!」
誰もがお腹いっぱいご飯を食べられる国。それがアリスが望んだもの。ゴアル国に行った後、何をしなくてはいけないか、レオナルドにはすでにわかっている。
◇◇◇
74
あなたにおすすめの小説
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。
戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。
愛人はリミアリアの姉のフラワ。
フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。
「俺にはフラワがいる。お前などいらん」
フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。
捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!
恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。
誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、
三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。
「キャ...ス...といっしょ?」
キャス……?
その名を知るはずのない我が子が、どうして?
胸騒ぎはやがて確信へと変わる。
夫が隠し続けていた“女の影”が、
じわりと家族の中に染み出していた。
だがそれは、いま目の前の裏切りではない。
学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。
その一夜の結果は、静かに、確実に、
フローレンスの家族を壊しはじめていた。
愛しているのに疑ってしまう。
信じたいのに、信じられない。
夫は嘘をつき続け、女は影のように
フローレンスの生活に忍び寄る。
──私は、この結婚を守れるの?
──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの?
秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。
真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる